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そもそも石破さんを幹事長に充てたのは決戦投票までもつれた12年総裁選でその地力を看過できなかったためだったのであり、今回の異動は、その総裁選後体制の一区切りだったと理解できるでしょう。 石破さんは8月25日に出演したラジオ番組で来年9月の次期総裁選に関して「「自分よりふさわしい人がいたら出ないのか」との質問に「そのときの状況による」と答えた」のが「出馬に含みを残した」ものともされ(『産経新聞』同日23:48)、安倍さんもまた次期総裁選を念頭して石破さんの異動を考えたともされたのであり、朝日新聞の星特別編集委員が「今回の内閣改造・党役員人事は、来年の総裁選の前哨戦であることが分かる」(14.8.3朝刊)と記したように、12年9月以来の総裁選後体制を総括したことは15年総裁選への小さくない一歩でもあったと言えるでしょうか。 また、石破さんへのそのような対応を、長期政権を目指す上での「攻め」のリスク・マネジメントであるとするなら、先の内閣改造で麻生副総理兼財務相や菅官房長官それに甘利経済再生担当相という盟友や側近を留任したことは、「守り」のそれであったと位置づけられるでしょう。 ■菅さんは、安倍さんが総裁に復帰して石破さんを幹事長とした際には幹事長代行に任じられましたが、上述のように「石破幹事長」は総裁選後体制の産物だったのであり、現在内閣で安倍さんを支えている菅さんはいずれ満を持して、党で安倍さんを支えるべき幹事長の最右翼となるのではないでしょうか。 3月6日の記事でも紹介したように菅さんについては「幹事長として、国政選挙を仕切りたい気持ちが強い」(『産経新聞』14.2.22-12:00)との見方があるというほか、9月10日の『朝日新聞』朝刊は、安倍さんは菅さんの留任を固めた7月頃、「周囲に「菅氏が選挙を陰で支えればいい」と語ったという」と伝え、茂木選対委員長を支える山口、梶山、菅原各同副委員長が「いずれも菅氏に近い」と指摘。 そのうち、東京9区選出で都連会長代理である菅原さんについては2月4日の『朝日新聞』朝刊が、菅さんに「近」くて2月に行われた都知事選ではその「連絡役」を任されたことを伝えており、11年12月3日のメルマガで紹介があった山口さんが安倍さんにと同時に菅さんにも近いことは十分に窺えるでしょう。 また、梶山さんはむしろ石破さんの側近に挙げられることが多いですが、都度述べているように12年総裁選前後から安倍さんと石破さん、あるいは麻生さんと石原元幹事長など、競合する実力者の双方に接近する動きは党内でしばしば見られたほか、菅さんは「安倍さん…の後は石破さんしかいない」(『朝日新聞』14.6.5朝刊)と評価しているとされるのであり、梶山さんが菅さんと石破さんの双方に近いとしても怪しむに足りません。 選対委員会で安倍さん側近の萩生田総裁特別補佐が引き続き事務局長を務め、同次長に菅さんの選出の神奈川2区に隣接する同5区が地盤の坂井衆院議員が起用されていることには、安倍さんや菅さんの選挙指揮に対する意欲が反映されていると言えるでしょう。 なお、選対委には山口さんなど3人の他に森山副委員長が起用されています。 森山さんは「TPP参加の即時撤回を求める会」の会長としてTPP反対派の代表格に位置づけられましたが、9月29日には党TPP対策委員会で西川農水相の後任の委員長に充てられて一転、安倍さん以下TPPを推進する党のラインに組み込まれたと言えるでしょう。 安倍さんや菅さんは農業・農協改革を打ち出し、規制改革会議からは全中の廃止論も浮上しましたが、7月11日の『朝日新聞』朝刊「けいざい深話」によれば森山さんは6月10日の党農林関係部会で「取りまとめを担」い、「廃止」という表現を削除した原案に落着させたものの、その直後12日には「「全中はもう政治活動をやめたほうがいい」と言い切った」ことも伝えられています。 2月6日の『朝日新聞』朝刊の「けいざい深話」は、「党の農業政策のまとめ役」の宮腰元農水副大臣が農業改革ひいては「成長戦略の目玉」である減反廃止で妥協したことを伝えますが、その宮腰さんは9月29日にTPP対策委員長代理に就任したのであり、また9月10日23:02の「産経ニュース」は、TPPについてかつて反対集会で共産党議員とも同席したこともあった稲田政調会長に対して安倍さんが「「昔は反対してたよね」と冷やかし混じりに語」ったことを紹介。 それらが物語るのは農業・農協改革やTPPを推進する安倍さんや菅さんが、それらへの慎重派を今や切り崩して主導的であることにほかなりません。 それは政高党低とも称されたパワーバランスの影響であり、またTPP推進で奔走した西川さんや、減反廃止を巡って宮腰さんとの調整に当たった江藤前農水副大臣などの協力勢力を得たことの影響でもあったでしょう。 さて、町村元官房長官が「首相が『来年9月に党総裁選があれば、そこで人事もあるだろう』といっていた」(『産経新聞』14.9.11-17:59)というように、先の人事が1年9ヵ月ぶりだったのに対し次のは1年後に見据えられますが、12月には今の衆院議員の任期が折り返しを迎えてそれから16年12月の任期満了ないし同年7月の参院選までの間には解散総選挙を想定できるのであり、次期幹事長にはその司令塔たることが最も期待されることになるのでしょう。 もちろん今の谷垣幹事長は総裁として臨んだ10年参院選で勝利した実績もあって解散総選挙がその任期中に行われたりあるいは来年9月に再任されることもあり得ますが、石破さんの処遇を巡る報道でも「首相は将来の解散・総選挙をにらみ…幹事長を自らに近い議員に交代させる意向とみられる」(『朝日新聞』14.8.24朝刊)とあったように、「自らに近」く上述の通り選挙の采配に意欲的な菅さんを幹事長に据え、安倍さん自身に直通する形の解散総選挙に踏み切ることを志向するのではないでしょうか。 それは逆に言えば次の人事のある来年9月までの解散の可能性は低いかと思わせますが、それに符合するのが、8月7日の『朝日新聞』朝刊が解散日程について「勝利し、国民の信任を得れば、安倍首相を総裁選で交代させる理由が消える」と総裁再選戦略とも関連させて「もっとも順当とされる」とした「来夏の通常国会閉会後」という可能性が、先の人事で石破さんの入閣を叶えてリスクを軽減できた分だけ低下したと言えることでしょう。 安倍さんが、「「菅氏が…陰で支えればいい」と語ったという」選挙とは今月の福島と来月の沖縄の知事選や来年4月の統一地方選などのことであると思われ(菅さんが沖縄基地負担軽減を担当するようになったのも、普天間問題が最大焦点の沖縄県知事選に関連するのでしょう)、総裁選後体制では幹事長代行に甘んじた菅さんはそれが改まった今、次の人事を経ていずれ総選挙が現実的になれば幹事長として、「陰」から満を持して「日向」にも現れることになるのではないでしょうか。 ■安倍さんの長い盟友で首相経験者かつ派閥領袖の麻生さんは政権随一の重鎮であり、先の人事で麻生派からは山口沖縄・北方担当相や松本政調会長代理が起用。 麻生派では12年総裁選前後などに山口さんや岩屋元外務副大臣が石破さんに接近する分派的な動きも見られましたが、12年12月には石破さんによる入閣推薦が容れられなかった山口さんが今回麻生さんの推しにより初入閣し、これも石破さんが今回安保法制担当相の候補の一人に挙げた岩屋さんは一時政調会長代理への起用が報じられたもののそれを見送られて自身より当選回数の少ない松本さん(6回と5回)がむしろ処遇を受けており、麻生さんは硬軟併せ用いて派内への支配力を強めたと言えるでしょうか。 麻生派内にかつて遠心力が作用したのは石破さんなどが首相候補者として台頭して首相経験者である安倍さんや麻生さんと競ったことを意味しますが、麻生派内の秩序が原状を回復したことも総裁選後体制の解消の事例に挙げてよいでしょう。 ところで、麻生さんは通常国会閉会が迫って既に人事への関心が高まっていた6月19日の夕方、紀尾井町の懐石料理店で安倍さんと懇談していますが、その場にはいずれも麻生派の鈴木馨祐国対副委員長と大家前参院国対副委員長が同席。 大家さんは麻生さんと同じ福岡の出身、鈴木さんは4月に発足した「次世代の税制を考える会」の幹事世話人を務めて財務省出身ながら法人減税に積極的で、5月には税率引き下げを麻生さんに直接申し入れたことを「勇気ある行動」「行動力については感心した」(産経ニュース、14.5.24-7:00)と評価されていて、両者とも麻生さんにごく近いと言えるのでしょう。 鈴木さんは先の人事で国対副委員長に就任しましたが、麻生派の若手のホープということになっていくのではないでしょうか。 「次世代の税制を考える会」については、法人減税に積極的な菅さんの「「別働隊」との見方が強」(産経ニュース、14.4.24-9:54)いともされますが、鈴木さんの地盤の神奈川7区は菅さんの同2区と同じ横浜市内であり、先述の坂井さんのケースと同じように地縁によっても菅さんに近いのかもしれません。 なお、安倍さんは6月19日は麻生さんなどと懇談した後に公邸に戻り、二階総務会長や林同代理と夕食を共にしていますが、これも人事に関連した動きだったのかもしれません。 実際、二階派は先の人事で党では会長の二階さん自らが総務会長、林さんが同代理に就き、内閣には農水相の西川さんを輩出、また参院では三大派閥が主要ポストを占める慣例を破って鶴保政審会長を擁立。 派閥にはいずれも保守系無所属の中村元建設相や山口元外務副大臣、長崎衆院議員を客員会員として迎えていて党外にパイプを持ち、派閥の運営についても、総務会長就任に伴って離脱して会長も退き河村元官房長官を会長代行としたものの、あくまで後任会長を置かなかったことは、依然それに意欲的であることを思わせます。 林さんはかつては今の石原派に所属していたものの前会長の山崎元副総裁が12年総選挙で引退した際に退会して二階派に移っていますが、それには二階さんから参加の誘いがあるいはあったのでしょうか。 また、二階さんとは国土強靱化総合調査会でも総務会と同じように会長と同代理の関係にあり、立場が近いことは鮮明だと言えるでしょう。 二階さんは、谷垣さんとともに中国通の重鎮として日中関係の打開に乗り出すことに前向きであるほか、国土強靱化を首唱し、公明党の漆原常任幹事会長と「週1回のペース」で「議決機関のトップが定期的に会談する」ことを3日にスタートし(時事通信、同日19:16)、捕鯨の伝統がある和歌山出身で党本部や外務省の食堂の鯨肉メニューを発案するなど、独自色の発揮に積極的です。 二階さんは安倍さんとは中国への姿勢や経済政策を異にしますが、それでも第1次政権で国対委員長や総務会長、第2次政権では同代行や再び総務会長を務めているのは、両者ともがリアリストで、かえって妥協点を見出しやすいことによるのでしょうか。 また、二階さんは、かつてともに今は生活の小沢代表に近くて93年に自民党を離党した石破さんとは13年参院選の佐々木元衆院議員の公認問題で対立するなど距離があり、そのことも、石破さんが安倍さんの潜在的なライバルである状況で両者の利害を一致させたことでしょう。 すなわち、安倍さんと二階さんの近年の戦略的な協力関係は、総裁選後体制の副産物的な果実だったとも言えるでしょうか。 ■先の人事を経たポスト総裁選後体制での安倍さんの盟友たちのうち麻生さんと菅さん、またそれぞれに関連して二階さんについてや農業・農協改革、それに解散時期などについては以上のように述べられますが、それについては、加えて甘利さんや高村副総裁、更に安倍さん支持を鮮明にしている鳩山元総務相などの周辺についても検討すべきことが多いでしょう。 石破さんの入閣で総裁選後体制がほぼ解消されて安倍さんの党内勢力基盤は強まったと言えるのであり、それに伴って、今後はそれら安倍さんに協力的な党内各勢力の存在感が増すことになるのではないでしょうか。 (R) |

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次回の国政選挙では公明がどの程度議席をとるかで自民単独政権かの大きいポイントがありますが、いずれにしてもその時点で谷垣幹事長を留任させる理由はなくなると思います。菅さんに幹事長になって欲しいです。
もっとも、これほど出来る官房長官はいないようにも。
ないす!ついーと!転載させて下さいね。
2014/10/4(土) 午前 11:02
to.watch_compassさん)
民主党で国政選挙担当の代表代行の岡田さんは次の解散を来夏に想定しているみたいですが、一時囁かれることのあった今週のサプライズ解散は今国会が地方創生と女性活躍という二大テーマを扱っていてそれが空転するはずはないのでなくなりましたから、来夏解散というのは考えられる中では比較的早い方ですね。
とはいえ、それでは自民党側は幹事長が谷垣さんだという点では、安倍さんが解散に踏み切るというのはちょっと考えづらいかという気もやはりします。
もちろん来秋予定の人事を例えば来春に前倒して常会閉会後に解散というのも理屈の上ではなくはないですが、やはり考えづらいですからね。
来夏解散説は、来秋の総裁選での再選を確実にするのと関連して言われましたが、石破さんを入閣させられたことで解散しなくても再選は堅くなりましたし、野党再編も維新の党が結成されたとはいえ、橋下さんの労組嫌いに民主党左派や自治労が反発を強めていて政権に敵する勢力の結集が加速するとも思えません。(続)
2014/10/6(月) 午前 0:58
菅さんがいずれ幹事長に転じるとして、後任の官房長官には甘利さんが考えられるでしょうか。
今の官邸には、安倍さんとは通商政策やエネルギー政策を共有する経産省が首相秘書官を二人輩出したりと存在感を持っていますが、甘利さんは経産相経験者でTPPや原発の政策を安倍さんや経産省と同じくしているので、安倍官邸における官房長官には相応しいのではないかと思います。
菅さんは今冬には在任2年になる官房長官を退いたとしても、過去には後藤田正晴氏など官房長官に再登板した例もあるので、菅さんもそうなることはあり得ますし、ポスト安倍が視野に入ってきて、その誰かしらを例えば幹事長にするとすれば、集団的自衛権の限定容認論や自公協議など高村副総裁が石破幹事長より存在感を発揮する場面があったように、それより上級の副総裁に充てることも考えられますが、いずれにしても一貫して政権の要職にあることになるのは間違いないですね。
コメントありがとうございます。
2014/10/6(月) 午前 0:59