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『十五少年漂流記』

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ジュール・ベルヌ(1828-1905)の『十五少年漂流記』(1888年)を読みました。
少年少女用にとても有名な小説ですが、これは「完訳」で450ページもあります。
ジュール・ベルヌは「SFの父」とも呼ばれ、SFの先駆的な作品を数多く出しましたが
これは冒険ものです。
 
時代設定は1860年。ニュージーランドの港から夏休みにヨットに乗せてもらって
6週間の休暇に出ようとしていた15人の少年たち。しかし、出発前に親たちがちょっと
船外に飲みにいている間に、逗留していた紐がほどけて、ヨットを沖に出て行ってしまいます。
夜になり、風に流されて、やがて嵐が来て、船は沈没寸前。
そして、ある無人島に漂着します。
 
15人は8歳から14歳の全員男の子。
フランス人1人、米国人1人、黒人1人?、英国人12人。
 
冒険小説として、本当に楽しくて、最後の最後まで面白いのですが、読み終えてしまうのが
もったいないような、そんな楽しい小説でした。ワクワクドキドキして、「この後、どうなるのだろう?」
と思わせる物語って、最高ですよね。
 
ただ、大人になって、あらためて、この小説を読んで興味深いのは、「時代」です。
ベルヌはフランス人。書かれたのは1888年。時代設定は1860年。
 
1840年に英国はニュージランドを植民地化します。マオリ族を併合して、一方的に
ワイタンギ条約なるものを結ばせたのです。1860年代には、マオリと入植者との
間で戦争も起こっています。
同じく1840年、英国は、中国相手にアヘン戦争を始めています。
大航海時代の後、18世紀の終わりにどこよりもいち早く産業革命を起こした英国が
19世紀は世界を制覇していきます。
 
英国だけでなく、列強(the Great Power)と呼ばれた国々は世界制覇を目指しました。
世界を早い者勝ちで自分の植民地にしよう!ということです。
1860年と言えば、フランスでは、ナポレオン3世(ルイ・ナポレオン)の時代です。
フランスもこの時代にインドシナ半島の植民地化を目指して進出しています。
 
米国では1861年から南北戦争です。奴隷解放戦争ですね。
日本では1860年に桜田門外の変です。その少し前の1853年に米国のペリーが
来て、門戸開放を要求しています。その前から、続々と欧州の船が鎖国中の日本に
押し寄せて来ています。
 
随分昔の歴史の話をしているようですが、わずか、150年くらい前の話です。
 
『十五少年漂流記』の少年たちは、無人島での生活でリーダーを投票で決めます。
しかし、当然のようにモコという黒人少年には投票権はありません。なぜならば、
モコは黒人だからです。モコも含め、誰もがそれを「当たり前」と考えていました。
 
15人の中には、仲のいいグループ、対立するグループなどが存在しましたが、
それとは関係なく、黒人のモコは、1人、環境の悪い別室に寝ます。なぜならば
黒人だからです。
 
全部読めばわかることですが、ベルヌはとても偏りのない心をもった人と思われます。
文章に悪意など全くない。それでも、今の時代感覚から見ると、この小説に出てくる
「黒人」「女性」「原住民」などは、明らかに「差別」されています。
そういうことを読み解く歴史書としても読んで面白いです。
 
最後に、この本の原題はDEUX ANS DE VACANCES「二年間のバカンス」です。
当時の日本人に「バカンス」なんて概念すらなかったと思います。
そして、現代の日本人にしても本当にバカンスなんてものを享受している人は
どれくらいいるのでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
 

『くさり』 筒井康隆

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久しぶりに筒井康隆の本を読んだ。とても面白かった。
『くさり』は、ホラー短編集。ホラーなので、とても怖いんだけど、なぜか笑っちゃう。
「恐怖」と「笑い」は紙一重なんです。怖くて怖くて、でも、大笑いなんです。
 
そして、筒井ファンならば、誰でも知っているように、差別用語満載なんです。
筒井康隆は無差別差別。基本的な考えは、「人類は愚かである」ということだと思います。
この文庫本が出たのが平成18年。これらの差別用語は大丈夫だったのかなぁ。
 
短編集なのでいろいろな話があるのですが、タイトルだけ羅列すると;
 
・生きている脳
・肥満考
・ふたりの印度人
・池猫
・二元論の家
・星は生きている
・さなぎ
・大怪獣ギョトス
・我輩の執念
・到着
・たぬきの方程式
・お助け
・穴
・怪物たちの夜
・くさり
・善猫メダル
・「蝶」の硫黄島
・亭主調理法
・アフリカの血
・台所にいたスパイ
・サチコちゃん
・鍵
 
どれも面白かったけど、私がとくに面白いと思ったのは
「肥満考」「さなぎ」「たぬきの方程式」。
朗読会で読んでみたいとも思うけど、ちょっと長いかな。
自分でうまく15分くらいに編集できれば読んでみてもいいのだけど。
 
これだけ笑わせてれる作家は、「筒井康隆」と「つかこうへ」いくらいかな。
他に、誰かいますか?
 
なんかセンスが全然違うんですね。
簡単に内容を紹介したい気もしますが、発想+文体+リズムなどの醍醐味は
やはり実際の本を読んでもらうのが一番です。
SF+ホラー+ドタバタナンセンス+シニカルな笑いです。
 
筒井さんは、1934年生まれで今年78歳か。
お元気なんですかね。
 
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谷崎潤一郎(1886-1965年)の『痴人の愛』(1925年)を読んだ。非常に面白かった。
谷崎潤一郎と言えば、究極のマゾヒスト、淫靡な世界、文章はやや難解、というイメージだったが
この本の文章は極めて平易で読みやすかった。
 
「私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、
できるだけ正直に、ざっくばらんに、有りのままの事実を書いて見ようと思います。」
という文章で始まる。
 
何度も映画化もされた有名な作品ですが、簡単にご紹介すると、
生真面目なサラリーマンの河合譲治(28歳)は、カフェで見初めた美少女ナオミ(数えで15歳)を
自分の好みの女性に育て上げ妻にする。
(この辺の感覚は、少し「マイフェアレディ」にも近いか)
 
譲治は技術者で、一般の人と比べて何倍も多い月収があった。一方で、譲治の身長は五尺二寸
(157.6cm)と低く、色黒で、歯並びが悪くて、自分のルックスにコンプレックスがあった。
ちなみに谷崎潤一郎の身長も五尺二寸だった。大正末期の日本人男性の平均身長は160cmだった。
 
 
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成熟するにつれ妖艶さを増すナオミの回りには、いつしか男友達が群がり、やがて譲治も
魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。
 
「ナオミちゃん、お前の顔はメリー・ピクフォードに似ているね」
と譲治が言う。メリー・ピクフォードはサイレント・ムービー時代の「アメリカの恋人」と
呼ばれた女優。
 
 
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ナオミは、少しハーフっぽい顔をしていたらしい。そして、その体はどんどん成熟していく。
譲治は、ナオミが14歳のときから、彼女を風呂に入れて、全身を洗ってあげていた。
どんどん我儘になり、贅沢になり、言うことをきかなくなっていくナオミだったが、その美しさ
に譲治はとことん惚れ込んでしまう。
しかし、ナオミが複数の男性と浮気をしていることがわかり、本当に今度の今度こそ、
許せない、と譲治は怒り、ナオミを追い出してしまう。
 
しかし、結局は、ナオミのセクシーで計算しつくされた企みの前に、譲治は完敗する。
 
「ナオミ!ナオミ!もうからかうのは好い加減にしてくれ!よ!
何でもお前の云うことは聴く!」
 
譲治が馬になって、ナオミがその背中にまたがってされた会話は以下の通り;
 
**引用**
 
「これからは何でも云うことを聴くか」
「うん、聴く」
「あたしが要るだけ、いくらでもお金をだすか」
「出す」
「あたしに好きなことをさせるか。一々干渉なんかしないか」
「しない」
「あたしのことを『ナオミ』なんて呼びつけにしないで、『ナオミさん』と呼ぶか」
「呼ぶ」
「きっとか」
「きっと」
「よし、じゃあ馬でなく、人間扱いにして上げる、可哀そうだから。・・・・」
そして私とナオミとは、シャボンだらけになりました。・・・・・・・・・
 
**引用終わり***
 
そして、この小説は、以下の文章で終わります。
 
「これを読んで、馬鹿馬鹿しいと思う人は笑って下さい。教訓になると思う人は、
いい見せしめにして下さい。私自身はナオミに惚れているのですから、
どう思われても仕方がありません。ナオミは今年二十三で私は三十六になります」
 
強烈な内容の小説ですが、さすがにまだ大正末期ですので、エッチな表現というのは
具体的にはほとんどありません。ただ、婉曲的に仄めかされるので、かえってエッチかも
しれません。
 
この小説を読んで、読者はどう思うか?
「痴人」こと河合譲治のことを「馬鹿」と呼ぶのか。
お金も仕事も故郷の資産も売却して、母親にも嘘をつき、惚れた美しい女のためならば
なんでも好きなものを買ってあげ、食べさせてあげ、リッパな家をあてがい、仮に
彼女が浮気をしようと何をしようと絶対に文句を言わない。
 
馬鹿みたいだ、と大方の人は思うだろう。
でも、結婚している人が、若い愛人に翻弄されるのは、結構聴く話だけど、最初から
奥さんにこういう風に翻弄されてしまうのも珍しい。
 
そういえば、イタリアのもと首相ベルルスコーニが若い女性にニコニコしながら言っていた。
「なんでも君の好きなものを買ってあげよう!」と。
(こんなセリフ、言えるものならば言ってみたい)
 
谷崎潤一郎自身の女性遍歴は;
21歳:住み込み先の小間使福子との恋愛が当主に発覚、そこをでる。
29歳:石川千代子と結婚。
44歳:千代子と離婚。千代子を佐藤春夫に譲る。
45歳:古川丁未子(とみこ)と結婚。
48歳:丁未子と離婚。
49歳:根津松子と結婚。
 
詳細はここでは略しますが、恋と文学に生きたように思えます。
『細雪』は、根津家の姉妹の物語ですね。
 
「谷崎には思想がない」とも言われるらしい。しかし、谷崎が描いたのは時代や国境を
超えたものである。思想などというものは、時代や場所が変われば、ある日、誰かの
ハンマーの一撃によって、粉々に崩れ去ってしまうものだ。
くだらない思想などを排除したこの作品は、永遠に残ると私は思う。
 
「男はバカね」と女は言うかもしれないけど、女だって、惚れた男のためならば
すべてをなげうって尽くす人だっているはずだ。
 
そして、そういう相手との出会いがあって、実際にそうなることは、傍から見たら「馬鹿」で
あっても、実は、人の人生としては一番幸せなのかもしれない。
 
 
 
 
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やなせたかし(柳瀬 嵩、1919年(大正8年)2月6日 - )の『人生、90歳からおもしろい!』を読んでいる。
言うまでもなく、やなせさんは、「アンパンマン」の作者である。現在、93歳で現役。
 
この本は過去10年くらいの間に高知新聞に連載されたエッセイから抜粋されたもの。
(やなせさんは、東京生まれだが、高知出身)
それぞれ3ページ程度の短いエッセイが、彼のイラストとともに書かれている。
全編を通して感じるのは、彼の人柄、明るさ、前向きの姿勢だ。
 
非常に遅咲きの人で、「アンパンマン」の大ヒットは、彼が60歳近くになってからのことだった。
「元気と若さの秘訣はなんですか?」という問いには、「そんなに元気ではないです」と。
目も耳も悪く、糖尿病と腰を痛め、入院、手術を繰り返している、と。それでも、世間の人よりも
若く見えるとしたら、それは、いまだ引退せず、一線で働いているから。そして、異性にもてたい
と思っているからだ、と。そのためには涙ぐましい努力をする。根気も必要。オシャレも勉強も
しなくてはならない。これが健康にいい。具体例は内緒、と。
 
 
 
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20年くらい前か、アンパンマンの作者がこんなにも老人であることを知って驚いたことがある。
 
彼は、「手のひらを太陽に」の作詞家でもある。
この歌、好きだったなぁ。
 
 
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絵本では、『やさしいライオン』が有名。
この表紙を見ただけでも、彼のやさしさが滲み出ている。
 
 
 
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日本では、もう10年以上も年間自殺者が3万人を超えている。
彼は、それをとても憂いている。
人生はこれからなのに、どうしてそんなに急いで死んでしまうの?
老後の人生に、想像もしない楽しい生活が待っているよ!と。
どうせ、つかのまの人生ならば、悩むよりも楽しく過ごしたほうがいい、と。
 
彼としたら、90歳からの人生がどうなるか本当はわからない。でも、こういうタイトルにすることに
よって、「面白い人生にしよう!」という決意表明になっているらしい。
 
名文とは言いませんが、ほのぼのと楽しい彼の文章を読んでいると、心が温まって
きます。
 
9月1日のBSの朗読会で読もうと思っていたのですが、残念ながら、9月は中止でした。
次回、読もうと思っています。
 
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小路幸也の『東京バンドワゴン』を読みました。
これは、シリーズもので、続けて『シー・ラブズ・ユー』も読みました。
 
 
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たまたま、最初に読んだのがシリーズ3作目の『スタンド・バイ・ミー』だったのですが、
やはり、最初から読んでみたくて。
 
東京下町の老舗の古本屋を舞台にしたホーム・ドラマです。
最初、登場人物の多さに若干閉口しますが、読み進んでこの世界に入り込んでしまえば、
各人の個性がだんだんとわかってきて、とても面白いです。
 
登場人物は皆、「熱い」のですが、それに輪をかけるのは、「話し手」である堀田サチさんです。
2年前に76歳で癌で死んでしまったのだけど、いまだに、成仏せずに、この古本屋にいて、皆を
見守っているのです。そのサチさんの目がやさしい。
 
それほど大したドラマがあるわけでもないようですが、1冊に1、2か所、ホロリと泣けるところが
あります。ギスギスした現代が失ってしまった大切なものが、この小説世界にはまだ生きています。
 
なんて言ったらいいのだろう。
激しい性描写を書かなくても、すっごくエッチな小説があるように、この本は、ほのぼのした日常の
なんでもない出来事を描きながら、大きな感動を運んでくれます。
 
きっと、TV化か映画化されるでしょうね。
 
誰をどういう役者がやったらいいかなぁ、なんて、勝手に想像するのも楽しいです。
4作目の『レディ・マドンナ』を読むのが楽しみです。
 
タイトルからわかるように作者はビートルズのファンなんですね。
 
おすすめの本ですよ。
 

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