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かみさんがたまたまNHKの番組「100分de名著:銀河鉄道の夜・宮沢賢治」を
録画していたので見ました。素晴らしい番組で、不思議なアニメで賢治の世界を
映像化しながらの朗読に聞きほれました。
私も朗読をするので、いい勉強になります。
しかし、それ以上にいいのは、解説をしてくれるロジャー・パルバースという人です。
1944年米国生まれのオーストラリア人でユダヤ人。
1967年に初めて日本に来たときに、ある大学教授に
「日本語を学びたいと思っているのですが、作家の中で一番美しい日本語を
書いているのは誰ですか?」と尋ねて「宮沢賢治だ」と教えられたのが、賢治を
知ったきっかけだそうです。1969年には宮沢賢治の実家を訪ねて、実の弟の
清六さんにも面談しています。
彼はこれまでに5回も宮沢賢治を英訳している、という。訳すたびに新しい発見が
あるからだそうです。
ロジャー・パルバースさんは、現在、東工大の世界文明センター長。
ポニョママが彼の講演会を聞きに行ってブログを書いています。
彼に言わせると、宮沢賢治が正当に評価されてきたのは、この15年くらいだと。
以前から彼の作品は教科書などに載っていたけど、それはあくまでも童話として。
しかし、『銀河鉄道の夜』は、大人の童話である、と。
宮沢賢治が注目されてきたのは、経済バブルの崩壊やオウム真理教の事件などで
これまでお金一辺倒だった日本人が、本当の豊かさというのは、なにか別の
精神的なものではないか、と思い始めたことと関係があるようです。
私自身も以前から宮沢賢治のことは気にはなっていて、いろいろと読むのだけど、
いまひとつつかみどころが無い。非常に文章が美しい。そして、なぜか悲しい。
そして、きっと賢治は、音が見え、木々のおしゃべりが聞こえるような感性の持ち主
なのだろう、と、それくらいしかわかりませんでした。
宮沢賢治(1896-1933)は、岩手県の裕福な質屋の子供として生まれ、37歳の若さで
肺を患い亡くなっています。貧しい農村の人たちがお金の工面をお願いにお店に来る。
当時の東北の農村は非常に貧しかった。出稼ぎや子供の身売りなども当たり前だった。
そういう中で幼い賢治は「生きるということは大変なことだ」と考えた。
農業を勉強し、農業学校の先生になり、ボランティアを行い、日蓮宗に入る。
彼は金持ちの質屋の父が嫌いだった。父は浄土真宗。
賢治はベジタリアンになり、女性とも交際をせずに、禁欲的に暮らした。
貧しい人たちを踏み台にして生きてきた父、そして、その息子である自分として
ずっと「罪の意識」を持ち続けたようだ。
そして、生きるということは贖罪である、と。生きて、この罪を償おうと考えたようです。
『銀河鉄道の夜』の中に登場する女の子が、蠍の話をします。
ある日、蠍はイタチに追われて逃げて逃げて、井戸に落ちてしまう。
水没していきながら、遠くなる意識の中で蠍は過去を思い出す。
ああ、自分はこれまでにどれだけ多くの虫たちを殺してきたのだろうか。
ああ、自分は、なぜ、イタチに捕まってあげなかったのか。
自分が捕まってイタチに食われてしまえば、イタチはあと1日、長生きが
できたかもしれないのに。
この身をささげれば、イタチに幸いを与えることができたかもしれないのに。
ロジャー・パルバースさんはこう訊ねます。
「賢治が我々にしている一番大事な問いは、何だと思いますか?」
と。
「あなたは、なぜ、あなたですか?」
「あなたは、なぜ、私ではないのですか?」
「実は、あなたは私なのです。私もあなたも、虫も動物もこの世の
あらゆる森羅万象は一つのものなのです」
「だから、大事にしなくてはいけません。人のことも、動物も、虫も、
山も、川も」
ロジャー・パルバースさんが、文学者ではなくて、「世界文明センター長」であることが
なんとなくわかるような気がします。文学を超えたところの話ですね。
宮沢賢治はひょっとすると、20世紀の日本の最高の作家かもしれない。
もちろん、単なる作家ではないけど。
4回の講義は、12月28日(水)夜10時(NHK教育)が最終回です。
興味のある人は、せめて最終回だけでもご覧になってはいかがですか。
「いま、なぜ、宮沢賢治なのか」を知って損はないですよ。
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2011年12月25日
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