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生粋の料理宿である『茜彩庵山水』に泊まる上でのお楽しみは、一にも二にも食事にあります。 庵主自らが厨房に立って手がけるその料理は、「郷心の味わい」と称される地の食材を用いた郷土の味覚。 『友家ホテル』→『満山荘』という美食宿を泊まり歩いて来た最終日、舌も肥え必然的に『茜彩庵山水』に求める料理の期待値も増してしまうのが人の性ですが、この期待に見事に応えてくれた庵主渾身の絶品料理の数々は今でも多大なる口福感となって私達の記憶の中に深く刻まれています。 それでは早速、その感動の食事の模様を紹介して参りましょう。 料理を気兼ねなく味わうために食事処はもちろん個室。 到着が遅れたために夕食開始もやや遅めとなりましたが、時間帯によっては神流湖に沈む美しい夕陽を眺めながらの贅沢な晩餐も楽しめそうです。 食事の前にいろいろと美味しい地酒のオススメをいただきましたが、しがない私達はいつも通りのスーパードライをオーダー。 可愛らしいグラスにて乾杯です。 先ずは食前酒と共に、美しい器に載った先付けが運ばれて来ました。 左から岩魚の木の芽焼き、山里のミルフィーユ仕立て、たらの芽の桜酢掛けの三品。 春の香り、ほろ苦い山の味覚を見た目も美しい繊細な盛りつけで美味しくいただきました。 料理というものは味付けはもちろんですが、盛りつけの美しさや華やかさといった演出を加えるだけで、喜びや感動そして食欲が何倍にも増すものです。 そういった意味で、初めの一皿でこの宿の料理にかける情熱と実力をしかと見届けることができた珠玉の先付けでした。 続いては椀物、アスパラ豆腐の卯の花仕立て、蕨添えです。 滑らかな豆腐の中にしっかりとアスパラの風味を感じながら、この季節ならではの蕨を一緒にいただくという贅沢。 一見地味ながら、滋味溢れる味わいを見事につくり出していました。 続いては大皿に盛られた二人分の料理が登場。 こちらはサックリと揚がった熱々の山菜天ぷら三種。 そしてこちらが、左からもち豚の西京焼きと筍の挟み焼、グリーンピースのかき揚げ、新牛蒡の土佐和え、蕗山吹という山の味覚を揃えた贅沢な料理達が並びます。 料理序盤の揚げ物は食欲倍増、他も皆文句なしの味わいに大満足です。 お造りは山水風鶏わさ。 久々に口にした新鮮かつ歯ごたえ抜群の地鶏のタタキの美味しいこと! 山の宿、地産地消を掲げる宿だけあって、海の幸は登場しないとは思っていましたが、川魚でも馬刺でもなく、地鶏をもって来るとはさすがです。 予想では最近人気の群馬の名産ギンヒカリ辺りが登場するのかなと思っていたので、その意外性が実に嬉しかったですね。 続いてはとろけるような舌触りを目一杯満喫させてくれる、汲み上げ湯葉の美味餡かけです。 大好物の湯葉を上品な餡に浸し、春らしく土筆を添えたお椀ですが、湯葉の量がとってもボリューミーに盛られていたので、非常に食べ応えのある充実の一品でした。 そしてこちらがこの日のメインディッシュ、上州和牛の炭火焼きと焼き野菜色々の登場です。 地元の銘石三波石の上に盛られたA5ランクの極上和牛、写真を見ればもう十分にお分かりの通り、言葉のいらない美味しさとは正にこのことかと思いました。 更に肉だけでなく、下味の付いた野菜達も和牛に負けないくらいの美味しさで、この一品だけでも今回の夕食が十分満足に値する内容だったと心から実感する一皿でした。 続いては、メインディッシュの興奮を程良くクールダウンさせてくれる一皿、春大根・ブラウンの黄味煮・空豆をあしらった煮物です。 ブラウンとはブラウントラウト(茶マス)のこと。 ぶり大根ならぬマス大根とも云うべき煮物ですが、それぞれの素材がしっかりと独自に味付けされていたので、上品な薄味の中にも素材本来の持つ美味しさがしっかりと伝わって来て、これもまた実に味わい深い一品でした。 続いては酢の物、山独活・こごみ・かたくりという山菜類をさっぱりとした生姜酢のジュレでいただきます。 季節感満載のこちらの酢の物、山菜好きにはたまらない美味しさでした。 充実の料理達を前にすっかりお腹がふくれてしまいましたが、ようやくご飯へとたどり着きました。 ご飯は土鍋で炊きあげた筍ご飯、ふたを取った瞬間に立ち上る香ばしいかおりがたまりません。 加えて、おばあちゃんのとっちゃ投げ汁という郷土料理(すいとん)と香の物でいただく筍ご飯、とにかくこれが実に感動的な美味しさで、口にした結果どうなるかというと・・・。 いつもの通りにこうなってしまうワケでした。 『友家ホテル』でも『満山荘』でも結果的に涙するまでには至らなかったので、私はもちろんのこと同行の彼女の方もよっぽどこの宿の料理が心に響いた模様です。 〆のデザートも一切手抜きなし。 やよいひめのシャーベット、女将の手作りムース、藪塚産小玉西瓜の三品を料理長を務める庵主自らが運んで来てくれるというのがまた実に嬉しいポイント。 本当に大満足だったという思いをしっかりと伝え、約2時間の充実の夕食を食べ終わりました。 食後は心地よい酔いと満腹感、そして軽い疲労を加えてすぐさま客室へと戻り、 敷かれていた布団に吸い込まれるようにして横になります。 温泉宿ではないため、寝る前にもうひとっ風呂という欲求を沸き立たす必要もなく、この日の夜は足早に更けて行きました。 すっかり熟睡していつの間に朝を迎えると、窓の向こうは光眩しい青の世界。 取りあえず予約していた朝の貸切風呂の時間が迫っていたので、着の身着のままで目覚めの朝風呂へと向かいます。 夕暮れ時の湯浴みも良かったですが、雲一つ無いような爽やかな青空と湖面を望みながらの朝風呂もなかなかの爽快感。 旅の最終日を飾るのには実にふさわしい晴天でした。 朝食は8時から昨晩と同じ個室にて。 朝は美味しい食事に加えて、眺望も楽しめるという贅沢感を味わえます。 朝食はこの様な形で運ばれ、 重箱には食欲をそそる和のおかず達が並びます。 焼き魚の鮭にもちょっとしたタレをかけてひと工夫。 このタレが実に美味しかったので作り方を庵主に聞いたら実に気前よく教えてくれました。 そして朝食もしっかりと土鍋で炊きあげた美味しいご飯をいただきます。 地元産のこだわり味噌で仕立てた味噌汁も正に郷心の味わいといった感じでした。 朝食後は外のデッキに足を運び、 しばしその絶景を目に焼き付けました。 夕暮れ時に見た湖面も神秘的ですが、やはりこの景観は青空の下がよく似合います。 春の桜、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々表情を変えるこの湖畔光景を何度と無く通って目にしてみたいと思いました。 あまりにも気分がいいので、女将さんに頼んで珈琲を入れていただくことに。 湖面近くにはたくさんのトンビ達が飛び交い、その様を眺めながらゆったりと美味しい珈琲をいただくという贅沢。 これぞ正に非日常の時間を楽しむ旅の醍醐味ですね。 東京からもほど近い神流湖畔、温泉宿ではありませんでしたが、本当に心の底から満足できる極上の料理宿だと実感することができました。 この後、サービスで記念写真などを撮ってもらいながらチェックアウト時間ぎりぎりまでのんびりと過ごしました。 充実の美食旅を心地よくフィニッシュすることができた2010年のGW、これにて『茜彩庵山水』の宿泊レポートを終了します。 |
茜彩庵 山水
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2010年のGW旅は、自分にとって初訪問の宿、取り分け「料理が美味しい」とされる評判の宿3つを揃えました。 1日目 新潟 大湯温泉『友家ホテル』 2日目 長野 奥山田温泉『満山荘』 3日目 群馬 『茜彩庵山水』 という順番で宿泊して来たのですが、『友家ホテル』や『満山荘』については、今更私ごときが語る必要の無いほど、その魅力をつぶさに紹介してくれているサイトや口コミが数多く存在する向きがあるためレポは省略。 よって今回は、GW旅のトリを飾る最も満足度が高かったお宿、『茜彩庵山水(せんさいあん さんすい)』訪問の様子を紹介してみたいと思います。 前回の『蛍雪の宿尚文』、前々回の『旅館たにがわ』と群馬の宿紹介が続いていますが、『茜彩庵山水』にだけ温泉地名を記入していなかったことにお気づきですか? 実はこの『茜彩庵山水』、純然たる料理宿であるために宿に温泉は無く、神流湖畔の絶景ロケーションを愛でながら、ひたすら美味しい料理に舌鼓を打つという、和風オーベルジュとも云うべき存在のお宿なんです。 ビジネスホテル等を除いて、温泉好きの私があえて温泉の無いお宿を選ぶというのは比較的珍しいことですが、この宿の存在を知った時からその雄大な眺めに一目惚れ、更に評判の料理を是非一度味わってみたいと思い続けて来たこともあり、今回の美食旅を締めくくるには最もふさわしい宿として予約を入れた次第です。 さて、『満山荘』をチェックアウト後、万座プリンスホテルで入浴+ランチなどをいただきながらのんびりと過ごしていたのですが、高速道路の渋滞につかまったせいで神流湖方面への到着が予定よりも大幅に遅れてしまいました。 日もだいぶ傾き始めた頃になって、神流湖にほど近い八塩温泉を通過しながら宿へと向かいます。 『茜彩庵山水』に温泉はありませんが、八塩温泉には、秘湯を守る宿の一つである『神水館』などの実力派温泉宿が軒を構えているため、1泊の旅であればこちらで立ち寄り湯を楽しむのも一つの手であるかと思います。 間もなくすると、落ち着いた純和風の建物が国道沿いに不意に現れ、慌てて車を停めてそこが『茜彩庵山水』であることを確かめました。 13時頃に万座を出て、神流湖に到着したのが17時。 同じ群馬県内の移動でまさか4時間近くもかかることになるとは・・・。 とにかく車の運転に疲れてしまったので、宿に到着した際は正直ホッとしました。 国道沿いの宿とは云え、門をくぐり、壁を一枚隔てた敷地内に足を一歩踏み込めばそこは既に異空間。 実はこの宿、前身の湖畔のドライブインから極上の料理宿へと2008年4月に転身したばかり。 そしてそれを手がけたのは、著名な建築デザイナー松葉啓氏です。 到着が予定よりも遅れたことを詫びながら館内に入ると、宿の女将さんらが優しく出迎えてくれました。 先ずは女性用の浴衣選びから。 温泉こそ引いていないものの、大浴場の他、貸切風呂なども備わっているので、宿での過ごし方は普通の温泉宿とさほど変わりはありません。 そしてロビーにて、雄大な神流湖の絶景と初対面。 なるほど、ため息が出そうなくらいの絶景とはこのことかと納得しました。 写真で見たとおりの素晴らしい眺めに、しばらく見とれてしまいました。 チェックインの手続きはロビーにて。 お茶と自家製の羊羹をいただきながら、長旅の疲れを癒すひとときです。 しばらくして5Fの客室へと階段で上がりました。 実はこの宿、感覚的には2F建てなんですが、ロビーがあるのが4Fで、3Fに大宴会場、2Fに大浴場などが設けられています。 今回私達が予約したのは独立した角部屋タイプの「深山」という客室。 松葉氏が手がけた全5室のリニューアル客室のうち、8畳という比較的小じんまりとした広さのため最もリーズナブルな料金となっていますが、二面採光で眺望抜群とのふれこみだったので、迷わずこちらを予約しました。 客室内に入ると、パッと目に飛び込んで来るのが今再びの神流湖の絶景。 モダンなテイストを醸し出しながら、スッキリとした空間で非常に居心地のよい客室でした。 2人組であれば、全く申し分の無いような作りといった印象です。 他の客室は10畳以上あり、中には半露天風呂付の客室も設けているようですが、こちらの8畳和室も窓が広く取られている分閉塞感などは皆無です。 そしてその窓の向こうに望む景色がこちら。 春などは湖畔に咲き誇る桜が湖面をピンク色に染め上げ、まるで夢のような美しさだと女将さんが教えてくれました。 取りあえず持参した珈琲を入れ、 しばしこのゆったりとした夕暮れ時の移ろいを楽しむことに。 少しずつ、少しずつ傾いていく夕陽に、楽しくもあっという間であったGWの旅の思い出を二人して振り返るのでした。 トイレや洗面所などの水回りもシンプルで落ち着いた雰囲気。 更に喜ばしいことは、冷蔵庫に用意されたドリンクが全てフリーであったこと。 1万円台の宿にしては珍しくも非常に嬉しいサービスでした。 さて、しばし客室でくつろいだ後は、夕食前に予約を入れた無料の貸切風呂で汗を流すことにしました。 貸切風呂は客室のある5Fフロアの一番奥にあり、45分単位で夕と朝2回利用しました。 脱衣所の扉の先には、いかにも松葉風デザインらしい絶景の半露天風呂の姿が。 山裾に今正に日が落ちる瞬間を望みながら、サッパリとした湯浴みを満喫します。 但し、やはりここは温泉場ではなく湯船を満たすお湯はごく普通の沸かし湯。 塩素の香りもしっかりと漂っており、お湯そのものから得る癒し度は極めて低い値にならざるを得ないので、それを事前に承知したうえで足を運ぶ必要があるでしょう。 温泉でないのが不満!などというナンセンスな感想は避けたいものです。 洗い場は一箇所のみ。 備え付けのシャンプー類は、最近見かけることの多くなったお気に入りのPOLAのアロマエッセで文句無しです。 風呂上がりにはこんな嬉しいサービスも。 牛乳やジュースなど、貸切風呂の前に自由にいただける飲み物が用意されているので、実に気が利いていると嬉しくなりました。 遅い到着であったため、夕食はいつもの私達からするとやはり遅めの7時に用意してもらいました。 貸切風呂から上がり夕食まで少しだけ間があったので、その時間を利用して2Fにある大浴用なども覗いて見ることにしました。 男女別の大浴場は、男湯が「神流綴」、女湯が「冬桜」という風情ある名が付いています。 今回は様子を眺めただけで実際に入ることはしませんでしたが、『茜彩庵山水』は5Fにある和モダンな和室5室の他に、ビジネス客等を対象にした洋室が2Fに5室備わっているので、洋室に宿泊したゲストはこちらの大浴場を利用するケースが多いようです。(貸切風呂の利用は和室宿泊者のみ) 先ずは男湯の「神流綴」から。 脱衣所はシンプルかつ清潔なつくりです。 浴室に入ると、インパクトのある豪快な岩風呂が待ち構えていました。 思わず「おぉ〜」と声を漏らしてしまうような迫力のある湯船の姿にビックリ。 地元の特産である三波石を用いたという荒々しいこちらのお風呂、青緑の三波石が鈍く光り輝いていて正に男湯!といった印象でした。 大浴場だけあって、洗い場の数も充実していました。 一方こちらは女湯「冬桜」の脱衣所。 豪快な岩風呂の男湯とは対照的に、桜色の明るい床石に檜の縁をあしらった湯船など、いかにも女湯らしい優しい雰囲気の浴室となっていました。 洗い場は左右に設けられた2箇所と少な目ですが、客室数も多くはないので恐らくそれほど混み合う心配もないでしょう。 この季節、夜7時ともなればすっかり辺りは宵闇に包まれます。 ますます風情の増して来た時間と共に、いよいよ待望の夕食へと向かいました。 食事処は4Fにあり、個室にてゆったりと美食の数々を堪能することが可能です。 料理の美味しい『友家ホテル』、『満山荘』を更に上回る満足度であった『茜彩庵山水』の充実の食事の模様は、次回また紹介します。
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