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國立公園としての富士山<一部現代用語に>
(「史蹟名勝天然記念物」昭和3年 林学博士田村剛氏著)
(一)
本邦で日光や富士を中心とする國立公園を設置すべしという主旨で、議会に対して請願又は建議の現われるようになったのは、二十年から以前のこと、てある。けれどもその当時にあっては、単に日露戦役とか、或は広く明治聖代を後世に紀念するために、國家的な一大紀念碑としでの國立公園を要望したのであって、欧州諸國に於ける國立公園運勤とは何等の交渉を有しなかつたのである。
然るに大正十年より政府は欧米に見るが如き國立公園は、園民の保健教化上頗る有用在るものと認めて、それが適地を物色して調査を開始するし、一方國民は議会を通じて異常在る熱望を以ってこれを迦へるという有様であって、富士山の如きは、官民一致して本邦の世界に誇りうる候補地の一つとしたのであったが、その後我が國の國立公園運動は、民間の熱狂的促進運動に拘わらず、政府に於ては関東大震災後に於いては財政共他の關係上より見る所あって、目覚しく間題を展開せしめていないのである。
翻って顧るに、本邦国立公園運動には、かなり真面目を欠いて、何等国立公園としての資格を有せないようなもの迄、雨後の筍のように台頭して、互に相競うが如き観を呈して、切りに識者の反感を買っているような事実も認められるのである。
想うに、我が国立公園運動に就いては、公園そのものの本質が何であるべきかに付き十分理解されていないために、かような上っ調子の騒ぎともなったのであろう。要するに本邦の國立公園はこれから創設されるのであるから、その内容を如何なるものとすべきかに就いては、国民が慎重な態度で研究の上定むべきである。従って、富士山を中心とする国立公園の如きは、これからその内容を充実し、その外観を装うことになるのである。而して山梨縣に於いては既に富士山の公園施設は具体的計画時代に入り、その一部の工事は着々実現されつつあるよう有様であって、我が国立公園の問題は、實に愁眉の急を告げつつあるものを言えるのである。
(二)
.由来海外に於ける國立公園は北米合衆國にその端を発して、キヤナダ、スイス、イタリア其他南米、アフリカ等の各地方まで波及して、世界的な運動ともなりつゝあるのであるが、かかるものを全然有しない文明国も沢山ある。今その理由は略することをするが、要するに、國立公園のない國は、それに相応はしい風景地のない国であり、本邦は世界屈指の國立公園として麗目されているということだけを述べて置こう。
次に世界各國の國立公園には、大体に於いて二つの異る政策がわれて居り、細かには國々で夫々に異る國立公園を有っているという事實を簡箪に述べて、富土山の國立公園を如何に計劃すべきかに移ろうと思う。
世界の園立公園に魁をなした北米合衆國で最初に設定されたものは、温泉保養地を永遠に保留する目的で選定せられたもので、アーカンサス州のホットスプリソグスがそれである。その後第二の國立公園となった工口―ストン公園は間欠泉其の他の火山的奇観を永遠に保存して國民の享用にあてるという主旨であった。そしてその後二三十年間の公園政策は、殆んど消極的な保存保護が主目的であった。所が一九ニ八年に及んで、政府は國立公園の穫極的政策、乃ち國民的一大天然公園としての施設と、合理的経営に腐心することとなり、茲に内務省に國立公園局を新設して、立派に予算を要求しうることとなったのであるが、以後は保存裏業の外に、土木・造園・建築の三方面亘って、開発利用を講ずることとなり、最近のごときは、首都ワシントンに近きアパラチアル山脈中に、此較的平凡な風景地を物色して、利用享樂を主とするものを新設するほどになったのである。而してカナダ、イタリ等はこの最近の合衆國の公園政策に一致したものを造って居る。そして國立公園内に個人別荘を許可する点などで.カナダは最も積極的だと言えるであろう。
これに対してスイスでは、アメリカのエローストンの新設せられた当時の如く、保存を主とするもので、併も一層嚴密な意味での天然保護区域である。ここでは公衆を少しも歓迦してはいない。真に理解ある自然の研究家のための一大天然博物館であるから、衆俗の出入してこれを破壊せんことを怖れている。従って旅行外客などが、國立公園の名にまどわされぬようにと、案内書などに注意してあるほどである。このスイスの公園に比べられるものに、フインランド・アフリカ其の他のものがあるが、然しスイスのそれのように巖重なものではない。
(三)
さて富士山の國立公園、広くは我が國の國立公園政策を如何に定むべきかという問題に就いては、種々の議論がありうることと信ずるのであるが、山梨縣の景勝地開発事業に関係して、富士山の計画に与った私の見解は、左の如きものである。これ短いては十分江湖の批判を乞いたいのである。
世界の國立公園が目的とする二大事業、乃ち天然風景の保存と開発利用とは、互に関係したものではあるが、これを強いて同一の地積内で満足せしめることは無理である。スイスの如く國を挙げてアメリカ型の國立公園となっている理想的風景國では、ただ、此上に望む所は、積極的に全然人工の加わらない保存区域を設置することであった。然るにアメリカの如くには、国家的紀念物(我が天然保存区域)に匹敵設置するものとして、天然紀念物を保存する方法の出来ている場合で、しかもその国土の大部分が単調な風景であって、更に所々に世界的風景を点在せしめている国では、その風景の保存と同時に、風景地利用の方法を講ずるために今日のような國立公園を造る必要があった。
かくして本邦の如くに國土はスイスに数倍し、併もその風景はスイスの如くに到る所が公園のように美わしいというでもなし、またこれを一様にスイス風に開発施設することも不可能であり、一方には世界的な風最を散在せしめているといふ國では、やはり風景保存を兼ねて國民的乃至は國際的利用を主とする積極的なアメリカ型の國立公園が望ましい。まして他に天然紀念物として或は天然保存区域としての保存施設を有する場含に於いてである。
次に間題となる点は、土地の所有関係である。アメリカやキカナダのように、その土地の大部分が國有地であれば、如何在る制限も設けられるものであるが、我が国では富士山を始めとして多くの風最地には、國有以外の土地が広く包含せられるのである。これを保存するためには、土地所有者の利益をも併せて講ずるような積極的政策を加味したものでなくては、到底實現しえないであろう。これ等の点よりして、私は日本の國立公園政策に就いては、國情を同うするイタリのそれに学ぶべき店が多いと思う。
要するに我が国立公園に於いては、積極と消極と両方面の施設を併せ、・而その内になるべく多くの天然保存区域をも包括したものとする意昧で、アメリカ型のそれに準ずるを可とするのである。
富士山に就いても同様に考えるので、その区域をばながく広くし.富岳を中心として有ゆる史蹟、名勝、天然紀念物、保健地・享樂地等の展開する限りを包擁するものとする。されば北方は五湖の集水区域乃ち主として富士山を直接展覧しえらるゝ区域で、三峠、御坂峠、黒岳、節の嶽.王嶽、女坂等のなす分水嶺、西は本栖湖の集水区域に始まり、雨嶽からずっと國境に浴って南下して大宮邊に結ぶ線、南は愛鷹山北麓を過る道路を限りとして東方御殿場に至り、なお御殿場より北へ山中湖の集水区域を包含せしむる一圓の地、面積約十萬町歩を公園区域として適当を認めるのである。而して.この区域は南大半が御料地であり、北大半が縣有地であって、頂上が神社境内となっていて、公有地、民有地とは、山麓湖畔等に分布していてさほど広大でない。因にこれをアメリカの國立公園に比べると、富士山と酷似したエジプト附近のレニア国立公園の大さに匹敵して、同國最大のユローストン國立公園の十分一位にしか当たらない。
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