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今、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んでいます。
この本、そのものについては、別途書きますが、この本の中にとても興味深い文章が
出てきます。英語の勉強法についてです。
主人公の生真面目なサラリーマンがカフェで働いていた若い(15歳)女性の身元引き受け人のようになって、彼女を自分の理想の女性に仕立てようとします。好きな服を買ってあげ、好きな食べ物を食べさせてあげ、音楽と英語を勉強したい、というのでそのレッスンにも行かせてあげます。しかし、彼女の英語力を試しても、酷い英語で、とても身になっているとは思えない。そこで、ネイティブの先生に会いに行って、彼女の状況について尋ねます。
先生いわく、
「あの児は、なかなか賢い児こです。よくできます」
と答えます。「でも」と反論する主人公に対して、先生は
「日本の人、みな文法やトランスレーションを考えます。けれどもそれは一番悪い。あなたは英語を習います時、決して決して頭の中で文法を考えてはいけません。トランスレーションしてはいけません。英語のままで何度も何度も読んで見ること、それが一等よろしいのです。ナオミさんは大変発音が美しい。そしてリーディングが上手ですから、今にきっと巧くなります」
といい、主人公は引き下がりますが、それでも思うのは、
「せめて過去分詞の使い方や、パッシヴ・ヴォイスの組み立てや、サブジャンクティヴ・ムードの応用法ぐらいは、実際的に心得ていい筈なのに、和文英訳をやらせて見ると、それがまるきり成っていないのです。殆ど中学の劣等性にも及ばないくらいなのです。」
実は、この先生の発言が正しいと私は思います。日本人は、このようにできずに、和文英訳やら文法やらをやたら頑張って、結局、英語で考えて、英語で表現するということができなくなっています。
1924年(大正13年)の作品ですが、さすがに谷崎潤一郎は分かっていたようです。『痴人の愛』の「痴人」というのは、主人公のことだと思われるので、頭がカチカチの真面目な日本人をうまく描けていると思います。残念ながら、平成になっても英語学習時の日本人の頭は、この主人公と同じ、という人が多いですけど。
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