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某月某日。
日本文藝家協会の事務局会議室で「脱原発をめざす文学者の会」の幹事会が行われた。この席では、会の方向性などをめぐって、加賀乙彦さんと森詠さんが激論を戦わせた。僕を含めて、ほかの幹事は口を挟めないような空気になって、なりゆきを見守っていた。すると、だんだん議論が落ち着いてゆき、やがて両先輩は互いに笑顔で握手を交わした。僕はお二人の姿に大いに感心した。そして、この会は長続きするな、と思った。
脱原発をめざす、ということそのものが、かなりハードな実質を伴っているので、議論は熱くなりがちである。意見の違いから気持ちがもつれて、感情的なしこりが残っても不思議ではない。しかし加賀さんと森さんは、議論は議論として戦わせ、そのうえで長年の親密な友情を保つ態度を見せた。それが会の運営や目的とどう関係があるのか、と言われるかもしれないが、どのような組織もそれを構成するのは人間だ。どれだけ崇高な目的を掲げていても、その中にいる人々がぎすぎすして仲違いを繰り返していれば、いつか組織は壊れ、目的も遂げられないことになる。だから、組織に属する人々が良好な人間関係を保つことは、その組織の運営ばかりか、目的が遂げられるかどうかにも関わってくるのだ。
僕は、こういう先輩たちのいることが頼もしかったし、会の未来にも希望を持つことができた。
で、話題は2部に移る。この席では、1部と違って、くつろいだ雰囲気の中で、深い話ができる、と会報の2号で書いた。この日もそうだった。特に、新しい人が加わったのでよけいに話が弾んだ。それはフリーの女性編集者で、前日、福島を訪ねて、原発事故の現場を見たので、「心が迷子になった」と言う。原発はいけないと思うが、どうすれば脱原発ができるのか分からず、誰かと話したくて仕方がなかったらしい。彼女は、穏やかな口調だったが、言葉には激しい体験をしたあとの熱がまだ残っていた。僕は話を聴きながら、こういう人をメンバーに加えたいものだと思った。すると、ほかの幹事たちも同じ気持ちだったようで、ある人が、一緒にやりましょうよ、と声を掛け、「私でもメンバーになれるんですか?」「大丈夫。我々の会は、圧倒的に男性の方が多いので歓迎します」「それじゃ……」という進み行きになった。
今後は、もっと女性の視点から、脱原発について語られることが増えるようになるだろう。それは会にとっても、好ましいことだ。
さて、2部では、ほかにも、マス・メディアでは見聞できない貴重な話を聴くことができた。それを知りたい人は、ぜひ、2部に参加を。特に、女性は歓迎します。
ところで、この2部では、加賀さんと森さんは、いつも通り兄弟のようだった。やっぱり、いい先輩たちだ。
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