神戸市から西宮市に至る海沿いにある5つの酒造地域を灘五郷(西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷)と呼んでいます。
西宮郷は灘の生一本の主生産地として有名ですが、西宮郷には、酒づくりに欠かせない宮水がこんこんと湧出する一帯があり、西宮市の海岸近くにある浅井戸からくみ上げられる酒造用水を西宮の宮を取って「宮水」といいます。
ここで生産される清酒は灘五郷全体の4割にも相当するそうで、西宮市の中南部の一角には、いまでも灘の酒造メーカーの井戸場が集中しており、各酒造会社専用の井戸からさかんに汲み出されております。
この久保・石在両町にまたがるわずか三百メートル四方の周辺には、第二次世界大戦に酒蔵の大半を焼失し、鉄筋ビルの近代的な酒蔵もありますが、昔ながらの面影を残す酒蔵が今も残り、独特の情緒をかもし出しています。
「西宮」の水ということでその名が付いた「宮水」は、天保11年(1840)に「桜正宗」の祖である酒造家、山邑太左衛門が、宮水を魚崎郷に運び酒をつくったところ、酒の質が明らかに向上して江戸で人気を集めたことから、西宮郷と魚崎郷でつくる酒の味の違いが酒づくりに使う「水」によることを発見し、灘の酒造家の間に使用が広がったそうです。
宮 水 の 水 質
宮水は六甲山地より来る伏流水で、酒づくりに適した適度な硬度(8〜9)を持ち、リン酸塩やカリウムが多く含まれた硬水です。酒造りの大敵である鉄分はほとんど含まれませんので、きれいで雑味のない酒が特徴です。
宮水に含まれる豊富なミネラル分が発酵に必要な微生物の栄養となり、すっきりとした力強い酒ができるのです。
また、宮水は生で飲むと非常においしいですが、沸かすとダメになりますから、コーヒーやお茶を入れるのには向いていないようです。
男 酒 と 女 酒
伏見の水の硬度は、5から7程度で、中硬水ですが、宮水は酒づくりに適した適度な硬度(8〜9)を持つ硬水です。伏見の酒は「京料理に合う酒」として洗練されていったのに対し、灘の酒は江戸の人々の嗜好に合う「江戸送りの酒」としてそのタイプが次第につくられていったようです。こうしたことから、昔は伏見の「女酒」に対し灘の「男酒」とよばれました。
名酒のあるところに、名水あり…。灘で造られた混じりっ気なしの名酒“灘の生一本”は、宮水の発見とともに名声を博し、今も尚こんこんと湧き出る宮水は、日本一の酒どころを支え続けています。
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