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『詩人からの伝言』

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『詩人からの伝言』 (田村隆一 語り、長薗安浩 文)MF文庫を読んでいます。
詩の本というのは、「読み終わる」ということはないと思う。
(それにしても、この本の表紙はひどい(涙)
 
暮れにマイケル・サンデルの『これから「正義」の話をしよう』を買って面白く読んでいたのに
どこに置き忘れたのか、無くしてしまった。探しても見つからない。クリスマスまではあったのに。
私は仕事柄、電車に乗ることが多くて、何か読む本が欲しい。
で、たまたま、見つけて買ったのが、この『詩人からの伝言』。
 
全然、知らなかったのだけど、田村隆一(1923-1998)という詩人は、
教科書に残るような有名人だ。
吉本隆明は
「日本でプロフェッショナルだと言える詩人が三人いる。
それは田村隆一、谷川俊太郎、吉増剛造だ」
と評しているらしい。
 
翻訳家としては、アガサ・クリスティの本を多く訳している。
 
この本は、長薗さんが、編集者として、ダヴィンチという雑誌で詩の特集をするにあたって、
田村隆一の存在を知り、1990年代に鎌倉に住んでいた田村さんを何度も訪ねて、
いろいろな話をしてもらって、それをまとめたものだ。田村さんは当時73歳くらいだった。
 
田村隆一は、
「え?『詩人からの伝言』?『詩人からの遺言』のほうが、カッコいいんじゃないの」
などと笑っていたらしい。
結局、伝言は、今や遺言になってしまったけど。
 
ちなみに田村隆一には、少なくとも5人の奥さんがいた。
最初の妻は鮎川信夫の妹。
2度目の妻は福島正実の従姉妹。
岸田衿子も元妻。
高田博厚の娘の田村和子も元妻で、めじめ正一の小説『荒地の恋』のモデルとなった。
最後の妻は田村悦子。
岸田衿子は、詩人・童話作家で岸田今日子の姉。谷川俊太郎の妻でもあった。
かなりややこしい。
 
まあ、そんなことは、どうでもいい。
なんというか、迫力のある爺さんだ。
酒飲みながら、タバコ片手に語る言葉に重みがある。
そして、面白い。
 
たまたまにしては、いい出会いだ。
私に、田村隆一のどこまでがわかるかわからないけど、出会って良かった。
 
「帰途」という田村さんの詩です。
 
**
 
     帰 途
 
                  田村隆一
 
 
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか
 
あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう
 
あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるのか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか
 
言葉なんか覚えるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる
 
 

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