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実はこのところ、東野圭吾の作品って少々読んでいてうっとうしいな、と感じることが多かったのですが、今回の『新参者』は素直に「うまいなぁ」と感心してしまいました。 この人の作品になじみのある方は、結び方に後味の悪さを感じさせることが多いのもご存知のことでしょうが、これに関しては後味の悪さは皆無です。さらに、この作品では、個人的に感じていて、だからこそ時々やたらと東野作品に関して読まされてしまいながら、その実、きわめて不愉快さを持つ理由にもなっていたのですが、生きるためとはいえ人々が死者に行動原理もとい魂を引っ張られている雰囲気がなく、さらには未成年や精神的に未熟な人間のトラウマをきっかけにした話作りではなかったのが実に好感が持てました−−こういう部分がとてつもなくあざといと感じてしまうことが多いのです。人の死が与える影響は看過できるものではないにしても、それで話を引っ張るのは時として押し付けがましを感じてしまいます。特にそれが子どもだったりするとなおさら−−。 人は生きていれば、他者から見れば小さな秘密を持ちます。 その他者から見れば小さな秘密やうそが、本人にとっては、それがあるからこそ一見円滑にことを運んでいると思っている場合があります。ところが、その小さな秘密やうそ、さらには思い込みを持ってしまっているが故に、知らず知らず自分の行動を狭めていたり、なんとなく生きにくいなと感じさせていたりする場合もあると思います。 この小説では、殺人事件がきっかけとはいえ、生きている人間が、そうした秘密やうそ、さらには思い込みを一人の「新参者」が町に現れることによって取り除かれ、なんとなく行き詰り、淀んでいた日常が打破されていくのですが、それが実に小気味よく描かれ、またやさしさにも満ちていてページをめくる間も安心感を伴っていました。 多くの東野作品は生きている人間に対して「生きろ」というメッセージを包含していると思うのですが、先にも書いたようにトラウマになり、精神に破綻をきたすほどの出来事を持ち込むような場合が多く、そこがどうしても「死者に魂が引かれている」と感じさせられてしまい、生きている人間を扱ってるのか? と戸惑いも覚えることが多かったのです。しかし、今回はそういうこともあまりなかったので、かなりえらそうな感想というよりも反応ではありますが、「ほら、別にトラウマレベルの出来事を持ち出さないでも十二分にあなたのメッセージは伝えられるじゃないか」と思ったのです。 近頃、特にケータイ小説なんぞと呼ばれるようなジャンルや、名前も顔も30代も後半になってミーハーレベルが劇的にダウンしてきているオッサン予備軍には覚えられないようなタレントが出演する、不治の病に冒されてる人をめぐる「ひゅーまんどらま」に少々うんざりしていたのですが、久しぶりにホッとするような話を読んだような気がします。 まじめに人間観察してみようかな、そんな気にさせられるような小説でした。 蛇足の一言。 日本橋の住人たちって、あそこまでステレオタイプな江戸っ子ではないとは思いますが、それがまたにんまりしてしまうような部分でもありました。 新参者 東野圭吾 著 講談社 |
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東野さんがここまで人情味あふれるヒューマンドラマを書くとは思わなかったのでかなり意表をつかれた感じでしたが、すごく素敵な作品で大満足でした。加賀シリーズはもともと好きなのですが、今までで一番加賀さんの優しさや人間味が表れている作品になりましたね。ますます加賀さんのファンになりました^^TBさせて下さい〜。
2009/10/21(水) 午前 0:35
べるさん>そうなんですよね〜^^。なんか、殺伐としたなかで、懸命にやさしさを求めるような世界ばっかりだと思っていたら、そうじゃなくてちゃんと日常のなかの人の思いというのをこうやって書いていって、最後にきちんとつじつまをあわせてみせたのは上手だなぁ、と思いました^^。今回の加賀さん、なんだか一番本人の本領発揮という感じがしてよかったですよね^^。
2009/10/21(水) 午前 1:11
さてこれを手に出来るのはいつのことやら・・・ww。東野作品は大体呼んだけど、私的に結構当たりハズレがあって。世の中で流行った物は大体、私的にはハズレ。何であんなんが・・・と思うモノばっかだったけど。おお、加賀シリーズか。あれは悪くないですね。こりゃ期待大だなぁ。
2009/10/21(水) 午前 8:32
Firoswiさん>オレも実は、ダメなのはとことんダメなんですよね。それこそ、世間で評判になったのはダメ、って感じなんです。とにかくあざとさを感じることが多いし、中途半端にセンセーショナルな感じに仕立て上げてるのが正直鼻につくんです。これは、そういうことがまるっきりないですよ^^。ゆがんでないんです、要するに。
個人的には加賀シリーズのなかでは一番になりました^^。ちょっと異色といえるかもしれませんけどね^^
2009/10/21(水) 午前 9:43
文庫落ちしたら買いま〜〜す☆
東野さんって、始めはあんまり好きな作家さんでなかったんですよぉ。
きっと本の選び方が悪かったの。人間の悪意ばっかりって感じで。読んでてしんどくなって。
でも、容疑者Xの献身などを始め好きだなって思える作品にも出会えて、今は好きです(*´艸`)
2009/10/21(水) 午前 10:04
得意でない、この作家のは。。。
おぼっちゃまくんに勧められたけど まだ積んどくちぅ〜〜〜
2009/10/21(水) 午前 10:58
デネブさん>売れ行きなかなか好調のようなので、案外早く文庫化されると思いますよ〜^^。
東野圭吾が苦手ってわかります。悪意と悪意を足して、そこに無理やり善意を持ち込むようなところありますよね。しかも、なんかお涙頂戴なのに殺伐としていて、無理やり考えろ〜! みたいなところもあるし^^;
これは、個人的には『容疑者Xの献身』よりもずっと完成度は高いし、何よりも人間がより優しいですよ^^。
2009/10/21(水) 午後 1:09
たあこさん>得意でないw。いや〜、思っていたよりも苦手としている人が多くて、なんだかむしろ逆にホッとしました^^。
ただ、記事でも書きましたけど、これは東野圭吾のなかではむしろ苦手としている人に読んでもらえたら「あれ、案外読めるじゃない」と思っていただけるんじゃないかと思う作品でした^^
ツンドクはオレも得意技ですw
2009/10/21(水) 午後 1:12
ウチにあるのは ガリレオの苦悩と聖女の救済どした。
ワタクシのお気に入りだったのは ロバート・K・レスラーのFBI心理分析官モノ。
ミーハーだわwww
あとは手当たり次第に文庫本。
随分処分したけどねw
ホント乱読な中毒者だったわー
月刊誌や週刊誌もあわせて 相当な代金を本に注ぎこんでたものw
引越しのたびに 何百冊も処分したもん。
2009/10/21(水) 午後 8:39
たあこさん>あはは、オレとまるっきり同じ状況ですよ^^;;。いまだに書籍代で毎月たぶん万単位吹っ飛んでると思います。置く場所がなくて困るんですよねえ^^;;。
ケスラーのFBIものって、本人が元FBIだっただけに臨場感ありますよね! しかし、彼のせいってわけでもないですが、心理分析系って異様に増えてますよね^^;;。
2009/10/21(水) 午後 10:53
手紙ってのしか読んだことないです。なんだか、くら〜い感じのイメージで好きじゃない。でも、そんなにいうなら新参者ってのを読んでみようかな。ふらも、長屋の新参者だから♪
2009/10/21(水) 午後 11:18 [ - ]
ふらさん>『手紙』は世間一般では非常に評価が高くて人気のある作品ですよねえ。しかも、映画にもなっているし。
でも、オレはあれははっきり言って大嫌いです。加害者側に立った視点といえどもあまりにもあざとすぎるので正直気持ちが悪いと思います。東野作品にはそういう部分が多々あるのでこの人に対する評価は、個人的には実はかなり微妙なところもあるんですよね。ストーリーテラーとしては上手だな、とは思いますけどね。
これは、そういうところが一切ないですよ〜。暗い雰囲気もほとんどなく、ほんとうに淡々と人が描かれているのですが、きわめて優しい視点なので好感が持てました。最終的な結末はちょっとお涙頂戴なところもありますが、それでも上手に結んでますよ^^。
よかったらどうぞ^^。って、けっこう被害者女性がふらさんとかぶるところもあるかも?!
2009/10/21(水) 午後 11:35
大事にちょっとずつって思っていたのに、あっという間に読み終わってしまいました。うん、ファさんがふらに抱いているイメージは大筋ではあってますわ。かぶるところもあるしね。
でも欲をいえば、新聞記事に「美人」っていう一言を入れていただきたいの。
2009/10/24(土) 午後 4:42 [ - ]
ふらさん>読み出すと一気に読めちゃいますよね〜^^。ふらさんのほうが、もっとやさしいんだろうし、何よりも芯が強いし、ぶれることはないと思いますが(イング坊や二人のお兄ちゃんたちのお話を伺ってると)、なんとなく読みながらかぶるところもありました。もっとも骸骨氏がふらさんの首絞められるとは思いませんけどw。
そりゃあ、だって被害者がふらさんじゃないから入らないでしょう? ねぇ?
2009/10/24(土) 午後 7:08
ふぁ〜さま、トラックバックしてくださってありがとうございました。
私の方がやさしくて芯がつおいの?なんか過大評価されてる感じがいたしますが、そういうことにしておきますか。
そうね、後になってから分け前を増やせだなんてことは、たとえ重湯をすすってでも言わないわね。そんなことになるなら生活保護の方がましだもの。…って、ただの意地っ張りじゃん。ぷぷぷ!
2009/11/7(土) 午後 3:19 [ - ]
ふらさん>いえいえ、それこそ、「ご縁」ということで、すっかりTB遅れてしまって申し訳ありませんでした^^;。
まじめに言えば、過大評価じゃないと思いますけどね。別にやさしいってのがベタベタしたもんでもないですし。その意味においては、ふらさんのほうがよっぽどやさしいと思いますよ。結局、小説のなかの彼女は優しいというよりも、かなり自己満足も入ってますからね〜。
あっははははw やせ我慢はしなさそう♪
2009/11/7(土) 午後 10:12