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脱原発社会をめざす文学者の会
原発事故を風化させないために

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 一時は、放し飼いにされた牛や馬や豚、ペットとしての犬や猫が路上を〝野良〟としてさまよっていと伝えられていたが、今では生き物の影はほとんど見当たらない。ネズミだけが増えて、そのおびただしさに、猫さえも姿を消したのではないだろうか(山間部で、猫を一匹見た。狸も、雉子も見た)。死に絶えるものは死に絶え、カラスやカモメでさえ、めったにこの空域を飛ばなくなったのである。
 請戸【うけと】漁港のあった海岸へ行った。一面の曠野である。マリン・パークや排水機場のコンクリート建ての建物の構造物の残骸が残っているだけで、数百軒もあったという住宅は、大津波によってまったくの跡形もなく、洗い流された(コンクリートの土台だけだ)。遺体捜索のために瓦礫はあちらこちらに集められているが、流されてきた車や漁船はそのまま放置されている。ひっくり返ったり、ぐちゃぐちゃに壊れているのもあれば、今にも動き出しそうな、無傷に見える車もある。ガードレールがアメのように折り曲げられ、根こそぎ引き抜かれた樹木とともに、奇妙なオブジェとなっている。潮水に漬かった木は、枯木となって立っている。どこかで見たような風景だなと思ったが、それはタルコフスキー監督の『サクリファイス』で、〝日本の木〟と呼ばれていた松の枯木に子どもが水をやる場面だった。
イメージ 1
〈原発から7キロほど離れた請戸海岸、海の向こうに原発の施設が見える〉


 海岸線の近くに請戸小学校があった。一階は、津波でめちゃめちゃになっていたが、二階は無事で、子どもたちが飼っていた水槽の金魚が、被災の後もしばらくは生きて、泳いでいたという。集会場の二台のピアノも、二年間も潮風に吹かれたままだったのに、ちゃんとした音色を出すことが奇蹟のようだった。
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〈請戸小学校、玄関にはまだ瓦礫が積まれたまま〉

 黒板には、救援に来た自衛隊員や警察官が書いたと思われる激励や〝頑張ろう〟といったメッセージが書かれていた。ちなみにここで学んでいた児童全員は、教師たちの適切な指導によって避難し、無事だった。後ろから迫り来る大津波を背中で隠しながら、子どもたちを高台へと必死に走らせたのだという。防波堤は崩れ、沈下した低い地面は水たまりとなっていた。この茫々とした曠野に住宅が再建されることはない。防波林となる予定で、「わたしたちのまち、請戸」と書かれた地図の残る小学校にも、二度と子どもたちが戻ることはないのである。
 市街地は、まだ除染の進行やインフラの復旧でもまさに〝避難指示解除〟が期待できるかも知れないが、農村部、山間部は絶望的だ。二年間、放置されていた水田や畑には、柳の木が芽吹き、ススキやヨモギや雑草が生い茂り、これも元の農地に戻すには、荒廃するまで要した時間の何倍もかかるだろう。表土をはぎ取り、客地しようにも、除染した土の持って行きようがない。畑の隣に黒いビニールシートがかぶせて置いたままでは、何にもならない。行政機関の単なるアリバイ工作にしか過ぎない。最終どころか、中間貯蔵地ですら、まだ決まらないからだ。

(写真キャプション、山本が書きました)

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