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中国のメラミン入り粉ミルク事件
中国全土で、メラミン投入粉ミルク事件が起きた。製造元は河北省・三鹿集団、被害は現在までで、死者1名、患者430人とのこと。この背景を見てみよう。
この事件は、1955年頃から発生した
森永ヒ素入り粉ミルク事件
とよく似ている。だが、その意味合いは全く異なる。森永・ヒ素の場合は過失、中国・メラミンの場合は故意だからだ。まず事件のあらましから始めよう。
森永ヒ素ミルク事件(1955〜70):
粉ミルクの溶解を良くするために、
助剤としてリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)
という化学物質を使っていたが、
この中に不純物・ヒ素(砒素)が入っていた。
これに気がつかず、乳児がヒ素中毒を起こした。
患者1万3000人、死者130人。
このヒ素の毒性は、
根源的には、奈良のカレー・ヒ素投毒殺人事件(1998)のヒ素と同じだ。
三鹿メラミン・粉ミルク事件(?〜2008〜):
事件が発覚したのは、08年8月。
三鹿集団は、3月からの半年間のメラミン投入を認めたが、かなり以前から、
この商品は安価で、
北京、上海、江蘇省など10省(市)から中国全土に出回っていた。
発覚の時点ですでに、患者430人、死者1名に達し、
更に広がりそうになってきた。
メラミン(化学物質。後述)は、
ミルクの蛋白質分を高く見せ掛けるために投入された。
つまり、低級粉ミルクにメラミンを加えると、
分析したとき窒素分(←蛋白質の中心元素)が増え、
高級品に見せ掛けられる。
こういう理由で、粉ミルクの中に、
増量剤(たぶん、でん粉)と共にメラミンが鋤き込まれた。
毒性が低いことと、政府の隠蔽体質により、被害実体は、まだまだ闇の中だ。
同集団は、9000トンを回収(中)した。
政府は、故意犯である故、関係者78人を事情聴取し、容疑者19人を拘束(逮捕)した。
だが、政府は、メラミン投入は、不法分子のやったことで、
(今のところ)三鹿とは無関係だとしている。
メラミンとは何か:
メラミンは、
原料は、尿素(←尿素肥料)とアンモニア
(反応には、直接は不関与)から、尿素3体を環化重合して作る。即ち、
3CO(NH2) 2(脱水環化)
→ =C(NH2)-N=C(NH2)-N=C(NH2)-N=(六員環トリアジン)
(=C3N6H6)
原料が原料(肥料)だけに、毒性は少ない。尿素類似物と考えればよい。
メラミンは、塩基性(アルカリ性)で、
酸と造塩反応により容易に重合体ができ、
つまり、あの奇麗なメラミン樹脂(食器等)ができる(/できた)。
この反応性は、良くも悪くも作用する。
メラミンが加水分解(体内反応)されると、
アミノ酸(←蛋白質の主成分)ができる。
反応は逐次反応で、完全に分解されれば、
グリシン(←基本アミノ酸)になるが、
途中段階で停まっている物も多い。
たぶん、この反応経路があるから、
「少しくらい鋤き込んでも、大丈夫だ」となったのだろう。
反応式は、次の通り、加水分解反応の途中で、何種類かのアミノ酸ができる。
=C(NH2)-N=C(NH2)-N=C(NH2)-N=(加水分解)
→ 3NH2CO2H(グリシン←アミノ酸の一種)+3NH3
メラミン(非分解)は、体内の酸性物質と出会うと、
造塩反応を起こす
(→この部分の相手の酸は、シアヌル酸だそうだ。別のブログに記載あり)
(この反応は、無毒化反応の基本。よく、毒物の中和反応とぶんいう)。
この反応自身は通常反応であるが、メラミンには3官能基があるため、
分子量が巨大化しやすい。つまり、固化し易い。
メラミン・有機酸造塩体が、そのまま糞便となって体外に排出されればいいが、
人体がこれを異物と捉えて無毒化を図ろうとすると、
肝臓・腎臓・その他の臓器に沈積される。これが、結石な訳だ。
今次の乳児のこうして発生したと思われる。
事件発生の評価過程:
私は、メラミンで粉ミルクを増量したのは天才的(?)発想だったように思う。
単なる増量剤ではない。
うまく加水分解が起これば、栄養にだってなるのだ(上記)。
だから、メラミン増量は、公然の秘密だったのではないかと思う。
しかも、分析によって簡単には分からないのだ。
有機体である人体は、
異物に対しては敏感に反応する(←病気の自然治癒現象)。
化学性質では、
尿素もメラミン(人造尿素縮合三量体)も蛋白質(アミノ酸)
も大した違いはないが(上記化学式)、
有機体(人体)にとっては大きな違い、やはり侵入物だ。
こりゃいかん、びっくりした(本件では)腎臓が、
無毒化を始めた訳だ。
中国政府は見逃したが、乳児は見逃さなかった。
生真面目であればあるほど被害が大きかった。
こうして、乳児に腎被害が出た訳だ。
ちょっと待て、この「三鹿集団」は、河北省じゃないか。
そう、あの毒餃子事件で一遍に有名になった「天洋食品」のあるところ。
しかも、工場は、共に「石家庄(市)」じゃないか。
そうすると、ここに何か共通性はないか。
直接の関係はないが、
私は、政府関係者が腐敗にまみれている点が共通していると思う。
つまり、「天洋食品」では、
労働者に対する余りにもあくどい労務管理。
低賃金、長時間労働、
最後は、年金がつく寸前になった労働者の首切りだった。
だから、怒った労働者が投毒した。
投毒は、さらに広範な労働者にも疑いがかかる。
それに対する「三鹿集団」は、
幹部が堕落していれば、幹部自身が「新発明だ」
とでも思って粗悪粉ミルクを作っていたのだ。
今のところ、政府は外部の不法分子が云々と言っているが、
中国の共産党批判を許さない完全言論統制下では、
「新発明」を利用しないのは「魔の手」はなのだ。
絶対にばれない、分析でも分かりにくい、
しかも、栄養代替効果物
(尿素は植物の肥料。なら、人間にだってなる)
の使用を止める力は働かなかった。
この考え方の延長にあるのが、
北米、南米で発生した
中国産の「犬の餌」事件、「風邪薬」事件なのだ。
読者諸君、どう思うか、意見を窺いたい。
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