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2週間ほど前まで山梨県鳴沢村の河口湖畔の別荘で11日間の華麗な夏休みを過ごしていましたが、今次の外遊は一転、足掛け54時間で世界を一周するという強行スケジュール。 ところで、1964年10月の先の東京オリンピックの東京開催が決定したのは1959年5月、ミュンヘンでのIOC総会でのことですが、当時の首相は安倍さんの敬愛する祖父、岸信介さんです。 岸さんはその際ミュンヘンには行っていないものの、安倍さんはブエノスアイレスで岸さんと同じように、その首相在任中に東京のオリンピック開催を勝ち取ってくると信じたいと思います。 ブエノスアイレスでのIOC総会に先んじたG20では、ロシアはサンクトペテルブルクを訪問。 そこではシリア情勢に関する意見も交換されましたが、米欧による軍事介入の行方はどうなるでしょうか。 イギリスのキャメロン首相は既に議会の反対によって介入不参加を決めていますが、旧宗主国のフランスのオランド大統領は積極的、そしてアメリカはオペレーションの実施に向けてオバマ大統領が議会の同意を得るのに注力しているとされます。 日本では安倍さんが3日にオバマ氏との電話会談で「両国が緊密に連携していくことで一致」(『産経新聞』13.9.3-13:16)、同じ日には来日中のジリブランド上院軍事委員会人事小委員長などとの会談で「情勢悪化の責任はアサド政権にある」(時事通信社、13.9.3-18:12)と伝えるなど、米仏による介入があればそれを支持する方針にありますが、米国議会の判断が不透明なことや、ロシアが強く反対していることなどは懸念材料として、政府にシリア問題で「突出を避け、慎重に対応を決める構え」(時事通信社、13.9.3-18:24)を取らしめている状況もあります。 しかし、日米安保体制を外交機軸とし、それを周辺への抑止力とする日本にとって、その裏付けである軍事力の実際の行使を米国が躊躇あるいは断念する姿を示すことは、大きなマイナスであるとせねばならないでしょう。 そうだとすれば日本にとっては、一方では米国が「ぎりぎりまで国際社会の合意形成に努め、環境整備をしてほしい」(同上)としつつも、国際の平和及び安全の維持に寄与する存在として健在であるのを示すことに期待するのが、日米安保体制でのあるべき姿であるとすべきでしょう。 なお、日本とは北方領土問題を係争するロシアは、しかし、極東にとどまらず、日本が今後積極的に関与すべき地域である北極圏(日本は北極評議会に中国、韓国とともにオブザーバー参加)においても安全保障やエネルギーの問題でいよいよ重要な隣国であり、シリア問題やあるいはスノーデン事件による米露の対立の深刻化が望ましくないのは自明です。 安倍さんは超党派の北極圏安全保障議連で会長を務めてもおり(幹事長は小池元総務会長)、政権には対露外交について、これまでより視野の広い意識があると言ってよいでしょう。 日露関係では20世紀初頭、満州問題による日露戦争後にはむしろ接近して、両国は1907年から16年までに、満蒙や朝鮮半島での勢力範囲や特殊権益に関して計4次に渡る日露協商(日露協約)を締結、ロシア革命勃発による17年3月の帝政崩壊まで友好関係を築くようにまでなった歴史は示唆的ではないでしょうか。 ■さて、安倍さんは先月河口湖畔の別荘で夏休みを過ごしましたが、その間に党内の派閥の多くが研修会を開催したことから、党内における派閥勢力の影響力や、それと安倍さんの政権運営の関係について指摘する報道が相次ぎました。 その中には派閥の「復権」の一方で、実は「ポスト安倍不在」による「衰退」を指摘する記事(『産経新聞』13.9.1-23:49)もあり、各派の勢力伸長という状況からは自ずと想定できる安倍官邸の党に対する主導権の相対化という展開は兆していないと言ってよいのでしょう。 なるほど確かに、安倍体制では野党時代には総務会長に安倍さんと同じ町村派の細田幹事長代行、政調会長に安倍さんと元来近い甘利経済再生担当相という実力者が起用されたものの、政権復帰後はそれぞれの後任に今の野田総務会長と高市政調会長が充てられ、それに石破幹事長を併せて党四役中3人が無派閥であるのが「官高党低」とも称される状況になっています。 安倍さんはかつて官房副長官や官房長官として、党に対し強い主導権を持った小泉政権期の官邸に詰めた経験があるほか、肝煎りの日本版NSC構想も官邸の機能強化と不可分であるなど、官邸の主導権を志向していることが窺え、それが党との関係においても奏功しているということになるでしょうか。 例えば、先の参院選後の参院人事では官邸が主導権を発揮することに拘っており、町村派が山崎議長、岸田派が溝手議員会長、額賀派が脇幹事長を輩出することが決まったほかに、町村派から伊達前参院幹事長代理が国対委員長に内定していることは、官邸の意向に沿う格好になったということかもしれません。 幹事長代行の細田さんや二階総務会長代行といった派閥の実力者を「代行」格にとどめていることも、派閥勢力を取り込もうとすると同時に、それを組織のシステム上抑えて、党に対する官邸の主導権を強めていると考えられるでしょう。 また、通常は会長のみが党の政調会長代理を兼ねる参院の政審で、橋本会長に加えて宮澤同代理にまで政調会長代理を兼任させたのも、独自性の強い参院を党や政調を通じて掌握しようとするものであったと考えてよいかもしれません。 ところで、上出『産経新聞』が派閥衰退の予兆として挙げる「ポスト安倍不在」は、実際どうでしょうか。 記事は町村派以外の「他派に「ポスト安倍」候補が見あたらない」として、額賀派については会長の額賀元財務相を「総裁に推す声は聞かれず」、岸田派については会長の岸田外相以下4閣僚を輩出している現状では「独自色を打ち出すことは難しい」と指摘しています。 しかし、額賀派では額賀さんは派閥オーナー的な会長なのであり、それに代わって茂木経産相が、岸田派では岸田さん自身が、将来的に首相候補となることは十分考えられるでしょう。 茂木さんはこれまで金融担当相や政調会長、岸田さんは沖縄・北方担当相や国対委員長を歴任しているほか、安倍さんの党運営において大派閥を協力的に参画させるために今後も閣僚や党役員として処遇される可能性が高いとすれば、実績やキャリアを積み増して首相候補としての地位をいよいよ固めると想定してよいのではないでしょうか。 また、茂木さんや岸田さんの台頭の一方で、先の総裁選では両者を推薦人として額賀派と当時の古賀派を基盤にしていた石原環境相は、山崎元副総裁から引き継いだ派閥が勢力を大きく減じているほか、両者の「独立」とそれぞれを総裁候補に押し立てるだろう額賀、岸田両派の「独自路線」によって勢力を弱めていると考えられ、その知名度に比して、首相候補からは脱落していると言うべきかもしれません。 石原派の退会者としては現在無派閥の甘利さんや渡海元文科相、田中元副幹事長、麻生派に移った原田元筆頭副幹事長などが挙げられます。 甘利さんについては都度指摘しているように、山崎さんが派閥会長ながら落選中で石原さんも幹事長として派を離脱していた11年6月、翌年9月の総裁選も見据えて所属議員を中心にさいこう日本を立ち上げたものの、派内の主導権は石原さんに渡り、総裁選で派閥から安倍さんの推薦人となったのは甘利さんのみでした。 しかしその安倍さんが総裁ついで首相となるのに伴って甘利さんも経済再生やTPPという重要課題を担当する政権の実力者となったのは石原さんとのコントラストをなしていて、それは甘利さんも華々しく復権したことを象徴するものであると言ってよいでしょう。 また、田中さんは選挙区は神奈川10区ながら出身は安倍さんの地元の下関市、原田さんは麻生副総理と同じ福岡出身であり、両者が総裁選で安倍さんと争った石原さんの派閥を離れたのは、政権実力者との地縁を頼む動きでもあったかもしれません。 渡海さんは第一次安倍内閣期の07年参院選敗北後、小坂元参院幹事長などとともに安倍さんに対する批判的な動きの中心でしたが、今やそれが非主流的な石原派を退会していることは、安倍さんの党内求心力の復活を象徴するものと見たいと思います。 さて、以上のように額賀派が茂木さん、岸田派が岸田さんをそれぞれ首相候補とするようになるかと考えられる一方、現在の総裁派閥である町村派はどうでしょうか。 町村派は総裁選で対応が分裂したものの今や総裁派閥として結束していることは、総裁選で町村元官房長官を支持した細田さんや橋本さんなどが要職に起用されたことや、既述の通り官邸が関与したという参院役員人事で伊達さんが参院国対委員長に内定していることに表れていると言えますが、安倍さんの次の総裁候補となり得る実力者が今のところいないのが実態でしょう。 上の『産経新聞』によれば町村派は参院選を経て88人を擁する党内最大派閥となっているのに加え、安倍さんが更なる拡大を図っているとされ、それは町村派が総裁派閥であるうちは結束して政権運営にプラスであるとしても、安倍さんが将来的には父、晋太郎元官房長官も率いた派閥を継承する可能性を考えたとき、派独自の総裁、首相候補を擁さないことは派閥の結束が弱まる素地であり、今後の課題となるでしょう。 なお、安倍さんが総裁選で町村派より創生「日本」を中心とする保守派を主に勢力基盤としたように、既存派閥とは別の「保守派」も独自の勢力として見ることができます。 党内保守派は安倍さんの忠実かつ安定的な支持勢力と見なしてよいと思われますが、その中で、グループの結集軸となる将来の首相候補としては誰を挙げられるでしょうか。 それには新藤総務相、また今後の閣僚や党役員として台頭すると思われる西村元政調副会長、柴山前副幹事長などが考えられますが、党内保守派に対しては安倍さんがオーナー的に強い影響力を持ち続けることになるでしょう。 党内各派閥、グループの情勢については以上のように考えることができますが、それに、事実上の石破派ともされる無派閥連絡会を率いる石破幹事長を含めて、各領袖級の実力者が政権に参画してそれを支える中で将来の首相候補として浮上してくる、というのが今後の党内の大まかな流れになる可能性は看取してよいでしょう。 そしてそれは安倍さんや麻生さん、谷垣法相や福田元首相などの実力者が揃い、かつ競った小泉政権に通じる構造の予感でもあり、長期政権維持の要訣であると言い換えられるでしょうか。 なお、小泉長期政権のうちには額賀さんや高村副総裁がその間の世代交代によって総裁候補から脱落していった経緯があり、茂木さんや岸田さん、石破さんなどいずれも安倍さんより1〜3歳若いだけの今の実力者たちが、「安倍長期政権」のうちに焦慮を抱くようになることは、あるいはあるかもしれません。 そうだとすれば、15年9月の次の総裁選で安倍さんへの統一的な対立候補が擁立されるリスクを回避するためにも、党内各実力者各勢力に対し求心力を持って、それを挙党的に取り込む必要性がいよいよ高まるのは明らかです。 その点例えば、現在俎上に乗る消費増税というリスキーな課題に対して、町村さんや額賀さん、野田元自治相や中谷元防衛庁長官といった重鎮が揃って協力的に、「安倍首相が消費増税を決断しやすいように環境づくりをすることが我々の使命だ」(額賀さん、『朝日新聞』13.9.5朝刊)などとしていることは安倍さんの今後の党運営の成功例となるかもしれません。 それは逆に言えば、消費増税ひいては財政再建という国際公約的課題を先送りすることが、将来的に党内で「非安倍路線」の温床や口実となって政権運営や党操縦の上でのリスクとなる可能性があるということでもあるでしょう。 (R) |

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