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「まだ、あれ、買えますか?」
今日も、家電製品店の前には、
開店前から長蛇の列が並んでいた。
話題の新製品「オートクリーナー」は空前の大ヒットとなっていた。
オートクリーナー。
それは家電業界に彗星のごとく現れた画期的新商品だ。
その驚くべき新機能は、付いて名のごとく、
“全自動掃除機”だ。
最新のロボット工学と、高度な物質認識機能を搭載したオートクリーナーは、
指定された情報に基づき、ゴミであるかどうかを識別し、
2本のアームで回収、指定したリサイクル場へと搬送してくれる。
購入者は、処分したいゴミの形状や、リサイクル場さえ指定すれば、
ゴミの収集、搬送という一連の“掃除”という作業から解放される。
「あら、おたく、まだ掃除なんて自分でなさってるの?」
そんな言葉が街角で行き交うようになり、
オートクリーナーの入荷時には、家電製品店に長蛇の列が恒例となった。
やがて、オートクリーナーは、家庭だけでなく、
街角清掃や、企業の産業廃棄物処理にも利用されるようになり、
より大型で、パワーのあるオートクリーナーも発売されるようになった。
しかし、掃除から解放されればされるほど、
オートクリーナーがうまく識別しないために残ってしまう「残ゴミ」を、
手作業により掃除しなければならない「残ゴミ清掃」が苦痛になっていった。
人間は、貪欲である。
製造元企業は、この貪欲に目をつけた。
「“残ゴミ”が残らない、完璧なオートクリーナーはできないか。」
これを合言葉に、開発に打ち込んだ。
やがて、「ニュー・オートクリーナー」が登場する。
最新の人工知能を搭載し、ゴミを、自らの判断でゴミであると認識する、
まさに夢の全自動掃除機が完成したのだ!
「ニュー・オートクリーナー」は、前作を超える爆発的なヒット商品となった。
街からどんどんゴミが消えていった。
部屋のゴミが、なくなった。
街角にポイ捨てされたゴミが、なくなった。
産業廃棄物が、なくなった。
川底や浜辺からゴミが、なくなった。
人々から、「ゴミはゴミ箱に捨てる」という観念が、なくなった。
そして、世界から人々が、なくなった。
必要以上の便利は、人間からモラルを奪い、
モラルを失った人間は、「ゴミ」と判断され、地球から掃除されたのだった。
“究極のゴミそうじ” 完
作品番号:29
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