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参院幹部人事について ケータイ投稿記事

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■7月の参院選の後、溝手議員会長と脇幹事長の就任だけが決まっていた党の参院役員人事について、1日にその他の顔触れが明らかになりました。
*敬称略、括弧内は(当選回数/出身選挙区/所属派閥)の順で、「再」は再任。

【議員会長】溝手顕正(5/広島/岸)
【幹事長】脇雅史(3/比例/額)
【幹事長代行】吉田博美(3/長野/額)
【国対委員長】伊達忠一(3/北海道/町)
【政審会長】山谷えり子(2[衆1]/比例/町)
【幹事長代理】山本順三(2/愛媛/町)
【国対委員長代理】岡田直樹(2/石川/町)
【政審会長代理】宮澤洋一(1[衆3]/広島/岸、再)

■以上のうち、脇さんの後任となる伊達国対委員長の就任については7月31日に内定していましたが、今回正式に発表となりました。
その伊達さんは町村派の所属であり、脇さんが額賀派であることと、参院三役(幹事長、国対委員長、政審会長)はこれまで11年10月以来2年にわたって三大派閥(町村、額賀、岸田各派)が分割してきたことに鑑みて、伊達さんと同じ町村派の山谷政審会長の就任は大いに注目に値するでしょう。
参院では、11年10月に、当時執行部を率いていた中曽根前議員会長と、前年8月の議員会長選挙で谷川元幹事長を擁して敗れた町村派の一部と古賀(当時、今の岸田派)、額賀両派が人事で対立、幹事長に麻生派(=非三派)の鴻池元防災担当相を充てることや当時政審会長だった山本沖縄・北方担当相を再任することなどの人事案を通せなかった中曽根さんが妥協を余儀なくされて、幹事長に岸田派の溝手さん、政審会長に町村派の岩城元政審会長がそれぞれ起用され、それに前年から国対委員長であった額賀派の脇さんを併せて、三派がバランスを取って三役を分割する慣例が始まりました。
ところで、その10年8月の議員会長選挙で中曽根さんを支持したグループを後見したのが安倍さんであることから、安倍さんと参院政局の関わりは浅くないと言えますが、翌12年10月の参院人事で三役では政審会長に交代があって岩城さんの後任に安倍さん側近の世耕官房副長官が充てられたのは、前月9月に安倍さんが総裁に復帰したことの影響であったと考えられ、そこには、参院における安倍さんの影響力の程度の変遷を見ることができると言えます。
すなわち、10年8月には自ら会長を務める創生「日本」の会長代行である中曽根さんの他に側近の山本さんや世耕さんといった保守派がそれぞれ議員会長、政審会長、幹事長代理の地位にあったことで参院における安倍さんの存在感は高まったはずであり、それはまた、保守派が当時の菅内閣の閣僚だった仙谷元官房長官や馬淵元国交相、前原元代表の追及に成功したことの素地であったと言ってよいでしょう。
対して、11年10月には中曽根さんが参院執行部で主導権を後退させ、逆に三派が伸長していますが、三派は前月9月の党の人事で、当時総裁として派閥勢力と距離を置いた党運営をしていた谷垣法相への圧迫も強めて総務会長、政調会長、国対委員長を分割しているのであり、それが翌12年9月の総裁選で当時幹事長だった石原環境相が派閥勢力に擁立されて執行部から出馬したことの伏線だったと言える点で、一連の三派の伸長と、総裁選で安倍さんが派閥勢力と距離を置いて立候補して石原さんと争ったことは同一の流れの上で理解できるはずです。
そしてその総裁選を安倍さんが制したことは上述通り、世耕さんが政審会長として参院執行部に参画したことの背景であると言えるはずであり、それは総裁となった安倍さんが参院への影響力の確保を図ったものに違いなかったでしょう。

安倍さんは総裁復帰後、鴨下元環境相や浜田幹事長代理を党の要職に起用して石破幹事長との協調を意識しているほか、内閣には石原さんや林農水相という総裁選対立候補や、谷垣さんのような親中派、岸田外相や茂木経産相といった大派閥の会長や実力者も入閣させるなど、党内各勢力に配慮した言わば「低姿勢」の人事を行っていますが、参院に関して、上述の世耕さんの政審会長起用が側近を執行部に送り込んだものであった一方で、世耕さんは町村派所属でもあるのであり、それは三派が三役に割拠してバランスを取る慣例・枠組みに従ったものでもあったことも「低姿勢」の一環だったと言ってよいかもしれません。
第二次安倍内閣の発足で官房副長官に移った世耕さんの後任の橋本前政審会長も町村派所属であり、自民党の政権復帰後もその慣例は継続していますが、今回の人事でそれが見られなくなり、かつ、総裁派閥たる町村派出身の幹部が増えて三派のバランスが崩れたことは、TPP推進や税制問題、副大臣・政務官、党政調各部会長の人事を通じて党に対する「官邸主導」が強まる中において、注目されるはずです。
安倍官邸は、7月の議員会長選挙についても「官邸が関わることへ意欲を示」(『朝日新聞』12.7.20朝刊)しており、「官邸の主導権」を強く志向する安倍さんにとって参院もその対象であることは明らかだと言え、それが表れたのが山谷さんの起用だったと考えるべきでしょう。
参院選後に町村派が山崎議長、岸田派が議員会長に溝手さん、額賀派が幹事長に脇さんをそれぞれ輩出したことは、三派がバランスを取ったものであると見ることができますが、しかし議長は党のポストではない上に名誉職であり、伊達さんが国対委員長となって町村派が議長とは別に三役の一角を占めたことがむしろ慣例に基づいた順当な人事であったと言ってよいでしょう(7月25日8時43分配信の『産経新聞』によれば、当初国対委員長の候補だったのは岩城さんであり、町村派が国対委員長を押さえるのは既定路線だったと考えられます)。
町村派が国対委員長、額賀派が幹事長を押さえるとすれば政審会長には「慣例」に基づいて岸田派から例えば当選3回の松山前外務副大臣が充てられることも考えられたはずですが、しかし実際には、安倍さんに近い保守派として第一次内閣では首相補佐官を務めて教育再生に、党では拉致問題に当たってきた山谷さんが起用されたのはやはり、参院に対する「官邸主導」の結果だったと考えてよいのでしょう。

また、「官邸主導」という視点で見たとき、伊達さんと山谷さんに山本幹事長代理と岡田国対委員長代理を併せて、参院幹部8ポストの半数を町村派が押さえたことはどうでしょうか。
町村派は昨年の総裁選では安倍さんと町村元官房長官のそれぞれを支持するグループに割れましたが、安倍さんの当選で最大派閥かつ総裁派閥となり、派閥の中では順当に安倍さんに近い勢力であると見なすことができます。
それは先の副大臣・政務官人事でそれまでより2人多い最大の11人が起用されていることにも窺われますが、参院で町村派所属の幹部が増えたことも併せて、総裁派閥たる町村派が存在感を持っていることは安倍さんの党内勢力基盤の安定に資しているはずです。
「町村派の中堅議員」が、1日に96人を集めて開かれた石破幹事長の率いる「さわらび会」の会合について「派閥活動」であるとして「不快感をあらわに」した(『産経新聞』13.10.9-7:55)ことは、その一端を示唆していると言ってよいでしょう。
なお数字を挙げれば、参院選を挟んだ三派の参院議員はそれぞれ、町村派が20人強から30人強へ拡大した一方、額賀派が20人程度、岸田派が10人程度のままで大きく変わっておらず、そのことからは、参院幹部ポストについて、これまでは派閥の規模に関わらず三派が分割するバランスが優先されていたこと、逆に、8つの幹部ポスト中で町村派が4、額賀、岸田両派が2ずつを押さえた今回の人事では派閥の規模がポスト配分にある程度比例するようになったこと、の二点は指摘できるでしょう。

参院三役における三派のバランスという「慣例」が崩れたのは、派閥勢力が総裁権力を圧迫・相対化するという谷垣体制期に顕著だった党内力学が変化していることを思わせるものであると言え、それは安倍政権の特色たる「官邸主導」を党に対して確立しうる条件的環境であると言えます。
また、そのバランスが崩れた一方で町村派が伸長したことは、11年10月以来の「三派体制」が改まってポスト配分が派閥の規模に比例するように「正常化」したものであると同時に、その町村派が安倍さんの出身派閥であることを考えれば、それも結果的に、「官邸主導」の一助となるものでもあるかもしれません。
上述のように参院での慣例尊重や党内各勢力への配慮を「低姿勢」だとすれば、「官邸主導」の推進は政権が言わば「高姿勢」に徐々に転じていくこととなりますが、党における勢力基盤の一つである町村派を順当に重視することは、それを穏当に進めることでもあると言えるでしょうか。

10年8月の議員会長選挙は、その際に安倍さんが町村派の方針に反して中曽根さんの脱派閥的な動きを支持したのが、12年9月の総裁選で町村派の対応が割れて安倍さんが派閥勢力と距離を置いた対応をとったことの予兆であったという点で非常に重要な局面であったと言えます。
そして、その議員会長選挙で敗れた派閥勢力が巻き返した11年10月の参院役員人事で生じた「三派体制」が、安倍さんが総裁次いで首相に復帰した今年13年10月に解消されたことは、10年8月以来の参院政局が一つの区切りを迎えたことを示していると言えるでしょう。

■さて、参院に対する「官邸主導」の反映と言える山谷さんは政審会長として政調会長代理を兼ねていますが、都度指摘しているとおり安倍さんが重視していると見られる政調については、今回の人事で政調会長代理が1人増員されて5人体制とされたことに注目されます。
すなわち、衆院から専任の塩崎、棚橋、平沢各政調会長代理のほか、参院の政審から会長の山谷さんと同代理の宮澤さんが兼任の政調会長代理となっていることは、安倍さんが総裁に復帰してからの一連の「政調重視」の流れの上に位置づけられるでしょう。
政調を巡っては12年9月29日の『朝日新聞』朝刊によって、昨年9月に安倍さんが総裁に復帰した直後の人事で、石破さんとの間に角逐のあったことが知られますが、安倍さんはその際、盟友の甘利経済再生担当相を重量級の政調会長としており、政調における主導権の確保に成功していると言えます。
また、政権復帰後には側近の高市政調会長を甘利さんの後任としていますが、高市さんが例えばTPP推進で党内の慎重意見を押し切るのに尽力したのなどはしばしば「政高党低」を象徴するものとされるのであり、今の政調の体制は党に対する官邸の主導権の源泉の一つとなっていると言ってよいでしょう。
すなわち、「官邸主導」を志向する第二次安倍政権においては官邸が党に食い込んで、政調が党よりむしろ官邸に直結するライン上にあると言えるのであり、側近の高市さんや塩崎さんの存在が、その権力構造を支えているのは明らかです。
政調会長代理は、安倍さんの総裁復帰後には世耕さんのほか中谷特命担当副幹事長と衛藤首相補佐官の3人、自民党の政権復帰後には塩崎さん棚橋さん橋本さん宮澤さんの4人、そして今回の5人と増員が続いており、この政調の拡充からも、安倍さんによる政調重視を指摘できるでしょう。
今回新たに代理となった平沢さんを含めて、政調幹部には石破さんの側近が少ないことや、TPP推進で官邸と連携する西川政調副会長が新たに政調入りしたことも併せて注目したいと思います。

また、参院政審の幹部が党政調に参加していることは、一連の政局に見られたように元来独自性の強かった参院を、政調を通じて官邸の影響下に置こうとするものであると考えられるでしょうか。
なお、安倍さんの総裁復帰直後の体制では政審会長の世耕さんの兼職が政調会長代理で、政審会長代理の宮澤さんが兼ねたのは政調副会長だったのに対し、自民党の政権復帰後には政審会長の橋本さんだけでなく、同代理に留任した宮澤さんも兼職が昇格して政調会長代理となったのは、党と参院の連携が高度化したものであると言え、安倍さんが参院を重視していることの表れだったと言えるかもしれません。


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■30日、第二次安倍内閣の新たな副大臣・政務官人事が決定、発表されました。
その陣容は以下の通り。
*敬称略、括弧内は(当選回数/出身選挙区/所属派閥・グループ)の順で、「公明」は公明党、「再」は再任。

■副大臣
【復興】谷公一(4/兵庫5/二、再)、浜田晶良(参2/比例/公明)
【内閣府】後藤田正純(5/徳島3/無)、西村康稔(4/兵庫9/町、再)
【内閣府兼復興】岡田広(参3/茨城/無)
【総務】上川陽子(4/静岡1/岸)
【総務兼内閣府】関口昌一(参3/埼玉/額)
【法務】奥野信亮(3/奈良3/町)
【外務】岸信夫(1[参2]/山口2/町)、三ツ矢憲生(4/三重5/谷)
【財務】古川禎久(4/宮崎3/無)
【財務兼復興】愛知治郎(参3/宮城/無)
【文科】櫻田義孝(5/千葉8/額)、西川京子(4/比例九州/麻)
【厚労】佐藤茂樹(7/大阪3/公明)、土屋品子(5/埼玉13/無)
【農水】江藤拓(4/宮崎2/無、再)、吉川貴盛(4/北海道2/額)
【経産】松島みどり(4/東京14/町)
【経産兼内閣府】赤羽一嘉(6/兵庫2/公明)
【国交】高木毅(5/福井3/町)、野上浩太郎(参2/富山/町)
【環境】北川知克(4/大阪12/大)
【環境兼内閣府】井上信治(4/東京25/麻、再)
【防衛】武田良太(4/福岡11/無)

■政務官
【内閣府兼復興】亀岡偉民(2/福島1/町、再)、小泉進次郎(2/神奈川11/無)、福岡資麿(参1[衆1]/佐賀/額)
【総務】松本文明(2/比例東京[東京7]/町)、藤川政人(参1/愛知/麻)
【総務兼内閣府】伊藤忠彦(2/愛知8/二)
【法務】平口洋(2/広島2/額)
【外務】石原宏高(2/東京3/石)、木原誠二(2/東京20/岸)、牧野京夫(参2/静岡/額)
【財務】葉梨康弘(3/茨城3/岸)、山本博司(参2/比例/公明)
【文科】冨岡勉(2/長崎1/石)、上野通子(参1/栃木/無)
【厚労】高鳥修一(2/新潟6/町)、赤石清美(参1/比例/町)
【農水】小里泰弘(3/鹿児島4/谷)、横山信一(参1/比例/公明)
【経産】田中良生(2/埼玉15/無)
【経産兼内閣府】磯崎仁彦(参1/香川/無)
【国交】土井亨(2/宮城1/町)、中原八一(参1/新潟/二)
【国交兼復興】坂井学(2/神奈川5/無、再)
【環境】牧原秀樹(2/比例北関東[埼玉5]/無)
【環境兼内閣府】浮島智子(1[参1]/比例近畿/公明)
【防衛】木原稔(2/熊本1/額)、若宮健嗣(2/東京5/額)

■9月は安倍さんの総裁復帰から一年、当初取り沙汰された内閣改造と党役員人事が見送られたなか、副大臣・政務官人事では再任は副大臣で4人、政務官で2人のみであり、こちらの異動は大規模なものとなりました。
今回の人事では、当選5回以下の所属議員に対する希望役職の事前調査が行われ、それを石破幹事長が「とりまとめ」て菅官房長官が「最終調整する形」がとられていますが、これは安倍官邸と「党内派閥との微妙な関係」の表れでもあり(『朝日新聞』13.10.1朝刊)、すなわち党に対する「官邸の主導権」志向という、安倍官邸の性格に関わる本質的な問題が指摘できるでしょう。
安倍さんは官房長官や同副長官として小泉政権の中枢にあって、郵政民営化などの構造改革を巡って当時の小泉官邸が党内の抵抗勢力を制するのに参画しているほか、現在首相として、米国のホワイトハウスに倣って官邸の機能強化に直結する日本版NSC構想に取り組んでいるように、首相の主導権、党に対する官邸の優位を強く志向していることが鮮明ですが、今回の副大臣・政務官人事についても、党内派閥との関係において、それが示されたと言えます。
「官邸の主導権」は第二次安倍政権に特徴的なテーマであり、様々な動きを、その観点から見ることが出来るようになるのでしょう。
民主党政権において、今の生活の党の小沢代表が党で存在感を持って強い遠心力となったことは、菅、野田両内閣期の官邸の弱体化・相対化に直結しましたが、今の自民党政権では安倍さんに批判的な加藤、古賀両元幹事長といった親中リベラルの実力者が引退して不在であり、安倍さんが「党に対する官邸の優位」の確立を窺いやすい環境があるということは言ってよいのではないでしょうか。

さて、では今回の人事のうち、安倍さんの主導権が反映されていることを窺うには、上掲陣容の中で安倍さんに近い顔触れが少なくないことにまず着眼されるはずでしょう。
そしてそれは例えば、西村内閣府副大臣、岸外務副大臣、古川財務副大臣、江藤農水副大臣、亀岡内閣府政務官、高鳥厚労政務官、土井国交政務官などを挙げられるはずです。
そのうち、西村さんは旧通産省出身であり、成長戦略を重視してTPP交渉でも実務を担当しているほか「骨太の方針」の取りまとめに奔走しており、今回再任されたのも、それらの活躍が評価された結果に違いありません。
また、09年総裁選には安倍さんの支持も受けて出馬しているように保守派であり、その中では保守の理念の他に経済政策までを共有する安倍さんの直系であると言え、安倍さんが西村さんを要職に再任したことは、保守派の次世代リーダーの育成でもあったと考えられるでしょう。
出身の旧通産省の後身の経産省が官邸で影響力を高めていることは、西村さんの台頭にどう関わっていくでしょうか。
西村さんは総裁選出馬の際に町村派を退会、谷垣体制期には当時政調会長であった石破さんの下で同副会長や経産部会長を務めていて、12年総裁選の際には安倍さんと石破さんのどちらを支持するか揺れ動いた様子がブログ記事から窺われますが、現在は既に町村派にも復帰しており、保守派として安倍さんに近い位置にいて信頼を得ていると言ってよいのではないでしょうか。
なお、西村さんの岳父の吹田元自治相は安倍さんの祖父の岸元首相の選挙地盤の後継者であることから、岸さんから見て、西村さんは政治的な孫と言ってよいかもしれません。

安倍さんの実弟である岸信夫さんは今回外務副大臣とされていますが、岸さんはそれまで党政調で外交部会長を務めており(後任は保守派の城内衆院議員)、党から政府に移って、引き続き外交に当たることになったことになります。
官邸=安倍さんに近い岸さんの外務副大臣起用は、谷内内閣官房参与などをブレーンとする安倍さんの官邸主導外交への意欲の反映にほかならないでしょう。
なお、岸信介さんの実弟の佐藤元首相は第二次岸内閣に蔵相として入閣、日米新安保条約が1960年6月19日午前0時に自然承認を迎えるときには、デモ隊が包囲する首相官邸にただ一人最後まで残って岸さんとともにあった(『岸信介』原彬久、岩波新書)といいますが、岸信夫さんも佐藤さんのように兄首相を強く支えることになるのでしょう。
また、高鳥さんも政調の厚労副部会長から厚労政務官へと、岸さんと同じように同一分野で党から政府に異動しており、安倍さんの側近として、順当に起用されたということかもしれません。

農水副大臣に再任された江藤さんについては、安倍さんがTPPを強く推進していることとの関連を指摘せねばならないでしょう。
3月15日11:26配信の『産経新聞』によれば、党内の慎重論を押し切って安倍さんがTPP交渉参加を表明した背後には「2人のキーマン」すなわち、この江藤さんと西川元農水副大臣の存在があったといいます。
当初TPP反対の中心であった江藤さんは、しかしそれによれば2月25日に安倍さんから官邸へ密かに招かれて「もう新たな局面に入ったんだ」と説得され、「農水族やJAへの根回しという「密命」を受け入れた」のだとされます。
江藤さんの再任がTPPに関するそうした経緯と不可分なのは明らかだと思われますが、それは党に対する「官邸の主導権」に関するものそのものだったにほかなりません。
なおTPPについて、これまで党政調で農林部会長を務めていた小里農水政務官は慎重派ですが、3日の『朝日新聞』朝刊が報じるとおり、その後任に抜擢された斎藤健衆院議員は経産省出身で「「小泉改革」にも携わ」るなど「規制改革志向が強いとされ」、TPP推進を「手段」とする農業改革を提唱。
この「異例の起用」は農協改革を目指す官邸の菅さんの意向によるものだとされますが、それが江藤さんの農水副大臣再任と併せて、TPP推進や農業改革に官邸が主導的に取り組もうという考えを示すものにほかならないのは明らかでしょう。
それについてはまた、安倍さんや菅さんと考えの近い経産省が官邸で影響力を持っていることとの関連も指摘したいと思います。

そして「官邸の主導権」への意識は、財務副大臣に安倍さん側近の古川さんが起用されたことから、財務省に関しても見て取れるかもしれません。
安倍さんは1日、経済再生の前提たる「財政の信認」保持などのため消費増税を正式に発表、それについては財務省と利害が一致しているものの、税制に関してはむしろ法人減税に強い意欲があり、それに慎重な財務省との関係は今後、緊張感を持ったものとなっていくと考えられます。
2日の『朝日新聞』朝刊によれば、安倍さんと菅さんは復興法人税の廃止について麻生副総理兼財務相と「歩調を合わせ」て財務省の「力を減退させようと腐心」したとされ、同時に、財務省が「連携を図る」(『産経新聞』13.9.24-00:12)党税調からもまた妥協を引き出していますが、その直後に安倍さんが側近を財務省に副大臣として送り込んだことは、同省に睨みを利かせて今後の官邸の優位を図るものであったと考えてよいのでしょう。
民主党政権期に大きな力を持った財務省に対して主導的になることを安倍さんが強く意識しているのは明らかであり、古川さんの前任が、麻生さん側近で当選8回の「大物の副大臣」(『日経新聞』12.12.27-14:46)として起用された山口元首相補佐官と、麻生内閣で閣僚だった小渕元少子化担当相だったことや、そもそも首相経験者の麻生さんを副総理を兼ねて大臣に充てて重量級に布陣していること自体がその表れだと言えます。
その点、古川さんの動向から窺われるのは、財務省に安倍さんや麻生さんの官邸の影響力を及ぼそうとする路線が引き続きとられていることと、しかし副大臣が安倍さんの直接の側近に交代されたことは、「消費増税をカードに財務省と党税調を屈服させ」ようという「もくろみ」に「まずは奏功した」(既出『朝日新聞』)安倍さんが、財務省への影響力をいよいよ強めようとしているのを示唆しているかということ、の二点ではないでしょうか。

以上の各副大臣・政務官を含む上掲7人はいずれも安倍さん側近ですが、今回の人事で党内各派閥が輩出した副大臣・政務官は最大派閥の町村派が最多の11人、第二派閥の額賀派が7〜8人(各議員の所属派閥については厳密にカウントできない場合があります)、第三派閥の岸田派が3〜4人であり、安倍側近に数えられる7人とは決して少なくない規模であると言ってよいのではないでしょうか。
また、安倍さんの出身の町村派の動向は、安倍さんの党内勢力基盤に関わる要素の一つとして看過できませんが、それについては、1日に発表された参院役員人事に見るべきものがあります。
すなわち、議員会長と三役、それに三役の代行・代理格の計8ポストについて、町村派が三役の国対と政審を含む半数の4ポストを輩出するようになったことには、これまでとの変化として注目されるでしょう。
それについては、字数制限のため、他の副大臣・政務官と併せて次記事以降でも触れますが、上述の法人減税を始め、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使解禁(=日米安保体制の高度化)、そして15年9月予定の総裁選での再選という政策課題や政治日程を見通せば、党内や公明党、財務省などの各勢力に対する「安倍官邸の主導権」は、それらの成否に直結するものとして、また「安倍官邸の意向」を体系的に示すものとして、大いに重要な視座として意識されるはずです。


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■今日、安倍さんが来年4月からの消費税率3%引き上げを正式に発表しました。

従前予想された結果であり、「闘う政治家」を自認する安倍さんらしい勇気ある決断を直ちに支持します。

以前も「2007年モデル」から指摘したように、安倍さんの重視する成長戦略は財政規律を関節に財政再建(財政健全化)に通じる性質があるのであり、「安倍さんの財政再建への意識」を等閑視して「税率引き上げ凍結」という甘い見通しがあったとすれば、それは余りにもナンセンスであったとせざるを得ません。
ところでその「財政再建への意識」は「国債神話への懐疑」と結び付きます。
国債神話がまさに虚しい「神話」にすぎないことは、いずれも財政規律を損なう金融緩和と財政出動を含むアベノミクスが推進される一方で、全く同時に、財政再建への取り組みを示す税率引き上げが「現実の政治」によって決定されたことで証明されました。
すなわち、金融緩和と財政出動をデフレ対策の対症療法として包含するアベノミクスは、それが財政再建への意識も持ち合わせる安倍さんによって敷かれているがゆえに、金融緩和と財政出動に対するフォローとしての財政再建を本質的に潜在させていた、としてよいのではないでしょうか。
さて、「国債神話への懐疑」は「経済財政政策についての国際感覚」とも関連します。
前記事でも挙げたように安倍さんは実は既に6月にベルファストでの会見で「経済再生と財政健全化の両立が必要だとし…消費税率の引き上げに関しては「国の信認を確保するためにも引き上げが決まっているものだ」」(ロイター、13.6.19-7:51)と述べています。
ここで安倍さんの言う「国の信認」とは、25日の『朝日新聞』朝刊にある「消費増税を延期すれば、金融市場は「日本政府には財政再建の意思がない。日本は借金を返さなくなるかもしれない」とみて国債を売り始め、国債価格が暴落するおそれがある」ということと直結するのは明らかでしょう。
その「おそれ」とは、日銀の黒田総裁が示したもの、つまり8月下旬に開かれた消費増税に関する集中点検会合の場で「消費税率の引き上げを先送りした場合、国債に対する信認の影響を見通すことは難しい」と述べて「予定通り消費増税を行うべきだという強い要請」をしたことを指しているのであり、安倍さんや黒田さんの「国際感覚」=「国債神話と距離を置くこと」が今次の増税の判断の背景にあることは、見て取らねばならない事実だと言えます。

記事は続けて、黒田さんが「財政再建にこだわる」ことについて「財務省出身という「出自」ばかりが理由ではない。黒田の脳裏にあるのは、半年前の就任直後に味わった「国債価格の急落」というトラウマ」(敬称略)と指摘。
それは記事によれば、今春の「国債価格の急落(長期金利は急上昇)が止まらない」局面に際して、「最後の手段」として日銀幹部から大手銀行首脳への「国債を売らないでほしい」との電話=「事実上の「圧力」」を執らざるを得なくなるまでに至ったことを指します。
金融政策の最前線において国債神話が既に通用していないことが、ここに明白でしょう。
また、黒田さんは3月に安倍さんの肝煎りで起用されましたがその際、「国際的に発信できる人がいい」(『朝日新聞』13.4.10朝刊)との評価があったことは、安倍政権の経済政策において「国際感覚」のウェートが大きいことの示唆であると言えます。
そしてそれは「日本の財政への信認が失われて、国債が売られる―という事態は最大のリスク」(既出25日『朝日新聞』)であるとの認識に至ることにほかなりません。
記事は「日銀が特におそれるのは、自分たちにコントロールできない「外部要因」で、国債価格が下落(金利は上昇)すること」であると指摘していますが、上述のように、国内で賄われている国債については日銀による銀行への「圧力」でかろうじて「コントロール」できたのであり、従って、ここで「外部要因」には、海外からの対日投資による国債買い入れが含まれると考えてよいのでしょう。

そうだとすれば、黒田日銀が「外部要因」による国債暴落を「特におそれる」ことはまた、安倍政権の意向でもあるかと考えられます。
それはなぜなら、安倍さんこそが対日投資呼び込みのトップセールスに立っているからであり、それを最も端的に示しているのが、17日に都内で開かれた米金融大手のセミナーに寄せて「明らかに今の日本は買いだ」とアピールし「今が、チャンスです」と繰り返したこと(『朝日新聞』13.9.18-00:52)、あるいは、訪米中の26日(日本時間)のニューヨーク証券取引所での講演で、「投資を喚起するための大胆な減税」や成長戦略としての「規制緩和の手を緩めない方針」を宣言した上で訴えた名言「Buy my Abenomics」(『産経新聞』13.9.26-7:55)などであると位置づけてよいのは間違いありません。
そしてそのように安倍さんが海外に対日投資を呼び掛けることの前提的環境醸成であるのが、消費税率の引き上げという財政再建に取り組む姿勢の対外的なアピールによって「国の信認」を堅持して「国債価格が下落」するのを阻止することであるのもまた、もはや明らかであるはずです。
つまり「日本国債の多くは国内で保有されているから価格暴落を心配する必要はない」との視野狭窄な言説が、本質的に海外の対日投資を重視するアベノミクス下ではそもそも意味をなさないことは明白で、安倍政権においては「国際感覚」が「国債神話」を完全に凌駕、駆逐していることが直視されねばなりません。
黒田さんも「いったん国債の信認がなくなれば、いまやっている日銀の買い入れは意味がなくなる。そうなれば2%の物価上昇目標の達成もデフレ脱却もできない」(既出25日『朝日新聞』)と語っているとされますが、それに従えば、「デフレ脱却」を唱えながら国債神話に固執するのは、致命的な矛盾以外の何物でもないということが浮き彫りになります。
そしてその矛盾を生じさせているのが、国際感覚の欠落というナンセンスぶりなのでしょう。
なお、黒田さんは実際の税率引き上げに対しては「増税時に景気が悪化する見通しであれば、追加緩和する方針を示唆」(『朝日新聞』13.9.4朝刊)しており、日銀として国債の買いオペに及ぶ可能性もありますが、それはあくまでも「景気への悪影響を和らげ…増税しやすい環境をつくる」ための当座の対症療法であり、安倍政権の一般的な経済政策とは結び付かないことは確認しておきます。

安倍さんはニューヨーク証券取引所での講演では規制緩和について「規制改革こそがすべての突破口になる。日本を米国のようにベンチャー精神のあふれる起業大国にしたい」、TPPについて「年内の交渉妥結に向けて日米でリードしなければならない。TPPをつくるのは歴史の必然だ」とそれぞれ語っていますが(『日経新聞』13.9.26-5:03)、それらに海外の対日投資の重視ということも併せた、一連のアベノミクスの本質を支持・理解できないのであれば、アベノミクスに無理して参加する必要はないのです。
今次の税率引き上げも、そのようなアベノミクスの潜在的な、しかし必然的な要素によると言えるのであり、安倍さんが党総裁に復帰してから一年を過ぎた今、生活の党の小沢代表のようにバラマキと反増税を主張して徐々に「実際の政治」から乖離してきた人が、アベノミクスというバスから降りるべき頃合いとなったということなのでしょう。

■さて、アベノミクスの本質については消費増税を透して以上のように窺えますが、規制緩和やTPP推進、海外の対日投資促進などと密接に関係するのが、安倍さん肝煎りの法人減税。
法人減税は消費増税による経済へのダメージの軽減化や、あるいは安倍さんの上記演説にある「日本を米国のようにベンチャー精神のあふれる起業大国にし」ようという成長戦略として構想されているものですが、しかし、その本質は今や、安倍さんの政権内での主導権に関わる政局的な性質を帯びていると見るべきでしょう。
それはなぜなら、将来の法人減税の先鞭とも見られている復興特別法人税の廃止について、甘利経済再生担当相や石破幹事長、官邸に今井、柳瀬両首相秘書官を輩出している経産省が推進、支持する一方、執行部の高村副総裁を含む党税調や、岩城元参院政審会長などの福島県選出議員の一部、連立与党の公明党などが否定的という状況があり、その成否は安倍さんの威信ひいては求心力に直結するものと考えられるからです。
すなわち、世論の半数が消費増税=財政再建の必要性を認めている中では、政権の体力に関わるのは巷説に言う消費増税(政府・与党とも推進)ではなくむしろ法人減税(政府と与党に温度差)を巡る問題である、と言うべきなのでしょう。
なお、麻生副総理兼財務相以下の財務省は元来法人減税に慎重ですが、しかし現状、復興分の廃止については消極的ながら協力的なのは、将来の法人減税阻止に向けた先制的譲歩であるかとも考えられ、安倍政権の経済政策の本丸たる成長戦略の柱として今後課題となる法人減税に関して、安倍さんと麻生さんが盟友関係にあるなか、官邸と財務省の関係はどう移ろっていくでしょうか。
また、TPPや法人減税の推進で安倍官邸と利害が一致している経産省は、財務省と主導権争いの関係にあるともされますが、その後ろ盾の甘利さんとともに、政権内での影響力を高めていくことになるのでしょう。
そしてその経産省のトップの茂木経産相は額賀派の将来の首相候補であると言え、経産省が重視されることは党内力学にも関連していくのかもしれません。

さて、党内における安倍さんの主導権が26日の『朝日新聞』朝刊に「安倍総裁敵なし」とある状況下、復興法人税廃止の問題では税調会長の野田元自治相が25日に「容認を示唆」し翌26日には税調で「取り扱いを野田氏に一任する方針」が決定(時事通信社、13.9.26-12:15)、高村さんも26日に廃止を前提に、デフレ脱却のため復興法人税の「廃止分が賃上げに回る」(時事通信社、13.9.26-10:44)ようにすることを経団連の米倉会長に要請しており、税調の歩み寄りは早くに兆していたと言えます。
また、福島出身で当初閣僚ながら廃止に反対する意見書(26日に木村首相補佐官に提出)に連名されていて「閣内不一致」とも取り沙汰された根本復興相と森少子化担当相が27日、「廃止そのものへの賛否は明言しなかった」ものの意見書に「了解なく名前を記載されたとして議員団側に抗議」している(時事通信社、13.9.27-13:12)のも、政府の強い意志の徹底と、与党に対する優位を暗示しているものと見てよいのでしょう。
安倍さんが税制問題で税調幹部から譲歩を引き出したことは、TPP推進で農水系議員から西川元副幹事長や江藤農水副大臣を通じて慎重派を懐柔したことと同様、巧みな党操縦とひいては官邸の主導権の確保に成功していることの証左であるとしてよいでしょう。

安倍さんの祖父の岸元首相は日米安保改定に先んじて警職法の改正に臨んでいるものの、野党および党内非主流派の反対に遭って断念、それは政権に少なからぬダメージを与えました。
岸さんはその局面を、総裁公選を前倒し、それを制することで凌いでいますが、そこで政権の体力を消費したことは『岸信介』(原彬久、岩波新書)によれば「岸の党内指導力を決定的なまでに損なってしまった」とされ、岸さんは実際その後の安保改定で、河野元農相(河野元総裁の実父)や三木元首相などによる党内の「反岸」抑え込みのための新条約調印直後の解散を断念、『岸信介と保守暗闘』(戸川猪佐武、講談社)によると「河野一郎、三木武夫は斬って捨てるべきだ」との言葉を残して改憲実現前の退陣に至っています。
「党内指導力」の観点からそれに鑑みるとき、岸さんの警職法問題に相当するのが、改憲を最大目標として共有する安倍さんの法人減税問題だと位置づけて見ていけるのかもしれません。


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今日9月21日は安倍さんの59歳の誕生日です。

おめでとうございます(*^_^*)

安倍さんが首相を務めるのは今が二度目ですが、第一次政権は2006年9月26日発足の翌07年8月27日退陣であり、9月21日を首相として迎えるのは初めてということになります。

そして安倍さん支持をブログでも掲げるようにしてからもう割と長くなるのに、そういえば、私がこういう記事を書くのも何気に今年が初めて。

もう一つのブログのお友達の方限定で自己紹介させてもらったときに載せた私の写真(お世辞でも「可愛いよ!」と誉めてくださった方ありがとうございました)、大学の友人の当時の恋人さんのバースデーパーティーにお呼ばれしたときに撮ってもらったものだったので、ちょうど誕生日つながりでこちらにも載せようかと思いましたが、一年半くらい前のだし、やめました(笑)
f(^_^;)


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■“アベノゴリン”とは先月8日の『朝日新聞』朝刊による造語です。
それからちょうど1ヵ月、日本時間今月8日未明のブエノスアイレスIOC総会では、自ら乗り込んだ安倍さんのプレゼンが東京招致実現に大きく貢献したとされており、期せずして、“アベノゴリン”とは正鵠を射た表現となりました。
プレゼンでは1964年10月の第1回東京オリンピックについて「開会式の情景がまざまざと蘇ります。一斉に放たれた何千という鳩。紺碧の空高く5つのジェット機が描いた五輪の輪。何もかも、わずか10歳だった私の目を見張らせるものでした」(『産経新聞』13.9.8-2:16)と回想がありましたが、それは12年3月5日配信のメルマガに既に「私は小学生でしたが、ブルーインパルスが大空に描いた五輪、兄と一緒に屋根から見た事、今でも憶えています」とあった、お馴染みのエピソード。
テレビ各局のブエノスアイレスからの中継映像には安倍さんのほか、五輪担当相を新たに兼任する方針となった下村文科相や中曽根前参院議員会長、河村選対委員長などの歴代文相・文科相経験者、文教系議員の遠藤元幹事長代理や馳国対副委員長、側近の世耕官房副長官や萩生田総裁特別補佐などが映されており、小池元総務会長が「五輪は安倍政権のチーム力で勝ち取った」(『朝日新聞』13.9.8-19:14)と賞賛したとおりの態勢でまさにあったと言えます。
しばしば指摘されるように、安倍さんの祖父の岸信介元首相は、1964年10月の第1回東京オリンピックの招致が決定した59年5月当時の首相として「招致の最高顧問」を務め、安倍さんも今次の「招致委員会の評議会最高顧問」の立場にありますが(『朝日新聞』13.8.8朝刊)、岸さんが戦後巣鴨プリズンでの幽囚の3年、安倍さんが第一次内閣退陣後雌伏の5年を経ていずれも復権、ともに総裁選での決戦投票を経験していることなどと同じように、五輪に纏わっても祖父と孫の不思議な巡り合わせが示されました。
山本沖縄・北方担当相は8日のブログ記事に「やっぱり、安倍首相には運気がある」と記していますが、その感想は多くの人が改めて噛みしめたことでしょう。
安倍さんを応援して結構長くなりますが、総裁、首相への復帰という奇蹟や衆参のねじれ解消、五輪招致成功などを果たした安倍さんはやはり、信じてついて行けば間違いない本物の政治家であるという確信はいよいよ強まります。

■その“アベノゴリン”こと第2回東京五輪はアベノミクス第3の矢「成長戦略」の新たな目玉とも、第4の矢とも位置づけられて、早くも経済再生の上での好材料と期待されています。
そして、経済再生の進捗と不可分なのが、来月1日にも正式表明されるという消費増税。
それは安倍さんの経済政策観とくに財政再建への意識に照らしても、実は十分想定できた結果でしょう。

アベノミクスの3本の矢「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」とは別に、経済政策一般については「財政出動」「財政再建(財政健全化)」「成長戦略」の3つの方針を挙げられますが、そのうち安倍さんが最重要視しているのが「成長戦略」であることは、アベノミクスにおいてそれが本丸と位置づけられていることや、輸出を重視して外需の取り込みを図るTPPの推進などに明らかでしょう。
また、小泉政権で活躍して構造改革を強力に主導した竹中元総務相を産業競争力会議の中心メンバーに迎えていることや、小泉、第一次安倍両政権を経た07年度のプライマリーバランスが、当時の円安環境による旺盛な輸出やアメリカ経済の好調を背景に、近年では最もよいマイナス6兆円にまで圧縮(明治大の飯田准教授の言う「2007年モデル」)されたのが、成長戦略の成功による税収の自然増に全くよるものであったことも、その重要な証左です。
そして、成長戦略と税収増がそのように密接に連関することは、消費増税という判断について看過できない要素であったと言えます。
すなわちそれは、安倍さんが成長戦略を最重要視することは、財政再建への意識が表裏一体としてあると言ってよいに違いないからです。
97年4月の消費増税が景気に与えたマイナスの影響が検証・懸念されたように、消費増税が実際の税収増に結びつくかは別であるとしても、成長戦略と財政再建の相関についてと、安倍さんの「財政再建への意識」については確認されねばなりません。
また、安倍さんは民主党政権期の消費増税法案の扱いに関連して「社会保障費の確保」に常に言及しており、それも財政再建と同じように、税率引き上げの判断の背景の一つとなったと考えられます。

さて、財政出動と財政再建そして成長戦略の距離感は、それぞれの財政規律との関係性によって測ることができ、それに近い順に、財政再建→成長戦略→財政出動と並べられるのは、明らかでしょう。
そしてそれらと財政規律との関係性を考えたとき、財政再建と成長戦略はそれを意識するという同類項で括れるのであり、それを損なう財政出動とは相互に峻別されることも明らかでしょう。
それは先に述べたように構造改革による成長戦略を追求した結果の「2007年モデル」(=財政の改善)や、成長戦略を最重要視する安倍さんが消費増税を判断したことに繋がりますが、それでは財政出動およびその性質からそれと同質的と言える金融緩和と、それらとは峻別される成長戦略とを混然と「三本の矢」とするアベノミクスは、どのように理解できるでしょうか。
前述の通り、第二次安倍政権によるアベノミクスの本丸は明らかに外需を意識した成長戦略なのであり、その点日本経済の中心は内需であるとの言説はアベノミクス論においてそもそも意味をなさないのは自明ですが、その成長戦略を阻むのが長く続くデフレなのであり、金融緩和と財政出動とは、成長戦略の実現可能な環境を整備するためのデフレ対策という対症療法に過ぎないのが浮かび上がってくるでしょう。
すなわち、アベノミクスについてのバラマキや放漫財政との批判や、それを単純なケインズ経済学と解するのは、アベノミクスの本質を見据えたものではないとすべきなのであり、また、安倍さんが元来いわゆる「小さな政府」志向で09年総選挙の際の民主党マニフェストをバラマキと痛烈に非難したことと、今のアベノミクスが、あらゆる点で矛盾するものでないことを理解できるでしょう。

しかし、その一方では金融緩和や財政出動の影響で、財政再建の必要性はアベノミクスの副作用的に高まっていることは事実とせざるを得ません。
すなわちアベノミクスには金融緩和と財政出動の存在によって、また先に検討したような安倍さんの意識とも連関して、財政再建を導くことが潜在的本質的にビルトインされていたと言ってよいのでしょう。
ところで一口に「財政出動」と言ってもそれは「財政再建」への意識の有無によって2つに細分できると言ってよいでしょう。
そしてそれについて好対照をなすのは、麻生副総理兼財務相と生活の党の小沢代表の経済政策ではないでしょうか。
すなわち麻生さんは首相当時の09年3月に定額給付金政策を主導し、小沢氏は09年の民主党マニフェストにおいて事業仕分けによる財源捻出を建前に子ども手当てなどのいわゆるバラマキ4Kを標榜したように、両者はともに経済政策として財政出動を重視するものの、財政再建に関して麻生さんが現在財務相としてそれを進めるのに対し、小沢氏は民主党時代に菅、野田両政権の増税志向に強く反発、09年マニフェストへの回帰を訴えて党を割っていることは両者の最も端的な相違です。
財政出動の穴埋めとしての財政再建を意識するのが言わば「真摯」であるとすれば、小沢氏の「財政再建への意識なきバラマキ」はいかにも小沢氏らしい選挙至上主義によるものかと思われますが、それが行き詰まっていることは明らかであり、財政出動や金融緩和の後には財政再建に取り組まねばならないことを直視しないのは「欺瞞」だと弾じざるを得ません。
その点、「事業仕分けによる財源捻出」も後述の「国債神話」も、同じまやかしであると言っていいのでしょう。
麻生さんは09年2月には財務相に、財政再建を重視して民主党の菅第二次改造内閣では無所属議員の立場で経済財政担当相として入閣する与謝野元官房長官を起用していますが、その際に麻生さんの見据えた税制論議こそ、民主党政権下で小沢氏が最高実力者であった鳩山内閣期には沈静したものの菅内閣期に具体的に浮上して今に至る消費増税の源流であると位置づけられます。
その点、麻生さんが現在税率引き上げの必要性を訴えていることは必然的なのであり、その経緯は今の税制論議について巨視的な視点を与えるものとなるでしょう。

さて、反増税と国際感覚のない大量の通貨供給・国債発行を同時に唱えてばかりいる「国債神話」が無責任かつ不誠実でもはや世界で通用しないことは、党で財政出動を主導する勢力と税率引き上げを主張する勢力が重なっていることに照らしても明らかだと言えます。
安倍さんは6月にまさに国際舞台であるG8直後にベルファストで会見して「経済再生と財政健全化の両立が必要だとし…消費税率の引き上げに関しては「国の信認を確保するためにも引き上げが決まっているものだ」」(ロイター、13.6.19-7:51)と発言していますが、それに示されたのは国際感覚と責任のある政治家によるリアリスティックな政治判断にほかならなかったでしょう。
ここで「国の信認」とは国債の大量発行などによる財政規律の悪化への懸念であるのは自明ですが、安倍さんは続けて「経済は生き物なので4、5、6月の数字をみて総合的に判断したいが、基本的には財政健全化に向けてしっかりと歩みを進めていきたい」と述べており、そこには、既に指摘した「安倍さんの財政再建への意識」と、ひいては「国債神話」に偏重しない姿勢が端的に表れています(9日発表の「4、5、6月」期の実質GDP改訂値は年率3.8%増と、速報値の2.6%から上方修正され、甘利経済再生担当相はそれを引き上げの「好材料」と指摘)。
元来消費増税に否定的であった竹中さんも8月31日の『朝まで生テレビ!』内で「政治のリアリズム」を説いて税率引き上げを容認する立場をとっていましたが、財政状況について、もはや近視眼的に日本一国の問題では済まない現実が直視されねばならないのでしょう。
また、党内で税調の野田元自治相や額賀元財務相といった長老重鎮が環境整備に当たっていることを看過できないのも、「政治のリアリズム」に含めてよいでしょう。

安倍さんが来年4月の消費税率引き上げの意向を固めたことで、自民党の経済政策はアベノミクス=成長戦略とデフレ対策としての財政出動に加えて財政再建が目指されることになって、全方位的になりました。
しかしそれは以前にも指摘したように、昨年7〜9月にかけての党内の動きに既に兆していたと言うべきでしょう。
すなわち7月に二階総務会長代行が国土強靱化計画を発表、8月に当時総裁であった谷垣法相が消費増税法案の成立への協力を決定、9月に安倍さんが新成長戦略勉強会を勢力基盤の一つとして総裁に復帰していますが、それぞれ財政出動、財政再建、成長戦略を象徴するそれらが相次いで起こったことは、今の全方位的経済政策の素地であったと位置づけてよいのでしょう。

今回の税率引き上げの要諦は、それが元来は消費増税に慎重で成長戦略を重視する安倍さんによって判断された、という点にあるはずです。
すなわち、消費増税ありきであった民主党政権と元来が経済成長を追求してきた安倍さんとでは、財政再建と両立されねばならない成長戦略への取り組み方が違ってくるのは必然だからです。
消費増税への第二次安倍政権のスタンスが物語るのは、財政再建の高い必要性に直面する日本は国際感覚を持って「国債神話」を建前にした反増税論から厳に脱却すべきであることと、成長戦略を本質とするアベノミクスおよび財政健全化を意識する安倍さんの経済政策を、金融緩和と財政出動に惑わされて単純なケインズ的政策として牽強付会に曲解してはならないことに違いありません。


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