戦後レジームからの脱却

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最近の諸問題について ケータイ投稿記事

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■先月20日に小渕前経産相と松島前法相が辞任しましたが、28日の『朝日新聞』朝刊によれば、「ダブル辞任」は菅官房長官と今井首相秘書官が安倍さんに進言、翌19日に安倍さんと菅さんが「シナリオを詰めた」とのこと。
菅さんはまた谷垣幹事長と面会した17日夕には「ダブル辞任を視野に入れ始めてい」て、19日には松島さんに会って「できれば小渕氏と同じ日に辞任してほしい」と打診したともされており「ダブル辞任」を主導したと言えるほか、「長期政権の実現を狙う菅にとって最優先は、2閣僚の事情ではなく政権の立て直しだった」と指摘されていて、菅さんの危機管理に果たした役割の大きかったことはやはり明らかであるでしょう。
ところで、25日11:55の『読売新聞』は、菅さんが小渕さんと松島さんの辞任した20日の朝に佐藤国対委員長と協議していたことも伝えますが、一連の問題で、その佐藤さんの存在感は党で目立ったと言えます。
すなわち、その「国会審議の早期正常化」のための菅さんとの協議のほか、前回も紹介したように松島さんに対し「本人に口頭で注意」(『産経新聞』14.10.14-19:26)をし、29日には「今国会について「崖っぷちにいる」と強い危機感を示し」て「「…もう勘弁してもらいたい」と胸中を吐露」し(時事通信、同日20:13)、安倍さんも28日夜に佐藤さんおよび公明党の大口国対委員長と会食した際に「陳謝」(産経ニュース、同日23:33)。
前回は小渕さん松島さんの問題や対露、対中外交から従前の政高党低はやや後退したとするべきかと指摘しましたが、その後25日8:24の時事通信記事は菅・佐藤協議の行われたのと同じ20日朝に安倍さんが二階総務会長に電話をして「ともに頑張りましょう」と「結束を呼び掛けた」ことを挙げて「「政高党低」を快く思っていないとされる二階氏への協力要請は、官邸と党の力関係の変化を暗示しているかもしれない」と結んでいるのであり、佐藤さんの一連の動きも、同じように考えてよいのではないでしょうか。

佐藤さんは国対で委員長代理や筆頭副委員長を歴任して国対経験が長く、13年10月の委員長就任は満を持したものだったと言えます。
3月25日には集団的自衛権の問題で行使解禁に関する安保法制懇の報告書の提出時期について、政府が「「4月」を想定してい」たのに対し、国対委員長ながら「5月の連休明けでもいい」と「公然と先送り論を主張」して「官邸に強い衝撃を与えた」と報じられた(『産経新聞』翌日11:30)こともあったものの先の人事で再任されたのは、国対通であることへの評価によったのでしょう。
そして現在は所属する谷垣グループ領袖で幹事長の谷垣さんの下で党運営に参画しており、麻生内閣での閣僚経験に加え党務を通じて地歩を築いているのかもしれません。

■既出25日11:55の『読売新聞』は「菅官房長官が抱える主な政治課題」を図示して「12月の消費税率10%への引き上げ判断」を挙げますが、それに関しては、22日に開かれた議連「アベノミクスを成功させる会」(以下「成功させる会」)の会合に触れねばならないでしょう。
翌23日の『朝日新聞』朝刊によれば議連は「消費税率10%への引き上げ延期を求める」もので、会長の山本元経産副大臣は「次の増税は慎重にタイミングをはかるべきだ」などと挨拶。
12月上旬にも最終判断を控える安倍さんは元来消費増税には慎重な立場で、会合には側近の西田前副幹事長や「経済政策のブレーンで延期論を主張」している本田内閣官房参与も出席したほか、議連の「前身」である「デフレ・円高解消を確実にする会」(以下「確実にする会」)は13年1月25日15:50のブルームバーグ記事によれば野党時代に安倍さんが会長だった「日銀法改正でデフレ・円高解消を確実にする会」を同月、山本さんが会長になって「再スタート」(31日に初会合)させたものなのであり、安倍さんがそもそも関わり深かった動きであることはよく窺えるでしょう。
22日に42人を集めたその会合は、党税調や公明党、財務省などの税率引き上げ積極派に対するデモンストレーションとして、安倍さんが「経済の行方次第では引き上げ延期も選択肢にフリーハンドを保」ち、「一方、予定通りに上げる場合でも、財務省が渋る減税や大規模な経済対策と引き換えにす」ることの伏線になると言えるでしょう。
同じ日には党税調も勉強会を開いて会長の野田元自治相以下70人超が集まっていますが、それは「税率引き上げを先送りすれば…財政への信認が失われる可能性」から、予定通りの15年10月の10%増税を求めたもの。
ここで「財政への信認」とは安倍さんも対外的に「Buy my Abenomics」と言ったように成長戦略(第3の矢)の前提であり、同時に、国債発行の比重も大きいデフレ対策としての金融緩和と財政出動(第1、2の矢)の前提でもあるのであり、すなわちそれがアベノミクスの基盤であることは論を待ちません。
西田さんは「財政規律より、デフレ脱却を優先させるべきだと強調した」とされますが、財政規律=「財政への信認」が失われればそのデフレ脱却も立ち行かなくなる可能性もあるのが、安倍さんを悩ませている点であると言えるでしょうか。

ところで、上述のように山本さんの「成功させる会」の前身は安倍さんが会長だった「確実にする会」ですが、安倍さんと山本さんの経済政策を通じた繋がりはそれより古く「増税によらない復興財源を求める会」にまで遡るべきでしょう。
同会は東日本大震災からまもなく復興財源について11年6月16日に「増税ではなく、日銀による復興国債の全額買い切りオペで調達することを求める声明文を決議」(ロイター、同日16:47)していますが、その方法論がアベノミクスの特に金融緩和に共通することは自明でしょう。
上出ブルームバーグ記事によれば同会や「日銀法改正でデフレ・円高解消を確実にする会」を「再スタート」させたのが「確実にする会」(すなわち「成功させる会」の前身)であるといい、ここには政策的な系譜を見て取れます。
同会では安倍さんが会長、山本さんが幹事長を務め、山本さん自身、それを安倍さんとの接近の「きっかけ」(『日経新聞』14.4.14-3:30)と語っているのであり、山本さんが「アベノミクスの「仕掛け人」ともされる」(『朝日新聞』14.10.10)のも故のないことではありません。
10月3日20:59の「産経ニュース」によれば山本さんは同月1日にも本田さんを講師に「岸田派の若手議員約10人が参加」した勉強会を開いており、慎重派の中心としてその動きは活発であると言えるでしょう。
山本さんは、谷垣さんや税調会長の野田さん、前同小委員長代理の宮澤経産相と同じく、増税推進派の多い旧大蔵省出身であり、その唱える経済政策は経歴的には異色だと言えますが、それは10月4日に紹介したように財務省出身ながら法人減税に積極的な鈴木国対副委員長に通じると言えるでしょうか。
鈴木さんは「次世代の税制を考える会」幹事世話人ですが、それは菅さんと連絡している「別働隊」とも見られているのであり、「山本氏は菅氏と連携して動いているとされ」(『産経新聞』14.10.28-7:55)るというのも併せれば、消費再増税の先送りや法人減税といった党税調や財務省と温度差のある一連の政策を後援する、あるいは安倍さんがそれらを選択する余地を確保しておこうとする動きが菅さんに収斂することは間違いありません。
それをまさに示唆しているのが、菅さんが10月6日に山本さんの勉強会(上述の1日のものでしょうか)について「当然だ。…党内で議論するのは自然なことだ」(産経ニュース、同日11:55)とし、22日の「成功させる会」会合についても「議論を行うことはいいことだ」(時事通信、同日16:39)と述べて擁護していることでしょう。
また、菅さんと同じく安倍さんの盟友で、法人減税に積極的であるなど政策的に党税調や財務省と距離のある甘利経済再生担当相は21日、税調から入閣し「財務省より財務省寄り」(『朝日新聞』23日朝刊、既出)とされるという宮澤さんに関し、その就任初日の21日、「「成長志向の税制改革をせよという…使命を受け止めて就任されたと思う」と述べ…“税調気分”を封印するよう牽制」(『産経新聞』同日11:00)。
それは、税制を巡る路線対立の端的な表れだったでしょう。
また、官邸・政府と党税調が食い違う税制問題の行く末は、「政高党低」の消長にも直接に関わると言えるでしょうか。

ところで、山本さんについては12年1月5日の記事で地盤の福岡10区における総選挙の際の西川前文科副大臣との公認争いについて紹介しましたが、それはそこでも述べたように、福岡出身の実力者である麻生副総理兼財務相および古賀元幹事長の関係に関わるでしょう。
すなわち西川さんは麻生派所属で公認問題では麻生さんの後ろ盾を得た保守派であるのに対し、山本さんは岸田派の所属で、13年6月には古賀さんなどとともに超党派の訪中団に参加していて、リベラル派の古賀さんに近いと言えます。
山本さんは6選で経済政策で安倍さんに近く来年9月に予想される内閣改造での初入閣も考えられるものの、麻生さんとの距離感を考えれば、それは見送られてむしろ「女性活躍」の方針にも合致する4選の西川さんの初入閣が先んじることになるのかもしれません。
山本さんと路線を異にしている野田さんは最後に閣僚を務めてから15年が経ちますが、税制で安倍さんの意を汲んで取りまとめに奔走するとすれば、こちらも次の内閣改造での処遇があるいはあるのかもしれません。
現在石原派の閣僚はいませんが、来年9月の総裁選で安倍さんが再選されれば閣僚は党内各派閥・グループから万遍なく起用されることになることが考えられるとすれば、野田さんは既に3度入閣しているとはいえ石原派の閣僚候補に挙げてよいのではないでしょうか。

■「菅官房長官が抱える主な政治課題」にはまた「TPPの交渉進展」も挙げられています。
TPPについては甘利さんがオーストラリアでの閣僚会合からの帰国後の28日「大筋合意について、「…時間的余裕がない」と述べ、越年の可能性を改めて示唆」(時事通信、14.10.28-19:06)しましたが、党内では10月4日の記事で紹介したように慎重派だった森山選対副委員長と宮腰元農水副大臣が9月、TPP対策委員長と同代理にそれぞれ就任しているのであり、もはや安倍さんや菅さんなどの推進派の優勢は揺るぎません。
森山さんは閣僚会合に同行した際には「甘利TPP担当相を支える立場で頑張っていきたい」(時事通信、14.10.24-20:44)と述べているほか、TPP対策委員長就任に伴って、慎重派の牙城だった「TPP交渉における国益を守り抜く会」の会長を退任。
更に同会の今の会長は24日15:46の時事通信記事によって安倍さんと近い江藤前農水副大臣であることが知られるのであり、税制と同じように党内を二分したTPPについては、しかし「官邸主導」によって「政高党低」がより色濃いと言うべきでしょう。
宮腰さんは第2次安倍内閣の発足に当たって農水相としての初入閣が取り沙汰されたものの、実際には見送られて3ヵ月前の12年総裁選に立候補した林前農水相が起用されましたが、それは「総裁選後体制」で党内融和を図る必要があったのに加え、宮腰さんがTPP慎重派であるのが敬遠されたためでもあったかもしれません。
しかし上述の通りTPP推進が今や既定的で宮腰さんも今は党対策委でTPP推進のラインにあり、また10月4日の記事でも紹介したように安倍さんや菅さんの進める農業改革では減反廃止について、江藤さんを連絡役に妥協・協力したのであり、農水相就任のハードルは下がっていると言えるでしょう。
宮腰さんは山本さんと同じ6選で岸田派所属であり、次の内閣改造で上述のように山本さんではなく西川さんが初入閣する場合、岸田派からは宮腰さんの起用が有力になるのではないでしょうか。
また、先の人事で初入閣した西川農水相の後任の党TPP対策委員長で宮腰さんより年長の森山さんも、石原派の農水相候補であるでしょう。

政権の危機管理や税制、TPPという最近の諸問題については、今後の政局の山場となる安倍さんの総裁再選によって成立する「第2次安倍第2次改造内閣」を意識しつつ以上のように窺えるでしょうか。


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■前回は、先の人事を経て12年9月以来の「総裁選後体制」が解消されたと言えることを主に麻生副総理兼財務相と菅官房長官の周辺を検討して指摘しましたが、両者と並ぶ政権の重鎮である甘利経済再生担当相の周辺はどうでしょうか。
甘利さんは11年6月、自ら代表世話人として派閥横断型の政策グループ「さいこう日本」を結成。
それについて「準派閥的な存在にしていくことを強調し」、「事実上の「甘利派」結成で…党総裁選出馬をにらみながら活動するとみられる」ともされましたが(『産経新聞』11.6.23-7:56)、翌12年総裁選では安倍さんの支持に回り、その陣営で責任者を務めて安倍さんの勝利に貢献。
その後の人事では政調会長に充てられましたが、それが、総裁選では決戦投票まで競って幹事長とされた石破地方創生担当相が、安倍さん側近ながら当選回数が少なくて(当時3選)優位を見込める加藤官房副長官を推挙したのを安倍さんが退けた結果だったことは都度述べているとおりであり、安倍さんは甘利さんに石破さんへの抑えを期待したと言ってよかったのでしょう。
また同時に、党に新設された日本経済再生本部で本部長代理を務め、同年12月発足の第2次安倍内閣には経済再生担当相として入閣、先の人事でも留任が早々に決まり、TPPや法人減税などのアベノミクスにおける成長戦略を主導していることは改めて詳述するまでもありません。
甘利さんは昨13年6月12日の会見で政府・産業競争力会議としてまとめた成長戦略を「日本再興戦略」と名付けましたが(『産経新聞』同日23:07)、その「再興」とはさいこう日本の名称と意欲を投影させたものだったのでしょうか。

甘利さんとさいこう日本については、9月12日にその定例会で甘利さんが「次の内閣改造・党役員人事では、グループ所属議員を積極的に起用するよう安倍晋三首相に働きかけていく意向を明らかにした」(『産経新聞』同日14:44)と報じられましたが、これは当初「事実上の「甘利派」」と指摘されたようにさいこう日本の派閥化であり、甘利さんが政権の重鎮として党内で求心力を持ち、それを強めようとしていることを見て取れるでしょう。
また、先の人事では小泉農水副大臣や山際経産副大臣が起用され、町村派から参加する高木国対筆頭副委員長が松本政調会長代理の後任として再登板するなどしたものの閣僚は甘利さんだけだったのでもあり、その求心力の維持を意識したものでもあったのでしょう。
さいこう日本では、その結成と参加者を載せる既出11年6月23日7:56の『産経新聞』に基づけば、平沢前政調会長代理と田中元財務副大臣が6選で初入閣候補にまず挙げられるでしょうか。
そのうち平沢さんは元来所属している石原派に今も在籍していますが、田中さんは石原派の前身の山崎派で会長だった山崎元副総裁が引退した12年総選挙の後に退会して現在は無派閥。
平沢さんは安倍さんの元家庭教師であるものの選挙区が東京17区で、同じ東京で8区を地盤とする石原元幹事長とも12年総裁選ではその推薦人となったように近いと言えるのに対し、田中さんは12年6月2日のメルマガで紹介があったように出身地が安倍さんの地元の下関市で、選挙区は甘利さんと同じ神奈川県内(13区と10区)。
先の人事では平沢さんが政調会長代理を退任したのに対し、田中さんは環境副大臣から組織運動本部長に異動して引き続き役職を得ており、それらに鑑みて、あるいはさいこう日本では田中さんの初入閣が有力なのかもしれません。
前任が先般初入閣した竹下復興相であるのも、それを思わせます。
田中さんはこれまで党政調の環境部会長や副部会長、衆院環境委の野党筆頭理事を歴任しているので、環境相の候補に挙げられるのではないでしょうか。
なお、既出11年6月23日7:56の『産経新聞』が伝えるさいこう日本の参加者は21人で、そのうち甘利さんと同じ神奈川県内を地盤とする議員が上出の田中さん小泉さん山際さんのほか、義家副幹事長と川口元外相の6人(義家さんと川口さんの当時の選挙区は参院比例区)と少なくなかったことは特徴だったでしょう。
また、分派元の山崎派所属議員が11人で最多であり、これはさいこう日本の結成が、会長の山崎さんが09年総選挙以来落選中だった派内で甘利さんが主導権やあるいは派閥の継承を窺ったものだった可能性を思わせますが、それには、同じく派内の実力者だった石原さんとの競争が関係するでしょう。

石原さんは当時幹事長で派閥を離脱していましたが、12年総裁選で派内ではさいこう日本に参加しなかったベテランの田野瀬元総務会長や長老の野田元自治相、さいこう日本メンバーでも上述の平沢さんのほか林総務会長代理と坂本副幹事長がその推薦人となっていて、派内では石原さんが優位だったと言えます。
しかし、総裁選で甘利さんの支持した安倍さんが勝利し、石原さんが敗北すると、派閥では石原さんが会長になる前後(12月)までに退会者が相次いで、甘利さん以下山際さんや小泉さんのほか渡海元文科相、石田元財務副大臣、金子政調副会長がさいこう日本専属となり、石原派は党内最小派閥に転落。
その後の第2次安倍政権では甘利さんの活躍とさいこう日本の派閥化強化が先述の通りであるのに対し、石原さんは環境相に甘んじ、先の人事で退任して現在は無役、派閥からの閣僚・党四役の起用はなく、前体制の政調会長代理5人のうち安倍さんと近い塩崎厚労相や山谷国家公安委員長、谷垣幹事長に近い棚橋同代理が異動して処遇を受け、兼務する宮澤参院政審会長代理が留任したものの、所属の平沢さんは退任してこれも無役であるなど石原派の不遇は顕著であるとせざるを得ません。
すなわち、甘利さんは石原さんとの派閥の主導権争いには敗れたものの、安倍さんと連携してかえって政権で活躍の場を得、党内での影響力を持ったと言えるでしょう。

さて、ではそのような甘利さんは総裁選後体制の党内でどう位置づけられるでしょうか。
前回取り上げた麻生さんと菅さんは総裁選後体制の党内で石破さんと派閥やポストに関する問題が見られたのに対し、甘利さんが利害を対立させたのはむしろ石原さんだったことは小さくない相違点であるでしょう。
すなわち石破さんが総裁選敗北後も先の人事まで安倍さんのライバルであったのに対し、石原さんは上述のように総裁選敗北後まもなく失速して脅威ではなくなっていたのであり、石破さんに関するような緊張感のある総裁選後体制は、石原さんに関しては自ずから成立し得なかったと言えます。
しかし、甘利さんと石原さんの明暗が12年総裁選の産物であるとすれば、両者の関係もまた広義の総裁選後体制であるとも言え、更に総裁選後も石破さんに呻吟した安倍さんのそれが「マイナス」的だったのに対し、石原さんに対して早々に優位を得た甘利さんのは「プラス」的だったと言えるでしょうか。
先の人事で安倍さんなどが「マイナス」の総裁選後体制を解消したことは、甘利さんの従前確立されていた「プラス」のそれと合わせて、政権が安定の度を増したことに繋がったと言えるでしょう。

甘利さんは昨13年12月に健康問題により辞意を示すも安倍さんから慰留され、3週間の療養を経て公務に復帰しましたが、それは甘利さんが政権に欠くことのできない存在で、安倍さんからの信頼の厚いことを物語っていました。
前回記事では12月に衆院の任期が折り返して解散総選挙も現実味を帯び始めることから来年9月の総裁選に伴う人事では菅さんが満を持して幹事長に転じる可能性に改めて触れましたが、その後任の官房長官に甘利さんを挙げることは十分に可能でしょう。
今の安倍官邸では安倍さんとは経済・通商政策やエネルギー政策を共有する経産省が今井、柳瀬両首相秘書官を輩出するなど存在感を持っていますが、甘利さんも安倍さんとそれらの政策を共有し、第1次安倍内閣で経産相を務め、第2次安倍政権ではアベノミクスによる経済再生を牽引しているのであり、安倍官邸における官房長官として菅さんに遜色なく相応しいはずです。
また10%増税が来年10月から実施される場合、景気対策にいよいよ注力するとの文脈で、その直前9月の人事で甘利さんを官房長官に異動するという考えもあり得ることでしょう。

甘利さんは先の人事で留任がいち早く固まったとされた一方で、その選任に関する報道が錯綜した「幹事長に充てる案が浮上」(『毎日新聞』14.9.1-15:00、同日17:43最終更新)しましたが、同時に、「入閣させる方針を固め」られた塩崎さんが「厚生労働相か経済再生担当相」とされたのは、甘利さんが幹事長に転じた場合に後任となることも想定されたのだったのでしょう。
実際には甘利さんは留任し塩崎さんは厚労相となりましたが、それによるGPIF改革への期待に海外市場が好感して株高が進んだのであり、安倍さんの盟友で成長戦略を重視する改革派・政策通の塩崎さんは、甘利さんの後任の最右翼であるかもしれません。

■その塩崎さんはかつて所属していた岸田派を既に退会していて無派閥ですが、鳩山元総務相が主宰する派閥横断型の政策グループ「きさらぎ会」に参加。
鳩山さんときさらぎ会については7月1日の記事で、鳩山さんが13年3月に「安倍さんから派閥を立ち上げてくれと言われ」て「首相支持のグループ結成を模索し」ていた(『朝日新聞』同年6.7朝刊)ことや、きさらぎ会は既に11年6月に河井元法務副大臣などと「当初は5人程度で結成」されていて「豊かな資金力で急速に拡大し」ていった(『産経新聞』14.6.18-0:43)ことなどを紹介しましたが、今や既に「最大派閥の町村派(93人)を超える110人のメンバーを抱え」(『産経新聞』14.9.30-20:44)ているというほか、額賀派退会が4日に報じられた櫻田副幹事長は鳩山さんなどと「連携していく方向」(『読売新聞』同日10:35)とされるのであり、これもきさらぎ会の「拡大」の一例だと言えるでしょう。
鳩山さんは同日のパーティーでは「首相の長期政権を目指す」、8月6日の研修会でも「あと5年も6年も続けてほしい」(『産経新聞』同日23:13)と挨拶し、4月には集団的自衛権の問題で高村副総裁の唱えた限定容認論を支持しており、安倍さんを支える姿勢が鮮明です。
先の人事できさらぎ会からの入閣は塩崎さんだけでしたが、甘利さんのさいこう日本と同じように「派閥」として、次の人事でも閣僚を輩出することになるのではないでしょうか。
きさらぎ会の規模に鑑みればあるいは複数の閣僚が起用されることも十分考えられますが、そうだとすれば有力なのは上述の塩崎さんのほか、河井さんであるかもしれません。
河井さんについては7月1日の記事でも紹介しましたが、既述のようにきさらぎ会の結成メンバーとして鳩山さんに近いと同時に安倍さんにも近く、12年総裁選では新経済成長戦略勉強会に参加して安倍さんの推薦人に連名したほか、安倍さんと同じ日米同盟論者で6月には超党派議連「日米同盟コーカス」を立ち上げ、訪米を重ねてマケイン上院議員やメデイロスNSCアジア上級部長といった米知日派と会談し、衆院外務委員長も経験(現在は同委員)。
また、安倍さんとの面会も定期的で、最近では8月22日、9月4日と19日、10月1日とほぼ2週間に1回のペースで官邸を訪れていますが、先の人事ではその前に2度(8月22日と9月2日)に渡って安倍さんと面会した塩谷政調会長代行の処遇があったのに鑑みれば、河井さんの動向は次の人事での初入閣の伏線であると言えるのかもしれません。

日ソ共同宣言や日ソ漁業協定で知られる鳩山一郎元首相の孫である鳩山さんは日本・ロシア協会の会長を務めており、10月1日にはその立場で安倍さんと面会して6日からの訪露とプーチン大統領側近との会談予定が報じられました。
また、同日には衆院の地方創生特別委員長への起用も伝えられましたが、それは総務相経験者に相応しいと言えるほか、地方創生は安倍さんが「今国会の最重要課題と位置づけ」(『日経新聞』同日16:01)ているので厚遇であったと言え、外交・内政での活躍が目立ちます。
甘利さんや鳩山さんが領袖の新興グループが事実上の派閥として既存のそれに伍しているのは、その拠る安倍さんが先の人事を経て隆盛する党内情勢に符合します。


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■安倍さんは先の党役員人事で石破地方創生担当相を従前務めていた幹事長から異動するのに成功しました。
そもそも石破さんを幹事長に充てたのは決戦投票までもつれた12年総裁選でその地力を看過できなかったためだったのであり、今回の異動は、その総裁選後体制の一区切りだったと理解できるでしょう。
石破さんは8月25日に出演したラジオ番組で来年9月の次期総裁選に関して「「自分よりふさわしい人がいたら出ないのか」との質問に「そのときの状況による」と答えた」のが「出馬に含みを残した」ものともされ(『産経新聞』同日23:48)、安倍さんもまた次期総裁選を念頭して石破さんの異動を考えたともされたのであり、朝日新聞の星特別編集委員が「今回の内閣改造・党役員人事は、来年の総裁選の前哨戦であることが分かる」(14.8.3朝刊)と記したように、12年9月以来の総裁選後体制を総括したことは15年総裁選への小さくない一歩でもあったと言えるでしょうか。
また、石破さんへのそのような対応を、長期政権を目指す上での「攻め」のリスク・マネジメントであるとするなら、先の内閣改造で麻生副総理兼財務相や菅官房長官それに甘利経済再生担当相という盟友や側近を留任したことは、「守り」のそれであったと位置づけられるでしょう。

■菅さんは、安倍さんが総裁に復帰して石破さんを幹事長とした際には幹事長代行に任じられましたが、上述のように「石破幹事長」は総裁選後体制の産物だったのであり、現在内閣で安倍さんを支えている菅さんはいずれ満を持して、党で安倍さんを支えるべき幹事長の最右翼となるのではないでしょうか。
3月6日の記事でも紹介したように菅さんについては「幹事長として、国政選挙を仕切りたい気持ちが強い」(『産経新聞』14.2.22-12:00)との見方があるというほか、9月10日の『朝日新聞』朝刊は、安倍さんは菅さんの留任を固めた7月頃、「周囲に「菅氏が選挙を陰で支えればいい」と語ったという」と伝え、茂木選対委員長を支える山口、梶山、菅原各同副委員長が「いずれも菅氏に近い」と指摘。
そのうち、東京9区選出で都連会長代理である菅原さんについては2月4日の『朝日新聞』朝刊が、菅さんに「近」くて2月に行われた都知事選ではその「連絡役」を任されたことを伝えており、11年12月3日のメルマガで紹介があった山口さんが安倍さんにと同時に菅さんにも近いことは十分に窺えるでしょう。
また、梶山さんはむしろ石破さんの側近に挙げられることが多いですが、都度述べているように12年総裁選前後から安倍さんと石破さん、あるいは麻生さんと石原元幹事長など、競合する実力者の双方に接近する動きは党内でしばしば見られたほか、菅さんは「安倍さん…の後は石破さんしかいない」(『朝日新聞』14.6.5朝刊)と評価しているとされるのであり、梶山さんが菅さんと石破さんの双方に近いとしても怪しむに足りません。
選対委員会で安倍さん側近の萩生田総裁特別補佐が引き続き事務局長を務め、同次長に菅さんの選出の神奈川2区に隣接する同5区が地盤の坂井衆院議員が起用されていることには、安倍さんや菅さんの選挙指揮に対する意欲が反映されていると言えるでしょう。
なお、選対委には山口さんなど3人の他に森山副委員長が起用されています。
森山さんは「TPP参加の即時撤回を求める会」の会長としてTPP反対派の代表格に位置づけられましたが、9月29日には党TPP対策委員会で西川農水相の後任の委員長に充てられて一転、安倍さん以下TPPを推進する党のラインに組み込まれたと言えるでしょう。
安倍さんや菅さんは農業・農協改革を打ち出し、規制改革会議からは全中の廃止論も浮上しましたが、7月11日の『朝日新聞』朝刊「けいざい深話」によれば森山さんは6月10日の党農林関係部会で「取りまとめを担」い、「廃止」という表現を削除した原案に落着させたものの、その直後12日には「「全中はもう政治活動をやめたほうがいい」と言い切った」ことも伝えられています。
2月6日の『朝日新聞』朝刊の「けいざい深話」は、「党の農業政策のまとめ役」の宮腰元農水副大臣が農業改革ひいては「成長戦略の目玉」である減反廃止で妥協したことを伝えますが、その宮腰さんは9月29日にTPP対策委員長代理に就任したのであり、また9月10日23:02の「産経ニュース」は、TPPについてかつて反対集会で共産党議員とも同席したこともあった稲田政調会長に対して安倍さんが「「昔は反対してたよね」と冷やかし混じりに語」ったことを紹介。
それらが物語るのは農業・農協改革やTPPを推進する安倍さんや菅さんが、それらへの慎重派を今や切り崩して主導的であることにほかなりません。
それは政高党低とも称されたパワーバランスの影響であり、またTPP推進で奔走した西川さんや、減反廃止を巡って宮腰さんとの調整に当たった江藤前農水副大臣などの協力勢力を得たことの影響でもあったでしょう。

さて、町村元官房長官が「首相が『来年9月に党総裁選があれば、そこで人事もあるだろう』といっていた」(『産経新聞』14.9.11-17:59)というように、先の人事が1年9ヵ月ぶりだったのに対し次のは1年後に見据えられますが、12月には今の衆院議員の任期が折り返しを迎えてそれから16年12月の任期満了ないし同年7月の参院選までの間には解散総選挙を想定できるのであり、次期幹事長にはその司令塔たることが最も期待されることになるのでしょう。
もちろん今の谷垣幹事長は総裁として臨んだ10年参院選で勝利した実績もあって解散総選挙がその任期中に行われたりあるいは来年9月に再任されることもあり得ますが、石破さんの処遇を巡る報道でも「首相は将来の解散・総選挙をにらみ…幹事長を自らに近い議員に交代させる意向とみられる」(『朝日新聞』14.8.24朝刊)とあったように、「自らに近」く上述の通り選挙の采配に意欲的な菅さんを幹事長に据え、安倍さん自身に直通する形の解散総選挙に踏み切ることを志向するのではないでしょうか。
それは逆に言えば次の人事のある来年9月までの解散の可能性は低いかと思わせますが、それに符合するのが、8月7日の『朝日新聞』朝刊が解散日程について「勝利し、国民の信任を得れば、安倍首相を総裁選で交代させる理由が消える」と総裁再選戦略とも関連させて「もっとも順当とされる」とした「来夏の通常国会閉会後」という可能性が、先の人事で石破さんの入閣を叶えてリスクを軽減できた分だけ低下したと言えることでしょう。
安倍さんが、「「菅氏が…陰で支えればいい」と語ったという」選挙とは今月の福島と来月の沖縄の知事選や来年4月の統一地方選などのことであると思われ(菅さんが沖縄基地負担軽減を担当するようになったのも、普天間問題が最大焦点の沖縄県知事選に関連するのでしょう)、総裁選後体制では幹事長代行に甘んじた菅さんはそれが改まった今、次の人事を経ていずれ総選挙が現実的になれば幹事長として、「陰」から満を持して「日向」にも現れることになるのではないでしょうか。

■安倍さんの長い盟友で首相経験者かつ派閥領袖の麻生さんは政権随一の重鎮であり、先の人事で麻生派からは山口沖縄・北方担当相や松本政調会長代理が起用。
麻生派では12年総裁選前後などに山口さんや岩屋元外務副大臣が石破さんに接近する分派的な動きも見られましたが、12年12月には石破さんによる入閣推薦が容れられなかった山口さんが今回麻生さんの推しにより初入閣し、これも石破さんが今回安保法制担当相の候補の一人に挙げた岩屋さんは一時政調会長代理への起用が報じられたもののそれを見送られて自身より当選回数の少ない松本さん(6回と5回)がむしろ処遇を受けており、麻生さんは硬軟併せ用いて派内への支配力を強めたと言えるでしょうか。
麻生派内にかつて遠心力が作用したのは石破さんなどが首相候補者として台頭して首相経験者である安倍さんや麻生さんと競ったことを意味しますが、麻生派内の秩序が原状を回復したことも総裁選後体制の解消の事例に挙げてよいでしょう。
ところで、麻生さんは通常国会閉会が迫って既に人事への関心が高まっていた6月19日の夕方、紀尾井町の懐石料理店で安倍さんと懇談していますが、その場にはいずれも麻生派の鈴木馨祐国対副委員長と大家前参院国対副委員長が同席。
大家さんは麻生さんと同じ福岡の出身、鈴木さんは4月に発足した「次世代の税制を考える会」の幹事世話人を務めて財務省出身ながら法人減税に積極的で、5月には税率引き下げを麻生さんに直接申し入れたことを「勇気ある行動」「行動力については感心した」(産経ニュース、14.5.24-7:00)と評価されていて、両者とも麻生さんにごく近いと言えるのでしょう。
鈴木さんは先の人事で国対副委員長に就任しましたが、麻生派の若手のホープということになっていくのではないでしょうか。
「次世代の税制を考える会」については、法人減税に積極的な菅さんの「「別働隊」との見方が強」(産経ニュース、14.4.24-9:54)いともされますが、鈴木さんの地盤の神奈川7区は菅さんの同2区と同じ横浜市内であり、先述の坂井さんのケースと同じように地縁によっても菅さんに近いのかもしれません。

なお、安倍さんは6月19日は麻生さんなどと懇談した後に公邸に戻り、二階総務会長や林同代理と夕食を共にしていますが、これも人事に関連した動きだったのかもしれません。
実際、二階派は先の人事で党では会長の二階さん自らが総務会長、林さんが同代理に就き、内閣には農水相の西川さんを輩出、また参院では三大派閥が主要ポストを占める慣例を破って鶴保政審会長を擁立。
派閥にはいずれも保守系無所属の中村元建設相や山口元外務副大臣、長崎衆院議員を客員会員として迎えていて党外にパイプを持ち、派閥の運営についても、総務会長就任に伴って離脱して会長も退き河村元官房長官を会長代行としたものの、あくまで後任会長を置かなかったことは、依然それに意欲的であることを思わせます。
林さんはかつては今の石原派に所属していたものの前会長の山崎元副総裁が12年総選挙で引退した際に退会して二階派に移っていますが、それには二階さんから参加の誘いがあるいはあったのでしょうか。
また、二階さんとは国土強靱化総合調査会でも総務会と同じように会長と同代理の関係にあり、立場が近いことは鮮明だと言えるでしょう。
二階さんは、谷垣さんとともに中国通の重鎮として日中関係の打開に乗り出すことに前向きであるほか、国土強靱化を首唱し、公明党の漆原常任幹事会長と「週1回のペース」で「議決機関のトップが定期的に会談する」ことを3日にスタートし(時事通信、同日19:16)、捕鯨の伝統がある和歌山出身で党本部や外務省の食堂の鯨肉メニューを発案するなど、独自色の発揮に積極的です。
二階さんは安倍さんとは中国への姿勢や経済政策を異にしますが、それでも第1次政権で国対委員長や総務会長、第2次政権では同代行や再び総務会長を務めているのは、両者ともがリアリストで、かえって妥協点を見出しやすいことによるのでしょうか。
また、二階さんは、かつてともに今は生活の小沢代表に近くて93年に自民党を離党した石破さんとは13年参院選の佐々木元衆院議員の公認問題で対立するなど距離があり、そのことも、石破さんが安倍さんの潜在的なライバルである状況で両者の利害を一致させたことでしょう。
すなわち、安倍さんと二階さんの近年の戦略的な協力関係は、総裁選後体制の副産物的な果実だったとも言えるでしょうか。

■先の人事を経たポスト総裁選後体制での安倍さんの盟友たちのうち麻生さんと菅さん、またそれぞれに関連して二階さんについてや農業・農協改革、それに解散時期などについては以上のように述べられますが、それについては、加えて甘利さんや高村副総裁、更に安倍さん支持を鮮明にしている鳩山元総務相などの周辺についても検討すべきことが多いでしょう。
石破さんの入閣で総裁選後体制がほぼ解消されて安倍さんの党内勢力基盤は強まったと言えるのであり、それに伴って、今後はそれら安倍さんに協力的な党内各勢力の存在感が増すことになるのではないでしょうか。


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■3日、安倍さんは内閣改造・党役員人事を行って第2次安倍改造内閣が発足しました。
今回最大の焦点になったのは、これまで幹事長を務めてきた石破地方創生担当相の処遇と、その後任の人選だったと言ってよかったでしょう。
安倍さんは当初、憲法解釈変更によって集団的自衛権の行使解禁を限定容認したことや、それを受けた個別法改正に関する国会審議に備えると同時に、来年9月の総裁選を見据えて、将来の総裁候補としてライバルである石破さんを安保法制担当相に新任することを図ったものの、石破さんはそれを固辞。
その背景には、側近の浜田幹事長代理や鴨下同特別補佐などの「主戦論」があったとされ、8月24日の『朝日新聞』朝刊は「石破氏を支える議員の間にも…「総裁選をにらみ、閣内に入るより自由な立場で動く方がいい」との声が大勢を占めていた」と報道。
この問題はしかし実際には石破さんが入閣して決着しましたが、その経緯では、安倍さん側からの懐柔や切り崩しがあったことを指摘せねばならないでしょう。
29日23:22の『朝日新聞』は菅官房長官や萩生田総裁特別補佐が「直接の「禅譲論」」を囁いて「入閣要請を受けるよう説得を続け」、石破さんはそれに「心は揺れ動」いた、としているほか、31日22:28の時事通信記事によれば麻生副総理兼財務相が山口沖縄・北方担当相の初入閣を「推薦」。
山口さんは麻生派所属であると同時に石破さんにも近く、7月22日の記事などでも紹介したように12年12月の第2次安倍内閣発足の際にはむしろ石破さんが総務相に山口さんを推薦しています。
その時はそれは容れられず実際には麻生さんの下で財務副大臣に就任しましたが、山口さんは初入閣が石破さんではなく麻生さんの推薦によって叶ったことで、石破さんより麻生さんひいては安倍さんの方に近づいたと考えるべきなのかもしれません。
近いうちの自民党の政権復帰が既に現実的だった12年総裁選で有力首相候補となって勢力を伸張させた石破さんや石原元幹事長の周辺では首相経験者である安倍さんや麻生さんとの軋轢が見られたのであり、麻生派では上述のように山口さんが石破さんに接近し、井上前環境副大臣は同じ東京が地元の石原さんの推薦人に連名、また06年総裁選では再チャレンジ議連を組織して安倍さんを支持し第1次安倍内閣で初入閣した山本元金融担当相や、同じく第1次安倍内閣で防衛相などを務めた小池元総務会長は石破陣営に参画。
西村内閣府副大臣も09年総裁選では安倍さんの支持を得たものの谷垣体制では09年9月から11年9月まで政調会長だった石破さんの下で同副会長や経産部会長を務め、総裁選では二つ隣の席に座っていたのであり、その一時期、石破さんに歩み寄っていたのかもしれません。
それらは既成の実力者と新興の実力者の拮抗という環境で生じた変化だったと言えますが、12年総裁選を安倍さんが制し、麻生さんが政権の重鎮となり、一方石破さんが今回入閣し石原さんが失速したことにより、党内では少なからず以前の勢力図への回帰が進んだのではないでしょうか。
上述の山口さんのケースや、4日に内閣府副大臣に留任され、実務に長く当たって手腕を発揮している西村さんが、安倍さんの次世代の保守派のリーダー候補であることはまさにそれに該当するでしょう。

さて、石破陣営に対してはそのように懐柔や切り崩しが図られてきたと言える一方、強攻策があったこともまた指摘できるはずでしょう。
石破さんは安倍さんから安保法制担当相就任を打診されてそれを固辞すると、その場で代わりに中谷特命担当副幹事長を推挙したとされ、また報道では岩屋元外務副大臣や今回実際に就任することになった江渡防衛相兼安保法制担当相の名前が取り沙汰されました。
そのうち、江渡さんは安倍さんと近い高村副総裁と同じ大島派であるのに対し、中谷さんと岩屋さんはともに石破さんに近いのであり、当選回数で江渡さんを上回る両者が退けられたのは「「石破系」を排除する方針」(『産経新聞』14.8.26-7:55)というまさに強攻策だったと言ってよいでしょう。
なお、岩屋さんは麻生派の所属であり、山口さんが切り崩しの対象となったのとは硬軟が対照的だったことも指摘できるでしょうか。
石破さんの周辺では上述のように浜田さんや鴨下さんが「主戦派」で、山本さんや山口さんが安倍さんや麻生さんにも近いという違いがあります。
鴨下さんは24日に石破さんの安保法制担当相就任について「なかなか受けることは難しいのではないか」(時事通信、同日11:32)と述べ、小坂元参院幹事長もまた前日23日に「幹事長をしっかりやりたいのが本当のところだ」(『毎日新聞』同日18:00)と真意を代弁。
11年9月に政調会長を退任した石破さんに従って鴨下さんとともに額賀派を退会した小坂さんも主戦派に位置づけられると言えますが、今後の追加の人事ではそれら純石破系が冷遇され、山口さんのように主流派系の派閥に所属するメンバーは逆に役職を得るなど、硬軟併せ用いられることも考えられるでしょうか。
また、石破さんが職掌する地方創生の司令塔となるまち・ひと・しごと創生本部では首相が本部長で担当相は副本部長にとどまるほか、総務省と利害が対立したり調整が難航することも予想されますが、安倍さん側近の高市総務相が起用されたことは石破さんが主導権を得ようとするのを牽制するものになるかもしれません。
それらは、閣僚について「石破氏を支持する議員でつくる「無派閥連絡会」からの起用はなかった」(時事通信、14.9.3-19:24)というのと併せて、石破さんに対する強攻策だと言ってよいでしょう。

■石破さんは小坂さんが代弁しただけでなく25日には自ら「幹事長として来春の統一地方選を指揮したいという希望を明言」(『毎日新聞』同日21:12)しているように、その求心力の源泉は幹事長の地位にあることだったと言えますが、副総裁・幹事長以下の党役員人事にはどういうことを考えられるでしょうか。
党役員の体制は安倍さんが総裁に復帰した12年9月以来、従来の三役に選対委員長が加えられて四役に改められていますが、今回一時「四役体制を三役に戻す方針」(『読売新聞』14.8.30-10:38)が報じられました。
しかし後に「一転して存続」が決まり、当初は河村元官房長官の「続投が有力」(『毎日新聞』14.9.2-2:30(同日2:44最終更新))とされたものの、実際には茂木選対委員長が就任。
茂木さんはこれまでにも閣僚や党役員を歴任していて額賀派では内閣での後任の小渕経産相よりも一世代上の首相候補であると言えますが、それは同時に、ポスト安倍においてかつて同じ額賀派に所属していた石破さんのライバルとして有力だということでもあるでしょう。
茂木さんの選対委員長就任はあるいは将来の幹事長への昇格の可能性を思わせますが、そうだとすれば、茂木さんは石破さんの強力なライバルに台頭していくことになるのではないでしょうか。
昨年12月14日の記事でも述べたように石破さんと茂木さんはキャリアや党内、派閥での立ち位置が全く正反対であり、両者が協力関係を築くようになることはあまり考えられません。
その石破さんは今回の人事を前に森元首相や青木元参院議員会長といった、党や派閥に影響力を持つOBと関係を改善しているとされ、あるいはポスト安倍を目指し従来の勢力基盤に加えて長老・ベテランや古巣の額賀派にも支持を広げようとしているのでしょうか。
石破さんと茂木さんが競争するとすれば勢い、茂木さんの方がスムーズに安倍さんとの協調を戦略としていくことになると思われ、安倍さんもまた「禅譲論」と悖反して茂木さんの台頭を促し石破さんへの備えとすることを考えるかもしれません。
安倍さんは8月19日夜から翌20日午前中にかけて山梨県河口湖町にある日本財団の笹川会長の別荘で過ごしていますが、それには「政治の師匠」の一人である森さんや側近の岸前外務副大臣、加藤官房副長官、萩生田さん、石破さん側近ながらかねて安倍さんにも近い山本さんなどに加えて茂木さんも参加しており、それは両者が距離を縮めていることを物語っているでしょうか。
茂木さんの党への異動は、ポスト安倍に焦点を結ぶ石破さんの動向に関わっていくかもしれません。

ところで、青木さんはかつて集団的自衛権行使解禁のための憲法解釈変更について「無理しすぎだ。落ち着いてやらんといかんわね」(『読売新聞』14.4.18朝刊)と述べて安倍さんを批判し参院の慎重論を演出したほか、今回の人事でも石破さんに安保法制担当相の固辞を勧め、一時幹事長への抜擢が浮上した小渕さんの要職就任に「慎重ではとの見方もある」(『読売新聞』14.9.1-7:27)とされたなど、安倍さんに対して必ずしも協力的でないと言えるでしょう。
幹事長にはその後、額賀元財務相を「推す声がある」(時事通信、14.9.2-8:56)ともされたもののそれも実現しなかったのであり、あるいはその背後にも青木さんの意向があったのでしょうか。
青木さんはかつて、事前から麻生さん圧勝との見方が強かった08年総裁選では参院票をまとめて与謝野元官房長官にまわし、実際参院からのその推薦人は各他候補の倍以上の7人でしたが、「一強」とも評される安倍さんに必ずしも協力的でないのは、それと同じようなバランス感覚によるのでしょうか。

谷垣幹事長の起用は、高村さんが「重厚なサプライズ」と表現したように、それまで「重厚感かサプライズのどちらか」と言われていたのが両立されたと言えるでしょう。
谷垣さんはかつて自民党の政権復帰に伴って安倍さんから衆院議長就任を打診されたもののそれを固辞していますが、衆院議長を経て首相に就任した前例はないため、谷垣さんのその判断が将来の総裁復帰と首相就任への意欲を思わせたことは記憶に新しいでしょう。
代わりに就いた法相も、前身の司法大臣を除けばその経験者からは首相が輩出されていませんが、しかし谷垣さんは、総裁経験者ながら異例の幹事長就任を果たして、将来の総裁候補としての資格をもはや回復したと見なすべきかもしれません。
12年総裁選では谷垣さんの出身派閥の会長ながら石原さんを支持して谷垣さんを立候補断念に追い込んだ古賀元幹事長も一転、「「ポスト安倍」に浮上するとの見方を示し」(『読売新聞』14.9.3-23:26)ていますが、その場合、谷垣さんは岸田外相と対抗するようになる可能性があるでしょう。
岸田さんは閣僚や党役員を経て現在は外相に長期在任しているほか大派閥の会長として今後も要職を務めていくと思われ、将来の総裁候補に挙げて全く問題ないでしょう。
両者はかつて同じ派閥の所属だったとはいえ、12年総裁選の後に岸田さんは古賀さんの後任の派閥会長となり、谷垣さんは派閥から分離して谷垣グループを結成したのであり、今やともにリベラル系の領袖として、ポスト安倍に有力視されていくことは想像に難くありません。
ただ、同世代である石破さんと茂木さんが上述のように協力関係を持つようになる可能性は低そうなのに対し、谷垣さんは岸田さんより12歳の年長であり、安倍さんが最長で18年9月まで首相に在任することを踏まえれば、その関係はマイルドなものとなることも予想できるでしょう。

■今回の人事については「首相はリーダー候補同士を競わせることで、政権運営の推進力の向上につなげる思惑もあるとみられる」(『読売新聞』14.9.3-8:25)との指摘がありますが、その競争は上述のように石破さんと茂木さん、岸田さんと谷垣さんの4人を軸に展開していくことになるのではないでしょうか。
また、3選ながら抜擢された稲田政調会長について「首相は「タカ派」の系譜を継ぐ若手女性議員の代表格として、稲田氏をアピールする狙いもあるとみられる」(『朝日新聞』14.9.3朝刊)ともされますが、保守派の中堅・若手世代では稲田さんと同じ町村派の西村さんが4選、額賀派の新藤前総務相が5選で、両者も有力だとすべきでしょう。
次世代保守派の台頭は、その3人が巡っていくことになるのではないでしょうか。
西村さんと新藤さんについては今後の追加人事や、安倍さんの再選が予想される来年の総裁選に伴う人事で、要職に起用されることも十分に考えられるでしょう。


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地方創生 ケータイ投稿記事

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■9月上旬にも行われるという内閣改造・党役員人事で安倍さんは、前回記事で取り上げた安保法制担当相に加えて「地方創生」を推進する新たな担当相も新設する方針。
安倍さんは「「景気回復の波」を中小・小規模企業、そして全国津々浦々に広げていくのが私の仕事です」(メルマガ、13.12.16)と語り、10日の『朝日新聞』朝刊によれば成長戦略では新たに「ローカル・アベノミクス」のキャッチコピーが掲げられて6月24日には「最大の柱は地方の活性化」と発表されています。
19日の『朝日新聞』朝刊は、安倍さんが前日18日に「人口減や高齢化対策などに取り組む新組織の名称を「まち・ひと・しごと創生本部」とすることを発表した」と伝えています。
その「新組織」についてはかねて仮称で「地方創生本部」と報じられていましたが、18日12:59の『産経新聞』によれば、それが改められて同日正式に決まったのが「まち・ひと・しごと創生本部」(以下「本部」とも)だということ。
同上『朝日新聞』によれば本部では「首相自らを本部長に全閣僚が参加し、担当相も任命」されるとされていますが、その構成が日本経済再生本部と同じであることが注目されるでしょう。
アベノミクスを推進する日本経済再生本部でも本部長は安倍さんが務め、麻生副総理兼財務相が本部長代理、菅官房長官と甘利経済再生担当相が副本部長に就任していますが、地方創生本部も同様の体制になることは十分考えられるでしょう。
そこでは担当相が甘利さんのポジション=副本部長に代わるかと思われますが、小泉内閣府政務官が「省庁の利害を超えて相応の権力と体制を敷かなければ」(『産経新聞』14.7.8-20:36)と指摘するように、その担当相が内閣府の重要閣僚に位置づけられることも考えられるでしょうか。

安倍さんはかねて地方対策を重要視していると言え、第2次安倍政権では各地に国家戦略特区が設定され、木村首相補佐官が「ふるさと担当」を帯びているほか、15日に次期総務次官への起用を決められた旧自治省出身の大石消防庁長官が「地方行財政に詳し」くて「地域活性化に力を入れる方針」に適う(『朝日新聞』14.7.16)のもその反映だと言えるでしょう。
また、既出10日の『朝日新聞』朝刊は「なぜ今、地方なのか」として、甘利さんが8日に「増田ショックが全国、地方、地域を襲った」と述べて「「人口減社会」への危機感をあらわにした」ことを挙げています。
ここで「増田ショック」とは、増田元総務相の率いる「民間機関が5月にまとめた試算」で、「人口減が現状のペースで続けば、2040年までに全自治体の半数が…「消滅可能性都市」になる」とされたことを指します。
その「民間機関」とは増田さんが座長を務める日本創成会議のことであるのが知られます。
日本創成会議は当初は震災復興について議論する組織として11年5月に発足しましたが、安倍さんは同月18日、コラム「安倍晋三の突破する政治」で、当時の菅政権が立ち上げた復興構想会議について「迷走している」「役割を果たしていない」と厳しく批判。
そんな復興構想会議が当時の政府・民主党系だったとすれば、第1次安倍改造内閣で総務相だった増田さんの日本創成会議は安倍さんや自民党に近いと言えるかもしれません。
前岩手県知事の増田さんは岩手の実力者である生活の小沢代表と距離があって07年参院選で小沢氏が当時率いていた民主党が勝利した直後に入閣したのに対し、復興構想会議に参加していた今の達増知事は、陽子夫人が12年総選挙で小沢氏も民主党を離党して参加していた旧未来の党から岩手1区に立候補したように近い立場にあることも、日本創成会議と復興構想会議の相違を象徴しているようでしょう。
復興構想会議は既に12年1月に廃止されていますが、日本創成会議はより広汎なテーマを取り扱う組織に発展して上出「増田ショック」とも称される提言もしたのであり、それが甘利さんの言うように第2次安倍政権の地方対策「ひと・まち・しごと創生」に大きく影響したというのも、決して怪しむに足りないと言うべきでしょう。

ところで、大石氏の次官就任については20日7:00の『産経新聞』が、それで総務省ではともに大石氏と同じ1976年入省の小笠原前次官および今の岡崎次官を併せて、「官邸の介入によって」「3代が…同期という異例の事態となった」と伝えます。
安倍さんは第1次政権で盟友の渡辺みんなの党前代表を行革担当相に起用して「人材バンク」構想などの公務員制度改革に取り組み、今の第2次政権では5月30日に中央省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局を設置、初代局長に旧大蔵省出身で腹心の加藤官房副長官を充てるなど、「官邸主導」は官僚に対しても実行されています。
集団的自衛権を巡って内閣法制局で異例に外務省から小松前長官が起用されたのはその好例であり、また昨年7月以来現職にある村木厚労次官や、側近の斎木外務次官の夫人で今月4日に就任した外務省の斎木尚子経済局長、消費者庁で来月10日付で2代続けての女性長官となることが決まっている板東文科審議官の起用などが、女性の社会進出促進という安倍さんの方針が官界に反映したものであることは明らかでしょう。
内閣人事局でも当初は局長には警察庁出身の杉田官房副長官が起用される予定だったものの「「政治主導」を重視して転換」(『朝日新聞』14.5.31朝刊)されて腹心の加藤さんが充てられたものだといい、同上『産経新聞』が総務省と同じように「同期の事務次官が3代続く道筋ができた」とする財務省でも第1次政権の首相秘書官で安倍さんから信頼のある田中主計局長の来年の次官就任が有力視されています。
また、それによると、財務省は安倍さんの本命の田中氏を含めて「同期3人次官」となるのに「及び腰」だったものの、総務省で大石氏が次官に決まって「一足先に先例」となったことでそれへの「足かせはなくなった」のだといい、大石氏の次官就任はひと・まち・しごと創生本部の新設などの地方対策との関連以外にも深い意味があったということでしょうか。
再三指摘しているように、安倍さんは民主党政権期に大きな存在感を持った財務省の掌握に努めていると言えるのであり、財務相に首相経験者の麻生さんを副総理を兼ねて充て、副大臣にはベテランの山口元首相補佐官や閣僚経験者の小渕元少子化担当相、側近の古川財務副大臣などを起用していますが、田中氏を次官に既定的にしたのもその一環に並べてよいでしょう。
ところで、「3代が…同期という異例の事態となった」総務次官に関しては、後述するように大石氏が「1年待」ちしている中、一部週刊誌がジャニーズ事務所の人気グループ嵐の櫻井翔さんの父親として知られる櫻井俊審議官の就任の可能性を報道。
櫻井氏の旧郵政省入省は大石氏などの翌年、1977年で、ともに76年入省の小笠原、岡崎両氏の次の次官に有力視されたのも順当で、不自然ではありません。
一方、「異例」だという大石氏の次官就任は同上『産経新聞』によれば、そもそも昨夏の人事で当時審議官として次官の本命候補だった大石氏が、菅さんの差配で消防庁長官だった岡崎氏に「逆転」されて「1年待」たされていたことが伏線だったとされます。
それは、菅さんはその「政治の師匠」梶山元官房長官が自治相を務めていたときに秘書官として仕えていた岡崎氏と「昵懇の仲」だったためだといいますが、大石氏の次官就任で総務省内の秩序が回復したのだとすれば、来夏には櫻井氏が次官に昇格するのかもしれません。
それらのことからは、総務省における異例人事で折よく「地方行財政に詳しい」大石氏が次官に起用されたり、それが「先例」になって財務省で安倍さんに近い田中氏の次官就任が布石されたのは言わば副産物なのであり、昨夏の岡崎氏の「逆転」に発端したそれらが全て菅さんの深謀であるかはさておき、真に物語られているのは菅さんひいては安倍官邸の影響力が官界に瀰漫していることだと言えるでしょうか。

さて、第2次安倍政権の地方重視の姿勢を端的に反映する本部の担当相の候補についてはどう考えられるでしょうか。
それについて、次の人事を9月上旬に控えて前回記事で各閣僚・党役員について仮想したように、既出の木村さんと山口さん、それに今村副幹事長をその候補に挙げることは可能だとしてよいのではないでしょうか。
三者はそれぞれ木村さんが青森4区で6選、山口さんが徳島2区で8選、今村さんが佐賀2区で6選といずれも「地方」選出で初入閣候補。
木村さんは上述のように首相補佐官として「ふるさと担当」を帯び、山口さんは麻生内閣の首相補佐官として「地方再生」を職掌し、地方行財政に関わる総務省で副大臣を務めているほか、第2次安倍内閣の発足に当たっては石破幹事長が総務相に推薦、今村さんは12年総裁選で安倍さんの推薦人になり、党では道州制推進本部長の任にあって地方行政に関わり、また農水副大臣を務めていて農水産業が中心の地方の課題にも通じていると言えるでしょう。
ところで、同時に新設される安保法制担当相について、高村副総裁は「閣僚(の定員)を増やすわけにいかないので、防衛相が兼ねることもある」(『産経新聞』14.7.11-10:59)と指摘しており、そのことからは、ひと・まち・しごと創生本部の担当相も例えば総務相が兼務することもあり得ると考えられるでしょうか。
ここで、総務相の候補には前回記事のとおり脇参院幹事長を例えば挙げてよいでしょう。
総務相は重要閣僚に位置づけられるので参院の実力者である脇さんには相応しいと言え、また、選挙管理に関わるため参院選の「一票の格差」問題是正を取り扱う参院選挙制度協議会で座長として「合区案」を提唱し「選挙区域調整案」の検討を主導する脇さん自身も意欲的であるかもしれません。
女性閣僚の登用などにより定員(18人)が圧迫されて本部の担当相を専任で置けず、他の閣僚が兼任する場合には、その人選の方が担当相より優先されることになるでしょうか。
あるいは逆に、担当相ありきで総務相など既存の閣僚が選任されることもあり得るのでしょうか。

■まち・ひと・しごと創生本部の担当相や安保法制担当相が新設される次の人事は、12年12月の第2次安倍政権発足から実に1年9ヵ月で初となる異動ですが、ではその次あるいは更にその次の人事の見通しはどうでしょうか。
12年9月に総裁に復帰した安倍さんは来年、15年9月にその任期を満了しますが、その際の総裁選ではおそらく無投票で再選されることになるでしょう。
そうすれば、それに合わせて閣僚および同月に任期を終える党役員の異動に着手するはずであり、次の人事はその時、第2次安倍第2次改造内閣の発足時に見据えられます。
また、翌16年は7月に参院選があり、12月に総選挙の予定がありますが、その間わずか5ヵ月なので7月に衆院を解散して衆参同日選となる可能性も低くないでしょう。
そうだとすれば、そこで自民党が勝利すれば第3次安倍内閣が発足することになりますが、それが人事の契機であるのは確実です。
そこでは早ければ総選挙直後7月中にも人事に取り掛かられることももちろん考えられますが、党役員の任期が9月まで残ることや、05年総選挙の際にはその勝利を受けて9月に第3次小泉内閣が全閣僚を再任=人事を事実上先送りして発足し、焦点だった郵政民営化法の成立を待ってわずか1ヵ月後の10月に改造が行われた例を考えれば、16年9月にも第3次安倍改造内閣が発足するのがそのタイミングになる、とは十分考えられるはずでしょう。

不確定要素による内閣改造や解散総選挙がなく順当なら今後の政治日程はそう見通せるはずですが、すなわち今回の人事こそ1年9ヵ月ぶりながら、それ以降は1年ごとに行われる公算だと言えるでしょうか。
それはおそらく重要で、初入閣候補が多いのでその大半は今回見送られることになり、それは党内に不満が潜在することになり得ますが、次の人事を1年後に有力視できれば、安倍さんはそれを抑えることが可能になるでしょう。
また次の参院選や総選挙では引退する可能性のある議員もいるはずであり、そのうち未入閣あるいは最後の入閣から間隔の開く議員についても、その前の処遇が優先されることもあるのでしょう。


(R)

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