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有名なファンタジー小説『ピ−ター・パン』(1904年)を読みました。
作者はジェイムズ・M・バリ(1860-1937)。スコットランドの機織り職人の息子。
エディンバラ大学の学長も務めた。
こういう超有名な話をちゃんと読んでおきたかった。誰もが知っているピーター・パン。
Wikipediaより
ピーター・パンはロンドンのケンジントン公園で乳母車から落ちたところをベビーシッターに見つけられず迷子となったことから年を取らなくなり、海賊フック船長やインディアンのタイガーリリーが住む異世界・ネバーランドに移り住み妖精・ティンカーベルと共に冒険の日々を送る永遠の少年である。
ネバーランドにはピーターと同じように親とはぐれ年を取らなくなった子どもたち(ロストボーイ)がおり、ピーターは彼らのリーダー的な存在である。
ケンジントン公園にはピーターパンの銅像もある。
永遠の少年、ピーター・パン。
作者は、どこから、こういう発想を得たのだろう?
大学の学長にまでなったバリー氏の心の中に、成長を拒む永遠の少年が
いたのだろうか?
『ピーター・パン・シンドローム』という本も1980年代に出版されて読んだ。
「大人になることを拒む男性」を精神疾患として分析したものだ。
『ライ麦畑でつかまえて』のホールデンも近いものがあります。
大人にならない永遠の少年ピーター。
母性の強いウェンディ。
紳士的な悪党フック船長。
性格悪く嫉妬深い、でも可愛いティンカー・ベル。
象徴的なキャラクターが複数登場してきます。
まるで精神分析、精神療法のテキストとして作られたかのようです。
さて、いくつか、心に残った文章をご紹介します。
*
ピーターが言います;
「ね、ウェンディ、
最初に生まれた人間の赤ちゃんが、
初めて笑い声をたてるとね、
その笑い声が幾つにも小さく割れて、
みんなそこいらじゅうを跳ね回るようになるんだよ。
それが妖精のお誕生なんだ」
**
「子どもが
『妖精なんかいるもんか』
なんて言うたびに、
どこかで妖精が一人ずつ倒れて
死んでゆくんだよ」
**
「パン、きさまはいったいだれだ、何者なのだ?」
とフックはかすれた声で言いました。
「ぼくは青春さ、喜びさ」と、ピーターはでまかせに答えました。
**
(ウエンディが大人になり、結婚して、娘と会話しています)
「どうして、いまは飛べないの、お母ちゃま?」
「大人になったからなのよ、ジェイン。
大人になると、飛び方を忘れてしまうのよ」
「どうして忘れてしまうの?」
「大人になると、もう、陽気でも、無邪気でも、身勝手でもなくなるからよ。
飛べるのは、陽気で、無邪気で、身勝手な人たちだけなのよ」
**
素敵なお話です。
生意気で嫉妬深いティンク(ティンカーベル)が、ピーターの命を救うために
自分の命を捨てる場面は感動です。だけど、ピーターには、ティンクの愛が
わからないんです。
また、最初の場面ですが、ウエンディたちの父が、愛犬のナナを家から犬小屋に
追い出してしまって、そのあと、ウエンディたち子供たちは、家を抜け出し、
ネバーランドへ行ってしまいます。悲しんだウエンディのお父さんは、どうした
と思いますか?
なんと家を出て、犬小屋で暮らし始めるんですよ。
寓意に満ちた名作です。
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本
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宮部みゆきの『火車』(かしゃ)を読んだ。とても面白かった。
ミステリー作品であり、社会派、経済小説とも読める。
600ページ近くあるけれど、最後の最後まで飽きさせずに読ませてくれる。
私のように電車に乗っている時間の長い人間には、とてもありがたい
エンターテインメントだった。
バブル崩壊期、借金返済ができなくなった人たちの悲しくもスリリングな
ミステリーである。人物描写も素晴らしく、映像が浮かぶ。
映画やTVドラマになるなぁ、と思って読んでいたら、事実、ドラマ化されている。
『火車』を読みながら、東野圭吾を思いだした。ミステリー、面白さなど
非常に類似したところがあるけど、『幻夜』『白夜行』のようなぞっとする
どす黒い悪意のようなものは、『火車』には感じなかった。
宮部みゆきのほうが、まだ、登場人物に理性と誠意が感じられる。
1992年作品だから、もう20年前の作品。
私が生まれたのが1959年。
翌年の1960年から池田内閣の所得倍増10か年計画が始まる。
事実、日本は驚異的な経済成長を遂げた。
1970年には、各地で公害問題も発生し、大阪では万博が開かれた。
「人類の進歩と調和」がテーマだった。
それでも、1970年代は内省的な時代だった。音楽もロックと呼ばれるもの
で、良質なものがたくさん出た。
しかし、1980年代になったら、そういうことはどうでもよくなって、
『なんとなくクリスタル』のようなバカな小説が出てきて、ブランド品を
買い求めるような時代になった。
バブルの始まりだった。
株価と土地・不動産価格が急騰した。
深夜のタクシーもつかまらないことが多かった。
今と違って、深夜まで飲み、タクシーで帰る人が多かった。
私が20代のころ、新入社員のころだ。
そして、1990年頃、バブルは崩壊した。
それから、20年の歳月が流れた。
「失われた20年」と言われている。
この20年間、ずっと大学生たちの就職難も続いている。
宮部みゆきは時代の最新状況も小説背景に取り入れているので、
悪く行ってしまえば、今読めば、「古い小説」になっている。
随所に、「古いなぁ」と思う箇所がある。
それだけ世の中は激変している。
いい意味で言えば、時代小説というか、当時の世相をうまく描いて
いると思う。
今でも当時の残滓はもちろん残っているけど、やはり時代は変わった。
彼女の最近の小説を読んでいないけど、もし、今の世相を書くとしたら
ネット社会、つまり、ブログ、ツイッター、フェイスブックなどの仮想現実
で暮らす人々か。(私だ!笑)
それとて、10年、20年たてば「古い」時代の物語になってしまうだろう。
まあ、どう社会背景が変わろうとも、人々が幸せを求めてもがくのは
同じだろう。
食欲、性欲、睡眠欲といった本能的な欲望の後に来るのは、
プライドを満たす欲望だ。時代によって、そのプライドの満たし方も
変わってくるのだろう。
長期経済低迷期、私たちは、どういう方法でプライドを満たして行くのか。
マイペースに、無理をせず、そして、生き残る。
その辺かな、と思っています。
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先日、男のプライドについて書きましたが、今回は女のプライド。
宮部みゆきの『火車』を読んでいます。
この本からの抜粋です。
「お金もない。学歴もない。とりたてて能力もない。顔だって、それだけで食べていけるほどきれいじゃない。頭もいいわけじゃない。三流以下の会社でしこしこ事務してる。そういう人間が、心の中に、テレビや小説や雑誌で見たり聞いたりするようなリッチな暮らしを思い描くわけですよ。昔はね、夢見ているだけで終わってた。さもなきゃ、なんとしても夢をかなえるぞって頑張った。それで実際に出世した人もいたでしょうし、悪い道へ入って手がうしろに回った人もいたでしょうよ。でも、昔は話が簡単だったのよ。方法はどうあれ、自力で夢をかなえるか、現状で諦めるか。でしょう?」
「だけど、今は違うじゃない。夢はかなえることができない。さりとて諦めるのは悔しい。だから、夢がかなったような気分になる。そういう気分にひたる。ね?そのための方法が、今はいろいろあるのよ。彰子の場合は、それがたまたま買物とか旅行とか、お金を使う方向へいっただけ。そこへ、見境なく気軽に貸してくれるクレジットやサラ金があっただけって話」
「ほかにはどんな方法があります?」
「あたしの知っている方法としちゃ-----そうね、友達に、整形狂いの女がいるわ。もう十回近く顔を直しているんじゃないかしら。鉄仮面みたいな完璧な美女になりさえすれば、100パーセント人生ばら色、幸せになれると思い込んでるの。だけど、実際には、整形したって、それだけで彼女が思っている『幸せ』なんか訪れないわけですよ。高学歴高収入でルックス抜群の男が現れて、自分を王女さまのように扱ってくれる。なんてね。だから彼女、何度でも整形を繰り返すわけ。これでもか、これでもかってね。同じような理由でダイエット狂いしている女もいるわよ」
時間がないのでコメントは控えます。
『火車』については、全部読んだ後、後日、またご紹介します。
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宮部みゆきの『理由』を読んだ。1999年に本書で直木賞を受賞している。
芥川賞には外れがあるけど、直木賞には外れはない、と私は思っている。
ストーリーテリングという点では、直木賞受賞作品は、とにかく面白い。
本書も例外ではなかった。600ページを超す大作だけど、のめり込んで読んだ。
長時間電車に乗って出張に出かける私にはありがたい一冊だった。
裏表紙の紹介文;
「東京都荒川区の超高層マンションで起きた凄惨な殺人事件。
殺されたのは「誰」で「誰」が殺人者だったのか。
そもそも事件はなぜ起こったのか。
ノンフィクションの手法を使って心の闇を抉る宮部みゆきの最高傑作が
ついに文庫化。」
*抉る=えぐる(なかなか読めないですよね)
実に登場人物が多い。1つの事件に対して、一体何人の人たちが登場してくるのか。
宮部みゆきは、その一人ひとりの登場人物に順次焦点を当てて、その人物像を
生き生きと創り出す。事件が無事解決後、その事件を最初から振り返ってみましょう
とルポライターが書いたかのような書き方で、小説は進む。
謎が謎を呼び、読者は飽きることのない事件の展開に引き込まれる。そして、それぞれの
人物描写が細かく、かつ、なんとも言えず、身につまされる。多くの家族が登場する。
人には必ず、親がいて、家族というものが存在する。場合によっては、配偶者、子供もいる。
そして、人には必ず過去もある。そういったものがない人は、名無しのゴン兵のようなものだ。
現代の東京には1000万人を超す人たちが住み、毎日見かける大勢の人たちも、自分に
とってみれば、赤の他人であって、彼らの過去も家族も我々は知らない。そういう知らない者
同志がすれ違い、隣に住んだりしているわけだ。そういう都市の生活がバックグラウンドとして
非常にうまく描かれている。
そして、本書のタイトル『理由』なのだけど、なぜ、「理由」なのか。
この本を読めば、いたるところに「なぜ?」と問いたいことが出てくる。
それらの「なぜ?」の回答となる「理由」を宮部は、順次明らかにしてくれる。
私が悲しかったのは、男性のつまらないプライドが引き起こした愚行が複数ある点だ。
その「つまならいプライド」はまさに私も持っているものであり、それらの「愚行」も、妙に
納得がいってしまう。なんて男はバカなんだ、と思い、その男が自分と同じである
と考える悲しさだ。
もちろん、女の愚かさも随所に描かれている。
宮部のこのドライでクールな文体って一体なんなのだろう?
この人はどんな人なのだろう。
もと新聞社勤務かと思ったら違いました。
宮部みゆき(1960年生まれ)は、東京下町の高校を卒業した後、大学へは行かずに
法律事務所に勤務している。そして、小説スクールのようなものに通い、小説デビューしていく。
そして、その文学賞の受賞歴は華麗だ。
1987年『我らが隣人の犯罪』 オール読物推理小説新人賞受賞
1989年『魔術はささやく』 日本推理サスペンス大賞受賞
1992年『龍は眠る』 日本推理作家協会賞受賞
1992年『本所深川ふしぎ草紙』 吉川英治文学新人賞受賞
1993年『火車』 山本周五郎賞受賞
1997年『蒲生邸事件』 日本SF大賞受賞
1999年『理由』 直木賞受賞。
推理物、SF物が多いですが、時代劇も書いています。
オールマイティなんですね。まだ、独身かもしれない。
ゲームマニアらしい。
他の本も読んでみたいと思います。
『理由』を読んで、あえて、ネガティブなことを書くとしたら、宮部みゆきのハートというか、
魂を感じなかった、という点だ。ノンフィクション、ルポルタージュの手法を取って、あえて
そういうものを排除したのかもしれない。
だけど、この本によって人生が変わることはない。
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西原理恵子(サイバラ・エリコ)の『生きる悪知恵』を読んだ。
何気に買って読んだ本なのですが、非常に面白かった。
西原理恵子(1964−)は、高知県出身の漫画家。
この本は、人生相談の形をとっている。
どれも面白かったけど、圧巻は、不倫の相談である。
「妻子ある人との関係をやめるべきか続けるべきか」という30歳独身女性からの相談に
最初のほうは、まあまあ、普通に回答しているのだけど、後半がすごい;
**引用**
私の周りのもののふの女たちは「3チンポ持て」と言っています。
「いいですか、1チンポではいけません。それがなくなったらどうするんですか」
「必ず2本はバックアップを持っておくように」って。泳がせておいてもいい、
年に1回くわえるだけでもいいんです。必ずバックアップを持っておいてください。
そうじゃないと、この相手の人が「ゴメン、やっぱ奥さんにバレちゃったし」ってなったときに
路頭に迷うじゃないですか。30過ぎて彼氏がいなくて路頭に迷うと結構立ち直りがきついんですよ。
仕事も何もできなくなったら大変じゃない。
女の人って一途になりがちだけど、それって相手の悪いところが見えなくなる病気だから。
でも、二股、三股かけておくと、それぞれのいいところと悪いところがよくわかる。
だから、冷静になるためにも2チンポ、3チンポをおすすめします。そういう努力は怠らない方が
いいですね、女として。新しいのを見つけて、携帯2〜3台使い分けるぐらいの緊張感を持つ。
そのほうが今の相手との関係もよくなるかもしれませんよ。緊張感なくダラダラ付き合っていると
要するにダレた奥さんと同じになっちゃって、向こうだってイヤだろうし。ていうか、向こうは
二股かけてるわけだから、こっちが二股かけていけないことはないですよね。
恋愛はフェアじゃなきゃいけません。
**引用終わり**
ちなみに、サイバラさんはこんなルックスです。
ときどきTVにも出るようです。放送禁止用語を口にして、ブーとなることも
あるそうです。
高校を中退して、でも大検を受けて、美大を出て、飲食店の皿洗い、ミニスカ・パブの
ホステスとかやって、漫画家としてデビュー。カメラマンの鴨志田穣さんとの間に一男一女
をもうけたものの、ご主人は闘病生活の末、亡くなったそうです。
現実的な女の本音の生きる力強さがわかる本です。
こういうの読んでいると、「男は甘ちゃんだよな」と思います。
かなり笑える人生相談です。
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