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みなさん、こんにちは。
予告通り、今回はPDCについて紹介します。
PDCはクロム系の酸化剤で、Pyridinium Dichoromateの略です。
兄弟分であるPCC(Pyridinium Chlorochromate)とともに、E. J. Coreyらによって開発されました。

廃棄物の問題があるので、環境に配慮するならこの手の酸化剤は使わない方がベターです。
ただ、前回も書いた様に、それなりにメリットのある試薬なので覚えておいて損はありません。

クロム酸酸化は古典的な反応なので、まずはその歴史について紹介します。
こうやって眺めてみると、Jones試薬とPDCは良いですね。

19世紀 Beckmann試薬、Kiliani試薬(二クロム酸カリウム、又はナトリウムの硫酸水溶液)
      Jones酸化に取って代わられ、現在ではほとんど使われません。

1946年  Jones試薬(無水クロム酸の硫酸溶液)
      強力、かつ信頼度が高く、現在でも広く使われる酸化反応です。
      2級アルコールはケトンへ、1級アルコールはカルボン酸まで酸化されます。
      生成したケトンが過剰酸化されない様にアセトン溶媒中で行うのが一般的です。
      強酸性条件なので使い所は難しいですが、基質が耐えるなら使いやすい反応です。
      (著者も学生の頃、原料合成で使ってました。)
     
1953年  Sarett試薬(無水クロム酸のピリジン溶液)
      ピリジンの配位により、無水クロム酸の酸化力を調節することが可能になりました。
      ただ、1級アルコールの酸化はアルデヒドで止めることが難しく、収率は良くありません。

1968年  Collins試薬(無水クロム酸−ピリジン錯体の赤色結晶)
      Sarett酸化の改良法。このため、Sarett-Collins酸化と呼ばれることが多いです。
      無水クロム酸−ピリジン錯体を単離し、塩化メチレン中で酸化を行うことで、
      1級アルコール→アルデヒドへの酸化の収率が改善されています。
      この方法の問題点は、大過剰の試薬が必要であることと、
      試薬が湿気に対して不安定なため、その都度調整する必要があること。
      試薬調整時には、過剰のピリジンに無水クロム酸を少しずつ加えて下さい。
      手順を守らないと、発火、爆発などの危険が指摘されています。

1962年  PCC(無水クロム酸の塩酸水溶液をピリジンに加えて調整した結晶)
      Collins試薬と異なり湿気に対して安定で、市販されています。
      また、それほど過剰に試薬を用いる必要もありません。
      ただ、酸性を示すので、これに耐えられない基質には用いることはできません。

1979年  PDC(無水クロム酸の水溶液にピリジンを加えて調整した結晶)
      PCCと同様に市販されており、PCCよりさらにメリットがあります。

前置きが長くなりましたが、PDCには以下に示す様なメリットがあります。
|羸で反応が行える。
 酸性を示すPCCに比べ、この点が改善されています。
PCCよりも酸化力が強く、条件選択により1級アルコールをカルボン酸まで酸化できる。
 すなわち、塩化メチレン中ではアルデヒドが、DMF中ではカルボン酸が得られます。
H娠後の処理が楽。濾過のみでOKです。

反応後、試薬由来のペースト状の残渣に生成物が取り込まれ、それが収率低下の原因になります。
これを防ぐために、セライトやモレキュラーシーブス(MS)などを添加して反応を行うのが一般的です。
個人的には水を除去する目的でも、粉末のMS-4Aを用いるのが良いかと思います。
(水の混入により、1級アルコールの酸化をアルデヒドで止めるのが難しくなりますので。)

実験操作を書いておきます。
基質の塩化メチレン溶液に活性化したMS-4Aを加え、その後PDC(1.5〜2当量)を加えます。
反応終了後はシリカゲルやフロリジルなどで濾過すればOKです。
※MS-4Aは基質の10倍量(基質1gに対して10g)程度用いる必要があります。
 減圧しながらヒートガン等で加熱(30分以上)すれば活性化できます。

クロム酸酸化の中では、Jones酸化とPDC酸化が著者のお薦めです。
迅速、強力、確実なJones酸化、マイルドで精密合成向きのPDC酸化といった感じですね。

それでは今回はこの辺で。
では、また。

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