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お風呂や館内の雰囲気は文句ナシ、本館客室の使い勝手も思った以上に良かったとくれば、後は食事さえそこそこ満足できる内容であれば、1万円台半ばという宿泊料金ながらも正に素晴らしい温泉宿であったと強く印象に残りますし、人に対しても自信を持ってオススメできるということになります。 食事については口コミ等の評判も比較的高く、正直ある程度の期待を持っていたというところではあるんですが、やはり実際に口にしてみて、それが自分の好みに合うかどうかが重要なポイント。 結論から言うと、『松宝苑』でいただく食事は自分が思っていた以上の質とボリュームを持って胃の中へと収まり、これだけの食事がいただけて、尚かつ1万3千円台で泊まれる宿とくれば、個人的には正に万々歳といった感想に至りました。 最終回となる今回は、『松宝苑』でいただいたボリューム満点の食事の様子について紹介します。 夕食開始時間は18時からの固定。 時間になり、母屋にある食事処へと足を運びました。 食事処はいかにも奥飛騨の宿らしく、囲炉裏を囲んでいただくスタイルになります。 通常は大きな広間に囲炉裏のテーブルがずらりと並ぶ模様ですが、今回はわずか2組だけの宿泊客ということで、襖で仕切られた個室風の空間で静かにいただきました。 ロウソクの灯がムードを醸し出す雰囲気の中、取りあえずいつもと同じようにスーパードライにて乾杯です。 さて、ご存知の方もいるかと思いますが、『松宝苑』の夕食は壱の膳から参の膳という名称で、それぞれ三度に分けて出来たての料理が運ばれます。 頃合いを見て一品一品運ばれる会席には及びませんが、これ見よがしの旅館料理がズラリと並ぶ一気出しとはまた違って、料理をいただくペースとボリュームが掴みやすい感じがしたので、三度に分けて運ばれるくらいが意外と食べやすいのかも知れません。 先ずは壱の膳。 里芋や紅芋などの田楽をはじめとした彩り豊かな前菜に野趣溢れるお造り、お吸い物などがお膳を飾ります。 お造りは、山芋、きな粉麩、こんにゃく、大鱒の昆布締め、湯葉刺、地鶏のタタキといった個性的なラインナップで、山の宿らしさを活かしつつも、ありきたり感ゼロの素晴らしい内容に嬉しくなりました。 また、お吸い物は軽やかな柚子の風味を上品に効かせつつ、具に鴨ネギとお餅を用いるというこれまた実に美味しい一品。 先ずは掴みはOKといった感じのスタートです。 続いては、稚鮎の天ぷらです。 軽〜く揚がった衣に包まれた上品な身と、ほのかに苦みの利いた鮎独特のワタの美味しさ、これを熱々ほくほくの状態でいただけるのですから、これ以上望むものは何もありません。 続いて、囲炉裏なのに何故か固形燃料で熱せられたこちらの器を開けると、 ご覧のようにボリューム満点の飛騨牛の朴葉味噌ステーキの登場です。 大好きな海老芋や白舞茸、えのきといった名脇役達が周囲を囲み、柔らかくてジューシーな飛騨牛が惜しげもなく鎮座している様は正に至福の光景。 大豆の食感が残る味噌もはじめから肉の下に敷かれているのではなく、飛騨牛の隣に盛られている点も味噌の加減を自分で調節できるので非常に好印象でした。 思わずご飯が欲しくなるような、見た目も味も文句なしのステーキといった感じでした。 ・・・と、ここまでが壱の膳で、続いて弐の膳が運ばれます。 弐の膳もまた食べ応えたっぷりの陣容で、岩魚の朴葉焼きに飛騨牛のカルパッチョ、茶碗蒸しに滝川豆腐といった面々が並びます。 先ずは朴葉にくるまれた岩魚ですが、葉っぱを取ると山椒と松の実の香りがふわっと沸き立ち、いかにも食欲がそそられます。 炭火焼きではなく、あえて蒸し焼きを持ってくる辺りに、恐らく宿の自信作であるような感じが受け取れました。 たくさんの野菜が添えられた飛騨牛のカルパッチョは、にんにくや胡椒が利いたスパイシーなドレッシングでいただきます。 見た目通りボリューム感たっぷりで、かなり食べ応えのある一皿でした。 その他、甘みのある豆乳で作った滝川豆腐と、ウナギやサーモンといった具を用いて塩味を効かせている独特の味付けの茶碗蒸しも美味しくいただきました。 さて、弐の膳を食べ終わる頃にはだいぶお腹も膨れてくる感じになりますが、最後は〆のご飯ものということで参の膳をいただきます。 ご飯は田舎宿にはピッタリといった感じの牛蒡の炊き込みご飯。素朴な味わいが郷愁を誘います。 その他、煮物や漬物、蕎麦の入ったお吸い物が並び、おかずを全て平らげてしまっていてもしっかりとご飯を味わうことができました。 また、デザートとしてフルーツとレアチーズケーキも並び、これらを全て完食した後は、すっかり満腹感が押し寄せて来ます。 今回は食べ終わるまでに、私達に取っては短めの1時間20分ほどで済んでしまったため、テンポ良く胃の中に収まっていったという感じでした。 夕食の紹介は以上です。 運ばれてきた料理は、どれも皆比較的しっかりとした味付けで、ごく薄味を好む方には不向きかも知れませんが、誰が食べても素直に美味しいと感じられるような充実した内容となりました。 特に飛騨牛のボリューム感がかなり印象に残り、お肉が好きな人にとってはきっと十分満足のいく内容であると思います。 奥飛騨温泉郷の宿の中で、この料金でこれだけの料理を提供してくれる宿が他にありますでしょうか? 個人的には、この価格帯の中では一番とも思える料理に大満足でした。 夕食を食べ終え、腹ごなしに外へ出てみると、降り続いていた雨も上がって雲の切れ間にわずかに星の姿も覗いていました。 翌日のトレッキング計画を前に、このまま無事に晴れて欲しいと強く願う私達でした。 続いて朝食の紹介です。 星に願いを込めた晴天への祈りも届かず、翌朝は前日よりも激しい降りっぷりの雨模様。 この日のトレッキングは潔くあきらめ、朝食時間の8時に食事処へ向かいました。 朝食も夕食と同じ席に案内されました。 囲炉裏端での食事は雰囲気があって好きですが、できれば掘りごたつ式であるとラクチンなのですが・・・。 腰を下ろして置かれていた箸をひっくり返して見ると、 ご覧の通り、「無事カエル」・・・。 こういう遊び心、大好きです。 さて、朝食のおかずの方は、奇をてらうことなく比較的定番メニューが並びます。 そうは言っても、自家製豆乳やゴマ豆腐など、体に優しい美味しい料理の数々でした。 そして奥飛騨の朝と言えば、何はなくとも朴葉味噌。 たっぷりのネギに甘辛い味噌、これだけでご飯何杯もいけそうなくらいに大好物の代物です。 実はこの他にも、当然ながらご飯に味噌汁、更に漬物や焼き魚をいただいたのですが、不覚にも写真を取り忘れてしまいました。 よって、朝食の全容を紹介することはできませんが、特に不満なく美味しくいただけたことは言うまでもありません。 朝食後にもう一度素晴らしいお風呂に入り、トレッキングからこの日の目的地を飛騨古川に変更して宿を後にしました。 以上で新平湯温泉『松宝苑』の宿泊レポートを終了します。 この宿を知った数年前から実際に足を運ぶまでの間、思えば随分と長い月日を要しましたが、泊まってみた率直な感想は、「本当に素晴らしい宿であった!」の一語に尽きます。 もちろん、あくまで1万円台の宿であるため、至れり尽くせりのもてなしは当然ありませんし、要望などもあまり通らない面があろうかと思います。 それでもやはり、このコストパフォーマンスは絶大であったと心から実感しています。 今回は自分が宿泊した本館をかなり強くプッシュするカタチになりましたが、実際のところ、5,000円UPでもし新館に泊まってみたらどのような感想を抱くのか、自分自身でかなり興味があります。 13,000円台で泊まれたからこそ絶賛する気持ちが起こったのか、また18,000円出したとしても大満足の思いに至ることができるのかなど、再訪するなら絶対にまた本館と宣言してみたものの、いつかは新館の方にも一度泊まってみたいと思うようになって来ました。 いずれにせよ、今までの私の様に「興味はあるんだけれど、なぜか足が向かなかった」という方がいましたら、是非とも一度足を運んでみてください。 凡そ奥飛騨温泉郷の宿に求めるエッセンスのほぼ全てが、きっとこの宿で見つけられることと思います。 次回は紅葉か、はたまた白銀の雪見の季節か。 このレポート書きながらも、既に次の訪問を思い描いている自分がいました。 新平湯温泉 松宝苑 http://www.syohoen.com/ 今回滞在時の採点(5段階) 接客(もてなし)・・・・・4(概ね満足。気さくなご主人との会話も楽しかった) 館内の雰囲気・・・・・5(趣あるレトロモダンな古民家、緑溢れる広い中庭、個人的には文句なし) 部屋の雰囲気・・・・・4(レトロな雰囲気を漂わせながらも、思っていた以上の快適空間だった) 清潔感・・・・・4(窓ガラスや床など建物自体は掃除が行き届いている。但し夏場ということで虫の数の多さが気になった) 温泉・・・・・4.5(内湯は文句なし満点。露天風呂の葉っぱや虫などの掃除に更なる努力を期待したい) 夕食・・・・・4.5(この価格帯であれば全くの不満無し、大変満足) 朝食・・・・・4(概ね満足、特に不満無し) コストパフォーマンス・・・・・5(今回宿泊した本館に限って言えば、個人的には奥飛騨で一番) 総合満足度・・・・・4.5(とにかく思っていた以上に良い宿で本当に満足した) 次回リピート度・・・・・5(奥飛騨で迷った時は取りあえずこの宿を選んでしまいそう。いつか一人旅でも足を運んでみたい)
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新平湯温泉 松宝苑
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人間いくつになっても恋心を抱き続けていたいというもの。 異性に対してはもちろんですが、大の温泉好きである私にとっては、『松宝苑』の大浴場「長閑(のどか)の湯」の内湯の姿こそ、かつて雑誌の写真でひと目見たその瞬間から、ずっと恋い焦がれて来た憧れの存在であったと云って過言ではありません。 今回の訪問で、ついに念願叶って初めての対面を果たして来たというわけですが、実際に目にしたそのお風呂の姿は、私が長年抱いていた恋心を一切裏切ることなく、思っていた通りの素晴らしい表情をもって文字通り温かく迎えてくれました。 今回は、そんなスッカリ熱をあげてしまった感のある『松宝苑』のお風呂の様子について紹介して行きたいと思います。 先ずは、前回も紹介した大浴場「長閑の湯」の湯小屋の外観から。 私は独立した木造の湯小屋のある宿が大好きで、『松宝苑』の持つそれは正に理想的な佇まい。 大浴場までのアプローチも雰囲気満点で、浴室に入る前から既に良さそうな空気がビンビン漂っていました。 そして、「長閑の湯」の最大の特徴と魅力をはじめに語ってしまいますが、実はこちらのお風呂、脱衣場と浴室との仕切りが無いという、極めて開放的かつ印象的な作りになっています。 恐らく初めて目にしたときのインパクトの大きさは絶大で、事前の予備知識が全く無かった彼女などは、その浴室の姿を目の当たりにしてかなり興奮気味の様子でした。 もちろん、写真等で何度となく目にしていた私でさえ、実物を前に大興奮したことは言うまでもありません。 男女別の大浴場は左右対称の作りで、入口付近には湯上がり時にくつろぐのにもっていといった感じのリゾート風な椅子が置かれています。 このさりげなく置かれた椅子のポイントが非常に高く、宿泊客が少ないのをいいことに私達は二人してリラックスしまくりでした。 それでは中へと入ってみましょう。 脱衣所はスッキリとした印象を感じさせる畳敷き。 どちらが本家かは分かりませんが、ほぼ似たような作りである中棚温泉『中棚荘』を思い出させます。 すのこの敷かれたパウダースペース周辺の作りも、『中棚荘』にウリ二つです。 そしてこちらが、長い間ずっと恋い焦がれて来た「長閑の湯」の内湯の様子です。 重厚な檜造りの湯船に、まるで露天風呂と見間違うかのように大きく取られた一枚ガラスの窓が実に印象的。 このお風呂の写真を目にしたことがある方も多いかと思いますが、やはり実物はひと味もふた味も違いました。 こちらのアングルで、この特徴的な湯殿の様子がよく分かるかと思います。 このように、脱衣所と浴室が一体化したような作りのお風呂は『中棚荘』以来ですが、正直『中棚荘』よりも見た目の印象はこちらの方が強いと感じました。 もちろんどちらも素晴らしい浴室であることは変わりないので、私の心の中では勝手に兄弟風呂と命名しています。 宿の敷地内には3本もの自家源泉を有し、ナトリウム−炭酸水素塩泉と単純温泉の2種類の源泉をブレンドして掛け流しているようです。 一部加温している以外は、加水なしでその源泉を楽しめ、内湯に置かれた湯口の周りには、まるでタラバガニの足のように析出した温泉成分が付着していました。 他に1組しか宿泊客がいないということで、セルフでの記念写真も撮りまくりです。 とにかく私のような内湯好きにとっては、これ以上無いような素晴らしいお風呂といった感じでした。 洗い場の作りも実によい雰囲気です。 そしてこちらの扉の外には、 ご覧のように、豪快な岩組みの露天風呂も鎮座しています。 夏場ということで、木々がうっそうと生え茂っていたため眺望は一切効きませんでしたが、河岸段丘のすぐ上に作られているということですので、葉の落ちた冬場などは、恐らく眼下に平湯川の清流を望む絶景ビューが楽しめるのではないかと思います。 また、こちらの露天風呂は立地上どうしても葉っぱや虫などが湯面に落ちて来てしまうことが多く、やはり気分良く湯浴みを楽しむためにも冬場が最もオススメのような感じがしました。 こちらは「長閑の湯」の女湯の様子です。 さすがに素晴らしいお風呂だけあり、右を見ても左を見ても変わらぬ美しさと風情が漂っています。 私も彼女も、この素晴らしい浴室を滞在中ずっと貸切状態で楽しむことができたので、心の底から贅沢な湯浴みを満喫させてもらった感動でいっぱいになりました。 洗い場の手前には上がり湯用の湯溜が備わり、そちらにも満々と源泉が注がれているのが嬉しい限りです。 こちらは女湯の露天風呂。 男湯と同じように野趣溢れる岩風呂となっています。 続いては、2箇所ある貸切露天風呂、「縁(えにし)の湯」について紹介します。 「縁の湯」は、空いていれば内鍵を掛けて自由に利用できるスタイル。 2箇所ともほぼ同じような作りの岩風呂となっています。 窓の外に見え隠れする露天風呂。 通常であれば、人目を気にせず入ることができる貸切風呂があるのは非常に嬉しい限りですが、今回は宿泊客が極めて少なく、魅力溢れる大浴場に常に貸切状態で入ることができたために、こちらの方は一度切りしか利用しませんでした。 ご覧のような岩風呂で、大人2〜3人程度であればゆったりと浸かれるサイズとなっています。 樹木のすぐ向こう側は、スパッと切れ落ちた断崖が広がっています。 そしてこちらがもう一方の貸切風呂の様子です。 どちらもほとんど変わりないような作りですが、夏場は樹木によって眺望がさえぎられるので、大浴場の露天風呂同様に、恐らく冬場の方が楽しめるのではないかと思いました。 以上で『松宝苑』のお風呂紹介を終わります。 とにかく長年ずっと入ってみたいと思っていた『長閑の湯』の内湯の素晴らしさは、写真や文章ではなかなか伝えられない代物です。 今回は常に貸切状態という好条件にも恵まれ、滞在中何度と無く入りびたっていましたが、こちらの宿は日帰り入浴などは受け付けていないため、恐らく満室時であっても混雑とは無縁な素晴らしい湯浴みを満喫できるのではないでしょうか。 木曽五木を使って組まれたという見事な湯屋造りのお風呂は、私のような内湯好き、木のお風呂好きにはたまらない感があるので、もし同じような趣向の持ち主で、まだ『松宝苑』のお風呂に出会ったことのない方がおりましたら、迷わず足を運んでみることをオススメします。 次回はようやく最終回、質・量共に満足度の高い宿の食事について紹介します。
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新平湯温泉『松宝苑』の客室は全部で15室−。 うち、囲炉裏の間などが備わったゆとりある広さの新館客室が8室、やや古びた印象を感じさせる本館客室が7室となっていますが、圧倒的なコストパフォーマンスの高さを実感させてくれるのは何と言っても本館客室です。 本館の宿泊料金は、平日・休前日共均一の1万3千円台。好みにもよるでしょうが、奥飛騨温泉郷の他の宿を見回してみても、この価格帯で得られる満足度の高さは個人的に『松宝苑』が一番ではないかと感じるほどです。 ちなみに、『松宝苑』を除いて私がこれまでに宿泊した奥飛騨温泉郷の温泉宿は全部で11軒ですが、その中では間違いなく頭一つ抜きんでた存在であると思います。 新館客室の方も1万8千円台と、いずれも1万円台で宿泊できるリーズナブルな料金体系であるものの、本館客室の多少の古さを落ち着いた風情や趣という風に捉えることができれば、お風呂にも近く、また国道沿いに建てられた新館のように道路を走る車の音が気になるようなことがないため、お値打ち感をより強く感じられるのは間違いありません。(但し、新館客室に宿泊したことが無いので今イチ説得力にかけますが・・・。) 今回私達は本館客室に宿泊してみましたが、滞在において特に大きな不満を感じることなく、奥飛騨旅情を思う存分に楽しむことができました。 今回は宿泊した客室及び、緑と風情溢れる館内の様子について紹介したいと思います その奥に、8畳の和室が広がります。 正直、事前に本館客室のコスパの高さを耳にしていたものの、実際にこの目で確かめるまでは多少の心配も感じていました。 母屋から客室へと続く館内の雰囲気が素晴らしいだけに、客室だけ変にみすぼらしい感じがしたらイヤだなと思っていたワケなんですが、そんな心配も全くの杞憂に終わり、その落ち着いた雰囲気はむしろ個人的に好みの部類に入るほどでした。 広さが8畳ということで、二人で過ごす分には全く問題ありませんが、やはり人数が増えてくると新館客室の方が過ごしやすいかも知れません。 『松宝苑』は一人泊も受け入れているので、本館客室は一人から二人用で泊まるには最適だと云えるでしょう。 給茶道具なども、可愛らしい籠に入っていてこだわり感が伝わって来ます。 取っ手にマジックで「緋色」と書いてあり、これを見て初めて客室名の名前「ひいろ」が「緋色」の意味だったことが分かりました。 ちなみに「緋色」とは、茜で染めた濃い赤のことだそうです。 こちらは落ち着いた柄の浴衣にタオルなどの湯浴み道具。 男女でサイズの違う籠もしっかりと用意されていて助かります。 ちなみに、以前はタオルの代わりに名物の手ぬぐいが用意されていて人気を博していたようですが、私は手ぬぐいがあまり好きではないので、タオルに変更されていて助かりました。 彼女の方は、手ぬぐいの方が面白みがあって良かったのにと云っておりましたが・・・。 広縁には和みを演出するい草の円座が置かれ、窓の外には月見台と称する広めの縁側が備わっています。 月見台は1Fにしか無いようなので、風流な雰囲気を感じたい人には1Fがオススメです。 雰囲気にあった椅子の備えなど、こうしたさりげない演出がくつろぎ感や客室の印象度をより高めてくれるものです。 この日は雨降りだったため残念ながら月見とは行きませんでしたが、雨に打たれる庭先を眺めては、「雨もまたよし」などど独りごちてみます。 梅雨時の7月ということで、庭の緑の鮮やかさは最盛期を迎えていました。 大いなる山河や大海原などを望む絶景も素晴らしいですが、このようなしっとりとした自然な雰囲気が漂う庭園もまた実に癒されます。 広縁の隅には洗面所や冷蔵庫などの備えがありますが、蛇口からは水だけでお湯が出ないようになっていました。 私は特に気になりませんが、寒さの厳しい冬場などは少々不便かも知れません。 こちらは客室の入口脇にあるトイレです。 ややレトロな印象ですが、しっかりとシャワートイレが備わっています。 最後に布団を敷いた様子です。 標高1,000mを超える山の温泉地だけあり、涼しげな空気の下でしっかり熟睡することができました。 続いて、客室を出て館内の様子を少し紹介したいと思います。 3,000坪という広い敷地の中で、母屋−客室棟−お風呂のある湯小屋がそれぞれご覧のような風情ある渡り廊下で結ばれており、建物と庭先の緑とが、実にバランス良く結び付いているような印象を感じます。 こちらは母屋にある食事処の前の廊下です。 気軽に腰を下すことができる設えとなっており、風呂上がりや散策の後の休み処として利用するのに便利です。 『松宝苑』の館内は、ごくありがたちな古民家宿とは一線を画し、調度品一つとっても実にオリジナリティ溢れる雰囲気が漂っています。 気が付くと、館内のあちこちでご覧のような土偶や彫り物などの珍しい置物が目に留まり、独特のセンスを楽しませてもらいました。 こちらは母屋のエントランスに面したロビーです。 私はこういった土間の広がる昔ながらの空間が大好きなので、意味もなく何度もうろうろしてしまいました。 ロビーの一角にあるさりげない階段を上に上がって行くと、 ご覧のような、ちょっとした談話スペースが設けられていました。 眼前に黒光りした柱や梁を望み、その見事な建物の魅力に自然と引き込まれてしまいます。 談話スペースには書棚が置かれていて、雑誌や小説などを自由に眺めることが可能です。 私達は翌日に西穂高岳方面のトレッキングを計画していたため、「山と渓谷」などの登山雑誌を眺めて気分を盛り上げました。(但し、翌朝は大雨のため計画は見事中止になってしまいましたが・・・。) また、こちらのスペースでは珈琲を注文することができます。 雰囲気の良い空間で、薫り高い珈琲を楽しむ〜。 ささやかではありますが、何とも贅沢なひとときを過ごすことができました。 母屋に面した中庭には、手入れの行き届いた休憩スポットが広がります。 晴れた日であれば、こちらのテラスで珈琲をいただくのもきっと楽しいことでしょう。 鯉の泳ぐ池も実に涼しげな印象。 池に注がれる水は空気を入れたものでしょうか? 白濁していたので、一瞬熱い温泉を注いでいるのかと思って確認してしまいました。(当然ながら普通の水でしたが。) 中庭から見た母屋は、実に味わい深い雰囲気が漂います。 一方、こちらは中庭から見た湯小屋の外観です。 中庭を挟み、母屋と湯小屋の間は風情ある石畳みの小径で結ばれています。 湯小屋へは屋根付きの渡り廊下で行くことも可能ですが、雨が弱まった隙をみてこちらの小径を歩いてみました。 デッキの敷かれたテーブルには、夜になるとロウソクが灯って雰囲気が増して来ます。 また、写真では伝わらないので今回は載せませんでしたが、中庭では夜になると青やオレンジなどの小さなイルミネーションが輝き、まるで蛍が飛んでいるかのような演出が施されます。 こちらの方は人によって好みが分かれるところだと思いますが、個人的には好印象でした。 湯小屋の前に置かれた椅子に腰掛けて中庭の緑を眺めていると、思わず時間を忘れてくつろいでしまいます。 今回は緑眩しい夏場に足を運びましたが、水墨画の様だと評される雪景色も是非一度目にしてみたいものです。 宿泊した客室と館内の様子の紹介は以上です。 実は今回、私達を含めて宿泊客はわずか2組のみという非常に贅沢な滞在を楽しむことができました。 したがって、客室、浴室、パブリック空間の全てにおいて、何物にも煩わされることのない静寂な時間と空間を思う存分満喫できたため、必然的にその満足度も極めて高くなったと云えるかも知れません。 ひょっとしたら、オススメしている1Fの本館客室も、満室の時などはお風呂へと足を運ぶ客達の足音が気になる場所に変わってしまうような感じもしています。 とは云え、今回の様な幸運な滞在に恵まれることはそうそう無いと思いますが、次回私が再訪するとしても、やはり必ず本館を選ぶと思います。 奥飛騨という場所にありながらも、この値段でこれだけのホスピタリティを提供してくれる『松宝苑』という宿は、思っていた以上の実力派であることは間違いありません。 次回は、最も楽しみにしていた極上のお風呂について紹介したいと思います。
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温泉好きの皆さんの中には、「いつか行ってみようと思ってはいるものの、なぜか実際に足を運ぶまでには至らない宿」、あるいは「いい宿であると分かっていて、ネットや雑誌などの紹介をさんざん目にしているので、既に行ったような気分になってしまっている宿」はありませんでしょうか? 私にとって、奥飛騨・新平湯温泉『松宝苑』が正にそのような宿の中の一つ。 奥飛騨方面に行くたびに『松宝苑』の前を通り過ごしては、「ここ評判いいんだよね〜、いつか泊まりたいよね〜」などと口にするのがこれまでの常だったのですが、2009年7月、意を決してついに足を運ぶ機会が訪れました。 訪問前に抱いていた私の『松宝苑』に対するイメージは、1万円台という宿泊料金ながらも、風呂、食事、宿の雰囲気とも実にバランスが取れていて、風情溢れる古民家造りのその建物は正に「これぞ奥飛騨の宿!」そのものの姿といった印象でした。 果たして、実際に宿泊してみて感じた『松宝苑』とは一体どのような宿であったのか!? 私の目から見た新平湯温泉『松宝苑』の宿泊レポートについて、これから数回に分けて紹介して行きたいと思います。 今回の旅は少し早めの夏休み〜。 奥飛騨と上高地の宿をベースにして、温泉と美食、そして北アルプスのトレッキングを楽しむことを目的に4泊5日の旅を楽しんできました。(うち初日の1泊は仕事帰りに足を運んだ甲府市内のビジネスホテル) 梅雨の真っ盛りということで生憎の雨降りの中、先ずは日帰り入浴を楽しむべく白骨温泉へと車を走らせました。 宿の周辺には、ご覧のような美しい白樺林が広がっています。 数ある魅力的な立ち寄り湯の中から今回選んだ先はこちら、小梨の湯『笹屋』です。 本当は近くにある『泡の湯』の内湯で極上ぬる湯を楽しみたいと思っていたのですが、残念ながら出発日の木曜は日帰り休業日とのこと。 その代わりに『笹屋』を選んだというワケですが、結果的に全てのお風呂を貸切で楽しむことができ、改めてその魅力を実感することができて大正解でした。 受付を済まし、先客がいないと教えてもらったので取りあえず貸切露天風呂に入ってみることにしました。 30分単位の利用になりますが、日帰りでも貸切風呂を利用することができる点が『笹屋』の大きな魅力の一つです。 こちらの大きな表示板で空きとなっている場合、 入浴中の標示に切り替えて露天風呂へと向かいます。 露天へは一端外に出て数メートル先の入口まで歩きますが、できれば通路に屋根を設けてくれると雨天時などは便利だと思いました。 趣のある階段と廊下を歩き着いた先に、小じんまりとしたご覧の露天風呂が待ち構えています。 眼前には白樺林を望み、正に自然と一体化したような心癒される雰囲気が漂っていました。 脱衣スペースは簡素な作り、洗面台などの備えはなくオープンエアーな露天風呂によく似合っています。 湯口からは、いかにも白骨の湯らしくマイルドで香しい白濁の湯が静かに注がれます。 この『笹屋』もかつての入浴剤騒動にからんだお宿の一つですが、入浴剤など全く必要としない正真正銘の極上湯そのものの姿でした。 湯船のサイズは大人2,3人でいっぱいという大きさですが、ロケーション、湯船の作り共、非常に落ち着く感じの素晴らしい露天風呂でした。 さて、30分弱の貸切露天で体を慣らした後は、いよいよこの宿のメインとなる極上の大浴場へと向かいます。 ついつい極上という言葉を連発してしまいますが、どれもみな本当に極上であるのですから、こればっかりは仕方がありません。 脱衣所は山の宿らしくシンプルで、しっかりと掃除がされていて気持ちよく利用することができました。 小梨の湯『笹屋』の大浴場は内湯のみで、露天風呂はありません。 扉の先には、世の温泉好き達を一目見ただけで虜にさせるような素晴らしい浴室が広がっています。 どうですか、この素晴らしい浴室の姿! お湯良し、雰囲気良し、眺め良しと、正に三拍子揃った理想的な内湯です。 内湯とは言っても、窓が大きく開け放たれているのでほぼ半露天風呂感覚で湯浴みを楽しむことができます。 緑いっぱいの風景に身も心もすっかり癒されました。 秘湯の宿らしく、洗い場もシンプルな作り。 一応シャワーの備えもあるので、利用に支障は無いと思います。 最後はセルフで恒例の記念写真をパチリ。 この素晴らしいお風呂をじっくりと楽しむため、今度は泊まりで足を運ぼうと心に誓いました。 こちらは女湯の脱衣所です。 廊下を挟んで男湯と向かい合っていますが、浴室の作りやサイズは男湯とほぼ同じとなっています。 女湯もまた、男湯を更に上回るような清々しい風景が目に飛び込んできます。 個人的には、女湯の方がより癒し度が高そうな雰囲気を感じました。 小梨の湯 笹屋 http://www.shirahone.org/sasaya/ 旅のスタートを素晴らしい立ち寄り湯で満喫した後は、ランチを取るべく元来た道を乗鞍方面へと戻りました。 九十九折の山道から望む白骨・乗鞍の山々。 雨の中、雲が沸き立つその光景は秘湯ムードたっぷりで、白骨温泉は実に雨の似合う温泉地であると思っています。 今回ランチに選んだ店は、GWの訪問時と同じくお気に入りの蕎麦処、「御池(おいけ)」です。 ウッディーな店内は、乗鞍高原の雰囲気に実によくマッチしています。 そしてたのんだメニューもいつも通り、この店のイチオシである蕎麦と岩魚の唐揚げがセットになった乗鞍膳+蕎麦コロッケ、更に今回はデザートにあずき寒天も加えてみました。 昼間からビールを飲みたくなるような、相変わらずの絶品料理に大満足のランチでした。 いい湯に浸かり、美味しい蕎麦を堪能した後は、奥飛騨温泉郷に向けて出発です。 国道脇に流れる清流・梓川も、連日の雨ですっかりその面影がありません。 途中、「アルプス街道平湯」で寄り道し、ようやく新平湯温泉『松宝苑』へと到着です。 奥飛騨一の人気エリアである福地温泉入口に位置し、他に隣接して宿が存在しないために、山の中の一軒宿といった雰囲気が漂います。 駐車場に車を停めてゆるやかな坂道を上がっていくと、宿のスタッフがすぐに出迎えてくれました。 もう何年も前からずっと足を運んでみたかった『松宝苑』−。 雑誌やネットで散々目にしてきた風格漂うその母屋の外観も、実際にこの目で見るとやはり感慨もひとしおです。 古民家らしい風情ある玄関をくぐると、 土間の広がる落ち着いた雰囲気のロビーが目に入りました。 初めてなのに、何となく懐かしい感じが漂う空間です。 先ずはこちらのスペースに案内され、チェックインの手続きとお茶等をいただきます。 お茶請けには人気の豆菓子が添えられて出てきますが、なるほど、お土産に買って帰りたくなるような評判どおりとっても美味しい豆菓子でした。 しばしゆっくりとお茶をいただいた後は客室へ。 今回は『松宝苑』のコストパフォーマンスの高さを身を持って実感できるという本館を予約しました。 本館へと続く渡り廊下も風情満点です。 本館客室の廊下もレトロな趣に溢れています。 1Fの客室を希望していましたが、どうやら希望通りの1Fに通してくれるようでした。 ふと廊下の窓から外を眺めると、あやめの花々が美しく咲き乱れていました。 この他にも、館内は実にたくさんの花や緑に囲まれていて心から癒されます。 今回宿泊した客室は「ひいろ」という名の客室。 玄関から客室までのアプローチを歩いただけで、すっかりこの宿の雰囲気を気に入っている自分がいました。 この続きはまた次回に。
次回は客室と館内の様子について紹介して行きたいと思います。 |
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