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続4・中国毒餃子事件、証拠の背後に何があるか
5、親元への取材禁止、後で真実がばれるのだろう
今次の犯人検挙では、どこにも捜査の跡がない。だとすれば、親元へ取材すれば何らかの正しい情報が出てくるかも知れない。それは、危険なことだ。
私は、こんな理由で、親元への取材を禁止したのだろう。日本の取材者が親元に踏み込むと、村民の生活の平穏を邪魔しないでくれとの理由で取材禁止されたようだ。
中国公安は、こういう理由で、あらゆる事を禁止する。私も類似の経験がある。上海の日本語学校で騒動があった時、多くの学生が助けを求めて日本人の宿舎になだれ込んだ。そうするとどういう事か、学校側は、日本人を保護するために、これらの学生を排除すると言って捕まえ始めたのだ。そこで、我々は、その必要はない、学生は、我々が読んだのだと言った。現にそうなのだ。そうすると、学校側は、もしものことがあって日本人に怪我人でも出ると困り、我々は、命にかけてでも日本人を守る義務があると言うのだ。結局、学生は、一人ずつごぼう抜きだれて、日本人宿舎から引きずり出された。この手の実力行使は、公安の常套手段のようだ。
どんなことでも、屁理屈はある。公安と対峙した時、公安の言うことに真実はない。
6、呂の戸籍には、不明朗な点がある
中国では、戸籍を替えるのは、非常に難しい。こうやる。まず、古い勤め先で、離職証明を出してもらって、新しい勤め先の入社証明書をもらうというやり方をする。この間の操作は、まず、新しい勤め先で採用されて、元の職場に戻って、自分が辞めることを承認してもらうというやり方をとる。会社は、丸で個人の監視員のようだ。
例えば、上海内で仕事を替わるのだったら簡単だが、内陸から出てきた人が正規でこの手続きをしようとすると、不便であるばかりか、元の職場がお前逃げるなと言おうものなら転職はだめになる。だからかも知れない。あいつは、この会社を辞めてどこへ行ったという情報が簡単に入るのだ。
いや、いくらでも都市には臨時工がいるじゃないか。そう、いる。だが、彼らは、潜りだ。いや、潜らなくても、新会社で臨時住所を設定してもらえる。上海では、潜りが多くなったので、苦肉の策としてとられた処置だ。
絶対によそ者はいれないという都市もある。例えば、南部の都市だ。広州までは、簡単に行けるが、そこから先は、身分証明書がないと入れない事がある。バスの中で検査がある。私は、その現場に居合わせたことはないから、何とも言えないが、私の知り合いでは、何人か途中で降ろされたと言っていた。いずれにしても、移動は、簡単じゃない。
そこで、呂の場合であるが、原籍を親元にせずに義父宅にしたのか疑問が大きい。そういうところから見ても、呂には、何か裏がある可能性はある。ただ単に就職のために、寄留するというのではなさそうだ。先にも言ったように、あれだけの事を背負って別の土地に行くのだ。私には、何故なのか見当がつかない。
7、呂が妻に自分が犯人だと言っただって
中国では、自分の家に表札をかけない。だから、1号室に誰が住んでいるか、2号室に誰が住んでいるか、皆目見当がつかない。人を訪ねるには、警察に行って聞くほか手がない。どうだ、驚きか。それくらい、個人情報が入りにくい。人の付き合いは、本当に、個人的なのだ。
だから、自分の妻や親戚には、自分が犯人だと言っても平気か。まさか。とにかく、公安に睨まれたら最後、もう犯人に仕立て上げられてしまう。そんな怖い土地柄だ。自分が犯人だと言うことは、あり得ない。仮にその人が犯人ならば、仲間同士でも、偽名で連絡し合うほどの警戒振りだ。先に書いた通り、人脈による芋蔓操作があるので、うっかり喋るなんてな事はあり得ない。日本では、犯罪を自分の手柄のように吹聴して回る者がいるが、中国でそんな事をしたら、命はいくつあっても足りない。ちなみに、中国の死刑執行は、闇の中だが、年間3千人から8千人だといわれている(アムネスティ)。世界の死刑執行の9割以上が中国で行われている。断、断、断トツの世界1だ。この怖さを知らない者はいないだろう。だとしたら、口が裂けても「自分が犯人だ」とは言わない。
中国公安の主張は、にわかに、どころか、全然信用できない。
8、正社員にされない事への鬱憤、それなら500人はいるぞ
こんな理由は、掃いて捨てるほどある。こんな単純なことは何の理由にもならない。日本人は、これで納得できると思うが、こんな事で犯人にされるのなら、犯人候補は5百人はいる。
今、中国の農村は、50年前の日本の所得倍増政策の頃と似ている。都市と農村の格差が広がり、農村では生活できなくなっていく過程だ。いや、もう、中国の農村の荒廃は酷い。酷いと言うより、食べるだけ、という動物並みの生活をしている。だから、若者は、都市へ都市へと流れる。そこで、職にありつける者は幸いだが、都市には仕事が多いと言っても無限にある訳ではない。どうなるか。そう、この事件で犯人に名指しされている者みたいな運命が待っている。いや、これでもいい方だ。その仕事もない時は、男は、泥棒、ポン引き、ダフ屋、ヤクザなどになっていく。女は、もう、売春婦。決まっている。いや、若くて奇麗でないと売春婦にもなれない。それが、今の中国の姿なのだ。
それに対する会社の幹部、通常の数倍の賃金をもらっていい生活をしている。農村から出て来た者が怒らない理由がない。更に言うと、社長は、従業員を低賃金で働かせ、残った金は全て自分の収入としている。雇った従業員に経理を任せては、金を抜かれると、自ら財布を抱え込むか、親戚の者を雇って、一族で金勘定を独占している。一体いくら収入があるのか、どこに裏金を使っているのかも分からない。そんな会社経営だ。
従業員は、呂でなくとも、機会あれば、会社の金や資材を盗んでやろうと考えている。私の知合いの者が言った。自分は経理をやって、会社の金を少しずつ抜いてやろうと思ったが、経理になった者は別の者だったと。また、別の者は、非常に奇麗だったため、社長の目にとまり、結婚、経理になった。そうなると、自家用車を乗回すようになった。それまで、給料が安い、上海に出て行って職を探したいと言っていたのが嘘のようだ。
臨時工は、皆こういう状態でいつもいらいらなのだ。はっきり言って、少数の運のいい者だけがいい夢を見られる。なら、そうでない者は何人くらいいるのか。一族以外は全部だと言っていい。この天洋食品ならば、臨時工の850人は全部だと言ってもいい。
こうして、天洋食品では、臨時工を中心として不満が爆発することになった。会社の犯人捜しが始まる。誰が、一番割を食っているか。それが犯人に違いない。こうして、洗い出されたのが呂だったわけだ。いや、本当に呂が犯人かも知れない。言えることは、呂は、最大に不満をため込んだ臨時工だったという訳だ。
呂が犯人でなかった場合は、どうなるのか。それは、それでいいのだ。中国には、無辜の者を処罰してはならないなどと言う考えはない。いや、私は、そんなに正確な事は分からない。中国の道徳みたいな教科書を読むと、自分は学は無くても、与えられた職場で全力を挙げればそれでいいのだ、というような事が書いてある。なら、呂が浮かばれるには、「宗教」にでも入らねば救われない。また、道徳の教科書は、その「宗教」信仰と矛盾しない。結局、役に立たない者は、その者を犠牲により、他の者が豊かになればいいのだとなる。そこいらの犬がなぶり殺しに遭ったところで、我々は、それは間違っているなどとは言わない。そう、呂もそうなのだ。学校に行っていないから、字もろくに読めない、仕事もろくにできない。そんな者は、犬同然なのだ。彼に犠牲になってもらい、中国が、日本との交渉に有利な条件ができれば、それで十分じゃないかとなるのだ。
この筋書きは、私は、本当に正しいかどうかは分からない。だが、中国政府が、情報取得を極端に制限する裏には、この筋書きと矛盾するところはない。
呂の冥福を祈るのみだ。終り。
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