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『ロッジアイリス』では、夕・朝食ともこちらの食事処にていただきます。 一人旅でグループに混じりながらポツンと席に座るのは普段なら多少気が引けるところですが、そこはもう勝手知ったる馴染みの宿、一人旅の寂しさなど全く気にもならずに席へと向かいました。 取りあえずは待ちに待ったビール! 長旅の疲れか、一杯飲んだだけでも全身に酔いが回ってしまいそうな高燃費状態へと化していましたが、風呂上がりのビールの味は格別です。 さて、『ロッジアイリス』の食事といえば、山の宿ながらも適度に海の幸もいただけるというミスマッチの妙がポイントとなっています。 以前にも書きましたが、珍味であるタコの卵を初めていただいた場所が山奥のこの宿だったというエピソードもあり、決して派手さはないものの山・海折衷の美味しい料理を毎回楽しみにしているというこだわりの無い私でした。 いつもなら握り寿司3種が並ぶ皿には、今回はなぜかカッパ巻。 期待していただけに少し寂しい思いで箸を伸ばしてみると、これが意外とイケルんですね! 正直、納豆巻やかんぴょう巻を食べることはよくあっても、カッパ巻を食べたのは実に2,3年ぶり。 ある意味新鮮な感覚と、夏場ということもあってか、実にサッパリとした味わいで胃の中に収まりました。 見た目でちょっと損をしている感がありましたが、かなり美味しかったですよ。 お造りは3品、烏賊と鮪に加えて、嬉しいことに私の好物である鰺のタタキも登場です。 この時点で、山の宿らしからぬラインナップにダメ出しをする方もいるかと思いますが、何も山の宿だからと言って定番の岩魚の刺身を出せばいいってものではないし、この宿に限ってはこれはこれでアリだということで納得してしまいましょう! 料理はペース云々に関係なくどんどん運ばれて来ます。 続いては揚げたての天ぷら、さっくりホクホクの美味しい天ぷらを前に思わずニンマリしてしまいそうな感じでした。 そして名物の鍋料理です。 鍋料理がそれほど好きではない私の舌をも唸らす『ロッジアイリス』の絶品鍋。 宿の一番人気は、何といってもガッツリ食べ応えのある前沢牛のすき焼きなんですが、味付けがやや濃いめであるので、私は最近ほとんど別の鍋の方をお願いしています。(プランで選択可) 今回の鍋はつみれ鍋、滋味あふれる素朴な味わいが何とも言えぬ美味しさで大満足でした。 そしてトロロたっぷりの蕎麦を口にし、 刺身定食のようにしてご飯をいただきました。 ご飯はいつでも食べたい時に頼むことができ、当然お代わりも自由です。 旅はまだ始まったばかり、これから旅館料理がさらに4夜も続くことを考え、お代わりしたいところをグッとこらえて、何とか1杯で踏みとどまりました。 最後にデザートのメロンをいただき、夕食の終了です。 今回の夕食内容は普段よりはやや大人し目の印象でしたが、程良いボリュームとハズレのない美味しさで十分満足することができました。 春や秋には旬の山菜達もいろいろと登場するので、山の幸もしっかりと楽しみたいという方にはそれらの季節がオススメかも知れません。 夕食後、しばし胃を休めて再びお風呂を楽しむことに。 夜は貸し切り状態になることが多く、一人静かな湯浴みを満喫することができます。 オレンジ色の照明に照らし出される木造の浴室の美しさ、そして艶めかしい湯の色。 日帰りでは決して味わうことのできない、真の魅力溢れるお風呂の姿がそこにありました。 内湯は一晩中入れますが、夜の露天は11時まで。 温めの湯に浸かっていると、思わず「最高だ〜」とつぶやかずにはいられません。 はるばる600kmの道のりを運転してたどり着く価値のある、本当に素晴らしい温泉です。 そして一夜明け・・・、 窓越しに見る早朝の山々の美しいこと。 この日はトレッキングを楽しみたいという計画があったため、見事な青空を目にして心が弾みました。 朝食時間を一番早い7時からお願いし、朝日に照らされる中で朝食をいただくことに。 朝食は毎回ほぼ定番のメニューとなっています。 焼きたての鮭、柚子胡椒の乗った豆腐、温泉卵にサラダといったおかず達は、山登り前のエネルギーを満たすのには必要十分な内容。 特に豆腐と柚子胡椒の取り合わせの美味しさは、いつも楽しみにしているという一品です。 朝食も素朴ながら美味しい食事をしっかりといただき、体中に元気がみなぎりました。 食後はサービスでいただいた珈琲を楽しみながら、山の宿に流れる特有の清々しい朝の息吹をしかと味わせてもらいました。 朝食後、足早にチェックアウトした後は、すぐ近くにある「アルパこまくさ」の駐車場へと向かいます。 こちらがこの界隈の登山基地となっている「アルパこまくさ」、今回は入りませんでしたが、秋田では『栗駒山荘』と肩を並べる絶景露天風呂が楽しめる立ち寄り湯を有しています。 そして「アルパこまくさ」の背後には、朝の光を浴びて輝く目指すべきたおやかな頂がそびえていました。 この辺に足を運ばれたことのある方ならきっともうお分かりでしょう! そうです、今回は花の百名山で有名な秋田駒ヶ岳の初登頂を目指すというワケでした。 「アルパこまくさ」からはバスに乗り込み、マイカー規制の道を八合目の登山口まで向かいます。 途中でハイカーを拾いながら、バスはグングンと高度をかせいで行きます。 しばらくして八合目の登山口へと到着。 まるで緑の絨毯を敷き詰めたかのような美しい山容に、登る前から惚れ惚れと見とれてしまいました。 他のハイカー達がこぞって向かうルートとは逆ルートを選び、空へ空へと一歩一歩進んで行きます。 秋田駒ヶ岳は、その素晴らしい眺望の割に決して本格的な登山といった感じでもなく、高尾山程度の楽々ハイキング気分で楽しめるという点が大いなる魅力です。 途中、焼森山頂などのピークを踏みながら、軽やかな足取りで山頂を目指しました。 この辺りには、高山植物の女王であるコマクサの群生なども望むことができます。 三脚を立て、登山道にて記念の一枚。 こんなにも素晴らしい山が、こんなにも手頃に登れるということに強い感動を覚えました。 眼下には、通称ムーミン谷と呼ばれる高山植物の楽園も広がっています。 青い空、白い雲、そして緑の絨毯。 まるで絵に描いたようなとびきり美しい夏山の光景です。 阿弥陀池の畔にたどり着くと、秋田駒ヶ岳山頂の一つである男女岳へはもう一息。 そしてようやく登り着いた男女岳山頂ですが、到着すると同時にスッポリと雲に覆われてしまったため、写真だけ撮って早々に退却しました。 山頂を極めた後は少し早めのランチを楽しむことに。 いただいたのは、笹の葉で包まれた『ロッジアイリス』特製おにぎり! 程良く疲れた体に、塩気の利いたおにぎりの味は正に格別でした。 素晴らしい夏山を存分に満喫し、充実の足取りで下山します。 登山道の途中には、荒々しい硫黄鉱山跡地の姿も。 今なお活火山ということもあり、その恩恵で麓では多種多様な素晴らしい温泉を楽しむことができるというワケですね。 待望の秋田駒ヶ岳初登頂は、思っていた以上の充実感を与えてくれたので、来年もまた是非足を運んでみたいと思いました。 先日紹介した乗鞍岳もかなりのお気軽さでしたが、満足度から言えば今回の秋田駒の方が上かも知れません。 さて、下山後は温泉で汗を流すべく、お目当ての宿へと車を走らせました。 選んだ先はこちら、しっかりとした洗い場を備え、尚かつ2種類の極上源泉を楽しむことができるという『休暇村乳頭温泉郷』です。 お風呂は廊下の最奥部、男女別の浴室が並んでいます。 脱衣所を見ると、どうやら他に入浴客の姿がいない模様。 いつもながら、人の少ない温泉を選び出す嗅覚に思わず自画自賛してしまいました。 こちらが浴室の様子です。 まるで玉川温泉を彷彿とさせるような天井の高い立派な湯小屋の姿です。 手前が緑がかった重曹泉、奥が白濁の硫黄泉、これだけ性格の違う源泉を一度に楽しめる公共の宿というのも全国にそう多くはないと思われます。 整った設備と適度な鄙び感、そして極上の源泉と、乳頭温泉郷の立ち寄り湯で迷ったら、取りあえず休暇村にしておけば間違い無しといった感じではないでしょうか。 ブナ林に囲まれた露天風呂には、ご覧のような美しい硫黄泉が満ちあふれています。 こちらの源泉は『ロッジアイリス』などと同じ田沢湖高原温泉ですが、他の宿の比べても一際白濁度が強く硫黄泉の醍醐味を満喫することができました。 こうして2日目も密度の濃い旅を楽しみつつ、秋田を後に今宵の宿があるつなぎ温泉へと向かいました。 旅はまだまだ続きます・・・。 以上で、『ロッジアイリス』の宿泊レポートは終了です。 リーズナブルな宿泊料金ながら、本格的な温泉や快適な客室、滋味溢れる料理に秋田訛りのフレンドリーな接客と、周辺の宿の中ではピカイチな存在であると思うので、是非多くの方にこの宿の良さを体感してみて欲しいと思っています。 乳頭温泉郷方面の湯巡りを計画している人は、ちょっと視野を広げて田沢湖高原温泉にも目を向けてみると、こんなにも素晴らしい穴場宿が潜んでいるということが実感できると思いますよ。 田沢湖高原温泉ロッジアイリス http://www.lodge-iris.jp/ ※今回から宿の採点を取りやめます。
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田沢湖高原温泉 ロッジアイリス2
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私のお気に入り宿である『ロッジアイリス』の良いところは、平日だけでなく、休前日も一人旅受け入れがOKであるということ。 しかも一人泊だからといって特に宿泊料金をUPすることなく、四人で泊まっても一人で泊まっても全く同じという料金設定であるため、人数が少ないほどよりお得感が感じられるという極めて希少な存在のお宿になっています。 一人泊どころか、二人泊でも受け入れしないなどという世の温泉宿達には、『ロッジアイリス』のツメの垢を煎じて飲ませてあげたいくらい。人気にあぐらをかいている場合じゃないですよ! さて、客室はリーズナブルな本館と、ブナの森を望むゆったりとした新館の2タイプがありますが、両方の客室を泊まってみた感想では、やはり新館の方がオススメです。 トイレの有・無はもちろんですが、何といっても眺望がいいし、客室の広さも段違い、一番の狙い目は2F角部屋の「ななかまど」という客室で、もし初めて『ロッジアイリス』に泊まられる方がいたら、お試しということで先ずは「ななかまど」を指定してみるといいでしょう。 今回宿泊した客室は「なら」、ちょうど「ななかまど」と逆側の角部屋という位置づけになりますが、こちらの方もお風呂に近いので大変便利でした。 一人ではちょっと広すぎるくらいの客室。 ロッジとはいっても非常にしっかりとした設えで、並の旅館なんかよりもよっぽど居心地のよい空間であるかと思います。 いつも通り、到着時にはすでに布団が敷かれています。 涼しい高原地帯のため暑がりの私でさえ真夏でもクーラーいらず、従って寝不足解消もバッチリでした。 そして、私の一番お気に入りの居場所がこちらの広縁です。 客室のゆとり感をひときわ印象づけているのはこの広縁があるからと言っても良いほどで、ウッディなスペースのすぐ向こう側には、美しいブナの森が広がっています。 角部屋の特権は窓が二方向あるということ。 このおかげで開放感もぐっとスケールアップしますし、ブナの森に包まれているかのような癒し度が増してきます。 とってつけたような広縁ではなく、布団を敷くこともできそうなくらいの広さであるので、根っからのナチュラリストの人であればこちらのスペースで寝てみるというのも一つのチャレンジではないでしょうか。(私はまだ一度も試みたことはありませんが・・・) ベランダから手を伸ばすと、森の樹々達にすぐ届きそうなほど。 夏の緑はもちろん、黄色く色づいた錦秋の世界や、白一色の銀世界もまた格別の美しさです。 私は全ての季節に足を運んだことがありますが、やっぱり冬の雪景色が一番好きかも知れません。 一人旅のお供は、何といっても気軽に読める雑誌や小説達。 自宅から車で出発する場合、持ち物をあまりまとめ過ぎなくても済むという点が良いところです。 ちょうど温泉雑誌の「自遊人」が発売された直後だったので、日頃ゆっくりと読む時間がない温泉記事などを眺めながら、ひたすらのんびりとした時間を過ごしました。 今回の特集は温泉宿大賞というものでしたが、私の中の温泉宿大賞には当然『ロッジアイリス』もランクインという癒し宿です。 一息ついたら早速お風呂です。 客室を出て階段を下りると、すぐに湯小屋が待っているというのは非常に便利なポジションでした。 脱衣所やパウダースペースの様子はいつもと同じ。 以前のレポでも紹介しているので詳細は省きます。 そして浴室内に入りますが、こちらは何度でも紹介したいお風呂なのでじっくりといきましょう。 扉を開けて目に飛び込んでくるのがこちらの浴室。 どうですか、この見事に美しい浴室の姿は! 全て青森ヒバで作られたという浴室内には、木と硫黄の香りが満ちあふれていて、木のお風呂好きで内湯好き、尚かつ硫黄泉好きという私にとって、正にこれ以上無いような癒しの空間を生み出してくれています。 洗い場一つとってみても、思わず見とれる芸術的な美しさです。 静かに響き渡る湯口の音、そしてゆらゆらと湯面から立ち上がる湯気がまた、何ともいえない温泉情緒を醸し出しています。 素晴らしいお風呂・温泉は常に、その存在感を私の五感に対して語りかけてくるような気がします。 やや熱めの湯温はピリッと刺激的な感覚で思わずくせになりそう。 写真では白濁して見えますが通常はうっすらと濁っている程度、湯船の底にびっしり沈殿している湯の花をかき混ぜることでご覧のような状態になるというわけです。 田沢湖高原温泉は、近くにある『鶴の湯』や『黒湯』、また『水沢温泉』あたりとはまたひと味違った浴感が楽しめるので、まだ未入湯の方は是非乳頭温泉郷の湯と入り比べてみると楽しいかと思います。 続いて内湯の脇を抜けて露天風呂にも入ってみました。 木造の内湯とは一転、露天風呂の方は見事な岩風呂となっています。 とは言っても、荒々しい豪快な岩風呂といった雰囲気ではなく、丸みを帯びた岩を配することで優しい印象を作り出しています。 壁の前面が開けているので、四季の移ろいを眺めながらの湯浴みはまた格別といった感じ。 内湯に比べると湯温はやや温めであるため、雪見の季節などは出られなくなるくらいの気持ちよさです。 こちらは露天から内湯の方を眺めた様子です。 ピリッと熱めで刺激的な内湯、温めでマイルドな露天風呂という、異なる2つのお風呂を交互に行き来しながら、ゆったりと長湯を楽しませてもらいました。 天敵のアブも、なぜかこちらにはやってくることが無かったので本当に助かりました。 湯上がり後はテラスで夕涼み。 但しお風呂でホッとしていたのもつかの間、今度はアブの代わりに蚊の大群が押し寄せて来たため、すぐに退散する羽目になってしまいました。 山の中の蚊は結構強力な痛がゆさを提供してくれるので、なるべくなら関わり合いたくない存在です。 とは言っても、一人旅は常に時間の余裕があるというもの。 せっかくなので宿周辺の散策にも繰り出してみました。 宿の裏手には、ご覧のようにちょっとした散策路が設けられています。 私はブナ林が大好きなので、再び蚊との対決を強いられるかも知れないと思いつつも、やはり歩いてみずにはいられませんでした。 新館の軒下を通って散策路へ。 先ずは谷に方に向かって坂道を降りて行きます。 静かで清涼なブナの森。 宿の裏手にこんな散策路があるというのも、考えてみると非常に贅沢な環境ですね。 途中にはこんなベンチもあり、断崖の先には先達沢が深い谷を形成しています。 そして長梅雨が影響したのでしょうか、この時期にしては珍しいギンリョウソウの姿も。 山道を歩いていると時々出会う存在ですが、その幽玄な姿を見ると思わずハッとさせられます。 散策から戻って来た後は、お楽しみの夕食を待つばかり。 夕食がまた実に美味しいんですよ、これがっ。 この続きはまた次回に。
次回へとつづく・・・ |
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前回までの記事で、夏休み奥飛騨・信州旅行の模様を紹介して来ましたが、実は先日、以下のようなメールをいただきました。 「掲示板の方を見ていた際、夏休み第2弾の旅行として、一人旅で東北地方に行ったと聞いた。一人旅の参考にしたいのだが、是非それを記事にしてくれないか。」とのこと。 正直、自由気ままな一人旅であるし、記事にしたところであまり面白みのある内容を書けるような自信がなかったため、今回の旅の記事はスルーしようと考えていました。 ・・・が、メールをいただいたことで、一人で泊まれる温泉宿の情報を発信していくこともある程度意義があることかも知れないと考え、また何よりブログを読んでいただいている読者のニーズに応えようとの思いを込めて、この夏足を運んで来た東北方面の温泉旅、題して「みちのく一人旅2009・夏」の模様について、これからしばらくの間連載して行くことに決めました。 とは云っても季節は既に晩秋、ある程度時間が経ってしまい、記憶の方もやや曖昧になりつつあることを踏まえて、よろしくお付き合いいただきたいと思います。 取りあえず、簡単に宿泊場所のおさらいをしてみますと、 ○8月1日 秋田県 田沢湖高原温泉『ロッジアイリス』 ○8月2日 岩手県 つなぎ温泉『ひいなの丘 湖山荘』 ○8月3日 宮城県 青根温泉『湯元 不忘閣』 ○8月4日 山形県 新高湯温泉『吾妻屋旅館』 ○8月5日 栃木県 板室温泉『大黒屋』 といった5泊6日の行程になります。 今回はETC割引料金の恩恵をしっかりと視野に入れつつ、東京から秋田までの長区間をマイカーでひた走り徐々に南下を図るという作戦。 本当は青森方面の秘湯宿も狙っていたのですが、ねぶた祭の期間と重なることもあってか、希望する宿は悲しいかな軒並み全滅。 それでも何とか一人旅受け入れOKの宿を予約し、途中・途中にその日の気分による立ち寄り湯なども絡めて行くという、一人旅ならではの行き当たりばったり的な計画実行と相成りました。(ちなみに往復の走行距離は何と1,600Km超という数字に) 先ずは初日に宿泊した、田沢湖高原温泉『ロッジアイリス』再訪の模様からスタートします。 8月最初の土曜日となったこの日、本格的なバカンスシーズン到来ということで、渋滞を避けるため寝ぼけ眼のまま自宅を午前3時頃に出発し、暗闇の東北道をひた走ります。 長時間の運転で話し相手がいないのはかなり疲れますが、今回は心に重荷を背負った哀愁の一人旅というワケでも無いので、好きな音楽をガンガンかけながらとにかくテンションを上げてハンドルを握りました。 途中、事故による通行止めなどという悲しい仕打ちに合いつつも、何とか秋田入りすることができました。 ご覧の写真は国道46号線、走る度にほぼ毎回「こまち」と競争になる楽しいルートです。 お昼前には田沢湖高原周辺に到着。 取りあえず腹ごしらえをしなければ始まらないということで、お馴染みの『鶴の湯別館 山の宿』にてランチをいただくことにしました。 お昼時だというのに、珍しく人気(ひとけ)の無い食事処へと足を運び、一人慎ましく隅の席へと腰を下ろします。 たのんだのはもちろんこちら。 毎度ワンパターン気味のご存じ山の芋鍋定食です。 乳頭温泉界隈に来たらこれを食べずして帰れないというほどの大好物で、一人前でもしっかりと鍋に入れてくれて嬉しい限りでした。 今回はさすがに定食だけでぐっと我慢。 これで秘湯ビールを飲むことができたら、旅の疲れもあっという間に吹き飛んだことでしょうに・・・。 さて、程良くお腹も満ち足りた後は、いよいよ湯巡り開始です。 どこに行こうかあれこれ頭を巡らせた結果、ふと閃いた場所がありました。 黒湯温泉の駐車場に車を停め、温泉道具をリュックに背負ってお目当てのお風呂へと向かいます。 黒湯温泉を通過し、道標に沿って孫六温泉方面へと向かって行きますが、今回は孫六温泉に入るというわけでもありません。 目指す目的地へは、沢沿いに延びる乳頭山への登山道をひたすら登って行きます。 この辺で温泉ツウの方はもうピンと来たのではないでしょうか。 そうです、今回目指した温泉の答えは、超有名系野湯の一つである一本松温泉 「たつこの湯」に他なりません。 登山道の途中で橋を渡り、 沢からそよぐ涼しい風を感じていると、何やら風に混ざって硫黄の香りが・・・。 ふと目をやると、橋の袂に白濁した湯溜まりを発見。 ひょっとしてこれが「たつこの湯」!? 見た感じいい具合に湯船が作られていましたが、思っていたよりも湯温が温く、どうやらここは別物の様でした。 気を取り直し、矢印にそって沢沿いの道を再び上流に向かって歩いて行きます。 真夏のジリジリとした陽射しが照りつける中、清冽な沢の流れが一層心地よく感じます。 正直、温泉よりもむしろこちらの沢に浸かりたいという気持ちが強まっている自分がいました。 黒湯から山道を歩くこと凡そ30分、やや開けた草地に到着しました。 再び鼻孔に漂う硫黄の香り、今度こそ「たつこの湯」がある場所にたどり着いたのでしょうか? ふと足下を見ると、何やら古ぼけた看板が。 そして、薄くかすれた文字を目を細めて読み上げてみると・・・。 「一本松温泉跡地 環境省 秋田県」の文字を確認! どうやらようやく念願の一本松温泉へと到着した模様です。 硫黄の香りをたよりに周囲を見渡したところ・・・。 ありました!、正しくこれまで何度となくネット上の温泉系サイトで目にして来た憧れの野湯、一本松温泉「たつこの湯」の姿そのものです。 あらためてその露天風呂の様子をじっくり監察してみると、黒湯温泉等と同系統の焦げ硫黄臭が漂い、自噴する透明な硫黄泉が満ちる湯船の底には、析出した黄色っぽい湯の花が多量に沈殿しています。 底が浅く、全身ゆったりと浸かるようなサイズではありませんが、秘湯感漂う超開放的な野天風呂は魅力十分!、ここまで来たら入らずにはいられないという様相を呈していました。 ・・・がしかし、前述した通りこの日は正に真夏の暑さ、おまけに湯温の方も尋常ではない熱さ。 先人が用意してくれたらしい沢の水を注ぎ込むホースも極めて無力で、温泉好きの私の気持ちを萎えさせるには十分過ぎる条件が整っていました。 取りあえず足湯だけでもという感じで一瞬の湯浴みを楽しみ、その後しばらくは目の前の沢で水浴びを楽しみ、しっかりと記念撮影を済ませて元来た道を帰りました。 やや不完全燃焼気味ではありましたが、一度は足を運んでみたかった「たつこの湯」の感触を確かめられただけで満足です。 そして再び黒湯温泉に戻り、せっかく来たので往復の山歩きの汗をこちらで流していくことにしました。 黒塗りの壁に茅葺き屋根、そしてそこかしこに立ちこめる湯煙。 風情だけなら、『鶴の湯』をも凌ぐような印象的な風景が広がっています。 敷地内の湯畑からは、こんこんと貴重な源泉が湧き出ています。 以前私は黒湯温泉の別の湯畑に写真を撮ろうと思って近づき、見事足を取られて落っこちたという苦い経験があるので、くれぐれも近寄らない方が賢明です。 黒湯温泉の湯小屋は混浴と男女別の2箇所があり、どちらかといえば混浴の方がメジャーな存在となっていますが、私はこちらの男女別浴室の方が断然気に入っています。 扉を開けると広がる風情満点の内湯。 正に絵に描いたような湯治場の光景を前に、いつもながら心が躍りました。 湯船に身を沈めると、灰白色の硫黄泉が東京からはるばる運転してきた体全身に染み渡ります。 嬉しいことに、ちょうど先客のグループ客達と入れ替わりだったので上がる直前まで貸切状態で楽しめました。 そして今回楽しみだったのは新設された露天風呂に入ること。 以前は女湯にしかなかったこちらの露天風呂、思っていた以上に開放感があって、眺望もなかなかのものでした。 更に温度も温めということで実に入りやすかったのですが、残念ながらやはりここは夏場の東北の山の中。 もはやこの季節の風物詩とまで思えるようになってきた天敵のアブが、ものの1分としないうちに近づいて来るという有様です。 昨夏もアブにはずいぶんと痛い目に遭いましたが、しばしタオルを振り回して防戦を試みるも、この夏もあえなく退散するハメになってしまいました。 私の顔はその時、恐らくザブングルのような表情になっていたのは間違いありません。 それでも名湯に浸かって十二分にサッパリし、湯上がり後は最近すっかり重宝しているキリン・フリーにてのどの渇きを潤しました。 車を運転する際でも飲めるこちらのフリー、この夏はずいぶんとお世話になりました。 さて、一頻り湯浴みを満喫した後は、再びハンドルを握って『ロッジアイリス』へと向かいました。 『ロッジアイリス』は、既にもう何度となく足を運んでいるというオラが秋田の定宿、今回約1年ぶりの訪問です。 いつもと変わらぬウッディーな外観、ロッジという名称がこよなく似合う隠れ家的な山の宿です。 木の階段を上がり、 玄関の扉を開けて中に入ると、いつも通り愛想のいい元気な声で支配人達が出迎えてくれました。 「あぁ、どもども、いらっしゃい!」 朴訥とした秋田訛りのあいさつを聞くと何だかいつもホッとします。 今回宿泊したのはお気に入りの新館。 シンプルで美しい白木の廊下も相変わらずでした。 全て樹木の名前が付けられている客室、どうやら今回は「楢(なら)」という客室を用意してくれた模様です。 初めて宿泊する客室ですが、一体どのような景観が楽しめるのでしょうか。 この続きはまた次回に。
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