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『サムライブルーの料理人』(西芳照著、白水社刊)を読んだ。
西芳照さんは、サッカー日本代表専属のシェフだ。ジーコ、オシム、岡田、ザッケローニ監督のもと、世界で戦う選手たちに食を提供してきた。我々の知らないサッカー界の舞台裏がシェフの目から書かれている。とても、面白かった。
「食」という字は、「人を良くする」と書く。確かに日々の食事こそが我々の体を作り、よくも悪くもする。ましてや、プロのサッカー選手。カラダが資本だ。我々が海外旅行に行くような都市に泊まるわけではない。高温多湿の都市、なにもない砂漠地帯、水が低温沸騰してしまう高地(ご飯が美味しく炊けない)。選手たちの体調は彼の料理次第だ。
しかも、食というのは、栄養と味だけではなくて、雰囲気も重要だ。いかに楽しく食べるか。プロ中のプロ、西さんが、全精力をあげて料理手配をしている。
どの世界でもそうなのだろうけど、縁の下の力持ちがいる。舞台裏にはたくさんの人がいるのだ。脚光を浴びるのは、表舞台の人たちだけで、一般人は、舞台裏のことはなかなかわからない。
シェフではあるけれど、24番目の「選手」として、ゼッケン付きの料理服をもらい、銃後として戦い、選手たちとともに勝利を喜ぶ姿には感動します。淡々と書かれた本ですが、西さんの人柄、情熱、努力が伝わってきます。ワールドカップ南アフリカ大会の舞台裏にも、もちろん、西さんがいたのです。
西芳照さんは、1962年福島県の南相馬市で生まれ育った。この本が出版されたのは、2011年5月。しかし、本が書かれたのは3月11日よりも前だった。
序文に西さんが自己紹介として書いている;
「福島県北部に位置する小さな町、小高町(現在の南相馬市)、そこが私の故郷です。私は高校教諭の父と専業主婦の母との間に、長男として生を受けました。故郷は豊かな自然が残る田園地帯にあります。山では春にはわらびなどの山菜、秋には香茸や松茸などキノコ類がとれ、海に目を向ければ良質のヒラメやスズキの水揚げで有名な請戸漁港があります。山の幸にも海の幸にも恵まれた土地です。
実家は兼業農家で、今でも両親が丹精込めて米をつくっています。・・・・・」
そう、言うまでもなく、この本が書かれた後、彼の美しい故郷は、地震、津波、原発事故で大変な被害を受け、いまだに苦しんでいます。
よって、この本の印税はすべて、南相馬市に寄付することにしたそうです。
サッカーに興味のある人、料理に興味がある人、だけではなく、多くの人の心を捉える本だと思います。推薦いたします。
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