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英才教育、日本語の国際語化、数値の3桁読み、度量衡改革、漢字仕様電脳、やる事は多い。

小説「天網」‥中国の通訳腐敗

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    21小説 「天 網」

    三

 森下が在上海日本領事館に援助を求めたのは事件直後であるが、本格的に接触を強めたのは、中国公安が事件解決をうやむやにし始めてからだ。そして、中村領事が上海の投資総元締め会社の社長に、日本叩きがあるから事件に関与したくないと言ったのは、事件から一週間ほど経った時のことだ。本音は本音だが、他にも理由がある。面倒なのだ。つまり、中村は、四〇歳を過ぎたところで、「外交官の仕事」とは何かをわきまえてきたからだ。
 最初、領事は、森下にこう説明した。「森下さん、中国語ができないのに投資なんてするから、行けないよ」「こんな事では、再び金を騙し取られるよ」と。それに対し、森下は「だから、私は、信用できると思った、自分の教え子に通訳を頼んだ」「これで駄目ならどうするか」と領事に釈明を求めた。だが、領事の説明は、詰まるところ、「自己責任」の繰返しだった。
 銀行の不手際、中国公安の犯罪見逃しが、本当に自己責任なのか。制度の不備と日本蔑視ではないのか。一国民なら、当然そう言いたい。さらに、中国に抗議しなければならない。だが、領事は、それは内政干渉にあたると言う。本当にそうか。
 厳密な意味で、相手国の内政にわずかでも影響を与えることが内政干渉なら、外交訪問だって内政干渉だ。この場合、抗議は入るが、友好は入らないとの詭弁は成立たない。友好だって、友好の名を借りた属国支配があり、これは立派な内政干渉だ。沖縄がまさにそうだ。それなら、何処からが、内政干渉か。詰まるところ、日本のように外交無能国なら、「お願い」ですら内政干渉となるだろう。そして、アメリカや中国のように外交強国は、武力を使わない限り、相手国政府に「ある事をせよ、あるいは、するな」とねじ込むことは内政干渉にならないだろう。いや、アメリカの場合は、イラク戦争ですら、報復だから内政干渉ではない、となる。
 領事の結論は、「日本人の投資の安全を図って欲しい」は内政干渉で、「刑事事件解決のお願い」は、干渉ではないと言った。刑事の場合は、「通知」が限度で、解決が遅れる場合は「督促」ができると言った。これでいいのか。胡楊典の指摘を見てみよ。日本人も責められるが、現に日本人が上海でひどい被害にあっているじゃないか。他にも、森下は、羅、史、秦、と数人の日本人からも被害を聞いている。小さなもの言うと、一年以上住んでいる日本人は、スリ・引ったくり、窃盗、強盗、詐欺には八〇%も遭っているという。なのに、何もしないでいい良い訳がない。
 外交官の仕事は多い。隣家の猫が子を産んだ如き事件にまで、相手にはなれない。中村は四〇歳を過ぎて、「外交官の領分」をわきまえてきた。こんなのは、独り合点だ。

 思い返してみよう、長崎国旗侮辱事件(一九五八)。あの時、日本は、法律に基づき犯人を処罰した。だが、中国は、「それでは、中国の面子は丸つぶれ」と因縁をつけ、「日中貿易」に干渉し、貿易を一時停止させた。それからは、貿易面で日本は被害を受け続けた。製品を送ると、技術までただで盗られた事件が、いくつあったか分からない。財界は、嘆きに嘆いた。それでも、日本は「抗議」しなかった。
 尖閣諸島を見てみよ。百年前は、日本の水産会社があり経済活動をしていた。だが中国は、「あれは、日本軍国主義が中国から奪ったものだ」、と二〇年ほど前から自国領だと言い始め、紛争地だとも何とも記すことなく、地図上で「中国領」を宣言している。それだけではない。学校現場で、ガンガン愛国教育を施している。だから、跳ね上がり分子が尖閣諸島に「中国国旗」を立てに行く。
 これは外国での話。一九九二年、中国は「領海法」を定め、南シナ海の「中国領」を宣言した。赤道近くまでだ。これも、中国の地図にはっきり中国領が描かれている。何で、こんな所まで中国領だ。ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンは、軍事力に欠けるから手も足も出ない。
 最近では、春暁ガス田事件(二〇〇五)では、中国軍隊のお出ましとなった。このガス田は、東シナ海の日中経済水域の中間付近にあるので、当然、両国の経済交渉が必要なところだ。それを、中国が一方的に「開発」する、と言うのだ。もし、日本の憲法に戦争禁止の条項(憲法九条)がなければ、軍事衝突が起こる。
「領事さん、情けないでしょう」。「そうですね」。やっと、少しは、やる気を出したようだ。

 アメリカの対外政策は、まるで植民地主義だ。
 ある時、ニューヨークで、日本の大和銀行が、行員の不祥事により一一〇〇億円もの被害を被った。善後策が必要。首脳部は、日本の大蔵省に相談した。「どうしよう、どうしよう」という間に六週間。「なぜ報告が遅れるのだ」と罰金三五〇億円。アメリカ司法当局の処置だ。驚いたのは、日本政府。これでは、紛れもなく「日本」処罰だった。何でこんなことができるのか。軍事力、それ以外にない。
 スーパー三〇一条。これは、アメリカ商務省に対し、貿易に関し相手国との交渉を授権した「国内法」に過ぎないが、これが独り歩きする。「お前の貿易のやり方は汚い、制裁する」と。何で、外国会社がアメリカ法で処罰されなければならないのだ。日本は、処罰回避のために頭を下げて言いなりになった。一九八五年頃の貿易摩擦とはこの事を指す。実際に処罰を受けた国もあった。南米の多くの国だ。中国は、「やるなら、やれ」、と処罰に受けて立った。軍事力か、多分そうだ。アメリカが中国に切込んだこともある。中国では十年程前から増値税一七%(=消費税)を課しているが、それがアメリカに不利だと噛みついた。確かに、中国国内企業に対しては税の還付があるから、理由がある。当然のごとく、戦勝した。なお、日本は言いなりだ。
 言論界でもすごい。ただ、手出しまではしていない。中国の人権弾圧、言論弾圧はひどい。これに、どれだけ噛みついたことか。天安門事件(一九八九)の王丹しかり、湖南省共産党教授・何清漣事件(二〇〇一)しかり。弾圧を放置すれば、当事国では、その政治「措置」が正しいことになり、盲信した先鋭部隊が決死する。そんなこと、国際社会が放置できない。極端な例は北朝鮮だが、中国も「大本営」発表が支配しているから、「言論には、言論で」の範囲内で釘を打込む必要がある。最近の話、アメリカは、自国の利益のために、中国国内問題である中国人の人権に介入した。
 ニューヨーク・タイムズの北京支局職員の中国人・趙岩が国家秘密漏洩罪で起訴された。中国事情をアメリカに伝えることが、何で機密漏洩に当たるのだ。アメリカが激しく抗議した。そうすると、中国は、機密漏洩罪は不起訴にしたが、腹の虫が収まらない。次は、収賄罪で懲役三年の判決を言い渡したのだ。趙岩は、官権の圧力に屈して刑に服そうとしたが、アメリカは、事件そのものがでっち上げだと控訴させた。中国のやり方に拷問はないようであるが、「一つしかない選択肢」の理論を使って攻める。もう、逃れられない。「一つの選択肢」とは、「お前は、これこれの罪を犯した。それを認めるまで、そこに座って考えよ」と「自白」を迫る選択肢だ。延々続く。小罪なら百%、大罪でも、大抵耐えかねてしまう。これで、我々門外漢には真実かどうか全く分からない「機密漏洩」「収賄」事件が犯罪として「認定」されていく。この攻め具は、広く行われている。森下も、以前の江川日語で、理事長が幾度となく使ったのを記憶している。
「領事さん、行き過ぎですか」。答えられない。

 ああ言えば、こう言う。領事中村は、森下を「説得」できない。領事が、日本領事館の使命は「日本国民の生命・財産を保護すること」、との正論に対抗できないのは当たり前のことだ。事件から一ヶ月半後、中国側に「事件解決」をお願いした。仕事が増えるが仕方がない。中国公安の一通りの「捜査」が終わった頃の話だ。
 二週間ほどして、中国公安から返事が来た。続いて、出入国管理局からも返事が来た。異例の事だという。だから、中国側は、必ず事件を解決するだろう、と。「異例」とは、それまで「なかった」とことだが、なら、事件解決を要望したことはあるのか。
 裏を言おう。「何だ、事故係に刑事事件を回したりなんかして」「ビデオ証拠の証拠保全は一ヶ月しかないぞ」「電話の通信記録は三ヶ月しかないぞ」「担当者は、会議だ会議だと、居留守ばかりじゃないか」。通常、このような主張は「内政干渉」になるから、証拠に残る文書ではやらない。だが、口頭ではしたのだ。その「成果」が異例の二通の文書となって現れたのだった。なるほど、領事にも、口頭なら「内政干渉」を敢えてすることがあるのだ。だが、これが「努力」か。
 森下の所に連絡が入ったのは、夜の八時過ぎだった。荻野事務官からの報告だった。曰く、我々は、日本政府との連絡に、夜八時は当たり前、十二時だっていくらでもある、と。という舞台裏を少しだけ教えてもらった。
 とにかく、領事館というところは、文書連絡に忙しい。何故か。会議、会議、会議。そのための政府間連絡。表敬、友好。交渉、契約。外国との交渉は、腹のさぐり合い。そのために残す文書、残しては行けない文書。共通しているのは、彼らは一貫して表舞台には出てこない「黒子」だということ。とにかく、日本政府の意向を忖度して行動する。これが良くない事につながる。長年のうちに、自己判断力を失うのだ。それに、すべて満たされた境遇、それがその場の繕いと無責任思想を倍加させる。だから、他人に判断を仰いでもらう文書作りがやたらと増えるのだ。
 だが、情けない。もっと愛国心が持てないのか。だが、残念、それを持っては行けないのだ。出過ぎた杭になる。外国の外交官には成果達成の「任務」があるが、日本の外交官には「禁任務」があるだけなのだ。外交官だった天木直人は、「さらば外務省(二〇〇三)」で振り返る。売国官僚ばかりだ、と。外務官僚は、日本国の国益、日本国民の生命と財産を守るためにもっと働け。お前たちの鏡は、六千人のユダヤ人の命を救った杉原千畝だ。
 相手から返事が来れば、大成果。二つ来れば異例のこと。まだ、何も成果なんか出ていない。いや、「領事の名」が入った文書が往復するだけで十分。それ以上は、「禁止」なんだ。
 一回、二回、三回、森下が強く領事館の任務を主張すると、領事は、中国公安に手紙を出しくれる。だが、どれもこれも事務文書。「事件発生後○ヶ月経ったが、未だに事件が解決しない云々」。これで、相手が反応するか。中国公安は、よく知っている。日本外交官は「禁任務」だから、返事は、「ただいま捜査中、今暫く待たれたい」これで十分なのだ。担当警察官には、「お茶を濁せ」。森下が、通訳を通じて担当者に連絡してみると、「外交文書作り」だけで、何一つ捜査はやっていなかったのだ。


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