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これまで小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』に宿泊した感想について、魅力溢れる多彩なお風呂の数々を中心に紹介してきましたが、最終回となる今回は秋田の郷土の味覚を盛り込んだ宿の食事について紹介したいと思います。 先ずは夕食からですが、今回私達が宿泊した際は食事をいただく場所を部屋と食事処のうち好きな方を当日選ぶことができました。 私達は部屋食よりも食事処の方が良かったので、迷わず食事処での夕食に決めました。 こちらが夕食会場となる食事処「いろり庵」の入口です。 中に入ると、囲炉裏を囲んだテーブル席が4つほど設けられ、既にいくつかの料理が並んでいました。 どうやら改装したての食事処のようで、個室等ではありませんでしたが落ち着いた民芸調の佇まいは個人的に好みの雰囲気です。 当日は私達を含めて3組の宿泊客がこちらの食事処で夕食をいただきました。 今回はお品書きが無かったので記憶がやや曖昧ですが、先ずは地元の名物ひろっこ(野蒜)の酢味噌和えとくるみ豆腐からいただきました。 雪の下から掘り出すというひろっこは柔らかな葱の様な食感で、柚子味噌仕立てでさっぱりとした味付けとなっており、くるみ豆腐は牛乳を用いて固めたということで非常に濃厚な風味でした。 お造りは山の中の海の幸ということで、可もなく不可もなしといったお味。 なまじ川魚の刺身などを出されるよりは断然こちらの方が好みです。 続いて前菜にあたるであろう3品と揚げ物の山菜の天ぷらです。 揚げ物以外は最初から並んでいたもので、食べる順に撮影していったのでこのような順序になってしまいました。 前菜は岩魚のタマゴ、ハタハタ寿司、わさび漬けの3品で、見た目は地味ですが、どれも皆郷土の味覚で美味しくいただきました。 天ぷらもタラの芽とひろっこを梅塩でいただき、さっくりと揚げたてで美味しかったです。 続いて地元名産・皆瀬牛の陶板焼きです。 食べ応えのある皆瀬牛を甘めの朴場味噌焼きでいただきました。 昼食にいただいた「かえで庵」のように塩・胡椒でいただくステーキの方が好みですが、どのような味付けであれ、やはり皆瀬牛はこの辺りの温泉宿の夕食にはかかせないメニューといった感じがしました。 そして鍋物は秋田名物のキリタンポです。 残念ながら比内鶏は使われていないようでしたが、豊富な野菜と鶏肉からは十分に出汁が出ていてとっても美味しくいただきました。 都会人にとって、冬場に囲炉裏でいただくキリタンポ鍋は身も心も温まる何とも贅沢な一品です。 続いては熱々の岩魚のホイル焼きの登場です。 ステーキと違って、岩魚料理は塩焼きよりも味噌味が好きな私なのでこちらのホイル焼きはとても嬉しい一品でした。 きれいにワタも抜かれており、味噌も単なる味噌ではなくバッケ味噌(ふき味噌)とクルミが中に詰まっていて、見た目以上に工夫された味付けに感心しました。 こちらはコンソメスープで煮込んだ豚の角煮です。 柔らかく煮込んだ豚肉の他にも、椎茸やしめじなどのキノコ類やたまねぎ、にんじん、ゆりね、ひめ竹など具たくさんの食材が入っており、優しい家庭的な味わいでした。 料理はまだ続き、続いては蕎麦の実の雑炊です。 具材に焼き目をつけた葱と鴨肉、舞茸などが入りさっぱりと薄味で仕上げた出汁で非常に美味しかったです。 ここで思わぬ宿からのサービス品の登場です。 こちらは古代米でつくったというにごり酒で、部屋に持ち帰って飲んでもよいとのことでした。 アルコール度数も高く、夜のお風呂巡りに差し障ると思って軽くいただいた程度でしたが、心づかいが何だかとても嬉しい感じがしました。 そしてようやく食事となり、古代米に地元名物の稲庭うどん、漬物といった内容でした。 漬物のみ市販品のありきたりな物で少々残念でしたが、うどんもご飯も美味しくいただきました。 最後にデザートとしてリンゴとパインをいただき、すっかり満腹となって夕食の終了となりました。 夕食は郷土の味覚満載で、山の宿系のご馳走を存分に堪能することができて大変満足することができました。 食事処「いろり庵」も床暖房が効いていて寒さしらずであり、見た目の雰囲気だけでなく快適な空間であったと思います。 ただ配膳スピードが早く、次から次へと料理が運ばれて来たことでゆっくり食事することができなかったので、もう少し時間をかけて配膳してもらえると一品一品更にじっくり味わいながら楽しめた感じがします。 食材に乏しい冬場でも十分に満足できる料理内容であったので、春は山菜、秋はきのこと山の幸が旬を迎える季節にも是非味わってみたいと思いました。 続いて朝食の紹介です。 廊下を進み、朝食会場は夕食時とは異なる大広間にていただきます。 朝食会場では広間にお膳がずらり並ぶという、昔懐かしい典型的な温泉宿の光景が広がっていました。 朝食はご飯に味噌汁、焼き鮭や温泉たまご、野菜の煮物などこちらも典型的な温泉宿の朝食内容でした。 特に不満はありませんが、もうひと工夫加わることで宿の食事の好印象を最後まで残すことができるような感想を持ちました。 夕食はとても満足することができたので、朝食にもより一層力を注いでもらいたいものです。 朝食後にもう一度じっくりと風呂に入り、身支度を整えて出発します。 出発時も変わらぬ雪景色に、雪国での温泉情緒を存分に味わうことができました。 宿のすぐ近くには、小安峡温泉の源泉がもくもくと白い湯気をはき出しています。 また季節を変えて、再び『旅館 多郎兵衛』のお風呂を満喫したいとの想いを胸に、充実した湯巡りを終えて宿を後にしました。 以上で小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』の宿泊レポートの紹介を終わります。 今回は魅力溢れる宿のお風呂をとことん味わいたいとの目論見通り、思った以上の満足感を得ることができてすっかりお気に入りの宿となってしまいました。 洗練された雰囲気はなく、秘湯の宿というわけでもないこのような湯宿は、いかにも田舎宿として中途半端な滞在に終わることが多いのですが、久しぶりに穴場の宿を見つけたという感じがして嬉しい思いでいっぱいです。 小安峡温泉周辺の環境は自然豊かな景勝地が広がっており、四季を通じて楽しみを見いだせる温泉地といった感じがします。 前回も記しましたが、『旅館 多郎兵衛』のお風呂を満喫したことがきっかけで約2ヶ月後の九州訪問を決めることになりました。 黒川温泉に足を運んだことがある人ならきっと、『旅館 多郎兵衛』のそこかしこに広がる黒川らしさといったものを感じることができるのではないでしょうか。 今後は単なる物まねで終わるのではなく、より一層高い志を持った東北屈指の温泉宿に成長していって欲しいものです。 ※宿の正式名称は『多郎兵衛 旅館』となっているようですが、今回は全て『旅館 多郎兵衛』にて記載しました。 採点(5段階) 接客・・・・・3.5(飾らない素朴な雰囲気で特に不満は無し) 館内の雰囲気・・・・・3.5(温泉棟を除いた館内は至って普通の旅館。今回はあまり紹介しなかったが、調度品のこけしの数が多すぎる感じを受けた。今後の改装次第ではさらに雰囲気UPも期待できそう) 部屋の雰囲気・・・・・3.5(最もリーズナブルな客室なので特に不満なし。広縁のついたタイプなら更にくつろげる感じがする) 清潔感・・・・・4(全体的に特に不満なし) 温泉・・・・・5(浴室の雰囲気、泉質など大変満足。旅館だけで充実した湯巡りが楽しめた) 夕食・・・・・4.5(山の郷土の味覚に質・量とも十分に満足することができた) 朝食・・・・・3(至って普通。もう少し頑張って欲しい感じがした) コストパフォーマンス・・・・・4.5(1万円台前半で温泉ライフを満喫することができた) 総合満足度・・・・・4.5(お風呂・夕食など大変満足することができた) 次回リピート度・・・・・5(季節を変えて必ず再訪したい)
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小安峡温泉 旅館 多郎兵衛
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前回、小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』の4箇所あるお風呂のうち、大浴場「薬師の湯」と「陶喜の湯」及び「風の湯」という2つの露天風呂について紹介しましたが、第3回目となる今回は残り2箇所のお風呂である「三宝の湯」と「子宝の湯」の様子について紹介したいと思います。 先ずは宿の外の高台に設けられている「三宝の湯」から紹介していきます。 「三宝の湯」へは、出入口で長靴を履いて足を運びます。 途中、休憩所として鄙びた雰囲気の東屋が設けられていました。 このような東屋も黒川温泉などの九州の宿でよく目にするような感じがします。 雪の無い季節であれば囲炉裏を囲んでゆったりくつろげそうですが、いかんせんこの季節では休むことすらできません。 「三宝の湯」へは、雪を照らす照明が置かれたこちらの階段を登って行きます。 外の寒さは非常に厳しいですが、なかなか趣のあるアプローチでした。 階段を登りつめると、暖簾の先に男女別の浴室が設けられています。 九州の温泉宿を思わせる黒塗りの板壁と、降り積もる真っ白い雪とのコントラストが実に味わい深い雰囲気となっていました。 青い暖簾が下がっている方が男性用の浴室です。 こちらが脱衣所で、洗面台の他にドライヤーなども備えられていました。 扉を開け浴室へと入ってみます。 趣のある小じんまりとした切石の浴槽には掛け流しで柔らかなお湯が注がれ、一人静かに湯浴みを楽しむには最高の雰囲気に溢れています。 窓から注がれる外の明かりや、太い梁に吊された電球を眺めていると何とも落ち着く空間です。 また一つだけですがカランとシャワーも設けられていました。 小さな窓を開けて肩まで湯船に浸かると、外の冷たい空気がすーっと頭の上に抜けていきます。 のぼせることなく、いつまででも入っていられそうな感じのする素敵なお風呂でした。 続いて赤い暖簾の下がる女性用の浴室を紹介します。 男女別に分かれる「三宝の湯」ですが、浴室のつくりはわずかに異なったつくりとなっていました。 残念ながらこちらは男女の入れ替えは行ってないようです。 脱衣所の広さ・雰囲気は男性用とほぼ同じつくりとなっています。 こちらが女性用のお風呂です。 男性用と同様に切石の浴槽ですが、湯船の枠がごつごつとした男性用に比べてきれいに磨かれた浴槽となっていました。 同じ石づくりの浴槽でも、どこかスタイリッシュな感じも受けます。 浴槽の大きさや注がれるお湯はほとんと同じで、ほのかな温泉の香りとわずかに漂う湯の花に身も心も癒される感じがしました。 引き続いて、今度は宿の館内に設けられているもう1箇所のお風呂、「子宝の湯」の様子について紹介します。 「小宝の湯」は大浴場のある湯小屋とは別の場所にあり、宿泊した客室からは最も近い位置に設けられていました。 2つある浴室は日中は男女別に分けられていますが、夜間は無料の貸切風呂として利用することができます。 こちらは青い暖簾の下がっている男性用の脱衣所です。 コンパクトながら清潔なつくりとなっていました。 そしてこちらが浴室です。 湯治場の雰囲気を感じさせる小じんまりとしたお風呂で、個人的に好きなタイプのお風呂です。 夜は1時間まで無料の貸切風呂として利用することができ、あらかじめ希望の時間を予約しておいて利用時にフロントで鍵を受け取って入ります。 夜は一層静かな雰囲気の中で、じっくりと湯浴みを堪能することができました。 続いてこちらは赤い暖簾が下がっている女性用の脱衣所です。 つくり、雰囲気などは同じような感じでした。 こちらが浴室で、男性用となっているお風呂よりもやや小ぶりな印象ですが、微妙な差でこちらの浴室の方が風情を感じました。 他のお風呂が石風呂中心なのに対し、こちらの「子宝の湯」は両方とも木の浴槽なので違った雰囲気が楽しめて嬉しい限りです。 両方の浴室ともカラン・シャワーは2つずつ備わっていました。 こちらの浴室も夜は貸切風呂として利用することができます。 宿全体でお風呂の数が多いためか、「子宝の湯」はあまり利用者がなく空いていました。 翌朝は利用しなかったため、男女が入れ替えになるかどうかははっきりと覚えていませんが、似ているようでもやや雰囲気が異なるためできれば両方味わいたいところです。 最後に夜の「三宝の湯」の様子について紹介します。 雪深い夜はあまり外のお湯を利用する人はいないようで、出入口にも外履きの長靴が並んだままになっていました。 夜の湯小屋は白い雪にライトがあたって美しい光景となっています。 軒先には干した草花やトウモロコシなどが吊されて黒川温泉さながらの雰囲気です。 寒さに身を縮めながら小走りで離れのお風呂へと足を運びました。 「三宝の湯」へと続く階段も夜はさらに風情が増してきます。 こちらが夜の「三宝の湯」の男性用のお風呂です。 今回滞在中は常に貸切状態で気分良く利用することができましたが、取り分け夜の湯浴みは最高の雰囲気でした。 比較的新しいお風呂でありながらも、もう何年も経っているかのような風情を感じさせてくれます。 そしてこちらが女性用のお風呂です。 女性用も負けず劣らず文句の付けようのない雰囲気を醸し出していました。 以上で小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』のお風呂の紹介を終わります。 ご覧いただいて分かると思いますが、全体的に風情と清潔感との調和の取れた見事なお風呂の数々に大満足の湯巡りを満喫することができました。 宿泊中に合計で10回近くお風呂へと入りましたが、1泊ではじっくりと味わい尽くすのに時間が足らない感じで、できれば2〜3泊してのんびりと湯治気分を味わってみたいと感じました。 実は今回の『旅館 多郎兵衛』での滞在にすっかり刺激を受けてしまい、後日、本場の切石風呂を堪能すべく九州(黒川温泉周辺)への訪問を決意させた次第です。 その時の滞在記についてはいずれじっくりと紹介していくつもりです。 『旅館 多郎兵衛』のお風呂は、露天よりも鄙びた雰囲気の内湯好きという人には正にぴったりのお風呂だと感じました。 客室数に対して比較的お風呂の数が多いため、混み合わずにゆったりと入ることができるというのも大きな魅力であると思います。 黒川や法師温泉が進化したようなお風呂の雰囲気を、是非たくさんの人に味わってみて欲しいと感じました。 次回は盛りだくさんな山の幸のご馳走が並ぶ宿の食事について紹介したいと思います。
次回へと続く・・・ |
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小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』のお風呂は、昨年リニューアルした大浴場を中心に男女別に4箇所、合わせて8つもの浴室を要するという居ながらにして湯巡りが楽しめる環境となっています。 宿のご主人自ら九州の黒川温泉や群馬の法師温泉、長野の仙仁温泉など日本屈指の名湯に足繁く通い、それら人気宿の趣を上手に取り入れて『旅館 多郎兵衛』の現在のお風呂の陣容を整えたということでした。 実にたくさんのお風呂があって一度では紹介しきれないので、2回に分けて宿のお風呂の紹介をしていきたいと思います。 今回は男女別の大浴場「薬師の湯」と、趣の異なる2箇所の露天風呂についての紹介です。 こちらが大浴場のある湯小屋の外観です。 雪にすっぽりと思われていますが、その色づかいや雰囲気は正に黒川温泉の湯宿を彷彿とさせる佇まいでした。 お風呂道具を持って、先ずは大浴場「薬師の湯」へと向かいました。 湯小屋の入口から見た様子。 廊下の右手に男女別の大浴場が設けられ、廊下の突き当たり右手に露天風呂、さらに突き当たりの出入口から外に出ると離れの湯小屋も設けられています。 男湯となる青い暖簾をくぐり、大浴場「薬師の湯」に入ってみます。 脱衣所には「薬師の湯」の文字が入った提灯が下がり、秘湯を守る宿さながらの風情ある雰囲気を醸し出していました。 浴衣を脱ぎ、期待いっぱいに入口の扉に手をかけました。 中に入ると、リニューアル後の写真を見て私が一目惚れしてしまった素晴らしい佇まいのお風呂の姿が目に飛び込んで来ました。 壁面や窓の形は法師温泉を彷彿とさせますが、浴槽全体に切石を用いていて法師温泉に勝るとも劣らないお風呂の雰囲気でした。 壁や梁の木材は地元の銘木秋田杉、湯船と洗い場の石は黒川温泉あたりで良く目にする阿蘇産の石材を用いており、風格漂う重厚な佇まいを感じさせます。 こちらの掛け湯に用いている石は、牧場の牛に塩を与える為の大きな石を加工した物であるとのことです。 風情ある浴室ながらも、カラン・シャワー等はしっかりとつくられていて快適です。 できればポリ製の椅子は置かずに、桶に合わせて全て木製にするか、石を加工するなどして雰囲気にあった物を用意して欲しいと感じました。 奥から入口方面を望むとご覧のような光景になります。 高い天井に太い梁が実に見事です。 続いて女性用のお風呂を紹介します。 女性用のお風呂は男性用と左右対称で同じつくり・広さとなっていて、脱衣所の様子も全く同じ雰囲気でした。 大浴場については男女別の入れ替えはありません。 扉を開け、浴室内へと入ります。 こちらが女性用の浴室の様子です。 湯口から注がれる湯の音だけが浴室内に響き渡り、黒光りする浴槽、静かに立ち上がる湯気の姿を目にして、この素晴らしいお風呂を知り得たことに感動がこみ上げて来ました。 浴槽に注がれるお湯は無色透明の単純温泉で、お湯の温度は適温の41度前後に保たれています。 「薬師の湯」は源泉を投入しつつの循環式ですが、他に源泉掛け流しのお風呂も当然設けられているのでさほど不満は感じませんでした。 塩素消毒も行っているようですが、匂いなどは全く感じることなく湯浴みを堪能できます。 カラン・シャワーの数も男性用と同じです。 材料に用いている秋田杉は、ご主人の親戚が所有する山林から譲ってもらったということで非常に贅沢な使われ方をしています。 まだ無垢な状態であるため、今後10年、20年経つと更に渋い表情へと変わって行きそうな感じがしました。 続いて男女別の露天風呂を紹介します。 趣の違う男女別の露天部呂は翌朝入れ替えとなり、到着日には手前の入口が男性用の「陶喜の湯」、奥が女性用の「風の湯」となっていました。 こちらは「陶喜の湯」の脱衣所です。 黒塗りの板張りに電球といった湯治場風情を感じさせる渋い雰囲気でした。 しっかり洗面台も用意されているので助かります。 扉を開け、眩しく光る浴室へと期待一杯で足を踏み入れます。 こちらが露天風呂「陶喜の湯」の様子です。 切石の湯船には地元工房の陶器の破片を散りばめるという工夫をこらしたお風呂で、窓には宿名を記した「多郎兵衛」の文字が明るく照らし出されていました。 一目見てこれは黒川の「いこい旅館」を模したものだと分かり、後でご主人に尋ねてみるとまさにその通りでした。 こちらのお風呂は浴室内の上部に隙間が空いている以外は壁に囲まれているので、露天というよりは半露天といった感じのつくりです。 雪の量が凄いので、完全な露天風呂にすると湯温がぬるくなりすぎて入れないとのことでした。 浴槽内には湯の花も舞い、単純温泉ながらも泉質の濃さを感じました。 思わず瞑想に耽ってしまいそうな趣溢れるお風呂です。 続いて「風の湯」の紹介です。 脱衣場は「陶喜の湯」とほぼ同じようなつくりでした。 脱衣場の窓からは湯船の姿を望み、気持ちがはやります。 外に出ると、身を刺すような冷たい空気が体を包み込みます。 周囲は一面の雪で眺望はあまりないものの、広さもまずまずで気持ちのよい露天風呂でした。 最後に表情の違う夜のお風呂の様子についていくつか紹介します。 湯小屋の廊下も、夜はほんのりとした灯りに照らされて風情が増して来ました。 こちらは大浴場「薬師の湯」の様子です。 広い湯船に一人きりで入る幸せといったらありません。 昼も夜も雰囲気満点のお風呂の姿に、一目惚れから完全に心を奪われてしまいました。 続いて夜の露天風呂の様子です。 男女を分ける暖簾は薬師の湯と書かれていますが、左が「陶喜の湯」、右が「風の湯」の入口となっています。 「陶喜の湯」の夜の表情は日中とさほど変わらない感じがしましたが、壁の隙間から時折吹き込んで来る冷たい空気を感じながら、出たり入ったりを繰り返して長湯を楽しむことができました。 こちらは「風の湯」の様子です。 夜の露天風呂を満喫できるのは女性のみ。 静寂な雰囲気に包まれながら、温めのお湯にじっくりと浸かる時間は正に至福の瞬間です。 以上で大浴場及び露天風呂の紹介を終わります。 個人的には、事前に想像していた以上の素晴らしいお風呂の雰囲気に大変満足できましたが、何よりも露天風呂を好むといった人にはやや物足りなさを感じるかも知れません。 今はまだ改装間もないということで知名度もあまり高くありませんが、いずれは東北を代表するような素晴らしいお風呂を有する宿として人気が広まってくることが予想されます。 前述しましたが、大浴場「薬師の湯」の10年後、20年後の風格を増した雰囲気が非常に楽しみな感じがしました。 次回は貸切風呂を含む残り2箇所のお風呂について紹介します。
次回へと続く・・・ |
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雪国秋田の湯沢市は県内でも有数の豪雪地帯として名を馳せ、長い冬の季節は一面の銀世界に包まれる山間地を抱えた静かな街です。 そんな厳しい冬が訪れる県南地方には、秋の宮、泥湯、大湯温泉など東北屈指と云っても過言ではない秘湯系の温泉がひしめき、雪国ならではの景観を楽しみながら極上の湯浴みを楽しめるという、まさに都会人にとって憧れの温泉地であると思います。 湯煙たなびく深い渓谷が広がる景勝地、新秋田30景の第2位にもランクされる「小安峡」周辺に湧く小安峡温泉も、そんな雪深い静かな温泉地の一つです。 今回紹介する小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』は、昨年9月に大浴場をリニューアルし、その情報を知り得た時点で法師や黒川温泉を思わせる見事なお風呂の姿に一目惚れしてしまいました。 これまで周辺の温泉地には何度も通っていたものの小安峡温泉の宿には全く目が向かなかったのですが、そのリニューアルした大浴場の姿を見るにつけ是非一度足を運んでみたいとの思いを抱き、冬場を待ってようやく訪問するに至りました。 そんな極上の湯巡り宿、小安峡温泉『旅館 多郎兵衛』の滞在記についてこれから数回に分けて紹介していきたいと思います。 第1回目の今回は、宿にチェックインするまでの行程と館内の様子、宿泊した客室等を中心に紹介します。 湯野浜温泉を出発した後、雪道をひたすら走り続けながら湯沢市の旧皆瀬村方面へと向かいました。 何度も走っている道ですが、冬場は普段の倍近い時間がかかってしまいます。 宿に迎う途中、遅いランチを取るべく立ち寄ったのがこちらのお店、そば処「かえで庵」です。 外観はあまりパッとしない街の食堂といった雰囲気ですが、私が小安峡周辺に足を運んだ際には必ずと云っても良いほど立ち寄る機会の多いお気に入りのそば屋です。 こみらの店の魅力はコシの強い十割蕎麦はもちろんですが、実はそば屋らしからぬある名物メニューを味わうことを目的に訪れました。 午後も遅い時間ということもあり、店内はひっそり閑散としていました。 窓際の席からは、しんしんと降り積もる雪景色が目に飛び込んで来ます。 そして毎回楽しみにオーダーする名物メニューがこちら、「皆瀬牛のステーキ」です。 皆瀬牛といえば柔らかくてジューシーな地元特産の黒毛和牛なんですが、こちらの角切ステーキと手打ち蕎麦のセットで何と1,680円という格安の値段で味わうことができるため、非常に穴場的なお店であると思います。 秋田市内のある蕎麦屋の店主に言わせると、蕎麦とステーキを同じ厨房で調理して提供するなんてあり得ないと批判めいた言葉を口にしていましたが、蕎麦も肉も大好きといった私のような横着者には正に夢のようなお店です。 ステーキにソースは付かず、シンプルに塩と胡椒を自分で振りかけて焼き上げます。 残念ながら今回は解凍からやや時間がたった肉のようで、色つきが今ひとつといった感じでしたが、味はいつも通り甘みのある脂、溢れる肉汁に十分満足することができました。 初めてこの店に足を運んだ際には、本当に美味しい物を食べたときに感動で涙することもある彼女が思わず涙を見せたという懐かしい思い出も残っています。 先にステーキが運ばれた後、こちらの蕎麦が届きます。 県内産の蕎麦粉100%で打たれた蕎麦はコシがあって、味もまずまず。 新蕎麦の季節よりも風味が増してくる冬のこの時期は、最も蕎麦を美味しくいただくことの季節であると思います。 また、ステーキセットではざる以外にも温・冷のかけそばを選ぶこともできました。 小安峡周辺の宿に宿泊すると皆瀬牛が夕食時に上がることも多いですが、私はこちらの「かえで庵」でいただく皆瀬牛のステーキがシンプルに肉の美味しさを楽しむことが出来るのでとても気に入っています。 そば処 かえで庵 http://www.minasekc.com/sub3.htm 「かえで庵」ですっかりお腹を満たした後は、車で数分の小安峡方面へと向かいました。 相変わらず雪は降ったり止んだりを繰り返し、水墨画のような景観をつくりだしています。 小安峡の中でも一番の見どころがこちらの看板にある「大噴湯」です。 切り立った渓谷沿いの岩盤から温泉や湯気がもうもうと噴きだしてくる様は迫力満点で、川に沿って散策路が設けられているので新緑や紅葉シーズンには素晴らしい景観を楽しむことができるようになっています。 残念ながらこの季節は散策路は雪ですっぽり覆われているため川岸には下りていけませんでした。 ちなみにこちらは以前足を運んだ時の写真です。 この時は近くの阿部旅館で日帰り入浴を楽しみ、湯上がりの涼を取るべく散策を楽しみました。 晩秋の大噴湯は紅葉がわずかに残り、美しい渓谷美を満喫することができました。 周辺一帯は川にも温泉が流れ込んでいるため、コアな野湯好きになると人気の少ない時間帯を見計らって入浴を試みる人もいるそうです。 川岸に下りて行けなかったので、橋の上から渓谷を覗いてみました。 深い谷に降り注ぐ白い雪、そしてたなびく湯煙。 上から望む景観も実に見事でした。 体もだいぶ冷えて来たので、宿へ向かうべく急いで車を走らせました。 時折強く降りしきる雪が視界をさえぎり、ハンドルを握る手にも緊張感がよぎります。 大噴湯からわずかの距離を走って、ようやく今宵の宿である『旅館 多郎兵衛』の姿が目に入りました。 泊まっている車や宿の屋根にはびっしりと雪が積もり、軒先からは氷柱が伸びるといったいかにも雪国の温泉宿の表情です。 道路を挟んだ宿の向かいには、ご覧のように足湯が設けられていました。 雪をかき分けるように近づいてみると、なかなか風情のあるつくりとなっていました。 今回は靴下を脱いでつかってみる余裕が無かったので、写真を撮っただけで引き返します。 宿の看板には「国際観光旅館」の文字が・・・。 鄙びた佇まいの田舎宿ながらも、江戸時代から12代も続いているという老舗宿の歴史と風格が感じられます。 宿泊した日は一月中旬だったこともあり、玄関にはまだ門松が飾られていました。 館内に入り、先ずはこちらのフロントにてチェックインの手続きをします。 人の身の丈ほどもある大きなこけしの姿が印象的でした。 玄関前のホールにはストーブに火が灯り、その脇にはラウンジが設けられています。 ログハウスを思わせるようなウッディーな雰囲気のラウンジではコーヒーなどのドリンクの他、生ビールなども楽しめるようです。 ラウンジの向かいには民芸品に彩られた売店があり、素朴な美味しさである宿の手作りクッキーなどが販売されていてお土産に購入しました。 スロープのある短い階段を進み、客室へと向かいます。 途中、館内の至るところに民芸品などの小物が飾られ和やかな雰囲気を醸し出していました。 今回通された客室は1Fの101号室、「脱の間」という名の付いた3タイプある客室の中で最もリーズナブルなタイプの客室です。 こちらが宿泊した客室の様子です。 広縁もなく少々古い感じは否めませんが、今回は温泉をとことん楽しむことが目的で、あえてお手頃価格のプランで予約したためさほど不満は感じませんでした。 次の間のついたゆとりある客室を選んでも一万円台後半ですから、全体的に宿泊料金はリーズナブルな部類であると思います。 窓際の障子には小さな紅葉をあしらい、和の情緒を奏でていました。 そして窓を開けると、外は一面の銀世界でした。 小さなテレビの下にはガスストーブが置かれ、外は厳しい寒さでも部屋の中はかなり暖かでした。 客室入口の板の間には、冷蔵庫と冷水の入ったポットが備えられています。 小ぶりの洗面台とトイレもしっかりと設けられているので安心です。 但し、残念ながらこちらのタイプの客室はウォシュレットはなく便座も冷たいものであったので、せめてウォーム便座を用意して欲しいものです。 こちらは備え付けの浴衣とタオル類です。 ビニールの巾着よりも手提げタイプの袋の方が好みなので良かったです。 最後に夜布団を敷いた状態です。 寒さが厳しいかなと思っていたのですが、ことのほか暖房や寝具もあたたかい物であったのでゆっくり休むことができました。 以上で小安峡温泉『旅館 多郎部衛』の館内と客室の様子についての紹介を終わります。 全体的に上品さであったりモダンな民芸調といった感じはあまりなく、いかにも昔ながらの温泉宿といった雰囲気に包まれていました。 但し、次回紹介する改装した温泉棟の雰囲気は秀逸で、見た目は正に黒川温泉の宿の佇まいを彷彿とさせるようなつくりとなっています。 『旅館 多郎兵衛』は、昨年の一時期JTBの総合満足度90点以上の宿にランクインしていたこともあるので、館内にもこれから少しずつ手が入るようになれば、更なる満足度を得られるように感じました。 客室については、リーズナブルに宿泊できるとタイプとよりグレードの高いタイプを用意している点は悪くないと思います。 ただ、宿泊した客室は床の間の掛け軸などがかなりくたびれていたので、手入れだけはしっかりと心がけて欲しいものですね。 次回は極上の湯巡りを堪能できる宿のお風呂について紹介します。
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