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「その『アーサー・ヒルズ』とかいう業務用のクルーザーに、事件当日乗っていた高校生のところに行ってきました」
 無表情でディックが言った。

「で、どうだった?」クリスティは紅茶をさらに注いだ。
「初めはばっくれてやがったンですが、所詮ガキですからね。気合いを入れたら吐きました。水中に飛び込んだショーン・ガイルを助けてますぜ」
「気合い?」
「おお恐……」フォクシーの呆れた声。
「で、そのショーンをどうしたって?」

「虫の息だったそうで。それをガキどもは運んで運河を北上して、ピックアップでやって来た中年の女に渡したそうです」
「……ナンバーは?」
「見たけど忘れたそうです」
「モグリの医者じゃないですか」ニックが口をはさんだ「あの辺には何人かいますからね」
「その線から捜す事は可能だね。何発か食らっているから高飛びしたとは考えにくい……」
「口封じでマクニールに消されている可能性はありますね。下手に追いかけないで様子を見た方がいいと思うな」ディックは言った。
「生きているなら、うまく泳がせるって手もあるさ。他には何かあったかい?」
「特には……」ディックは肩を竦めた。
「その子たちを、どうしたんだえ?」
「どうしたって? まあ、しょっぴくほどの事もないと思いやして」
「ほう、お上に隠しだてをしたんだ。バッジを預かる者として、ただで済ますのも何だかねぇ……」クリスティは合点のいかぬ様子だ。
「まあ、本人たちにしてみれば、人助けのつもりだったんでしょうなぁ」
「……そんな時間にクルーザーの中で、何していたのかねぇ?」
「隠れて煙草を吸ってやがったようで」
「煙草かい。子どもがそりゃあまずいね」
「ええ。まあ、説教をしましたけど」
「説教?」クリスティは目を丸くした。「何て言ってやったのさ?」
「へ? ……まあ、こんなところで燻っていねえで、勉強に血道をあげろやと。せいぜい偉くなって御国のためになるような立派な人物になれよって」

 一同は、大笑いした。
「そりやあ傑作さ。地獄からやってきた物騒な青鬼に、そんな説教食らったらさすがに先公の出番はないよな」ニックが言った。
「おかしいか?」憮然とするディック。
「いや、愛国の名士・ディック・ピーターセン閣下に乾杯」ロビーはショットのグラスを軽く持ち上げた。

「次、ニックの方は成果はあったのかえ?」
「ま、一応」
「話してごらんな」
「へい、例の『地上げ屋フランク』の周辺を洗いやしたが、……まあ相当なタマですぜ。叩かなくても埃が舞ってまさあ」

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