|
涙という名の夢まくら (26)
早すぎる朝から、時計の短い針は昼近くになっていた。
僕は今日に限ってのことなのか?部屋の物の配置を換えようと思っていた。
かったるいけど、換えたい気持ちのほうが大きかった。
物を動かしはじめながら、茶かかったオレンジのカーペットに
墨汁をこぼした残を見た。色あせることなく墨汁色は広かった。
この家を建売で購入して、引越したのが小6の12月。
引越しそうそうの正月に、書初めの宿題をしてこぼした残。
怒られるのが嫌で物で隠したんだっけ。
忘れてたということは、心の中でも隠してたんだろう。
後で言おうか?今言おうか?隠しておいたっていつかはバレルから・・・
言ったほうがスッキリするはずだ。怒られても今言おう。
部屋の配置を換えた後、僕は正直にカーペットのシミについて親父に話しをした。
なんと。親父はとっくに知っていたという。それも墨汁をこぼして幾日も経たないうちに。
なんで?っと思った。僕も今頃だけど、親父も今頃なんで?なんで?
知っていたのになんで?の気持ちだった。
親父は「お前の居場所だから大事にしろ。」と言っただけ。そして・・・
「ラーメン食べるか?」と言っただけ。
僕は「いらない。」と言ったけど・・・途中で食べたくなって・・・
今さら言っても・・・でも。ラーメンは僕の分も作ってあった。
「食いたくなるのが解るんだわや。」と親父は言った。
僕は何だか親父のことが今日という今日は不思議でたまらなかった。
やっぱり、親父は僕の気まぐれが良く解るんだ。
寝ている間はあっというまで、もっと夢の中にいる時間が欲しいと思うけど・・・
起きてる間はなんで、同じ時間なのに違うんだ?休みのせいなのか?ゴロゴロしすぎなのか?
家族はめいめいに「あれ。もうこんな時間だ。」と言う。
何時までにアレをして、それからドコドコへ行って。その後どうのと忙しいようだ。
僕は休み。休み。また休み。冬やすみ。
ゆっくり過ぎる時間の中ラーメンを食べている。
母ちゃんは自分の用事を速やかに済ませようと僕を使う。
あまり嫌だとは思ったことはないが、面倒だから・・・嫌だと1度断ってしまう。
でも、ついて行きたくなる。
『いっこだっけ。』(いいこだから)を聞きたいだけかもしれない。
母ちゃんは魔法使い?と思う時が多々ある。
僕が喜んで進んで使いにでたり、手伝いをしたりする時はいつも、必ずといって
『いっこだっけ。』と言う。
他の家もたぶん、その子だけに効く魔法の言葉や魔法のしぐさがあって
その子をコントロールしてるんじゃないかな?それとも僕んちだけなのか?
ハンドパワーで腹痛を治したりするじゃない?僕んちだけじゃないよね?
マインドコントロールってほどおおげさじゃなくてさ。
そこまで子の心を弄って操るんじゃなくてさ。
何十年か先。もし僕が親になったら理解できるんだろうか?
親は魔法使いにだって鬼にだってなれる。
そして。無償の愛で守っているんだと・・・理解できるんだろうか?
親父も母ちゃんも、僕の親父と母ちゃんなんだ!
|