日本の再生と国際化を考える

英才教育、日本語の国際語化、数値の3桁読み、度量衡改革、漢字仕様電脳、やる事は多い。

小説「天網」‥中国の通訳腐敗

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    22小説 「天 網」

 日本領事館の情けなぶり。紹介しよう。森下が百度参りをしているときに発生した。一つは、日本叩きデモにより、上海領事館の窓ガラスがぶち割られる事件が発生したこと。もう一つは、中村の前任領事が、中国側の色仕掛けにより自殺に追い込まれていた事件だ。
 それで、窓ガラスは、直ぐに直してもらったのか。違う。「悪いのは日本だ。お前たち、自分で直せ」と。これでは、いかにも国辱。領事館は「ベニヤ板」を張った。そして、館の敷地は、遙か遠くまでロープを張り巡らし、数人の中国人警備員を増配置した。森下は、領事館に行くたびに、割れた窓ガラスと投げ付けられた外壁のカラーボールの跡を「ああ、情けなや」と言って見るのだった。領事も嘆いたというが、本当に国辱を嘆いたのだろうか。
 領事の色仕掛け自殺事件とは、どういうものか。中国公安は、女を送り、日本の秘密を探ろうとした。前任領事は、気持ちよく女を抱いていた。だが、後に秘密漏洩を迫られると、律儀な日本人は、死んで事態を清算するしかなかったという事件だ。中国では、女の送り込み、これは常識。中国の高級官僚には、どれだけ多くの女が与えられているか分からない。ちなみに、毛沢東には、正式の妻が五人、それ以外にも権力者、実業家、有名人からの献上娘が十人くらい、一夜妻は百人なのか千人なのか見当がつかない状態だった(「毛沢東最後の女」参照)。だから、色仕掛けは、軽い気持ち。対する律儀な日本人というより、バラすぞと迫られた日本人、日本外務省に知られたら身の置き場に困る。死ぬしかなかった。驚いたのは、中国側。
「あの事件の落とし前を付けてくれ」、日本側は要求した。「あの事件は、終わった」、これが答だった。真相が言えないのだ。国際問題になる。日本側は、重ねて要求した。今度は、「自殺だ」だった。日本政府は、これ以上もうこの事件に触れようとしない。森下よ、分不相応に女を送られたお前、外交官でなくよかった、のか。

 領事館の無気力、七月、森下は、直接日本外務省に訴えることにした。民主党幹事長・川端達夫事務所を通じてした。妻の兄つまり義兄が大学時代友人だったからだ。何と、その速さ。その日のうちに、外務省と上海領事館に手続をしてくれた。だが、残念。やる気のない上海領事館に重ねて文書を送っても、送った方がいい程度の効果。もう一つ、川端事務所、選挙目当てじゃないか。言わずもがな。いや、内心はどちらでもよい。外務省と比べれば、天地の開き。
 これは、後日談。上海領事館は、二年のうちに五回「早期事件解決」依頼文を送ってくれた。そして、最後から二番目の依頼文には、二度目に川端事務所から送った文書と森下の熱意が功を奏して、「本人が不満に思っている」との簡単な説明文が加えられることになった。異例中を飛び越した異例だ。
 内閣総理大臣・安部晋三は、北朝鮮の拉致被害者救済のために頑張っている。ここまで事が進められたのは、被害者・横田めぐみの両親。彼らは、娘のために、三〇年間、頑張り抜いた。それが、安部のやる気を引き出した。気の遠くなる話だった。

    四

 中国公安から森下の所に電話が掛かってきたのは、事件後三ヶ月経った七月。領事館から二回目の催促状が来たからに違いない。七月一二日、森下は、胡楊典を連れて上海公安局の浦東分局に向かった。担当者は、郝謹。
 森下は、それまでにも、劉雪明を通じて、郝謹の捜査状況を聞いてきたが、気になっていたのが、銀行のビデオと電話の交信記録。やはり、郝謹が出した捜査資料の綴りには、捜査開始決定書の他は、銀行からもらってきたコピーが二、三枚あっただけ。
「捜査資料は、これだけですか」
「そうです。忙しくてできませんでした」
 五月の初め、あれほど期限が切れるから証拠保全をやってくれ、と頼んでおいた捜査。なのに、何にもやってない。あの時の心配が現実のものとなっていた。思うに、被害届を交通事故係に送って事件を闇に葬ろうとしたこと、被害証明の調査時、「女と寝やがって」などと公安の本音を漏らしたり、通訳の学歴詐称をネタに「国益通訳」を強要したり、電話はいつも居留守の感じだったことから、この結果は想像できた。だが、森下は、上海公安の公安局長、出入国管理局長から「鋭意努力中」の返事があったので、ここまでひどいとは思っていなかった。
 次に、郝謹は、「周桂芳は、犯人じゃないから、これからは捜査しない」と言った。それは「何で」、「証拠がないから」。それなら、「捜査をすれば、周桂芳は犯人になり」「捜査をしなければ、犯人でなくなる」のか。禅問答議論が続く。なるほど、そのために、捜査をしなかったのか。ちなみに、皆が恐れている「一つしかない選択肢」の攻め具を使えば、「自白」によりどんな犯罪でも自由に造り出せる。中国では、犯罪の存在とは、そういうものか。
 また、外国人被害の犯罪は、特別班が行うという。「有り難い」。中国は、そんなに外国人の保護が手厚いのか。誰でもそう思う。それが大間違い。課長一人、課員一人の課で、捜査は郝謹が一人でやるのだ。何と、「特別班」とは、世界の目を騙すトリック(見せかけ)に過ぎなかったのか。中国のテレビでは、証拠保全に警察官が黒山のように集っている。外国人は、当然、それが「中国の捜査」だと思う。が、実は、別の場面を見せられていたのだ。実に巧妙なトリックだ。郝謹が忙しいと言ったのは、そのせいもあるが、制度的に特別班が外国には便宜を図れない仕組みにしてあったのだ。「すべて、中国の利益のため」、にある。なお、森下は、それまでに通訳を連れて行った時、二度も会議中ということで、約束を反故にされている。一体、何人で会議をしたというのか。日本人は、その程度に扱っておけばいい。金がなくなり、馬鹿ばかしくなれば、諦めるだろう。
 もう、周桂芳を捕まえることは無理か。いや、森下の提出した証拠を冷静に判断すれば、森下の出資が円元交換の控えで明らかになり、呉敏娜と周桂芳が共謀して銀行手続を行い、その結果、銀行預金がなくなっていれば、二人の犯行が証明される。さらに、周桂芳が用もないのに四女巧英の寄宿舎に三週間も居候したことを考え併せれば、周の犯意が鮮明になる。森下は頑張った。そうすると、郝謹は「まず、呉敏娜を捕まえる」「その後、呉敏娜が泥を吐けば、周桂芳も捕まえる」と言わざるを得なかった。
 何で、「周桂芳は非犯人」にこだわるのか。三ヶ月もあれば、周桂芳がどんな人物か調査できる。そうか、なるほど、「鋭意調査」とは、そういう調査だったのか。その結果、農民の娘である呉敏娜は犯人とし、共産党幹部の娘である周桂芳は犯人としないことにしたのか。
 こうして、「まず呉、次に周」ということが決定された訳だ。

 一〇月、森下が通訳を通じて連絡をとってみると、郝謹は、「呉に控布手続をとった」と言った。「控布」とは何か。日本の「指名手配」と類似の手続だが、日本のものより数段厳しい。これなら、確実に呉敏娜は捕まる。
 「控布」が行われると、戸籍にその旨が記載される。この戸籍は、中国のいかなる地方からでも閲覧でき、本人は、公的手続はもちろん、買い物にも身分証が必要なことが多く、一旦「控布」されたら最後、穴蔵で生活しない限り逮捕は免れない。中国の捜査は、報告捜査で一見ぬるいようだが、犯人はもう袋の鼠なのだ。
 もし、「控布」から逃れたければ、名前を変えるしかない。つまり、身分証を他人から買うのだ。殺人犯がよくそうして逃げ延びるというが、それでも数ヶ月のうちに捕まることが多い。もっとも、公安が犯人を捕まえようという気があっての話だが。呉敏娜の場合は、日本政府からの要請で「控布」手続をとった。それなら、呉敏娜は、網にかかったも同然だ。
 いずれ、こうなることは予想された。だから、森下は、事件から一ヶ月もしない時は、呉敏娜に次のような手紙を書いている。
「皆んな、思っている。戸籍に傷を付けると、本当に大変なんだ。だから、善良に生きようとする。呉敏娜、今ならば、元に戻せる。先生が助けてやる。頑張れ、勇気を出せ。
 一ヶ月は、友達の所に居候できる。その後は、出ていかなければならない。先生の会社を出ていく時、洗面具やまな板、やかん、鍋を持っていった、いや、盗んでいったから、籠城することは確実だ。だが、その後が難しい。そう、就職。それが難しい。まさか、就職しないで、事件のほとぼりが冷めるのを待つのか。それでは、大金を盗む意味がないだろう。
 そもそも、就職するには、会社に身分証を出して、仮住所を定めなければならない。それができない。そうなると、闇の仕事しかない。そんなに多くはない。外灘でポン引き(風俗産業の客引)でもするか。普通の日本人は、怖いから、片言日本語には相手をしないが、お前は日本語一級に合格しているから、日本人を騙すには十分すぎる。だが、そのために、日本語を勉強したのか。自尊心が許さないだろう。
 中国の捜査は緩いが、身分証の管理は厳しいぞ。甘く見ては行けない。そうすると、お前は、結婚もできない、子も産めない。ただ、次々と、やくざみたいな者と同棲するしかない。一生、宙ぶらりんで良いのか。これでは、両親を泣かす。こんな生活は止めなければならない。呉敏娜、頑張れ、勇気を出せ」


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