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これまで3回に渡って中棚温泉『中棚荘』での滞在記を紹介してきましたが、最終回となる今回は、レトロな大正館に設けられた食事処「草笛亭」でいただく創作懐石料理について紹介したいと思います。 先ずは、一月の懐石料理「花」と名付けられた夕食からの紹介です。 指定した夕食時間の18時半となり、ロビーのある棟を外に出て食事処のある大正館へと向かいます。 日が暮れてからの大正館へのアプローチは風情満点です。 但し屋根が設けられていないため、雨の日などは傘を差しての移動となるために少々不便かもしれません。 こちらが食事処「草笛亭」への入口です。 趣のある大正館の建物内へ入ってみたかったため、期待に胸が膨らむ瞬間でした。 玄関を開けると、宿のスタッフが出迎えてくれます。 外観同様、なかなかレトロで風情のある雰囲気が伺えました。 大正館のロビーには火鉢が置かれ、民芸調のどこか懐かしい感じの雰囲気に包まれています。 廊下を先へと進み、今回の食事処へと通されました。 こちらの食事処は衝立で区切られた畳敷きの座卓が中心ですが、今回は宿泊客が少なかったためか個室風の部屋を用意していただいてありがたかったです。 席に着くと、お品書きの他すでにいくつかの料理が並んでいました。 先ずは食前酒、「藤村のにごり酒」にて夕食の開始です。 普段宿でいただく食前酒といえば果実酒がほとんどで、今回のようなにごり酒は初めていただいたような感じがします。 正月らしく、割り箸を包む紙にはお飾りが添えられていました。 こちらは先付け、養老豆腐のチーズ風味で車海老と帆立の貝柱の下にチーズ豆腐が敷かれ、梅肉ソースでさっぱりとした味わいでした。 続いてお造りです。 寒鰤と鮪のお造りに、梅のかたちに切った大根と京人参が添えられていました。 見た目は鮮度が今イチかなと思いましたが、思ったよりも美味しかったです。 鍋物は個人的に好物な鴨鍋です。 鶏のつみれと大根、水菜などの他に鴨肉をしゃぶしゃぶでいただきます。 くせのない美味しい鴨肉からはよく出汁が出て、シャキシャキの水菜と共に美味しくいただくことができました。 さらに柚子をしぼるとスープがさっぱりとした風味となり、珍しく鍋物を残さずにスープも全て飲み干してしまいました。 続いて凌ぎとして運ばれてきたのが、鰻とろ湯葉蒸しです。 トロトロの食感の鰻と湯葉に熱々の甘めの鼈甲餡がかかり、ピリッと辛いわさびと青唐が程良いアクセントになっていました。 焼き物は鰤と海老芋の照り焼きです。 この地方の味付けでなんでしょうか?、鰤も海老芋もかなり味が濃くしょっぱい感じがしたので、単品でいただくよりもご飯のおかず様といった味付けでした。 料理はまだ続き、次に運ばれて来たのは揚げ物となる鱈の白子、鮫のコラーゲン、栗麩、茄子の4品です。 白子やコラーゲンなど珍しい天ぷらに期待が高まりましたが、もちもちクニャクニャした食感からはあまり旨みが感じられず、天つゆとの相性も今ひとつといった印象だったので個人的にはあまり好みの味ではありませんでした。 口直しの酢の物として運ばれて来たのは生野菜とたらば蟹のサラダです。 たっぷりのオニオンとパプリカが非常に美味しく、器も工夫されていて見た目にも満足できる一品でした。 そして今回の食事は、炊き立ての深川飯です。 私は深川飯が好物なので、あまり釜飯に魅力を感じない私でも残さず食べてしまうくらい薄味で上品な炊きあがりでした。 あさりと針生姜のみのシンプルな味わいがとても美味しかったです。 味噌汁はしめじ、えのき、ねぎが入った赤出汁、漬け物は白菜と野沢菜で文句なしです。 最後にさっぱりとしたデザートをいただき、かなり満腹になって夕食を終了しました。 夕食後、しばらく大正館のロビーでくつろいだ後客室へと戻りました。 以上で『中棚荘』の夕食の紹介を終わります。 全体的にバラエティに富んだ内容で、やや配膳スピードが速いと感じたものの質・量共に概ね満足の行く夕食であったと思います。 やや口に合わない物もありましたが、食事処の雰囲気もよく一人旅ながらも寂しい思いをせずに食事を楽しむことができました。 また今時珍しいことに、夕食中に宿の女将が挨拶回りに来てくれました。 最近はその様な挨拶回りをするような宿が少ないので、何だか懐かしい感じがしました。 今回は標準的な月替わりの懐石料理でしたが、料理のグレードUPプランなども用意されているようなので、好みによって更に質の高い食事を楽しむことができそうです。 続いて朝食についての紹介です。 朝食も夕食時と同じ「草笛亭」にていただきました。 係りの人に案内されて昨日と同じ部屋へと通されます。 朝の食事処は何となく凛とした空気が流れているような感じがして、思わず正座をして食事をいただいてしまいました。 先ずは新鮮なリンゴジュースをいただいて朝食を開始します。 朝食もありきたりな感じはなく、見た目もきれいなお総菜が並びます。 左からひじきの煮物、蒸し鶏とネギのからしマヨネーズ添え、黒いもと椎茸の煮物、シラスの乗った大根おろし、ほうれん草のお浸しといった具合で、どれもみな美味しくいただきました。 ただ、大根おろしに添えられた梅肉ソースが夕食時のチーズ豆腐にも使われていたので、できればシンプルに醤油などでいただいた方が良かったです。 また、手前の卵は温泉卵でした。 続いて焼き魚に湯葉と豆腐(冷や奴)が合わさった小鉢をいただきました。 そして朝食の名物であるトロロです。 薬味にごまと青のりが添えられ、使われている出汁が薄味でさっぱりとしていてとても美味しかったです。 こちらは炊き立てご飯と味噌汁です。 味噌汁はなめこと油揚げが中心で、非常に優しい味でした。 また当日の朝がちょうど七草粥の日であったため、ご飯の他に七草粥もいただくことができました。 実は私は七草粥というものを初めていただいたので、非常に得をした気分になって嬉しかったです。 質・量ともに満足のいく朝食をいただいた後は、しばし敷地内をブラブラとしながら部屋へと戻りました。 『中棚荘』の朝食は、全体的に薄味で上品に仕上がっており、比較的濃いめの味付けだった夕食に比べて満足度が高かったです。 また、季節によってはリンゴジュースだけでなく飼育されている山羊のミルクなどもいただくことができるということで、それを目当てに訪問してみるのも楽しそうですね。 朝食後に部屋でひと息着いた後は、天気が下り坂に向かうということで足早に身支度を整えて宿を後にします。 駐車場の横に佇む「はりこし亭」の姿を目にしながら、次回は日帰りで食事休憩でも楽しもうとの思いが頭によぎりました。 まずまず充実した2008年・初湯の旅を終え、一人東京へと車を走らせました。 以前から訪問を熱望していた中棚温泉『中棚荘』は、実際に宿泊してみて事前に抱いていた宿のイメージとやや異なる点があったものの、飾らない信州の田舎宿の気風と風情溢れる「初恋りんご風呂」の満足感によって、充実した滞在時間を過ごすことができました。 宿のアンケートにやや苦言などもしたためて来ましたが、後日女将さんから丁寧な礼状などを送っていただき、数日経ってあらためて『中棚荘』の居心地の良さを実感することができたような感じもします。 「初恋りんご風呂」の雰囲気が特に気に入ったので、またお風呂にりんごが浮かんでいる季節を見計らって足を運んでみたいと思いました。 採点(5段階) 接客・・・・・4(皆さん丁寧で特に不満はなし) 館内の雰囲気・・・・・4(やや雑多な感じも受けたので、目指すべき宿のスタイルの統一感があると尚良いと感じた) 部屋の雰囲気・・・・・4.5(快適かつ風情も感じられてとても良かった) 清潔感・・・・・4(平成館の廊下・客室等は大変きれい。ロビー・玄関周辺に動物などが多くややマイナスな印象) 温泉・・・・・4.5(浴室の雰囲気、泉質、眺望など大変満足。浴槽内の清掃にさらなる力を注いで欲しい) 夕食・・・・・4(質・量ともに概ね満足。食事処の雰囲気もまずまずよかった) 朝食・・・・・4(質・量ともに概ね満足) コストパフォーマンス・・・・・4(平日一人泊でも1万円台で宿泊できて概ね満足) 総合満足度・・・・・4(良い面・悪い面が同居しながらも楽しく充実した滞在ができた) 次回リピート度・・・・・4(はりこし亭で食事をしてみたいので、次回は日帰りで訪問したい)
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中棚温泉 中棚荘
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島崎藤村ゆかりの宿として名高い中棚温泉『中棚荘』は、文学の宿としての側面だけにあらず、自然に囲まれた3,000坪という広大な敷地を活かした、のどかで懐かしい光景が随所に広がっています。 館内には落ち着いた和の風情を感じるしっとりとした空間もあれば、観光地の土産物店を思わせる雑多な空間もあり、飼育された動物達がのんびりと散歩する姿やレトロな卓球場、どっしりとした土蔵の姿など実に様々な風景が渾然一体となって独特の魅力を醸し出していました。 第3回目となる今回は、そんな『中棚荘』に広がる宿の風景について紹介したいと思います。 「初恋りんご風呂」を一頻り満喫した後、再び部屋を出て館内の散策へと出向きました。 客室前の廊下に面した扉からは赤い屋根の回廊が目に入ります。 扉の外にそっと置かれた梅の木の鉢植えには、既に白い花弁がちらほら咲き始めていました。 落ち着いた風情の廊下を先へと進み、ロビー方面に足を運びます。 廊下の途中には、ところどころご覧のような和の灯りや活花などが置かれていて気持ちを和ましてくれました。 チェックイン時に早足で通り抜けた廊下も、ゆっくり歩くと実に風情のある佇まいです。 こちらの階段を降りた先にはラウンジが設けられています。 宿は小高い丘の斜面に建てられているため、館内にはこの様なちょっとした段差がいくつか目に入りました。 館内にエレベーターは無かったと思うので、足腰が弱い人はお風呂を含めて少し厳しいかも知れません。 階段の頭上には、立派な書や凧などが飾られていました。 こちらはラウンジの手前にあるバーカウンターです。 バーと言ってもお洒落な雰囲気はなく、極めてカジュアルな雰囲気が漂っていました。 そしてこちらがラウンジです。 ラウンジには雑誌や小説など実にたくさんの書物が用意されていて、気兼ねなく自由にくつろげるようになっています。 さすが文学の宿らしく、時代を感じる藤村の作品などもしっかりと納められていました。 ラウンジから玄関前に広がるホールは民芸調を思わせる雰囲気で、高い天井に大きな照明が印象的です。 ホールには、まるで土産物店のように実にたくさんの物が並べられて販売されていました。 こちらのカリンは自由に持っていって良いとのことで、客室にもカリンの実が飾られています。 こちらが正規の売店ルームのようで、焼き物や小物、お菓子などが並んでいます。 個人的にはこちらのスペースだけで十分で、玄関前のホールにあまりにも雑然と物が置かれていたのは好ましくなく、もう少しすっきりと整理した方が良いのではと感じました。 玄関の脇、ホールの外にはテラスが設けられていて夏などは外で生ビールなども楽しめるようです。 昔ながらの温泉宿といえば「卓球」です。 郷愁を誘うご覧のようなポスターが目に留まりました。 ポスターが貼られた階段を早速下へ降りて行ってみました。 かなりレトロな雰囲気の娯楽スペースには卓球台が置かれていて、ラケット・ボールも備え付けられていたので、宿泊客は無料で卓球を楽しむことができるようになっています。 私は卓球が大好きですが田沢温泉『ますや』の宿泊時同様、今回も一人旅だったので熱い温泉卓球を楽しむことができずに少々残念でした。 続いて宿の外にも足を運んでみます。 写真は築15年を迎える平成館の建物で、木立に囲まれた落ち着いた趣の外観です。 宿の敷地内にはたくさんの動物達が飼われていて、宿への到着時に道をふさいでいた山羊くんが坂道でのんびりと草をはんでいました。 こちらは平成館前の土手に群れをなしていた鴨の姿です。 近づくと大慌てで逃げまどう姿が実にユーモラスでしばらく眺めていました。 小屋で静かに睡眠中でいるのは宿の看板犬である「ちび」で、犬好きな人は散歩をさせてもらえるようです。 上記の他にも、豚やうさぎなどの姿もあってまるでミニ動物園のようでした。 動物達は愛嬌たっぷりで、子どものいるファミリーなどには非常に喜ばれるような気がします。 ただ少し気になったのは、宿の顔である玄関前にも飼育小屋が設けられていて、臭いや糞などが目につくということです。 できれば敷地は十分に広いので、動物の飼育場所を再考した方が良いのではないかと感じました。 次は坂道を下りて、駐車場のある方へと向かってみます。 坂道を下りきった場所には、江戸時代の旧家を移築したという国の登録有形文化財にも指定されている食事処『はりこし亭』が立派な佇まいで軒を構えています。 『はりこし亭』では日帰り客の食事処の他、古民家ウエディングなどの会場としても利用されているようで、次回は是非こちらの『はりこし亭』で食事をいただいてみたいと思いました。 『はりこし亭』の門を通って宿へと戻ることもできます。 宿へと戻る途中、庭園内に土蔵を利用したギャラリーなども建っていました。 『はりこし亭』から続く小径を上がってくると、宿の裏手の玄関へとたどり着きました。 引き続いて、日が暮れた後の館内の様子についていくつか紹介します。 廊下の雰囲気も夜は日中とはまたひと味違った風情が漂っています。 こちらは夜のラウンジです。 夕食後に1時間近く居座って温泉関係の本などを眺めていました。 ラウンジで過ごしている間、誰も姿を見せなかったため静かな雰囲気の中でのんびりとした時間を過ごすことができました。 一人旅だとつい部屋に籠もってしまいがちですが、いつも言っているようにこうしたパブリックスペースがある宿は非常に助かります。 また、こちらのラウンジの楽しみの一つに暖炉があります。 暖炉の脇には薪や木片が置かれていて、宿泊客は自由に薪をくべて良いことになっていました。 もちろん私もこれ見よがしに薪をくべては燃えさかる炎を見て楽しませてもらいました。 暖炉の炎を見ていると、身も心も温まるような感じがします。 玄関ホールには、正月らしいお飾りの他に「千曲川旅情のうた」が描かれた紙が飾られていました。 中学生の頃、よくこの「千曲川旅情のうた」を諳んじては未だ見ぬ城下町小諸の風景を思い描いていたことを思い出します。 灯りがともった玄関も風情満点です。 空を見上げると無数の星々が輝いていました。 空気の澄んだ冬の夜空はやはり見応えがあります。 「栗の木テラス」と名付けられた玄関脇のテラスも、夜はライトアップされて雰囲気が増していました。 こちらは平成館へと続く回廊から眺めた夜の玄関です。 都会の喧噪とは無縁の、静寂で穏やかな夜の温泉宿の光景でした。 夜が明け、身を切るような寒さの中で朝の散歩を楽しんでみました。 こちらは古き良き温泉宿の名残を残す大正館の建物です。 大正館にもレトロな客室が設けられていて、リーズナブルな料金で宿泊することができます。 夕・朝食の食事をこちらの建物でいただいたので、レトロな雰囲気を味わうことができて良かったですね。 玄関前の坂道を少し上ると、細い石畳が敷かれた小さな散策路が設けられていました。 散歩道を進むと、「水明楼」と名付けられた風情ある茅葺きの古民家が目に入ります。 こちらの古民家は小諸義塾の塾長・木村熊次の書斎が現存するもので、島崎藤村らも夜が更けるのも忘れて語り合ったという由緒ある建物であるとのことでした。 「水明楼」を見下ろすように、更に上へと散策路は続いています。 散策路を上り詰めた先には、一際眺めの良い風景が広がっていました。 『中棚荘』の赤い屋根の向こうに、千曲川の流れが目に入ります。 今となっては鉄筋の建物もたくさん並んでいますが、かつて藤村らも同じ風景を眺めながら、歴史に残る作品を数多く生みだしていったことでしょう。 以上で中棚温泉『中棚荘』の館内外に広がる風景の紹介を終わります。 正直、宿へ足を運ぶ前は、館内全体に文学と歴史の風情が満ち溢れた程良い緊張感が漲る光景を想像していたのですが、実際に足を運んでみると風情はもちろん感じられるものの、もっと大らかで飾ることのない田舎宿であるとの印象を強く持ちました。 個人的には、何かの記念日のような特別な時に使う宿ではなく、普段着の温泉としてのんびりした時間を過ごすのに最適な宿であるような気がします。 少々雑多な空間もありましたが、『中棚荘』には不思議な魅力に満ちた今までにないような温泉宿の風景が広がっていました。 次回は、地元の食材を活かした里山懐石料理をいただく宿の食事ついて紹介します。
次回へと続く・・・ |
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千曲川をはじめ、遠く北アルプスの山々を望む眺めの良いお風呂を有する中棚温泉『中棚荘』では、ほのかにイオウの香りが漂うなめらかで肌触りの良い温泉を掛け流しで味わうことができます。 そして何よりこの宿のお風呂の一番の魅力は、秋から春にかけてのみ楽しむことのできる「初恋りんご風呂」にあると言っても過言ではありません。 飲泉することもできる良質な温泉と、湯船に浮かんだ甘酸っぱいりんごの香りとが交わり、何とも云えぬ癒しの効果を与えてくれる非常に魅力的なお風呂であると思います。 第二回目となる今回は、そんな魅力溢れる『中棚荘』のお風呂の様子について紹介します。 客室前の階段を降りて廊下を左手に進むと、すぐにお風呂の入口が目に入ります。 お風呂の名称は「文人風呂」、いかにも由緒ありそうな感じがします。 お風呂のある湯小屋には、こちらの入口から外に出て足を運ぶことになります。 お風呂へと向かう有名な石段です。 冬場ということで、寒さや雪をしのぐためにビニールが被せられていました。 私は全く問題ありませんでしたが、足腰の弱い人やお年寄りには少々こたえるかも知れません。 こちらが手前にある男湯の「樹林の湯」の入口です。 女湯の入口はさらに石段を30mほど奥に進んだ場所にありました。 扉を開けると、暖簾の奥に畳敷きの開放的な脱衣所が目に入ります。 脱衣所には棚やロッカーなどの設備はなく、床に並んだ籠に荷物や衣服を入れておくという何とも大らかなスタイルになっていました。 洗面台もしっかりとつくられているので、使い勝手に不便を感じることはありません。 実はこちらのお風呂には脱衣所と浴室との隔たりが無く、ご覧のように非常に開放的なつくりとなっています。 張り巡らされた柱や梁が、素晴らしい湯小屋の雰囲気を醸し出していました。 脱衣所から湯船を覗くとこのような光景になります。 木と石で組まれた素晴らしい浴槽の姿を見るにつけ、写真を撮りながらも気持ちがはやります。 内風呂は源泉を投入しつつの循環式で、湯枕を境に手前がやや温めで奥が適温となっていました。 日の光が燦々と差し込む大きくとられた窓や、荒々しい丸太のような木材を用いた浴槽など、あまりに素晴らしいつくりであったので、惚れ惚れする思いで見入ってしまいました。 そしてこちらが「初恋りんご風呂」の光景です。 もう少しきつい匂いが漂っているのかと思っていたのですが、りんごの香りはどこまでもほのかで、非常に心地よく鼻孔に抜けていくのを感じました。 湯船に入っていると何とも愉快に気分になってくるので、浮いているりんごを寄せてみたり散らせてみたり掴んでみたりと、何とも楽しいひとときを満喫しました。 こちらが源泉がこんこんと湧き出す湯口です。 源泉の温度は37.5度とやや温めで、手ですくってみるといかにも温泉らしいイオウの香りが漂ってきます。 ph8.5と弱アルカリ性なので、肌がすべすべして気持ちがよい浴感でした。 また、浴槽内には細かな湯の花も漂っていて成分の濃さが実感できますが、湯量豊富な割には汚れもやや目立ったため、もう少し浴槽の掃除の徹底化を図った方が望ましいと感じました。 湯船につかって脱衣所を見るとこのような光景になります。 こちらは洗い場です。 シャワー・カランとも数的に不足に感じることはなく、快適に利用できました。 洗い場に置かれていたのは、資生堂のシャンプー類と炭石けんです。 鮮やかな色調のボトルが、渋い浴室の雰囲気となぜか良くマッチしていたような感じがしました。 続いて内湯に隣接した露天風呂にも入ってみます。 木組みの内湯とは対照的に、露天風呂は豪快な岩風呂となっていました。 内湯同様二層に分かれる感じで、手前が加熱したお湯が注がれるやや熱めの湯船、奥が温めの源泉がそのまま注がれる湯船となっていて、掛け流しで楽しめるようになっています。 冬場は木々の茂みが無い分見晴らしも良く、のんびりとお湯につかることができました。 打たせ湯となって注がれる源泉は、露天に置いては冬場はやや温すぎる感じも受けました。 手前の方の湯船は、加熱したお湯がジェットバスのように噴き出しています。 貸切状態で存分にお風呂を満喫した後は、一旦部屋へと戻ります。 石段の途中にはご覧のような休憩所が設けられていて、端には伝言板なども用意されていました。 また、休憩所の一角には飲泉所もつくられています。 お湯は少し甘い感じがして、比較的飲みやすい泉質だと思いました。 続いて夜のお風呂の様子について紹介します。 この日は正月休みも明けた平日だったためか、わずか数組の宿泊客のみで昼も夜も全て貸切状態でお風呂に入ることができました。 夜の湯小屋は一際静かな雰囲気が漂っています。 夜の雰囲気もまた大変素晴らしく、優しげな灯りに照らされたお風呂にずっとつかっていました。 この時期、夜の露天はぐっと冷え込みます。 寒くなっては内湯へと戻り、熱くなっては露天へ出向くということを繰り返しつつ、思う存分に両方のお風呂を堪能させてもらいました。 最後に女湯の紹介をします。 女湯へは男湯の右手に続く石段をさらに奥へと歩いて行きます。 石段の一番奥に女湯「観月の湯」の入口が佇んでいました。 こちらが浴室内の様子です。 内湯・露天ともつくりは男湯とほぼ同じですが、湯船の大きさが男湯よりも若干小ぶりとなっていました。 個人的には、こちらの女湯の方が男湯よりもさらに雰囲気が感じられて好みです。 浴槽が小さい分、カラン・シャワーの数も男湯よりも一つだけ少ないようでした。 露天風呂も同じように内湯と隣接してつくられています。 見た目やつくりは男湯と同じですが、女湯の露天がつくられた場所が宿の一番端の高台に位置しているため、眺めは男湯よりも優れている感じでした。 天気の良い日は、こちらの湯船から雪を抱いた北アルプスの姿を目にすることができるそうです。 男湯と比較して浴槽が一回り小さめであっても、その分眺めがよいということで男女ともそれぞれ魅力のあるお風呂であると思いました。 以上で中棚温泉『中棚荘』のお風呂紹介を終わります。 浴槽内の汚れがやや気になったものの、浴室・湯船の雰囲気、注がれる湯の泉質及び温度、風呂からの眺めと、どれをとっても非常に素晴らしいお風呂で大変満足することができました。 もちろん初めてのりんご風呂体験も、湯浴みをより一層楽しむ演出として思った以上に癒しの効果がありました。 このようなお風呂を常に貸切状態で楽しむことができたことも、満足度を高める大きな要因の一つであったと思います。 宿のアンケートに、湯抜き清掃の徹底、替水間隔の短縮を図れば信州一素晴らしいお風呂に成り得ると書いてきたので、今後に期待していきたいと思います。 次回は、田舎宿として趣や懐かしさに溢れる館内の様子について紹介したいと思います。
次回へと続く・・・ |
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日本文学界の巨匠・島崎藤村の代表詩である「千曲川旅情のうた」の一節に、〜千曲川いざよふ波の岸近き宿にのぼりつ・・・〜と謳われた一軒の宿があります。 その「岸近き宿」である、城下町・信州小諸に佇む歴史と文学の香り溢れる温泉宿、中棚温泉『中棚荘』へと足を運んできました。 白煙たなびく浅間山、日本一の大河である千曲川を眼下に望みながら、かねてよりこの宿の名物である「初恋りんご風呂」を是非一度味わってみたいと考えていたのですが、1月の平日に運良く二日間の休暇をもらったため、念願かなって2008年の初湯を『中棚荘』で迎えることとなりました。 藤村の面影を偲びつつ、一人旅で巡った中棚温泉『中棚荘』の宿泊レポートをこれから数回に分けて紹介して行きたいと思います。 今回は宿に到着するまでの行程と、宿泊した客室について紹介します。 正月休みも明けた平日の昼下がりは車の数も少なく、上信越道を快調に小諸へと車を走らせます。 青空に映える浅間山のたおやかな姿が印象的でした。 出発がやや遅めであったので、小諸に到着したのは午後2時を少しまわった時間でした。 このまま宿に向かうかどうか迷った末、遅い昼食をとるべく懐古園前に車を駐車します。 立ち寄ったお店は手打ち蕎麦の有名店である「草笛」です。 小諸の蕎麦屋といえば真っ先に名前があげるのがこちらの「草笛」で、そのレトロな外観が非常に印象的でした。 観光客対象のお店なのか、蕎麦好きも満足される確かな実力を持ったお店なのか、期待と不安を持って暖簾をくぐります。 店内は奥に座敷などもあってかなり広めのつくりとなっていました。 壁にはメニューなどの他、訪れた有名人の色紙が所狭しと飾られています。 「草笛」ではくるみそばが名物のようですが注文したのはこちらのざるそばで、およそ2人前はあろうかという程の大盛りでした。 汁はやや甘口で、蕎麦自体にあまりコシはありませんでしたが、喉ごしが良く味はまずまずといったところ。 食べ終わってすっかり満腹になり、これで630円という価格ですからずいぶんと良心的な感じを受けました。 「草笛」で信州蕎麦を満喫したあとは、車で5分ほどの距離にある中棚温泉へと向かいます。 しばらくして右手に宿の看板が見えて来ました。 『中棚荘』入口の向かいには、ご覧のように日本丸型ポスト協会認定というレトロな「初恋ポスト」がポツンと佇んでいます。 脇には藤村の「初恋」の一文が掲げられ、郷愁を誘う光景でした。 最近は電子メール全盛の時代ですが、こんなポストから手書きの手紙を投函すれば想いも相手に届くかも知れませんね。 宿に向かう坂道に入るため、ポストの先でUターンして入口へと進みました。 細い坂道を慎重に降りて行きます。 後で分かったのですが、ポストの先の道をそのまま進んでも駐車場の方へと通じているようでした。 坂道を降り宿の玄関前に差し掛かると、いきなり山羊がのんびりと散歩をしている姿に出くわしました。 車や人にずいぶん慣れているようで、クラクションを鳴らしてもなかなか道をゆずってくれず通過するのに一苦労しました。 後でまた紹介しますが、この宿には他にもたくさんの動物達が飼われているようです。 宿の裏手にある駐車場に車を停め、坂道を戻るようにして今宵の宿となる『中棚荘』へと到着しました。 以前は日本秘湯を守る会にも加盟していた、落ち着いた佇まいの外観です。 玄関には着物の形をした暖簾が下がり、正月らしく門松が飾られていました。 館内に入り、先ずはラウンジにてチェックインの手続きを行います。 ほどなくしてウェルカムドリンクのお茶と温かいおしぼりが運ばれてきます。 宿帳に記帳した後、夕食・朝食の時間をこちらで決めることになりました。 お茶を飲んでしばしゆっくりした後は、スタッフに案内されて客室へと向かいます。 長い廊下の壁には額縁に納められた詩歌や絵画が並び、いかにも文学の香り漂うそれらしい光景が広がっていました。 今回予約した客室は比較的新しい建物である平成館の和室で、客室前の廊下など落ち着いた和の風情を感じます。 平成館2Fの角部屋である201号室、「なんてん」が今宵の客室です。 趣のある引き戸をがらりと開け、早速客室内へと足を運びました。 こちらが客室の様子です。 平成6年築の建物ながらどことなくレトロな雰囲気も漂わせており、一目見て気に入りました。 部屋の広さは8畳ですが、一人旅には十分なスペースです。 ほんのりと灯った、天井から吊された電灯や窓際の照明に心が癒される感じがしました。 客室には、寝そべってくつろぐのに調度よい大きな座布団なども用意されています。 広縁などは設けられていませんでしたが、窓際の座卓のようなスペースが読書や書き物をするのに都合のよいつくりとなっています。 先ずはお茶を入れ、備え付けのお茶菓子などをいただきながらしばしのんびりとくつろぎました。 窓の外に広がる景色は、団地の向こうにわずかに千曲川を望みます。 藤村の見た千曲川沿いの風景とは、今となってはずいぶん変わってしまったようで少々残念です。 小さな掛け軸(タペストリー)と活けられた花も部屋の雰囲気にあっていて心が和みます。 こちらはトイレ・洗面所のあるスペースです。 玄関のすぐ左手に設けられていて、正面の扉がトイレ、手前左側が洗面台、右側に冷蔵庫が置かれていました。 洗面台の鏡の周囲には竹枠がはめ込まれていて、なかなか凝ったつくりとなっています。 こちらは備え付けのトイレで、狭いながらもウォシュレットも付いていて快適です。 冷蔵庫はビールのなどの他、飲泉できる温泉水が冷やされていました。 口当たりはまろやかで、二日酔いの予防などに効果があるそうです。 こちらは部屋に用意された浴衣類です。 湯浴みに便利な籠や足袋なども用意されていて助かりました。 今時珍しいことに客室には金庫が備えられておらず、貴重品が心配な人は貴重品袋をフロントに預けるかたちになっていました。 また食事時間が記入されたカードなども手渡されるので、忘れる心配が無くて安心です。 そして夜に布団を敷いた状態です。 冷え込みを心配しましたが、思ったよりも寒さを感じずに安眠することができました。 電球色の蛍光灯が、少し寂し気な一人旅の一夜を演出してくれました。 以上で中棚温泉『中棚荘』へ到着するまでの行程と、宿泊した客室の様子についての紹介を終わります。 『中棚荘』の客室は全部で27室あり、こちらの和室の他に平成館1Fには広めの和洋室、別棟となるレトロな雰囲気満載の大正館にも和室が設けられていて、好みに応じて部屋を選択することができるようになっています。 平成館の客室は全てトイレが付いていますが大正館の客室にはトイレがなく、その分リーズナブルな料金で宿泊することができるようでした。 今回宿泊した客室はお風呂にもほど近く、風情もあって非常に快適でした。 眺望のみやや期待はずれな感もありましたが、角部屋を用意してもらったことで窓も2面取られていて、開放感もあり満足しています。 次回は、秋から春にかけて甘酸っぱいりんごの香りが広がる宿の名物、「初恋りんご風呂」について紹介します。
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