|
Final Magazine vol:3 〜#84 久保田 憲〜 (写真提供:チームカメラマン池田 理氏) ”若くて勢いのあるアスリート集団” 近年、富士通FRONTIERSが評される時よく使われる表現だ。 そんなチームにあってこつこつと技術・経験を積み重ねてきたベテラン選手がいる。 "クボケン"こと#84久保田憲だ。 キャリアに裏打ちされた安定したパフォーマンスでチームに貢献するくぼけんさんは、 今年FRONTIERSで12年目のシーズンを迎える。その想いを聞いた。 中央大学附属高校、中央大学、富士通FRONTIERSで 19年間フットボールを続けているクボケンさんにとって、 最も大きな影響を与えつづけているのが石井一朗さんという人物だ。 石井さんは、高校時代からのクボケンさんのチームメイトで、高校時はQB、大学時はRBを務めるアスリートだった。 そんな石井さんが大学2年時に大きな怪我でフットボールができなくなりWRコーチになった。そして、秋のシーズンを迎える直前に石井さんに言われた言葉が、 クボケンさんがフットボールをする上で、今でも糧になっているという。 「おれは試合でボールを投げることも捕ることももうできない。だから、おまえらに代わ りに捕ってもらうしかない。」 この魂のこもった石井さんの言葉は、 クボケンさんのアメフトへの取り組み・考え方を大きく変えたという。 「高校、大学とレギュラーとして試合に出場していたのだけど、 それまではとにかく自分が上手くなりたいと自分の事ばかり考えていた。 それは選手個人として当たり前の事だし今も同じ。 ただこの言葉を聞いて、 アメフトをしたくてもできない奴らのためにも、 フィールドに立てる事への感謝の気持ち、 チームの代表として試合に出させてもらっている責任感、 チームメイトに喜んでもらえるようにもっと上手くなりたいという欲求を 強く感じていった。」 184cmという長身のWRは今でこそ珍しくないが、当時WR,DBにおいて体の大きな選手は稀だった。 その特徴を武器にWRとしてめざましい活躍をしていたが、石井さんはそんなクボケンさんを常に戒めてきた。 「大学で10キャッチ、200ヤード位稼いで勝った試合があったのだけど、 その試合で1本イージーなパスを落としたんだよね。 自分ではその落球がちょっと気になっていたのだけど皆が褒めてくれたり、 勝った事に喜んでいるのを見ている内に一瞬「まぁいっか」って思っていた。 でも、石井は真っ先にそういう気持ちが命取りである事を指摘してくれた。 調子が良い時とか勢いがある時に出たミスって気づかなかったり、 見過ごしてしまう事が多いと思う。 でも実はその1プレーのミスで負ける事だってある。 石井は常にそういう事を気づかせてくれた存在。 今でもたまにFRONTIERSの試合を見に来て、 冗談交じりに”あれは捕れたでしょ(笑)”とか言ってくれる。 石井がいなければ今の自分はなかったかもしれない。」 富士通FRONTIERSは企業チームだ。無論、プロ契約の選手はいない。 すなわちみんな日々の業務と両立しながら、アメフトをしているのだが、 クボケンさんは工務という激務を担当している。 実際にその苦労を聞いたが、それは想像以上のものだった。 「一番忙しかった時期は、週に2日は徹夜して、他の日もホテルに泊まったり、 真夜中にタクシーで帰ったりして、そんな生活が1〜2ヶ月続いた。 かなり病んでたと思う(笑)」 普通の人なら心身共に疲れ果てて、どちらかを辞めようと思うのが普通だろうが、 そんな激務をこなしながらも、クボケンさんはできる限り練習に参加してアメフトを続けた。 そのモチベーションはどこから来るのか聞いたのだが、二つの答えが返ってきた。 一つの答えはある選手の存在だったのだが、それは後述するとして、もう一つの答えは、 クボケンさんのある意味、完璧主義ともいえる一面だった。 「昔から、何かはできるけど何かは全然ダメというのが嫌だった。 高校に推薦で入ったのだけれど、 推薦組だから勉強はできないという目でみられるのが嫌で勉強を頑張った記憶がある。 それは社会人になっても同じでアメフトやっているから仕事はできないというのは、 自分の中で絶対嫌だった。」 そんなクボケンさんにとって仕事においても、 アメフトにおいても共通していることがある。 「時間がかかってもいいから、自分がやると決めたらちゃんと納得するまでやる。 時には失敗する事もあるけど、納得するまで取り組んだ事なら意味があるし糧になる。 何をするにしてもしっかり目的意識をもって取り組むと、 成果もついてくるものだと思う。」 クボケンさんが入社してからの数年は、カート・ローズコーチ(現慶応大学OFFコーディネーター)が導入したウェストコーストオフェンスの影響もあって、 WRとして随時試合に出場していた。 そんな状況を劇的に変えたのがブラッド・ブレナンだった。 大学時代NCAA一部校のアリゾナ大学で、 スターターとして活躍したバリバリの現役アメリカ人選手のパフォーマンスは他を圧倒していた。 インサイドレシーバーとしてブレナンとポジションを競うことになり、試合への出場機会は減っていった。 「ブレナンは誰がみても本当にすごかったんだけど、 当時自分もそれなりに自信があったから試合に出られないのがもどかしかった。 ちょうどこの時期に怪我をしたり仕事も忙しくなっていて、 正直腐っていた時期もあった。 試合に出れないなら辞めようかなと考えた時期さえあった。」 だが、クボケンさんはFRONTIERSを辞めなかった。 そして、それまで嫉妬と羨望の目で見ていたブレナンという選手のプレーを徹底的に分析するようになる。 「ブレナンは確かにすごい。 だったら、何がすごくて自分はどうすればそうなれるのかということを 真剣に考えるようになった。 マンツーマンをはじめとして練習中は常にブレナンの一挙手、 一投足に注目するようにした。分からない事があれば質問し、 細かく丁寧に教えてもらった。」 さらにクボケンさんはこう続けた。 「ブレナンのプレーを真似して、 彼の持つ様々なテクニックやバリエーションを吸収した。 また、逆にそうすることでブレナンにはない自分の強みに気付くこともあった。 そしたらどんどんアメフトが面白くなっていったんだよね。 ブレナンと出会う前に既に10年くらいアメフトやっていたけど、 彼からいろいろ学んで全てのことが劇的に変わった。」 蛇足だが、私はクボケンさんの話を聞きながら、 ”創造は模倣から始まる”という言葉や、 ”学ぶ”という言葉の語源が”真似る”からきているということなどが頭をよぎった。 19年のキャリアで築き上げてきた知識や、 経験をFRONTIERSの若手に伝えていこうという想いはあるのか聞いたところ、 クボケンさんから思わぬ答えが返ってきた。 「おれが教えることなんて別にないと思うよ。 特に今年のWRの新人達(#4松林、#17秋山、#25守屋)は、 フィジカル、センス、テクニック、知識、 どれをとっても自分より上をいっていると思うよ(笑)。 大学(関学・日大)の優秀なスタッフの下で色々教わり、 大舞台も経験しているかなり完成されたレシーバ達だと思う。」 「でも、一つだけ言えることがあるとしたら、自分の型というか、 プレースタイルを決めつけないでチーム内外のいろんな選手を真似てみてほしい。 自分はブレナンというお手本が身近にいて、 それを徹底的に真似たことで成長できたように、 新しい何かが見えてくると思うから。」 そして最後に、今後の目標について聞いてみた。 「自分の中にはこうありたいという姿があって、それに近づこう、 上手くなろうとしてやっている。 少ないかもしれないけどまだ延びしろがあるかなって(笑)と思うし、 まだ延びしろを広げたい。 自分にその気持ちがある限りはアメフトを続けたいと思っているけど、 逆にもしその気持ちがなくなったら引退するよ。 気持ちがなく続けていても自分にとってもマイナスだし、 チームに迷惑をかけるだけだからね。」 この取材は武蔵中原駅前の某居酒屋で行っていたのだが、お酒も入ったくぼけんさんは、 ここにはまだまだ書ききれないくらい多くのことを語ってくれた。 そして、最後にこうまとめてくれた。 「20年近くやってて今改めて感じるのはチームメイト、スタッフ、ファン、チア、 会社の人、家族、いろんな人たちに支えられてプレーできるということ。 同期もプレーヤーとしてはいなくなったけど、 嶋はGMとして、洋君・中澤はコーチとして支えてくれている。 本当に心強いよね。 昔は辞めようと思った時もあったけど、 今はこのチームにすごい愛着があるし、 なんかきれいにまとめすぎって感じで恥ずかしいけど、 最後はやっぱりONE FAMILYでFRONTIERSが日本一になれれば一番最高だよね。」 ■白木栄次の編集後記 僕は現在24歳。 僕が5歳の時から、クボケンさんはフットボールを続けているということになる。 クボケンさんのストイックにフットボールを取組む姿や、 仕事とフットボールの両立に関しても、 自分含め若手メンバーの見本となる先輩の1人だ。 また個人的ではあるが、 クボケンさんはスキルポジションにも関わらず、 いつもラインのことを気にしてくれ、プレー中にもよく声を掛けてくれる。 あまり目立たない僕らにとっては、 実は嬉しく感じることもあり、やる気になる。 本編の冒頭にも竜太郎が述べているように、 フロンティアーズは非常に若いチームと言われるが、 クボケンさん始め、ベテランの先輩方・引退された先輩方が今まで築いてきたからこそ、 今のフロンティアーズが存在する。 日本一を目指していたが、 半ば達成できずに引退された先輩方もたくさんおられる。 現役である我々の責任は、 そんな日本一への想いを大切にし、 なんとしても今年念願の日本一になること。 ホンマ、やったります! 次号!!!!
クボケンさんより、 次回 Final Magazine vol:4で登場する選手のご指名をいただきました! ヒント:「日本を代表する野生児!!」 |
全体表示
[ リスト ]


