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あれは、もう23,4年前だろうか。
私は27歳くらいだったと思う。
ケツの青い社会人で、以前から夢だった「一人暮らし」というのを
東京の練馬で始めた。
土曜日には近所のテニス・スクールへ通い、いい汗を流していた。
スクール仲間で夜ときどき飲みに行くこともあり、
12月には忘年会もやった。
20代、30代の男女が多く、そのうちの一人はとても可愛くて
私のお気に入りだった。
西田ひかる似というか、眞鍋かをり似というか・・・。
忘年会の後、皆で2軒目に行き、そして、3軒目は彼女と二人で行った。
夜は遅かったが、彼女の家はすぐ近くで家族と暮らしていた。
3軒目を終えて、私は彼女を自分のワンルーム・マンションへ誘った。
「うちでお茶でも飲まない?」って。
驚いたことに彼女はひとつ返事で来てくれた。
やや広めのワンルームで、ベッドはセミダブル、照明もカーテンもそれなりに洒落て
いたつもり。寒い日で、部屋に入ると、二人の息は白かった。
暖房は石油ファンヒーターしかなく(エアコンは冷房専用機だった)、さっそくスイッチを押したものの
火がつかない。何度やっても火がつかない。壊れていた。
なんてこった。
彼女はコートも脱がす、白い息を吐きながら、つぶらな瞳でこちらを見ていたが、
やがて、
「ごめんなさい、私は今日はもう帰ります」
とさよならを告げた。
1987年頃だったと思う。
たまたまビデオで映画「グレン・ミラー物語」を見た。主演のジェームズ・スチュワートが格好良かったし、
サッチモの動く映像も初めて見た。グレン・ミラーは人気絶頂の真っ只中、1944年悲劇の死を遂げたが、
彼の曲は永遠になった。
「グレン・ミラーはジャズではない。ムード音楽だ」って言う人もいるかもしれない。
バカ言っちゃいけない。ジャズもなにも、いい音楽はいいのだ。
こんな曲に合わせて、彼女と踊れたらどんな気分か。
ムーンライトセレナーデなんて、初めて聞いたときから「懐かしい」と思った不思議な曲だ。
私は、この「石油ファンヒーター事件」の2週間前くらいに、彼女にこのビデオをあげた。
結局、彼女とはキスすらすることもなく、何事もなく、さえない青春の1ページとなってしまったが
「ムーンライト・セレナーデ」には、そんな思い出があり、忘れることはできない。