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3 星空の村 飯舘村は、現代の谷中村である。国や東電が本当に願っているのは、谷中村のような廃村だろう。次善の策は、帰りたい老人たちだけが帰還して、病院も保健所も介護 施設もない村で、自然死をしてくれるまで待つことだ。子どもを持つ壮年、青年層の村民たちが戻ってくる見通しはまずない。避難して三年が経過し、働く年齢層の人たちは再就職、他の仕事への転換を図り、再度の仕事場への復帰や転換はきわめて難しくなっている。酪農をやっていた農家の後継者のなかには、村に戻ってその仕事を続けたいという希望があるようだが、放射能汚染が解消されたとしても〝福島の飯舘牛(松坂に行って、松坂牛ともなっていたようだが)〟がブランドとして通用するには、数年どころか数十年を要するだろう。それもこれも、福島第一原発の事故が、安全に収束することが前提だが、それはどれぐらいの時間がかかるかは誰にもわかっていない。お先真っ暗、五里霧中の状態なのである。明るい農村の未来が切り開けるはずがない。 飯舘村役場前 陽が落ちると、飯舘村は真っ暗になる。星が空いっぱいに広がっているのが肉眼でもよく見える。北斗七星の七つの星も、はっきりと見えるのである。余計な灯りがないので、星空が戻って来た。いや、もともと飯舘村は星空で有名だったのである。惑星間観測所が山の上にあり、大きな電波望遠鏡が据え付けられているようだが、そこへの道は、大雪で裂け、折れた樹木で遮られている。星空への到達も、三・一一以降難しくなっているのである(人の手の入らない森林は荒れ放題だ)。 「ふくしま再生の会」では、水稲栽培の実験的な耕作を始めている。収穫された米にどれだけの放射線量があるのか。それは経年経過によってどんなふうに変化してゆくのか。刈り取られた稲わらを飼料とする牧畜は可能か。そうした前向きな復興のための実験も、国も自治体もまったく積極的に行おうとはしない。それだけではない。農水省や国土交通省、復興庁は、住民や民間団体のそうした調査や実験を敵視して、横槍ばかりを入れようとしているのだ。ビニールハウスによる水 滴耕作の実験も始まっている。汚染された農土を使わずに、栽培農業を復活させる試みだ。できそうなことは、やってみる。故郷の村に帰りたい人は、帰ればよい。そのための生活のフォローは、原発事故の加害者である国と東電が、無限責任の形で負わなければならない。水俣病の場合のように、加害責任のあるチッソが、国の支援を受けながらでも、最終的に患者さんへの補償、賠償を免れなかったように。ゼネコンや、腹立たしいことに、原発事故の責任を分有しなればならない原子力開発研究機構などに、除染作業を請け負わせ、数兆円の予算をばらまいていることに較べれば、何てことのない費用にしか過ぎないのに。 もちろん、村から避難して、新しい土地で、新しい生活を始める(もうすでに始めている)人たちへの支援も忘れてはならないだろう。チェルノブイリの事故後、子どもたちの甲状腺ガンが現れたのは四、五年後のことであり、それも事故によるはっきりとした影響とはいえないと、御用学者たちは恥ずかしげもなく口走っている。まだ、三年しか経っていないから、福島県の子どもで甲状腺ガンが発生しているとしても、それは福島第一原発の事故に影響によるものではない。曲学阿世というより、これはまったく犯罪的な虚偽であり、デタラメだ。なぜ、子どもたちが、放射線作業に携わる専門家と同等の非常時の放射線量(年間20ミリシーベルト)の被曝を許容しなければならないのか。こうした基準を容認し、人びとを洗脳しようとしている人間は、児童虐待、子殺しの汚名の批難を受けても仕方がないのである。 住宅の放射線量を測ってきたグループ、冷たい小雨のなかをビニールハウスを造っていたグループ、桜の林を植林するため に、地図や看板を製作するグループ、死んだ猪などの野生動物の血液中の放射線量を調べるグループ。「ふくしま再生の会」の現地本部である宗男さんの農家には、三々五々、作業を終えたボランティアの人たちが帰って来る。宗男さんの奥さんが、温かい肉じゃが汁を振る舞ってくれる。みんなで報告会をしてから、そ れぞれの車に分乗して飯舘村から離れる。 車のテールランプが見えなくなると、飯舘村は、翌朝まで、神様と獣たちだけの、無人の闇の世界となる。 ※ これは二〇一四年三月二八日から二十九日にかけて、飯舘村に入り、「ふくしま再生の会」の人たちと出会った体験を記録したものです。同行した若林一平、椎野信男氏、「ふくしま再生の会」の田尾陽一氏、菅野宗男氏らの関係者に感謝します。 (2014年4月2日記)
飯舘村は、現代の谷中村である。国や東電が本当に願っているのは、谷中村のような廃村だろう。次善の策は、帰りたい老人たちだけが帰還して、病院も保健所も介護 施設もない村で、自然死をしてくれるまで待つことだ。子どもを持つ壮年、青年層の村民たちが戻ってくる見通しはまずない。避難して三年が経過し、働く年齢層の人たちは再就職、他の仕事への転換を図り、再度の仕事場への復帰や転換はきわめて難しくなっている。酪農をやっていた農家の後継者のなかには、村に戻ってその仕事を続けたいという希望があるようだが、放射能汚染が解消されたとしても〝福島の飯舘牛(松坂に行って、松坂牛ともなっていたようだが)〟がブランドとして通用するには、数年どころか数十年を要するだろう。それもこれも、福島第一原発の事故が、安全に収束することが前提だが、それはどれぐらいの時間がかかるかは誰にもわかっていない。お先真っ暗、五里霧中の状態なのである。明るい農村の未来が切り開けるはずがない。
陽が落ちると、飯舘村は真っ暗になる。星が空いっぱいに広がっているのが肉眼でもよく見える。北斗七星の七つの星も、はっきりと見えるのである。余計な灯りがないので、星空が戻って来た。いや、もともと飯舘村は星空で有名だったのである。惑星間観測所が山の上にあり、大きな電波望遠鏡が据え付けられているようだが、そこへの道は、大雪で裂け、折れた樹木で遮られている。星空への到達も、三・一一以降難しくなっているのである(人の手の入らない森林は荒れ放題だ)。 「ふくしま再生の会」では、水稲栽培の実験的な耕作を始めている。収穫された米にどれだけの放射線量があるのか。それは経年経過によってどんなふうに変化してゆくのか。刈り取られた稲わらを飼料とする牧畜は可能か。そうした前向きな復興のための実験も、国も自治体もまったく積極的に行おうとはしない。それだけではない。農水省や国土交通省、復興庁は、住民や民間団体のそうした調査や実験を敵視して、横槍ばかりを入れようとしているのだ。ビニールハウスによる水 滴耕作の実験も始まっている。汚染された農土を使わずに、栽培農業を復活させる試みだ。できそうなことは、やってみる。故郷の村に帰りたい人は、帰ればよい。そのための生活のフォローは、原発事故の加害者である国と東電が、無限責任の形で負わなければならない。水俣病の場合のように、加害責任のあるチッソが、国の支援を受けながらでも、最終的に患者さんへの補償、賠償を免れなかったように。ゼネコンや、腹立たしいことに、原発事故の責任を分有しなればならない原子力開発研究機構などに、除染作業を請け負わせ、数兆円の予算をばらまいていることに較べれば、何てことのない費用にしか過ぎないのに。
もちろん、村から避難して、新しい土地で、新しい生活を始める(もうすでに始めている)人たちへの支援も忘れてはならないだろう。チェルノブイリの事故後、子どもたちの甲状腺ガンが現れたのは四、五年後のことであり、それも事故によるはっきりとした影響とはいえないと、御用学者たちは恥ずかしげもなく口走っている。まだ、三年しか経っていないから、福島県の子どもで甲状腺ガンが発生しているとしても、それは福島第一原発の事故に影響によるものではない。曲学阿世というより、これはまったく犯罪的な虚偽であり、デタラメだ。なぜ、子どもたちが、放射線作業に携わる専門家と同等の非常時の放射線量(年間20ミリシーベルト)の被曝を許容しなければならないのか。こうした基準を容認し、人びとを洗脳しようとしている人間は、児童虐待、子殺しの汚名の批難を受けても仕方がないのである。 住宅の放射線量を測ってきたグループ、冷たい小雨のなかをビニールハウスを造っていたグループ、桜の林を植林するため に、地図や看板を製作するグループ、死んだ猪などの野生動物の血液中の放射線量を調べるグループ。「ふくしま再生の会」の現地本部である宗男さんの農家には、三々五々、作業を終えたボランティアの人たちが帰って来る。宗男さんの奥さんが、温かい肉じゃが汁を振る舞ってくれる。みんなで報告会をしてから、そ れぞれの車に分乗して飯舘村から離れる。 車のテールランプが見えなくなると、飯舘村は、翌朝まで、神様と獣たちだけの、無人の闇の世界となる。
住宅の放射線量を測ってきたグループ、冷たい小雨のなかをビニールハウスを造っていたグループ、桜の林を植林するため に、地図や看板を製作するグループ、死んだ猪などの野生動物の血液中の放射線量を調べるグループ。「ふくしま再生の会」の現地本部である宗男さんの農家には、三々五々、作業を終えたボランティアの人たちが帰って来る。宗男さんの奥さんが、温かい肉じゃが汁を振る舞ってくれる。みんなで報告会をしてから、そ れぞれの車に分乗して飯舘村から離れる。
車のテールランプが見えなくなると、飯舘村は、翌朝まで、神様と獣たちだけの、無人の闇の世界となる。
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