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石川啄木。

高校の時。
体育系ばかりじゃ、能が無い・・・。
と、言うことで。
文芸部に、籍を置いた。

週に一回。
主に、土曜に。
家政学部の方の、教室・一つを借りて。
色々な人の、「詩」についての、ディスカッションだった。

入りやすいのは。
石川啄木だった。
石川啄木は。
読んだ、其のまんまなのである。
裏が無い。
隠されたものも、無い。

勿論。
与謝野晶子。
蕪村。
高村光太郎。
其の他。
色々と、出た。

黒板に、「詩」を書き写し。
ここの、言いまわしは、どうだろう・・・。
と、言う話合い。

日曜に。
父と、畑に出た時。
今。
石川啄木を、勉強しているよ。
と、言ったら。

畑から帰って。
野良の洋服から、普段着に着替えた父が。
「おいでよ」と、部屋に呼ぶので。
行って見たら。

父が、戦中。
予科練に、持って行った、柳こおりの中から。
一冊の本を出した。
それは、とても、古い本で。
もう、本が、茶色になっていた。
良く、見たら。
「一握の砂」
と、言う本だった。
本としては、薄い。
今。
本屋に行っても、安く買える筈である。

が。
父が。
以前から。
こうして。
「柳こうり」の中に忍ばせて。
大切にして来た本だ。

おとうさん。
石川啄木って、好き?
と、聞いたら。
大好きだよ。
と、答えた。

ここからが、大きな、間違い。

おとうさん。
石川啄木の、何処が好き?
啄木の生活が好きなの?

と、言ってしまったのだ。
思い上がりも、甚だしい。

当然。
憮然とした、父は、何も、答えない。

高校に入って。
少しだけでも。
文芸の端っこをかじることになた、娘への。
花向けの、「一握の砂」であったろうに。
わたしは、何と、思い上がった台詞を吐いたのだろう。
言った直後に。
「不味い!」
とは、気が付いた。
が。
口から出てしまった、思い上がりの、台詞は。
決して。
口には、戻らない。

多分。
父は、深く、傷が付いた筈だ。
決して。
口に出して。
反論することは、無かったけれど。
もしかしたら。
反論することすら。
父にとっては、汚らわしいことだったのだろう。

高校時代の或る日の出来事なのに。
今でも、鮮明に、覚えている。
其の、茶色になった、「一握の砂」は。
東京に出るときに。
持って出た。
一つの、父への、「詫び状」のようなものだった。

石川啄木の「詩」を知った時。
石川啄木の、人生を知ってしまった、わたし。
それは。
親子であっても。
決して。
口にしては、いけなかったことのような気がする。

おとうさん。
ごめんなさい。
わたしが、生意気でした。

石をもて
  追はるがごとく
  ふるさとを出でしかなしみ
  消ゆることなし。



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