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消費増税関連法案の扱いについて15日に民自公三党が修正合意したことで今後は、野党が求める解散の有無がいよいよ焦点となります。 それを受けて自民党の方針は、伊吹元幹事長が「早期採決に持ち込んだ方が民主党が割れ、首相は早晩解散せざるをえない」(『朝日新聞』12.06.16朝刊)と指摘するように、法案採決という局面を導き出すことで採決後の民主党の分裂を促して弱体化させ、野田首相の政権運営を行き詰まらせて解散を打たせることを窺っていると言えます。 増税に関連した解散については安倍さんが11日配信のメルマガの中で「政治の筋を通す事」として必要性を主張、谷垣総裁、石原幹事長、町村元官房長官なども16日に法案採決・成立後の解散を要求しています。 民主党内では小沢元代表のグループや鳩山最高顧問などが反増税の考えを示し、小沢氏側近の東衆院議員などは採決時の造反を明言、採決を先送りしようという動きはそれら反増税派からいわゆる中間派にまで広がっているとされたように党内に一定の亀裂を惹起することは確実で、自民党にとっては法案を成立させる=採決を実施させることが解散の可能性を高める一手であることは明らかでしょう。 当初15日前後の日程で調整されていた野田・谷垣会談が会期末=衆院採決期限直前に先送りされ、国会特別委での審議が理事の伊吹さんや町村さん、党税調会長の野田元自治相、金子元国交相などの重鎮によって、与野党交渉・三党合意が鴨下元環境相などの実務者によって進められたことで谷垣さんが野田氏から法案成立後の解散=話し合い解散確約の言質を得ることはできなかったものの、それについてはもとより石原さんが1日に「首相は絶対(確約)しないと思う。『解散する』と言った段階で力を失う。『話し合い解散』はなく、あうんの呼吸しかない」(『MSN産経ニュース』12.06.01-20:34)との見方を示していることからすれば、執行部にとっては法案成立後の延長国会期間中=谷垣さんの総裁任期中の解散を探ろうという現状はまだ想定内でもあったはずではないでしょうか。 15日が期限だった三党修正合意が急がれる中、政権側からの解散の言質がないままに「妥協を優先したことで、谷垣氏が求め続けた「話し合い解散」も宙に浮く」(既出『朝日新聞』)との指摘もありますが、むしろ採決後に民主党内が混乱を来すことが予想されるとすれば自民党の解散戦略はまだ必ずしも破綻したということではなく、国会会期とともに解散戦略も延長戦に突入するということになったと言えるのではないかと思います。 その場合、自民党は衆院が既に法案には賛成しているため、延長国会の参院での与野党対決では増税法案ではなく例えば特例公債法案などが焦点になるのでしょうか。 また、「一票の格差」の問題が更にクローズアップされることも間違いないでしょう。 18日には民主党の藤井最高顧問が「解散・総選挙について…最高裁が違憲状態と判断した現行制度の「一票の格差」を是正しない限りは行えないとの考えを改めて指摘し」(『MSN産経ニュース』12.06.18-20:00)ていますが、藤井氏は3月には「「一票の格差」の是正が前提になるとし」つつもむしろ「「話し合い解散」を容認する考えを示し」ています(『MSN産経ニュース』12.03.02-21:38)。 藤井氏の発言の変化は党税調会長として成立を目指してきた増税法案に衆院可決の目途がついたことを受けたものと考えられますが、解散回避の意向が強まっているのを見て取れます。 民主党がそのように「一票の格差」を口実にして野党の解散要求に抵抗していくことは十分考えられるでしょう。 自民党が解散要求を今後強め、対して民主党が解散先送りを画策するであろう一方、自民党内には一時期、解散を条件化しない増税への協力を唱える動きがありました。 すなわち古賀元幹事長が5月25日に谷垣さん以下の執行部が求めていた話し合い解散を批判、増税法案については「解散がなくても成立に協力すべきだと指摘し」(『MSN産経ニュース』12.05.25-17:07)ているのなどがそれに当たるでしょう。 保守派の山本前参院政審会長はそれを「解散なき増税」と表し、「「消費税増税法案は3党の賛成で成立→解散総選挙なし→野田内閣は延命」という最悪のシナリオ」と厳しく批判しています。 山本さんは、早期解散は「選挙で民主党政権の負のDNAを断ち切り、政治をリセットすること」であると指摘していますが、それは保守派としては当然の意識であると言えます。 古賀さんなどの解散先送りの主張は恐らく9月予定の総裁選に連動したものであったと考えられ、すなわち谷垣さんの総裁任期満了の時点で自民党が政権復帰を果たしていなければ谷垣さんの総裁再選の可能性はなくなりますが、それは「谷垣下ろし」の伏線となり得る動きだったと言えるでしょう。 古賀派では古賀さん側近の岸田国対委員長や林政調会長代理がそれぞれ、石原さんや石破前政調会長という次期総裁候補に近く、古賀さんとしてはポスト谷垣体制へは既に布石を打っているということなのでしょうか。 谷垣さんが3日に「「自民党政権に戻すのが私の使命だ。私が先頭に立つ決意がなければならないと思う。」と述べ、再選に意欲を示し」(『朝日新聞』12.06.04朝刊)たのも、水面下でのそのような動きを念頭に、それを牽制するものでもあったかもしれません。 ■1931年12月、当時の若槻礼次郎立憲民政党内閣が総辞職していますが、その端緒となったのは内相安達謙蔵が進めた協力内閣運動でした。 民政党は、前身の憲政会を含めて政権担当期間中に外相を重任し戦後1945年10月には首相となる幣原喜重郎が象徴するように親米英・協調外交と対中国内政不干渉路線を進め、軍部とも距離を置いていましたが、31年9月に満州事変が勃発して以降は党内でも親軍派が台頭、安達は中野正剛や永井柳太郎などとともにそれを代表する存在となっていました。 更に同年10月に発覚した十月事件では、陸軍中佐の橋本欣五郎や民間右翼の大川周明などが満州に展開していた関東軍とも連絡しながら決起し、首相の若槻礼次郎と閣僚や元老の西園寺公望、内大臣牧野信顕らを殺害して倒閣、戒厳令下に陸軍中将荒木貞夫を首相に擁立して軍事独裁内閣を樹立するというクーデターが計画されていたことが明らかになりました(粟屋憲太郎『昭和の歴史6 昭和の政党』、小学館)。 そのように、9月に満州事変が勃発、10月に十月事件が発覚という当時の軍関係の難局にあって安達は協力内閣運動を構想して若槻内閣を見切り、前幹事長の森恪が代表するように民政党に比べ親軍的であった野党立憲政友会に接近、政友会幹事長の久原房之助などと連絡しながら「政・民両党の協力内閣・挙国一致内閣を作り、軍部に了解をつけつつ政局を転換しようとし」ました。 ちょうど当時、幣原外交が行き詰まり、また蔵相井上準之助の進めた金解禁政策も破綻するなどで政権運営への自信を失った若槻は10月末に安達に進退を相談、それに対して安達は協力内閣構想を披瀝して野党政友会総裁の犬養毅への禅譲を答申しています。 若槻は当初これに前向きで、協力内閣運動は奏功するかに見えたものの、政権主流派の有力閣僚ながらこの動きを知らされていなかった幣原、井上などが反発し、それを受けた若槻も翻意して構想は破綻、安達は閣僚辞任を求められるも応じず、若槻内閣は閣内不一致に至って総辞職に追い込まれています(後継首相には西園寺によって犬養が推されて政友会単独内閣が成立、安達は同月中に中野らとともに民政党を離党して国民同盟を結党)。 このように、協力内閣運動は対中国外交が緊迫する中で起きた、民政党非主流派の安達や野党政友会などの親軍派中心の政権確立による対米英協調派打倒の動きであると言えますが、それは安達が民政党若槻・政友会犬養間の政権授受を模索しているように、党内からの「若槻下ろし」の性質を帯びてもいたと言えるでしょう。 その点で、現代自民党で古賀さんなどが増税での野田民主党政権への解散なき協力を主張していたのも、それが谷垣さんの総裁再選を阻むことにも繋がる「谷垣下ろし」であるという点で、協力内閣運動に通じるものであったと考えることができるでしょう。 森元首相が折に触れ唱える秋からの大連立も解散の先送りという点では谷垣さんの退任に繋がる可能性のある展開ですが、それも、民政党、政友会両党の取り決めで「両党首のだれに組閣の大命がくだっても閣僚は両党の協議で決めると約束した」という協力内閣運動と似たものであると言えます。 ■安達の協力内閣運動は民政党が先に述べたように外交では幣原の主導の下で対米英・国際協調と対中国内政不干渉=幣原外交を進め、経済では井上財政によって金解禁政策をとったのに対し、政友会は対中国積極外交と金輸出再禁止を掲げるというように、両党の主要政策での差異が大きかったことで座礁しましたが、同様のことは今後考えられもする自民党と民主党の協調ムード=大連立気運の高まりについても言えるでしょう。 大連立には党内では民主党との異質性が強い保守派を中心に反対の意見が示されており、安倍さんは5月11日21:34配信の『MSN産経ニュース』のインタビュー記事の中で「大連立という話もまたぞろ出るんじゃないかな。ただ、少なくとも自治労や日教組をバックにした連中と手を組むようなふしだらなことは絶対にすべきではない」と述べて大連立に慎重な考えを示しています。 安倍さんは11日配信のメルマガで自民党が消費増税に協力するには、 (i)社会保障分野のマニフェストの撤回 (ii)デフレ脱却への道筋を示す事 (iii)解散の約束 の三条件が必要であるとの認識を示しました。 これは特に(iii)に着目すれば、民主党に融和的になる解散なき増税=協力内閣運動とは大きく異なる主張であることが明らかですが、これも保守派としての民主党との異質性によるものでしょうし、またバラマキを批判した(i)及び(ii)についても、民主党の経済政策を「先に配分がある社会主義的な政策」と否定し「私の考える「保守」とは…経済政策で言えば、小さな政府で成長重視の政策をとる」(『朝日新聞』09.09.30「保守による構造改革を」)と訴える安倍さんらしい指摘ではないかと思います。 また、党内でやはり経済成長を重視する立場の中川元幹事長や菅元総務相、塩崎元官房長官、河井元国対副委員長などが結成する「消費税増税を考える会」は、法案を巡る与野党交渉について「民主党のマニフェスト(政権公約)の全面撤回、今国会中の解散・総選挙の確約がないまま修正協議が進んでいる」(『MSN産経ニュース』12.06.15-19:13)と執行部を批判していますが、この動きは安倍さんの主張に近いと言えるでしょう。 小泉内閣期に財務相を長く務めてもいる谷垣さんは元来増税派であり、それは自民党が「解散の約束」のないままに増税への協力を決めたのや、経済成長派を中心にした「考える会」の反発の背景事情となっていると考えられます。 増税法案成立には協力しても解散を確約させられないなど、与野党交渉の結果はあたかも協力内閣運動のようになり、谷垣自民党は民主党との関係で主導権を得きれずにいるとせざるを得ませんが、谷垣さんが任期中の解散を実現できないまま9月に退任、保守派の総裁候補である安倍さんが実際に立候補するか不透明な中で、同世代の石原さんや石破さんを軸に総裁選が展開されて将来の首相が決まるのは望ましくないとすれば、今度の総裁選自体を事実上流すために今のまま谷垣さんが首相になった方が都合がいいとは考えられないでしょうか。 そのためには9月までの解散が必須で、消費増税を巡る民主党の分裂をそれにつなげるべきであると言えます。 (R) |

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おはようございますm(__)m
民自公三党が修正合意したことでいよいよ消費増税が現実となり、待ちに待った解散が見えてきましたね。
消費増税に関しては僕は危惧を抱いておりますが解散には変えられないところもあり複雑な心境です・・・。
小沢Gが造反した場合小沢氏にどれだけの人間が付いていくのか気になりますね。
これをきっかけに大規模な政界再編となれば面白いです。
2012/6/20(水) 午前 10:12
素晴しい、洞察考察、です。歴史背景、によって、政局の内容、より濃く深く、なりますな。
傑。
2012/6/20(水) 午後 2:32 [ お地蔵バッヂ ]
コメントをいただきましてありがとうございます。
2012/6/20(水) 午後 2:41 [ 水口栄一 ]
傑作
公の精神、国益とは何かを見失っての政治はあり得ません
2012/6/20(水) 午後 8:00
谷垣総裁では、解散・総選挙しても自民党の単独過半数は無理。
民主党は確実に大幅減少するけどね・・・。
2012/6/20(水) 午後 10:33 [ コスモス99 ]
石原幹事長は、14年に消費税増税を必ずするものではないと明言していました。私はそれを信じています。そうでなければ、橋本内閣の二の舞になるからです。自民党は総裁等を変えないといけないとも思います。もっと良い人材が沢山います。
あまりにも酷い民主党政権の早い解散が待たれます。傑作。
2012/6/21(木) 午前 0:02
責任ある、経済論、が求められます。野田の言うところ、増税 と 成長 は、両輪では?
2012/6/21(木) 午前 11:22 [ お地蔵バッヂ ]
世の 三橋信者/中野信者 の 内需 一点張り、財政出動論、 では 国民は 豊かには、なれない。トンデモ経済論の ウノミ、には、今後も、乗らないのが よい、でしょう。
たけなか まさはる 氏のブログにて、真の経済論 が、語られています
2012/6/21(木) 午前 11:24 [ お地蔵バッヂ ]
始めまして、御意に御座います、
傑作ポチ凸^
2012/6/22(金) 午後 5:28 [ 鳥海 ]
また、そ
2012/6/22(金) 午後 11:37
う〜〜ん 国土の防衛法案を成立させて欲しいのです
竹島 尖閣 どちらも・・・・
北方領土は千島列島全部です
2012/8/30(木) 午前 0:35 [ 道後 ]