|
ガラッ。
満月があまりにも綺麗で、
僕は、もっとよく見ようと、窓を開けた。
「すっかり涼しくなったなぁ。
こうして窓を開けると、肌寒いくらいだ。」
季節はいつしか、すっかり秋だった。
僕は、窓のそばに座り、
綺麗な満月と、田舎ならではの星空に、少しの間、見とれていた。
だんだん、神経が研ぎ澄まされてくる。
リーン リーン
チロリン チロリン
ギー ギー ギー
さっきまでテレビの音に傾聴していた耳が、
虫の音をとらえ始めた。
「秋の虫か。・・・・・。
こうして聞いてると、いろいろいるなぁ。
まるで、自然のオーケストラだ。」
プチン。
僕は、しばらく秋を満喫しようかと、
テレビのスイッチを切った。
リンリンリン
チリチリチリン
「どんな虫なんだろうなぁ、みんな一所懸命鳴いて。
何を、鳴いてるんだろうなぁ。
何を・・・。
zzz・・・。」
僕は、いつの間にか寝てしまった。
やがて、空高くのぼった満月の明かりが、
部屋に差し込み、僕の顔を照らした。
ふと、虫の影が、
まぶたを閉じた僕の顔を横切る。
影は、僕の耳に入っていくように見えた。
リーン リーン
チロリン チロリン リン
「はっ!!
・・・いっけねぇ、いつの間にか、寝ちゃってた。
あぁあ、月があんなに高く。
今、何時だろう。」
僕は、時計を見ようと、立ち上がった。
「おいで、僕の所へ。」
「・・・!?」
誰かの声がする。
「ほら、早く、おいでよ。」
また、誰かの声だ。
「誰だ!!」
僕は、思わず叫んだ。
「やばい!人間だ!」
「人間だ!」
「大丈夫よ、家の中からよ。」
家の外が、ずいぶん騒がしい。
僕は、窓から顔を出した。
「ほら、あいつだ。」
「そんなことより、僕と・・・」
「今夜、あなたに決めたわ。」
「おい、人間だぞ!」
ざわざわざわ・・・。
聞き取れる声、聞き取れない声。
まるで何百人もが集結しているようだ。
が、見渡す限り家の周りは田んぼばかり。
人影もない。
僕は、自分の考えを疑った。
・・・これは、虫たちの声、か!?
「ほら、僕はこんなに高く飛べるよ!」
「誰か、早くあたしを・・・」
「おい、お前!その子は俺が・・・」
ざわざわざわ・・・。
・・・そうだ。
虫たちは、求愛のために鳴いているんだっけ。
なんで、言葉で聞こえるんだ!?
なんで・・・。
しかし。
オーケストラなんてもんじゃないぞ、これは。
はっきり言って、うるさい!
「あ、あぁん。」
「俺の、俺の子を、生んでくれ!」
・・・うるさい!
「おい!邪魔するなよ!」
「見ろ、俺の羽を!立派な羽だろう!」
・・・うるさい!
「う、うるせーーー!!!」
僕は、たまらず、叫んでしまった。
・・・。
ピタリと、声がやみ、
辺りは静まりかえった。
お?
静かになったぞ。
俺が叫んだからかな?
・・・。
「・・・ナンダ イマノ」
「ウルサイ ウルサイッテ イッタ」
「ダレダ ワレラノ ジャマ スルノハ」
「ニンゲン ダ」
「イツモ ニンゲン ダ」
僕は、ぞっとした。
虫たちの声に、悪意を感じた。
「ニンゲン キライ」
「ナニガ ウルサイ」
「ニンゲン イラナイ」
「マタ チ スッテヤル」
「ニンゲン イナクナレバ イイ」
僕は、体が震えた。
「うるさいぞ。
うるさい。
うるせーぞーーーー、ちくしょーーー!」
僕は、虫たちにともなく、
こみ上げた何かを振り払うように叫ぶと、
窓を閉め、布団をかぶって、
何も聞こえなくなった部屋で、無理矢理眠りについた。
チュン、チュン。
朝、目が覚めると、
僕は、そうっと窓を開けた。
まぶしい太陽の光とともに、
チリチリチリ、と、虫の音が、少し聞こえてきた。
「よかった、虫の音が、元通りだ。
嫌な声だった・・・。
しかし、ゆうべは、どうして言葉で聞こえたんだろう。」
と、なにげなく眺めていた田んぼのあぜを、
虫取り網を持った子供がかけていく。
「おーい、こっちにもいるよー!」
「待って、お兄ちゃーん!」
僕は、部屋を飛び出し、
子供達のところへ走って行った。
虫たちを、いじめないように、注意するために。
“秋の夜長と、虫の“こえ”” 完
作品番号:19
にほんブログ村 https://www.blogmura.com/in/065949.html
|
面白いですねー。これからも楽しみにしています。感じがいい小説ですね。
2006/10/5(木) 午前 1:52 [ che*i*tr*green ]
う〜ん、ちょっと怖いけどもしかしたらそう言われてるのかも知れないですね><むやみやたらにはよくないですし・・・
2006/10/7(土) 午後 7:48
いつもだと大変だけど、聞いてみたいような気もしますね。でも実際に聞こえてきたらこの作品のように怖いでしょうね。
2006/10/8(日) 午前 7:29
初めましてsaiと申します。足跡ありがとうございます。虫たちも子作りに一生懸命ですね。あたしは短歌・詩・小説を書いています。よろしければまた遊びにいらして下さいませ(◕ฺ‿◕ฺ✿ฺ)♡
2006/10/8(日) 午前 7:58
来歴から伺いました。お気に入り登録させていただきました。ご訪問ありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。
2006/10/10(火) 午前 1:57
お気に入りに追加いたします。また、来て下さいね。
2006/10/11(水) 午後 8:18 [ konannsi206 ]
みなさんご感想ありがとうございます。感想って、何でも嬉しいものです。お気に入り登録もありがとうございます。またがんばりまーす。
2006/11/2(木) 午前 1:23 [ しげぞう ]
はじめまして!足跡辿って読ませてもらいました!発想がおもしろいですねー!!ほんとのところ虫たちがどう思ってるのか考えると怖いですね。。。
2006/11/8(水) 午前 8:48
はじめまして。コメントありがとうございます。虫も魚も人間も。みんな仲良く暮らしていきたいものですね。
2006/11/15(水) 午前 0:00 [ しげぞう ]
虫や動物の言葉が聞こえたら、気がおかしくなるでしょうね。
でも虫たちも人間のせいで住みにくくなってしまったことは
確かでしょう。
面白いお話です。傑作ぽち。hal
2008/3/2(日) 午前 1:18 [ - ]
おやじです。
虫や動物達の声が聞こえたら、何を話しているのか分かったら、凄いでしょうね!
そしたら、自然破壊や、温暖化が止まるかも知れません。
2008/3/12(水) 午前 4:13 [ おやじ ]
ありがとうございます。現実には虫や動物の声は聞こえませんが、それを想像する能力は人間の側には十分に備わっています。しかし、残念なのは、それをあえてしないように避けている事かもしれませんね。(しげぞう)
2008/6/8(日) 午後 11:34 [ しげぞう ]