石油に頼らない能原確保
−電気炉炭焼窯の推進
2 水素燃料と有機質燃料
燃料を大きく分ければ、従来の「有機質燃料(薪、炭)」と「石油系燃料(天然ガス、ガソリン、灯油)」だったが、未来燃料として「水素燃料」が加わった。石油系燃料は、掘出すだけで研究分野は少ない。ここでは、将来最大の焦点となりそうな「水素燃料」と「有機質燃料」についてその特質を比較してみよう。
ⅰ 水素の取得 ‥‥メタンの改質
水素を得るには、水の電気分解だ。これは、中1で習う。この反応は、直接的で分かりやすいが、この方法には、能原取得に大きな矛盾がある。どこか。
能源の大元は太陽。そして、能源の使い切った状態が炭酸ガスと水だ。つまり、「炭素」を使切った形のものが「炭酸ガス」、同様に「水素」の墓場が「水」だ。分かっただろう。その墓場には、もう新しい能源は残っていないのだ。何、それから能原が取れるのだって。そう、谷底に落込んでいる物(水)に別の能源を加えて、高いところまで汲上げれば、再び賦活されて「水素能原」になるんだ、と。そう、だから、原理的に言って、「水素燃料」の取得は、最初から損失覚悟で商売するようなものだ。だから、その後にできる「水素燃料」が、損失以上に素晴らしくないと意味がない。
いや、こんな丸々損の方法ではなく、少しましな方法はないか。ある、色々ある。だけど、能原取得が太陽熱利用とは逆の方向に進んでいるので、かなり苦しいことは確かだ。高温の炭化水素に若干の酸素をぶち込んで、メタン中の炭素を炭酸ガスにして引抜き、その残りの水素を頂こうという方法が注目されている。その中で最有力のものが、メタンを原料とするものだ。不純物炭素の引抜き割合が最も大きい。
両反応を化学式で示そう。
電解: H2O +(電気) → H2 +0.5O2 − 68k㌍/モル(吸熱)
−68(生成熱)
改質: CH4 + H2O+(熱) → CO + 3H2− 49k㌍/モル
(水素1モル当り16.3k)
この反応式から、メタンの改質は、水の電気分解の4倍以上(← 68÷16.3)の省エネになることが分かる。だが、原料メタンの価格と反応容器を700度(商業生産には1000度以上)にまで昇温する努力を考えると、省エネは、巧くいっても吸熱の程度が少なくなる程度だ。
水素の取得には、メタン改質が最も有利だが、そのための安い熱(燃料)はないか。あった。原発の廃熱が利用できないか。ということで、この熱が利用されることになった。ある資料によると、水素生成費が22〜34円/立米 程度になった。原発は危険。さあ、未来燃料製造のために、原発を利用するかの選択が重大問題になってきたぞ。
メタンの改質の化学的意味は、下記の図に示す如く、外部熱とメタンの一部を燃焼 (酸化)することにより、その熱で水素を発生させることだ。この反応は、光合成によって生じる繊維素の反応とは本質的に異なる。図から考えて頂きたい。
ⅱ 植物質の燃料化 ‥‥脱水の技術
次は、植物質について考えてみよう。炭化とは、繊維素を脱水して、無水繊維素を作る意味で、つまりこれが木炭だ。そして、この木炭を燃やすのは、繊維素を一旦炭の段階で燃焼を止め、第2段目の燃焼を意味する。上図参照。
炭化: C6H12O6 → 6C+ 6H2O + 109 k㌍/モル(発生熱)
-302(生成熱) -68.6×6 (炭素1モル当り18.2k㌍)
燃焼: 6C + 6O2→ 6CO2 +566 k㌍
-94.3×6 (94k㌍/モル)
この意味を、現実の単位で示せば、
炭化熱:109k㌍/モル → 0.6 k㌍/繊維素1g
燃焼熱:566k㌍/モル → 3.14k㌍/繊維素1g
となる。繊維素の燃焼熱の意味は、乾燥木材1gを燃焼させた時の熱量をいう。製品の炭から計算すると、0.6k㌍を加算して、炭素の同じ3.7k㌍/炭素1gとなる。
これを水素燃料と比較すると、水素の場合は、メタンを分解するのに大量の外部熱が必要なのに対して、植物質の場合は、植物質の生成は太陽の仕事で、人は全く能源を使っていない。そして、それを燃料とするには、人が脱水作業をするだけでよい。脱水には、天日乾燥と炭化(炭焼)という作業によってする。
水素と植物質の燃料化は、先に加熱燃料を使うか、後に使うかの差があるが、その意味するところは全く違う。
水 素:如何に低温でメタンから「脱炭」をするか。
植物質:如何に上手に植物体から「脱水」をするか。
この二つの燃料製造において気づくことは、水素燃料を作るには、各種の技術革新の努力がなされてきたが、植物質(木質)の脱水には、努力らしい努力が見られない。常識的で、経験的な事だけだ。木質燃料は、地球上隈なく存在し無尽蔵だし、そして、極めて簡単に思える脱水に、研究の目が向けられていないのは異常なことだ。
炭素分から脱水するのに浪費だと思える所は、脱水を水蒸気で行えば600㌍/gの熱量も要るのに、水蒸気を復水にすれば、多めに見積もっても60㌍/g(理論では40㌍/gまで可能)で済むことだ。私は、この点に目を付け、脱水(炭焼)の研究を始めた。