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「で、出来ました。
これなら絶対に“どんな追っ手をもぶっちぎり、
国外へ亡命できる”でしょう。」
油のにおいが立ちこめるガレージの中、
その車は完成した。
通常の乗用車よりはるかに大型で、
明らかに違うことは、
ジェットエンジンが積んであることだ。
「よし。早速実験だ!
何かあったら、わかってるだろうな。」
開発者の背中には、銃口が突きつけられていた。
依頼主は、これから銀行を襲おうと計画している強盗3人組で、
“どんな追っ手をもぶっちぎり、
国外へ亡命できる車”
を、開発者を脅迫して開発させていたのだ!
実験では、残りの強盗2人が乗り込み、時速は400キロを超え、
バリケードも厚い装甲で簡単にぶち抜いた。
3人組は「見事だ」と言い、
走り去っていった。
開発者の死体を残して。
・・・数日後。
オフィス街に溢れたサラリーマン達がオフィスに戻って、
すっかり静けさを取り戻していた昼下がりの街角、
ある銀行のカウンターは、大声で怒鳴り散らす覆面男が占拠していた。
「さっさと出せ!
言っておくが、無駄な抵抗は寿命を縮めるだけだからな。」
「は、はい、今すぐに・・・。」
全員が両手を上げて起立し、異様な雰囲気に包まれた銀行内で、
数人の女性行員達が、金庫から現金を運び出し、
それらを手早く袋に詰めていく。
その表情は、一様におびえきっている。
他に、誰も動く者はいない。
もはや、男性行員の中にも、
覆面の強盗団に立ち向かう勇気ある者は誰一人居なかった。
無理もない。
彼女達の横と、彼らの横には、
今にも発砲しようと銃口を向けた覆面男がそれぞれ立っていて、
さらに部屋の中央には、勇気ある男性行員達の死体が転がっているからだ。
「おい、そろそろ時間だ!ずらかるぞ!」
カウンターを占拠したリーダー格と思われる男がそう叫ぶと、
覆面男3人は、現金が詰められた袋をかついで一斉に銀行を出て行った。
ブロロロロォーーー!!!
例の車が、猛スピードで逃走する。
「おい、やったな!」
助手席で覆面を脱いだヒゲの巨漢が、嬉々として言う。
もう一人、貧相な顔つきのスキンヘッドは、
後部座席で現金袋を愛おしそうに撫でている。
が、運転席の男は、まだ覆面をしたままだ。
「まだだ!喜ぶのは国外へ出てからだ!
・・・来るぞ、しっかりつかまってろ!」
ハンドルを握り直し、そう叫ぶと、
アクセルをいっそう強く踏み直した。
と、同時に、後方からサイレン音が近づいてくる。
「来たぁ!来たぞ!」
スキンヘッドが、後部座席から身を乗り出す。
と、即座に運転席の覆面が怒鳴る。
「いいからつかまれ!」
パーポー、パーポー・・・
10台、いや20台はあるか、
最新鋭のパトカーが、これまた凄いスピードで奴らを追う。
高速カーチェイスは30分ほど続き、
強盗一味とパトカーの一団は、いよいよ国境へとさしかかる。
しかし、そこには、さらに数十台のパトカーと、
大きなバリケードが準備されていた。
「ふん、予想どおりってやつだな。
だが、こいつぁ、奴らも予想外だろうぜ。」
運転席の覆面男がそう言いながら何やらスイッチを操作すると、
例の車は、巨大な排気口から炎を吹き上げた!
ジェットエンジンの点火だ。
実験どおり、速度計の針はぐんぐん上がっていき、
圧倒的な加速が、車内3人と現金袋をシートの背もたれに釘付けにする。
「へっへっへ、どうだ、ポリ公め!
行くぞぉ、このままバリケードをぶち抜けば!」
「国外に出ちまえば、こっちのもんだ!」
「ひゃっほぅ!行けぇぇ!」
車内の3人が盛り上がり、
バリケードに突進する車。
「・・・まずいな、破られるか。」
パトカーの中で警官がつぶやいた。
その時!
速度計の針が400kmを超えたところで、
速度計が赤く点滅し、ボンネットが火を噴いた。
「馬鹿な!
実験は問題なかった・・・」
覆面男が言い終わることなく、
車はバリケード手前で轟音とともに大爆発を起こした。
・・・天国では、この大爆発を見ている2人が居た。
開発者がつぶやく。
「車内重量が300kgを超えたまま高速走行すると、
爆発するように設定したんです。
実験では現金は積まないですからね。」
天使が聞く。
「あなたは彼らをうまく騙したのですね。」
開発者は答えた。
「いいえ、私が頼まれたのは、
“国外へ亡命できる車”ですから。
文字どおり“亡命”ですよ。
しかも、地獄という国外へ、ですがね。」
“華麗なる開発者” 完
作品番号:27
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いいですね!どんでん返しが!好きです、こう言う展開。一瞬映画マッドマックスの追跡シーンが浮かびました。おやじでした。
2008/1/13(日) 午後 0:07 [ おやじ ]
コメントありがとうございます。今回は全然感動は無いですが、こういう話も作るの好きなんです♪(しげぞう)
2008/1/14(月) 午前 10:19 [ しげぞう ]
おお!!こうなるとは!!
華麗なる一族の音楽を頭で流しながら読んでみました(笑)
2008/1/14(月) 午前 11:13
タイトルの“華麗なる”は、そういえば“華麗なる一族”とかぶってるんですね。コメントありがとうございます。(しげぞう)
2008/1/14(月) 午前 11:28 [ しげぞう ]
最後が面白かったです。気持ちいいラストでした。開発者の勇気には感動します。やっぱり科学は諸刃の剣なんでしょうね。科学者の全ての人に正しい倫理を持ってほしいと思いました。
2008/1/14(月) 午後 3:22
こんにちわ。感想いつもありがとうございます。他力本願で完全犯罪は無いということですね。またいらしてくださいませ♪(しげぞう)
2008/1/14(月) 午後 11:57 [ しげぞう ]
こんにちは、初めて拝読しましたがショート・ショート好きな
自分にはとても面白かったです♪
2008/1/16(水) 午前 0:11 [ - ]
こんにちわ!お読みいただきありがとうございます。過去作品が26、ありますので、そちらのほうも是非どうぞ♪(しげぞう)
2008/1/16(水) 午前 0:19 [ しげぞう ]
地獄への亡命でしたか。
とてもテンポ良くリズミカルに進んでいく話にあっという間に
最後まで。とっても面白かったです。傑作ポチ
2008/1/16(水) 午後 11:26 [ - ]
傑作ポチありがとうございます。じつは最初、「地国へね。」と締めようかと書き始めた話でしたが、「地獄」だったのでオチにならなくて、途中で全体的にそっくり書き換えた話です。車の速さを話自体のテンポでも表現しようとも工夫したつもりでした。感想ありがとうです♪(しげぞう)
2008/1/17(木) 午前 0:58 [ しげぞう ]
履歴から来ました。シャレになってるう!
面白そうなブログなので他のもあとで読みます。
気晴らしになりそうなのでファンポチしますね。
2008/1/18(金) 午前 3:54
なんか いつか ほんとになりそうなお話ですね
ジェットエンジンつき 自動車とか
できれば いいことに 使われるといいなあ・・・・
2008/1/18(金) 午後 7:05
taerinredさん、訪問&ファンポチありがとうございます。どうぞまたいらしてくださいね♪(しげぞう)
2008/1/19(土) 午前 2:20 [ しげぞう ]
ジェットエンジンつき自動車は、実用化されてはいませんが、ドラッグレースでは使われています。ギネスブックに載っている最速の車も、そうだったと思います。でも、どれも“曲がれない”んですよね(^^;)(しげぞう)
2008/1/19(土) 午前 2:23 [ しげぞう ]
「開発者」の機転の良さですね。力は所詮、知には叶わない
ってことでしょうか。面白かったです
2008/1/26(土) 午前 8:04 [ poe**21 ]
初めまして履歴から来ました。
華麗なる開発者、読ませて頂きました。
発想も描写も素晴らしいですね。
特にオチが宜しいようで(笑)
まさに亡命ですね。
同じく短編小説を書くものとして、参考になります。
2008/1/27(日) 午後 7:00
みなさんコメントありがとうございます。また新作がんばります。よかったらまた読みに来てくださいね♪(しげぞう)
2008/1/28(月) 午前 1:26 [ しげぞう ]
「地獄という国外」おもしろいです。
アクションが派手でいいですね。
2008/7/10(木) 午前 1:16