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今年、私は大学校を卒業して20年になる。
私が卒業した年は昭和天皇が崩御され平成になった年だ。
同窓会は20周年ということで、我々33期(惨々期)生に対し、開校祭にあわせて集合をかけた。
私は神戸在住。横須賀まで450Km程ある。
仕事もある。
日曜日1日だけ仕事をキャンセルし、横須賀弾丸トリップを遂行することにした。
一人では寂しいので息子に「付」(「づき」と読む:自衛隊用語で助手の意味)として同行を求めた。
息子は興味半分、面倒くささ半分で当初、生返事であったが、「学校の上を戦闘機が飛ぶで。」とだまくらかし半強制的に同行させた。
神戸三宮 20:40初の夜行バスで横浜を目指す。
一人5000円の安さに惹かれ予約したが、実際に乗ってみると大阪USJ、梅田、京都と人を乗せるために、途中ストップする。なかなか関西圏から脱出できない。
京都を出発したのが11:00であった。
バスの中で眠ろうと思っていたが、運悪く車両後部、エンジンの真上の席であったため振動が響きなかなか眠れない。さらには3時間毎にサービスエリアで休憩し、その度毎に照明が点るため熟睡できない。
しかし時が過ぎ、11/8 5:00頃車両が東名高速から下りるのに気が付いた。
あと30分で横浜だ。
早朝6:00前の日曜日、寒風身にしみる横浜駅に、むずかる「付」と共に降り立った。
私は横浜の高島屋を見上げ、ダイヤモンド地下街に目をやった。
20数年前の思い出と共に、「懐かしい。本当に懐かしい。」と叫んでしまった。
「付」は横目で「このおっさんアホか?」という目で私を見つめていた。
横浜から横須賀に向かうには普通、京浜急行の方が便利だ。
しかし、私はJRを迷わず選択した。
「付」に横須賀に着いた途端に現れる護衛艦の群れをみて欲しかったし、階段が1段も無い日本唯一の駅を経験して欲しかった。
そして私は最近読み返した「坂の上の雲」。
秋山弟が子規の死を横須賀駅の汽車の中で知るシーンを体感してみたかったからである。
しかし、本当の理由は大学校時代に付き合っていた彼女「H」の事である。
「付」には迷惑な話だが、どうしても自分にケリをつけておきたかったのである。
JR横須賀駅を出て横須賀中央方面に歩き出す。
左手に護衛艦、潜水艦を見ながら10分も歩くと「付」は「腹が減った」と言い出した。
思い出の京浜急行「汐入駅」手前でのことだ。
これ幸いと駅前にある公衆電話に飛び込んだ。
昔の記憶を頼りに電話帳を繰り目指す電話番号と住所を見つけ、メモに書き込んだ。
まだ空はドンヨリと曇っていた。
汐入の陸橋そばに「ガスト」を見つけそこへ入った。
モーニングサービスを2つ注文した。
料理が運ばれ、勢いよく、口に料理を運ぶ「付」を私は見ながらコーヒーを啜った。
頭の中では「電話しようか?今更なんと?まだ時間は早いし。などと堂々巡りをしていた」
「付」が最後のトーストを口に放り込むのを私は見届け立ち上がった。
とにかく、ここを出よう。
扉を開けたところでいい案を思いついた。「葉書を書こう」と!
その時空には光が差し込むようになっていた。
大通りを横須賀中央方向に行かずに直進すると左手にアメリカ海軍の基地(ベースという)の入り口が見えた。私の頃は通りにドンとあったが、今は入り口前に陸橋ができており判りにくくなっていた。
入り口のマリーン(海兵隊員)に「一緒に写真を撮って」とお願いすると、にべもなく断られた。
気を取り直して、三笠公園へ足を運ぶ。
途中のコンビニで葉書を一葉、買い求めた。
「付」に勿論、日露戦争の日本の旗艦「三笠」と東郷平八郎の像を見て貰いたいからである。
この日は横須賀市が後援するイベントが行われるため、いつもの静かさは無かった。
三笠公園を出て「付」と共に横須賀中央に向かった。
大通りから町の中を歩くと、学生時代あんなに猥雑な感じもあり、それが魅力だった町並みはガラリと
変わり、オシャレになっていた。それでも「金星劇場」(エロ映画館)など思い出の建物があったのをみつけると「付」に当時の様子やハプニングなどを大声の関西弁で話してやった。
横須賀中央駅前に出ると、あの思い出深い時計台が無くなっていた。
どれだけの本校学生と女性が待ち合わせをした場所だろう?
1週間で1日ぐらいしか外に出れない本校学生。それを待つ女性。
そんな事を思い返していると、「付」が「早よ、行こうや!」と言った。
私は我に帰りタクシーに乗り込んだ。
私は先に「付」を乗せ、次に私が乗り込み、行き先を言った。
「小原台(おばらだい:防衛大学校の別称)の正門まで」
20年ぶりにこのセリフを言った。
「導入 その2」へ
※写真は防衛大学校 儀杖隊(ぎじょうたい)
学校長直属の部隊(訓練部に所属)で元々は学校にやってくる国内外の来賓に対して歓迎するセレモニーを担当する。でも、それだけではツマラナイので使用するM1ガーランドを自在に振り回し、ドラム隊の演奏の基、ドリル演技を行う。学生同士の中では楽勝クラブと卑下する人もある。実際その一面もあるが。
しかし、何といってもこのクラブでしか得れない事がある。
それは日本武道館、数万人の中で演技をする緊張と喜びである。
ステージという魔物に必ず魅入られてしまう。
本校では絶対お勧めのクラブだ。但し1年のときに部屋長が武道系だと入りにくいことも。
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