オリジナル短編小説箱in群馬

入魂創作のオリジナル短編小説を、ぜひ読んでください。小説メインです。全部、1話読み切りですので、お気軽にどうぞ。

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今回は、ヴァンパイア(吸血鬼)のお話です。


今年一番の暑さとなった今日も、今はすっかり日が落ち、
蒸し暑さと夜風が同居する、
何とも言えない、夏の夜独特の季節感が漂っている。


・・・今日は花火大会か。
 特上のご馳走がいただけそうだな。・・・



そんな事を思いながら、
すでにたくさんの人で賑わっているであろう花火大会会場へと、俺は急いだ。



そう、俺はヴァンパイアだ。



映画で見るような、あんな紳士のような顔はしていないし、
ましてタキシードなど着てはいない。

トマトジュースも飲まないし、お城に住んでもいない。


だが、毎日、生き血を吸う。
主食はまぎれもなく、生き血だ。




そして、そんな俺にも1つだけ、
映画のヴァンパイアに勝る能力がある。


うまい生き血の持ち主を感じ取る能力だ。


ヴァンパイアとは、こんなものなんだな。
現実は映画とは違う。



そして、いつしか人々の間にも、
すっかり、俺のヴァンパイアとしての恐怖は、浸透してしまった。

これも、映画には無いことだが、
世間には、俺を退治するための、
なにやら機械だの、薬品だのが、すっかり出回ってしまっている。

わざわざヴァンパイア・ハンターがお出ましにならなくとも、
用心を欠かさなければ、生き血を吸われずに済む、ということだ。


・・・いやな世の中になってきたな。
 おっと、そろそろ花火大会会場だ。
 慎重に獲物にたどりつかなければ。
 あの薬品だけはごめんだからな。・・・





その頃。


夏美は会場の片隅で、彼氏の到着を待ちわびていた。


ふと、携帯電話の軽快なメロディが、メールの着信を知らせる。


「ごめん夏美、すごい人で電車1本次のになった。
 15分くらい遅れるけど、急いでいくから。
 花火、始まっちゃうかな。
 待ち合わせんとこから、見える?」



夏美は簡単な返事のメールを打って、
座ったまま草履を脱いだ。


・・・ふぅ。あっつい。
 ここからも花火見えそうだから、ゆっくり待ってますかぁ。
 来たら、かき氷買ってもらっちゃお。・・・



ドドーン。ドドドドーン。
わぁぁぁぁぁ。


オープニングの花火が盛大に始まると、
そこらじゅうから歓声が沸き上がった。


独特の火薬の臭いが、風に乗って夏美のところまで流れてきた。


「たーまやー!」


夏美は、はやる心に踊らされるように、思わず、かけ声をあげた。




まさにその時。


ヴァンパイアの魔の手は、夏美に迫っていた。


彼氏は、まだ電車の中。



俺の能力が、教えてくれている。

夏美の血はおいしい。


草履を脱いだ足先から、露出された腕、指先・・・
浴衣から覗く首筋、まだ若い張りのある頬、あどけない唇・・・


決めた。首筋だ。


血管も太いし、
吸う場所くらい、映画のヴァンパイアの真似をしてみてもいいだろう。

あたりは暗いうえに、この場所は会場のはずれで、
周りの目も少ない。


よし。


俺は素早く夏美の隣に行き、
そっと、しかし力強く、夏美の首筋に手をかけると、
あっという間に、そして正確に、首の血管にかぶりついた!


すごい脈動感。


予想通りのうまい血がドクドクと流れ込んでくる。
俺は夢中で飲み込む。


夏美は、声もない。



まわりの人間も、だれもこのことには気づいていないようだ。
彼氏は、まだ到着しない。

俺は久々の極上の血に、体が震えるほど快楽を覚えながら、
それこそ、マラソンの後のように夢中で飲んだ。


ドドーン。ドーン。


皆、花火に夢中だ。
会場の片隅で起きている、この惨劇に気付く気配もない。


・・・さて、もう一息飲ませていただきますか。・・・




その時だった。




俺の視界から、ふと花火が見えなくなった。



と、同時に、

俺の体はペシャンコになり、バラバラに砕け散った。


・・・なんてことだ。
 何が起こったんだ。まさか、俺が・・・



息絶える一瞬の間に、夏美の声が聞こえた。



「やだ、蚊に刺されてる!えいっ!」



ピシャッ。という、軽快な音とともに、
ペシャンコになった俺は、
夏美の手のひらにへばりついたのだった。



“ヴァンパイア(吸血鬼)” 完

作品番号:02

〜この記事の画像=フリー素材サイト「Atelier N」〜


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意外な展開でした。まさか彼が蚊だったなんて・・あっと言わせられました(笑)

2006/7/29(土) 午前 7:37 [ - ]

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ありがとうございます。この作品は、むかーしむかし、風邪ひいて寝てたときに、友達に携帯のメールで送ったものを思い出して書いたものです。終盤まで蚊だと思わせず、でも、読み返しても矛盾が無いようにするのが、けっこう気を遣いました。あっと言っていただくのが、何より嬉しいですね。

2006/7/30(日) 午後 10:26 [ しげぞう ]

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コレおもしろいですね。最初はドキドキ♪そして、最後の意外な展開。ヴァンパイア話って好きなので、思わず読んじゃいました。 傑作ポチ☆

2006/8/4(金) 午後 1:38 *。Ryokuno+゚

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傑作ポチありがとうございます!小さな小さなヴァンパイアは、実際は女の子だろうが男の子だろうが、手当たり次第吸いに来るんですけどね(笑)。

2006/11/2(木) 午前 1:44 [ しげぞう ]


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