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私は昔、登山が好きで休みの日などよく山に登ったものでした。 山小屋にも何回か宿泊しましたが、苦労して登った後の食事が何とも美味しかったこと。 例えありきたりのカレーであっても、レトルトのハンバーグであっても、疲れた体には何でも美味しく感じるから不思議です。 もしそんな山小屋での食事が、ワインにも良く合うまるでフレンチを思わせるような絶品コース料理だったら一体どうなるか? 想像しただけで思わず笑みがこぼれてしまいそうな光景ですが、『手白澤温泉』に宿泊するとそんな想像を現実のものとして体験することができます。 最終回となる今回は、『手白澤温泉』で味わう魅力溢れる食事と帰りのハイキングの模様について紹介したいと思います。 先ずは夕食の紹介です。 『手白澤温泉』の夕食は午後6時から、食事の支度ができると連絡が入ります。 食事の場所は夕・朝食とも落ち着いた雰囲気の食事処にていただきます。 食前酒に杏酒と梅酒の炭酸割りが振る舞われ、先ずは前菜をいただきます。 前菜は蕨のお浸し、独活の酢漬け、煮豆、独活の葉のお浸し、蕗の煮付けの5品で、いかにも山の宿といった滋味溢れる山菜類がお皿に並んでいました。 山菜好きには非常に嬉しい内容です。 続いては自家製ベーコンのサラダです。 大好きなシーザーサラダは、香ばしい絶品ベーコンにシャキシャキの新鮮野菜とクコの実が合わさり、まるで一流レストランの味ような一皿でした。 前菜、サラダで食欲がみなぎり、次の料理に期待が高まります。 続いては宿の名物ガーリックトーストです。 厚切りのトーストはふんわりもちもちとした食感、バターとガーリックのあんばいが絶妙で最高の美味しさでした。 できればこれだけでお腹をいっぱいにしたいと思えるほどのお気に入りです。 続いては岩魚のムニエル ヴァンブランソースの登場です。 山の宿ともなると大抵は岩魚の塩焼きですが、こちらの料理は完全に極上のフレンチとなっていて、文句の付けようのない美味しさでした。 魚とくれば次はお肉です。 肉料理は牛ヒレステーキ バルサミコソースと銘打ち、つけ合わせにはオリーブオイルの利いたラタトゥイユが添えられます。 山奥で味わう至福の味わいに感動がこみ上げてくる思いでした。 こちらは酒のつまみにもなるお新香です。 はじめからテーブルの上に並びますが、私はご飯とともにいただきました。 そして柚子の風味が爽やかな一口蕎麦と共に、 蕗味噌の乗ったご飯が運ばれます。 ご飯もしっかりとお代わりし、身も心もお腹いっぱいになりました。 ご覧の様に珈琲、紅茶、お茶などはセルフで自由にいただけるようになっています。 最後はデザートに白ワインがかかった柚子のシャーベットをいただき、至福の夕食を食べ終わりました。 料理に定評のある『手白澤温泉』ですが、実際に食してみてその評判に偽りナシということが実感できた夕食でした。 和洋折衷のコース料理は、質・量ともに非常に満足度の高い内容で、歩き疲れた体の隅々まで染みいるような美味しさです。 2時間半かけて歩くアプローチも、きっとこの食事の満足感を高めるための演出だと言っても過言ではないことでしょう。 引き続いて朝食の紹介です。 朝食は7時半から、夕食と同じ席にていただきます。 こちらが朝食のお膳です。 虹鱒の甘露煮、なめこおろし、水菜とジャコのサラダ、温泉卵、夏野菜の漬物といった内容で、シンプルながらも食欲が沸き立つ内容でした。 ご飯も美味しく、朝からしっかりとお代わりしてしまいました。 個室ではありませんが、食事処はテーブル毎に簾が下がっていてプライベートな雰囲気も保ってくれています。 食事処にはこんな暖炉も設けられていて、秋から冬にかけては暖炉を囲んだ食後の団らんも楽しそうです。 最後にゆっくりと珈琲を楽しみ、出発の準備を整えました。 チェックアウト時間は10時ですが、朝食を食べ終えてしばらくすると宿泊客が次々と宿を後にして行きます。 鬼怒沼方面に向かう人、私達のように帰る人、みんなそれぞれ笑顔で充実した滞在に満足そうでした。 クロも玄関先に座ってみんなを見送っています。 そして私達も宿を後にしましたが、嬉しいことにクロが一緒に着いて来てくれることになりました。 名残惜しくしつこく声をかけたことが幸いしたのでしょうか、天気にも恵まれ思いがけず楽しいハイキングの始まりです。 私先を先導するように、10mほど前をクロが歩いて行きます。 道の分岐に差し掛かるとちゃんと立ち止まって待っていてくれるので、何とも利口で優しい犬なんだなぁと感動しました。 『加仁湯』までの道のり、帰りは山道を避けて平坦な林道コースを向かいました。 『加仁湯』を過ぎ、再び遊歩道コースに入って間もなくすると森の中に瀟洒な『八丁湯』のログハウスが見えて来ます。 『八丁湯』の看板犬のチビと『手白澤温泉』のクロは友だち同士です。 日陰で寝入っていたチビもクロが近寄って来ると尻尾を振って起きあがって来ました。 二人とも優しく穏やかな性格のようで、鳴き声一つあげることなく楽しそうに挨拶を交わしています。 いつもこうしてふれ合っているんだなぁと微笑ましく見入ってしまいました。 歩き始めたばかりでしたが、どうしても『八丁湯』に入って行きたかったのでここで立ち寄り入浴することにしました。 こちらの『八丁湯』、秘湯を守る会にも加盟している奥鬼怒きっての人気宿です。 受付で料金を支払い、お目当ての露天風呂を目指します。 暖簾をくぐった先が脱衣所で、混浴であるため女性のためにカーテンなども設けられていました。 脱衣所の目の前には開放感抜群の露天風呂が備わり、 少し離れた場所にも野趣溢れる岩風呂が魅力溢れる姿を覗かせています。 但し例によってアブの飛来が始まっていたため、これらには入らずに目的のお風呂へ向かいました。 こちらの滝のすぐ脇に、目指すべき魅惑の露天風呂が待ち構えています。 アブを追い払いながら、素っ裸で階段を駆け上がります。 階段を上った先にあるのがこちらの露天風呂です。 雑誌などで何度と無く目にしてきた憧れのお風呂でしたが、滝を前にした評判通りの眺望と肌触りの良い温めの湯はいかにも人気の出そうな魅力に満ち溢れていました。 ただ夏場ということでアブが非常に多いのと、やや清潔感にかける感じがしたので、できれば雪見の季節などに入ることができれば満足感もさらにアップしたかも知れません。 滝見の露天風呂から下を眺めるとこのような光景になります。 たくさんの露天風呂に囲まれているので、露天風呂好きにはたまらない環境といった感じでした。 しばし露天風呂を満喫した後は、内湯の方も覗かせてもらいました。 こちらがいかにも秘湯の宿といった鄙びた雰囲気の内湯です。 木と石の素材の質感が素晴らしいお風呂でしたが、こちらにもたくさんのアブが侵入していたので、急いで写真を撮り逃げるように『八丁湯』を後にしました。 『八丁湯』でクロと分かれ、女夫淵の駐車場に向かって森の中を再び歩き始めました。 9時に宿を出発し、途中の立ち寄り入浴を含め3時間ほど歩いてようやくゴールが近づいて来ました。 往路に比べて、復路は全体的にゆるやかな下りが続いていたのでさほど疲れることもなく歩くことができました。 歩くのにあまり自信がない人は、往きは林道コースで宿に向かい、帰りだけ遊歩道を歩いてみるのも一つの手かも知れません。 眩しい夏空が広がる女夫淵駐車場にたどり着き、充実した奥鬼怒温泉郷の旅の終了です。 名残惜しい思いで荷物をまとめがら、必ずまた再訪しようと心に誓いました。 以上で『手白澤温泉(ヒュッテ)』の宿泊レポートを終了します。 2時間半もかけて歩いて行かなければならないと聞いただけで尻込みしてしまう方も多いと思いますが、ご覧いただいた通り、頑張って足を運んだ先には正に至福の一夜が待っていてくれます。 こういう刺激的な宿の存在を知ってしまうと、今後至れりつくせりの温泉宿が何となく物足りなく感じてしまいそうな気さえしました。 次回は新緑の春か紅葉の秋にでも必ず再訪してみようと思っています。 採点(5段階) 接客・・・・・4(山の宿らしく気さくな感じ 特に不満無し) 館内の雰囲気・・・・・4.5(木の温もり感溢れる明るくモダンな館内は外観以上に◎) 部屋の雰囲気・・・・・3.5(極めてシンプルだが、特に不満無し) 清潔感・・・・・4.5(山の宿とは思えないくらいに手入れが行き届いていた) 温泉・・・・・5(泉質・ロケーション・雰囲気とも大変満足) 夕食・・・・・4.5(素晴らしいご馳走の数々に大変満足) 朝食・・・・・4(質・量共に概ね満足) コストパフォーマンス・・・・・4.5(1万円台で三拍子揃った至福の一夜を過ごすことができた) 総合満足度・・・・・5(期待を裏切ることなく、充実した滞在を送ることができた) 次回リピート度・・・・・5(季節を変えて何度でも再訪したいし、またクロと一緒に歩きたい)
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手白澤温泉
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森の中を2時間半かけて歩いた到着した『手白澤温泉』に待っているのは、頑張って足を運んだ者だけが味わえる至福の一夜です。 そんな旅人達の快適な滞在をサポートするのはやはり温泉と客室〜。 山奥に存在する温泉宿の印象といえば、何となく風雪に耐え忍んだ鄙びた外観や、およそ清潔感とは無縁の古びた館内をイメージしてしまいますが、こちらの『手白澤温泉』に関していえばそういった心配は一切ご無用、お風呂も客室もとにかく手入れの行き届いた「気持ちよさ」に溢れる空間が提供されています。 もちろん、あくまで山の宿であるため下界の豪華な旅館とは比べる由はありませんが、無駄を極力そぎ落としたシンプルな美しさと快適性は、私が温泉宿に求める癒しやくつろぎを味える環境の条件を十分に満たしていました。 今回は、そんな『手白澤温泉』の宿泊した客室と極上の温泉を堪能することができるお風呂の様子について紹介したいと思います。 客室に入ると、山の宿らしく入口付近はゆとりのある空間が広がっています。 上着を掛けられるフックやザックを置くことのできる棚などが備わり、機能的で非常に便利な作りでした。 棚の上には備え付けのタオルと浴衣、当然ながら巾着などはありません。 こちらが客室の様子です。 全6室の客室は全て飾り気の無いシンプルな和室、15畳もあろうかという二人では持て余してしまいそうなゆとりある空間でした。 もちろんテレビは置かれていないので、鳥や虫達の声、せせらぎや風のさざめきなど必然的に自然が奏でる音に耳が傾きます。 窓の外に目をやると、うっすらと絵葉書の様な森の姿が広がっています。 自分たちが歩いてきた道を眺め、途中の行程を思い出しては悦にひたってしまいました。 テーブルの上には食事の案内や、クロにエサをあげないようにとの注意書きが置かれています。 こちらは客室の洗面所。 非常に冷たい水が出るので、湯上がり後などにガブガブと飲みまくってしまいました。 トイレはシャワートイレではありませんが、特に不満はありません。 ただスリッパが昔懐かし過ぎるような感じも・・・。 最後に夜に布団を敷いた状態です。 夏場ということで、窓が少しでも開いているとたちまち虫が入り込んで来るので注意が必要です。 窓を開けてせっかくの星空を眺めたい思いと、虫の侵入だけは防ぎたいという思いでずいぶんと心の葛藤がありました。 客室の紹介は以上です。 部屋の設えに特筆すべき点はありませんが、掃除の行き届いた至極快適な環境に何の不満もありません。 また、夏場でもエアコン要らずの環境は寝苦しい熱帯夜続きの毎日から開放されて非常に助かりました。 できれば夏場に1週間くらい滞在して、俗世間を離れた山の中の別荘暮らしを楽しんでみたいものです。 続いてはお風呂の紹介です。 何を目当てにこの宿に足を運ぶかは人それぞれだと思いますが、私は何といっても開放感抜群のお風呂を大いに楽しみにしていました。 奥鬼怒四湯の他の温泉宿と違って日帰り入浴客を受け付けていないため、混雑とは無縁の贅沢な湯浴みが保証されているのも嬉しい限りです。 タオル片手に早速廊下の一番奥に位置するお風呂へと足を運んでみました。 廊下の突き当たりの右側が男性用、左側が女性用となっていますが、先ずは男湯から紹介します。 脱衣所は明るいフローリングが印象的な開放感あふれる作り、ピカピカに磨かれていて気持ちの良い空間です。 服を脱ぎらながらも、ガラスの向こう側に見える魅力的なお風呂の姿が気になって仕方ありません。 はやる気持ちで浴室への扉に手をかけました。 こちらが内湯の様子です。 ほのかに漂うイオウの香り、うっすらと濁った肌触りの良いマイルドな湯、窓を全開にして半露天風呂感覚で楽しむ開放的な湯小屋と、噂には聞いていたもののこれほどまでに素晴らしいお風呂だったのかと、改めて感動の思いがよぎりました。 広く取られた窓の外には、四季を彩る美しい自然が広がります。 そして、このお風呂の名物でもある洗い場の様子がこちらです。 カランでもシャワーでもなく、洗い場に備わる湯口からは絶え間なく温泉が湧き出ていて、体を洗う際はこちらの湯を利用します。 シャンプーなどすると完全にイオウの香りが髪についてしまうとは思いますが、そんな小さなことは気にせず豪快に楽しみたいものです。 ちなみに全く利用しませんでしたが、他に冷たい水の出るシャワーが1つだけ設けられていました。 湯船の縁に腰を掛け、出たり入ったりを繰り返しながら極上の湯浴みを満喫させてもらいました。 奥の扉の向こうには露天風呂が待ち構えています。 こちらが露天風呂の様子です。 野趣満点の作りでありながら、葉っぱ一つ浮いていない手入れの行き届いた素晴らしい露天風呂です。 比較的熱めの内湯に比べると露天の湯はやや温め、長湯を楽しむのにも最適な温度といった印象でした。 お風呂の下を覗くと、サラサラと手白沢が流れています。 湯口の近くに身を寄せ、とろけるようなあまりの心地よさにこのまま何時間でも入っていたいような思いが頭をよぎります。 ・・・・・が、実はこの時あるモノとの壮絶な戦いを強いられる状況にありました。 そうです、この季節の名物?とも云える永遠の宿敵、アブとの戦いです。 山の宿だけあって、日中はまさしくアブの天国状態! 隙を見せるとすぐに刺されてしまうという落ち着かない状態が続き、背中を岩にピッタリとつけ、顎の下まで湯船に身をくぐらせながらとにかくタオルを振り回してアブを追い払っていましたが、相手は多勢に無勢、さすがに観念にて早々に内湯へと引き返しました。 せっかく素晴らしい露天風呂が目の前にあるのに入れないという状況はかなり残酷な状況です。 この露天風呂を思う存分満喫するためには、やはり7〜8月は避けた方が無難であるとつくづく感じました。 さて、日中は完全にアブの支配下にあったお風呂ですが、夜から早朝にかけてはつかの間の平和が訪れます。 夜のお風呂の雰囲気もまた、アブとの戦いを忘れさせる安らぎに満ち溢れていました。 夜になると空気もいっそう涼しくなり、オレンジ色の優しい光りに包まれながらじっくりと長湯を楽しむことができます。 露天風呂は真っ暗であったので写真はありませんが、頭上には満点の星空が輝き、何物にも代え難い心の贅沢を充分に満喫することができました。 翌朝もアブが目覚める前にと、早起きして爽やかな朝風呂を楽しみました。 山の稜線から朝日が昇り、キラキラと湯面が輝く様は感動的です。 翌朝は快晴。 青と緑との世界に包まれながら、このお風呂にすっかりと心を奪われてしまった自分がいました。 続いて女湯の紹介です。 ちなみにこちらのお宿では男女の浴室交代はありません。 脱衣所は男湯とほぼ同じつくり、脱いだ浴衣は籠に入れておくだけのシンプルなスタイルです。 扉の向こうには、男湯とはまたひと味違った作りの魅惑的なお風呂の姿が目に入ります。 シンプルな石造りのお風呂とそれに注がれる美しい湯、そして周囲に広がる山の緑−。 これぞ正真正銘の贅沢なお風呂の姿であると思います。 湯船には湯の花が舞い、いかにも温泉らしい単純硫黄泉が注がれます。 phも6.9とほぼ中性で、刺激が少なく硫黄泉が苦手な人でも比較的入りやすいお湯であるのではないでしょうか。 洗い場も男湯と同じ作り、湯桶は臼と雰囲気満点です。 ほとんど露天風呂と云っても過言ではないような内湯の様子。 気温の下がる時期にはしっかりとガラス戸が閉じられるようです。 緑に囲まれた一段高い位置に作られている露天風呂は、男湯よりも自然との一体感が強く感じられます。 やや小ぶりながらも、これを見たら入られずにはいられないような素晴らしい雰囲気の露天風呂を目にし、個人的には男湯よりもこちらの露天風呂の方が数段魅力的に映りました。 手前には時々見かける金精様も鎮座しています。 私達が行った夏はもちろん、春の新緑、秋の紅葉、冬の雪見と、このお風呂に入った人であれば恐らく全ての季節を体感してみたくなると思います。 露天風呂が好きだという人には、是非一度味わってみて欲しいと感じる素晴らしいお風呂の姿でした。 お風呂を満喫して部屋に戻る廊下の途中には、 ビールやお茶などが販売されています。 冷蔵庫から取り出して箱に代金を入れておくというシステムですが、山奥にもかかわらず市価と変わらない料金設定に宿への好感度がますます高まりました。 以上で宿泊した客室とお風呂の様子についての紹介を終わります。 楽しみにしていた『手白澤温泉』のお風呂、日中のアブの攻撃には思わず閉口しましたが、歩き疲れた体を癒すにはこれ以上のない素晴らしいお風呂を満喫できて大満足の思いでした。 惜しむらくは男女の交代が無いということで、できればどちらも味わってみたかったというのが本音です。 こうして記事を書いている間にも感動的なお風呂の様子が頭をよぎり、必ずまた再訪したいと思っています。 次回は、これまた宿の大きなウリの一つである絶品創作料理が楽しめる食事と帰りの山歩きの様子について紹介したいと思います。
次回へとつづく・・・ |
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2008年の夏休み温泉旅行、「秘湯回帰! ふぐすま・とちぎ炎の5連泊」も4日目を迎え、いよいよ舞台を福島から栃木へと移しました。 この4日目に足を運んだ宿こそ、私がこの夏最大のメインイベントとして位置づけていた奥鬼怒温泉郷の一軒宿、『手白澤温泉(ヒュッテ)』です。 今回紹介する『手白澤温泉』は、最近巷に溢れる「秘湯の宿」という言葉を具現化したような宿であり、「秘湯=人里から離れた秘められた湯」という言葉の定義であるとするならば、正に『手白澤温泉』こそ正真正銘の秘湯の宿だと呼べると思います。 その理由はなぜか・・・? 実はこの『手白澤温泉』、奥鬼怒四湯と呼ばれる山中の温泉宿の中でも最奥部に位置し、最寄りのバス停・駐車場からのアプローチは基本的に徒歩のみ、しかも森の中の遊歩道を歩いて2時間半もかかるという深山幽谷の地に位置しています。 果たして、わざわざそんな苦労をしてまで足を運ぶ価値が本当にある宿なのか・・・? この真意を確かめるべく意を決して足を運んでみたというワケなんですが、これがズバリ大ありでした。 2時間半かけて歩いた先に待っていたのは、湯量豊富な極上の温泉、フレンチを思わせるような絶品創作料理、そして山奥の宿とは思えないような清潔で美しいわずか6室のみの客室と、頑張って足を運んだ者だけが味わえる至福の時間と静寂な空間を思う存分堪能することができました。 そんな大自然を満喫できる秘湯の一軒宿、『手白澤温泉(ヒュッテ)』の宿泊レポートについてこれから数回に分けて紹介していきたい思います。 今回は先ず宿に向かう道のりを中心に紹介します。 前泊地の『向瀧』を9時過ぎに出発し、会津西街道を奥鬼怒方面に向け爽快にひた走ります。 川治の手前で県道に入った後は、女夫淵温泉の駐車場を目指して山道をひたすら奥へと上って行きます。 走れど走れどなかなか到着しないあたり、未だ見ぬ秘湯への憧れが高まってくるアプローチでした。 奥鬼怒4湯の玄関口となる女夫淵温泉に到着したのは12時の少し前、広々とした無料の駐車場に車を停めて身支度を整えます。 平日のため比較的車の数は少なかったですが、奥鬼怒四湯方面から戻って来た人、これから足を運ぶ私達のようなハイカーの姿で賑わっていました。 案内板に沿って、『手白澤温泉』に向けいざ出発です。 ゲートのある出発地点の橋の先からは一般車は通行禁止となっていますが、八丁湯・加仁湯温泉への送迎車やタクシーなどは通行することができます。 但し、実際には通行禁止にもかかわらずマイカーで乗り入れてしまう不埒な輩もいるようです。 『手白澤温泉』への道のりは2つあり、車も走れる整備された林道を歩いて行くコースと、多少アップダウンのある川沿いの遊歩道を歩いていく自然満喫コースとに分かれます。 少しでも楽に早く宿に向かいたい人は林道コース、ハイキングも楽しみたいという人には遊歩道コースをたどる形になりますが、私達はもちろん遊歩道コースを歩くことにしました。 遊歩道コースはこちらの階段を上って行きます。 5分ほど歩くと、鬼怒川源流部に掛かる吊り橋の姿が見えてきました。 吊り橋を渡ってからは、比較的歩き安いいかにも遊歩道といった道をのんびりと先へ進みます。 歩き初めてからは出会う人の姿も少なく、川のせせらぎや蝉の鳴き声など、自然の音だけが心地よく耳に響き渡ります。 歩き始めて約50分、ちょうど休憩のしやすい河原を見つけたので昼食を取ることにしました。 コンビニで買ったパンとおにぎりだけですが、この上ないご馳走の様に感じられるから不思議です。 真夏でも標高の高い山の中だけあって、涼しい風が川面を吹き抜けホッとひと息つくことができました。 大自然の中の絶品ランチを満喫した後は、いくつかの橋を渡りながら川沿いの道を上流に向かってひたすら歩いていきます。 遊歩道の途中途中に案内板が立っているので、特に地図など持たなくても迷う心配はありません。 出発しておよそ1時間50分(昼食休憩30分含)、温泉好きの気持ちを疼かせる奥鬼怒四湯最初の宿、『八丁湯』に到着しました。 湯浴みを楽しみたい気持ちを何とか抑えながら、休むこと無く先を急ぎます。 宿の軒下には、看板犬の「ちび」が昼寝を楽しんでいました。 「ちび」とは名ばかりのどでかい老犬の姿は愛嬌たっぷりです。 『八丁湯』から歩くこと約10分、今度は関東屈指の白濁湯を湛える宿として人気の高い『加仁湯』の姿が見えて来ました。 シンプルな外観ですが、客室数50室を越える設備の整った大型旅館です。 団体客の姿も多いということで宿泊したいという気持ちは今のところありませんが、魅力的な露天風呂にはいつか必ず浸かってみたいものです。 『加仁湯』の先で林道コースと遊歩道コースが交差しますが、私達は最後まで初志貫徹の思いで遊歩道を上って行きます。 『手白澤温泉』へはあと1.7km、およそ40分の道のりです。 彼女はまだまだ余力充分、運動不足気味の私はだいぶ疲れがたまって来ました。 しばらく行くと、「ブナ平」と呼ばれるブナの原生林地帯が広がります。 東北地方のそれには及びませんが、なかなか幻想的な原生林を楽しむことができるため頑張って遊歩道を歩いて来ました。 「ブナ平」を抜けてしばらく行くと、林道へと合流します。 ここで遊歩道は終点となり、宿まではもうひと頑張りです。 最後はのんびりと歩きたいところでしたが、山の天気は変わりやすく空にはカミナリ雲が発生しつつありました。 ゴロゴロという雷鳴を気にしつつ早足で宿に向かいます。 小さな沢を一つ越えると視界が開け、ようやく前方に『手白澤温泉』の姿が見えて来ました。 石垣の上には、雰囲気の良い瀟洒な山の宿が佇んでいます。 女夫淵温泉を出発して3時間、休憩時間が30分であったので予定通り2時間半で到着となりました。 こちらが秘湯中の秘湯、『手白澤温泉(ヒュッテ)』の玄関です。 評判どおり、清潔感溢れる魅力的な外観でした。 頭上に掲げられた『テッユヒ泉温澤白手』の看板もいい味わいを出しています。 中に入ると、この宿のアイドルでもある「クロ」が凛々しい姿で出迎えてくれました。 こちらの「クロ」、いたずらに愛想を振りまくワケでもなく、また頭などを撫でてもさほど嫌がるワケでもなく、しっかりと自分を持ったいかにも利口そうな犬といった印象です。 時には女夫淵温泉まで一人で歩いて行って、宿泊客を先導しながら戻って来ることもあるらしく、正に愛すべき看板犬の姿です。 こちらのフロントにてチェックインの手続きを済ませ、鍵を受け取って客室へと向かいます。 山の宿ながら明るく清潔感漂う館内の姿に先ずは好印象でした。 平屋づくりの建物ですが、天井が高く開放感抜群の廊下も清々しい雰囲気に満ち溢れていました。 廊下に沿って、6室ばかりの客室が並んでいます。 今回宿泊する客室名はシンプルに「参番」−。 選ばれしわずか6組だけの至福の一夜がこれから始まります。 以上で、『手白澤温泉(ヒュッテ)』の宿泊レポート第1弾を終了します。
ハイキングなどを時々楽しむことはあっても、温泉宿に2時間半もかけて歩いて向かうという体験は初めてだったんですが、近過ぎもせず、遠過ぎもせず、宿に到着する頃に程良く疲れが貯まるという絶妙なアプローチは秘湯気分を盛り上げるには充分な演出であるような気がしました。 実際に歩いてみてそれほどハードな登山道という感じはしませんでしたが、どうしても歩くのが苦手だという人はタクシーで宿に向かうことも可能です。(送迎等は一切無し) 但し、自分の足でたどり着いてこその満足度であると思うので、林道コースであっても歩いて足を運んでみることをオススメしたいと思いました。 次回は宿泊した客室と極上の硫黄泉が注がれる宿お風呂の様子について紹介したいと思います。 次回へとつづく・・・ |
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