以前、この映画をレンタルビデオ店で見かけたときは、「(主演の)レイチェル・ワイズは好きだけど、ハリウッドのこの手の歴史物はズッコケ映画のオンパレードだから・・・」と手に取らなかったのですが、たまたま、NHK-BSで放送してたので録画してみたら、ビックリ!ハリウッド映画ではありませんでした。
スペイン映画だったんですね!
監督は、「オープン・ユア・アイズ」や「アザーズ」などを手掛けた、アレハンドロ・アメナーバル。
ヨーロッパ史上最大級の製作費をかけただけあって、圧巻の映像美もさることながら、内容が素晴らしかった!
スペイン映画界って、時々、びっくりするぐらい面白い映画つくるよね。以前見た「パンズ・ラビリンス」もすっごく面白かったし。(スペイン・メキシコ・アメリカの合作だけど、舞台はスペイン。)
舞台は、紀元4世紀の古代エジプトの都市アレクサンドリア。そこには古代最大の収蔵書数を誇った図書館があり、当時の叡智のすべてが集結した場所でした。その図書館の校長として教鞭をとる哲学者ヒュパティア。哲学者と伝えられていますが、映画の中では自然科学の真理を追究する面を強調されて、むしろ彼女は数学や天文学の賢者として描かれています。
この時代、キリスト教はローマ皇帝の親任をえて新興宗教として力をつけてきており、ユダヤ教徒や古代ヘレニズム文化を継承する知識層をおびやかす存在となっていました。
結局のところ、古代ヘレニズム文化を受け継ぐ人類の英知のすべてが、宗教戦争により亡びていく過程を女性哲学者ヒュパティアの人生を通して描いているんですね。
当時は天動説が信じられていたのですが、ヒュパティアは天動説は不完全な点があると感じ、紀元前の先哲であるアリスタルコスの提唱した地動説を検証し証明することに没頭しました。
しかし、その行為はキリスト教徒からみると異端であり、すでにユダヤ教徒を迫害し、アレクサンドリアから追放した後の標的は、改宗を拒み科学的に真理を追究するヒュパティアとなったのでした。
もし、この時代の知恵が失われなかったら、人類はどれだけの科学的進歩をとげられたのかと想像すると失われたものの大きさに驚愕します。
天動説が覆されるのはこれから1000年以上も先の話なのですから。
この映画では、キリスト教徒の残虐な行為が多く描かれますが、迫害される側の富裕層や知識層の慢心や傲慢な態度も描かれていて、奴隷たちがキリスト教に改宗する理由の一端がうかがえます。
問題の根底は現代もまったく同じで、古代アレクサンドリアの惨状は、現代の世界で起こっていることと何ら変わりありません。
宗教と科学の進歩について、非常に考えさせられる映画でした。
いずれ人類は「神」という仮定なしに自立することができるのでしょうか?
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