|
新潮文庫から出ている『白痴』(木村宏訳)を読んでいます。私にとっては今年はドストエフスキー
の年になりそうです。『罪と罰』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』と読んできましたが、先日、
ドイツ出張前に図書館から『白痴』を借りてきました。
上下巻あわせて1400ページくらいあります。なかなかタフです。
1868年の作品ですから、ちょうど日本では明治維新です。
主人公のムイシュキン公爵は、皆から白痴(バカ)呼ばわりされます。このバカというのは、
頭が足りないバカと世間知らずのバカの両方の意味です。しかし、この皆からバカといわれる
ムイシュキン公爵は、出会ったすべての人たちから愛されます。
ドストエフスキーは、この小説で、「無条件に美しい人」を書きたかったそうです。
彼によると無条件に美しい人といえばイエス・キリストくらいしかいないが、それを
現代に出現させたかったそうです。
上巻の帯には、こう紹介されています;
「スイスの精神療養所で成人したムイシュキン公爵は、ロシアの現実についで何の知識も持たずに故郷に帰ってくる。純真で無垢な心を持った公爵は、すべての人から愛され、彼らの魂をゆさぶるが、ロシア的因習のなかにある人々は、そのためにかえって混乱し騒動の渦をまき起す。この騒動は、汚辱のなかにあっても誇りを失わない美貌の女性ナスターシャをめぐってさらに深まっていく。」
今は下巻に入ったところですが、果たして、この本をどう紹介したらいいのか、
悩んでいるところです。とてもドラマチックなところもあるし、冗漫なところもある。
黒澤明もこの作品に感動し、これを原作にして、映画「白痴」を作っています。
主役はバカ呼ばわりされるムイシュキン公爵と、美貌の女性ナスターシャです。
ナスターシャは、子供のときに貧乏な家で火事となり孤児となったのですが、好色な領主が彼女の
美しさに目をつけて森の中で家と召使を与え育てます。領主はここを別荘として、年に2−3ヶ月
滞在して彼女が小さいときから性的ないたずらなどをたくさんします。一方で、たくさんの
書物を与え勉強もさせます。
そして、彼女が成人近くなったある日、領主が彼女に会ってみると、今まで従順で可愛かった
だけの彼女が豹変していることに気が付いたのです。彼女はますます美しくなっただけでは
なく、非常に多くの知識を持ち、知恵と知性を持ち、気も強くなり、弁も立ち、すっかり領主の
手におえる存在ではなくなります。それどころか、彼女の口から領主がしてきた辱めを世に暴露
しそうな気配もあり、領主は非常におびえます。
あまりに美しい彼女にはいろいろな人が求愛してきますが、彼女は自分の生い立ちから
来る心の傷ゆえに素直には応じません。そんな彼女がムイシュキン公爵に恋をします。
面白そうでしょう。
<<続く>>
|