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Final Magazine vol.10 〜#87 大矢 祐嗣(おおや ゆうじ) 〜
数多くの球技が存在する中で、
素手でボールをキャッチすることが求められる競技は決して多くない。
中でも純粋に捕球を重要な目的とするのはドッジボールとアメフトのレシーバーくらいだろう。
そんなアメフトのキャッチにおいて、
間違いなくFRONTIERSナンバー1といえるのが”ゴッドハンド”#87大矢 祐嗣だ。
まるでボールが手に吸い付くような
大矢さんのキャッチだが、キャッチングに対するプライドとチームへの思いを聞いた。
東京出身の大矢さんは小、中、高と10年間サッカー部に所属していた。
ポジションは一貫してゴールキーパー。
最初にキーパーになった理由を聞くと、返ってきた答えは実に興味深いものだった。
「キーパーは一人だけユニフォームの色が違うから目立てると思った。
あと体力(持久力)がなかったので、キーパーなら楽かなと思ったんだよね(笑)。」
Jリーグ、ガンバ大阪の遠藤選手は、相手ゴールキーパーを嘲笑うかのように、
ゴロで軽々とPKを決めることから”PK職人”と呼ばれているが、
大矢さんがキーパーとして最も自信を持っていたのがPKだ。
「PKは決められて当然という前提があって、止めたらヒーロー。
気分的にはものすごい楽だよね。自分は心理戦や読み合いが得意だったから、PKは楽しかった。」
ここで大矢さんのPK理論を少しだけ紹介しておこう。
1、キッカーは蹴る前(ボールを置く時)に目をあわせてくる選手と合わせてこない選手がいるが、
上手いのは合わせない選手。
2、合わせてくる選手の大半は実際に蹴る方と逆のサイドをちらっと見る。
後はその逆に飛べばいいだけ。
バスケットボールではノールックパスをはじめとして視線が重要なファクターとなっているし、
アメフトでもオンワードのQBの菅原選手がアイフェイクで実際に投げる方と
逆のサイドをずっと見ていることがよくある。
また、以前にファイナルマガジンの取材で甲斐さんも、
プレー中QBの視線に注目していると語っていた。
外から見ていてもなかなか分からないが、
フィールド上では視線を介した激しい攻防が繰り広げられているのだ。
ミスが即失点につながるキーパーというポジションのプレッシャーをずっと経験してきた大矢さん。
要所でのパスキャッチの裏には、ハンズとともに、キーパー時代に培われた精神力もあるに違いない。
知り合いのつながりで、日本大学でアメフトをやらないかという誘いを受けて、
フェニックスのセレクションを受けることとなった大矢さん。
当初アメフトはNFLを見ていたくらいで、
特に自分がやりたいという気持ちはなかったそうだが、決め手となったのは日本一だった。
サッカーでは、チームはいつも予選で敗退してしまっていたため、
日本一を争う強豪のフェニックスはとても魅力的だったのだ。
セレクションに見事合格した大矢さんはDE、Cを経てTEへとコンバートされる。
この過程は同じくサッカーのゴールキーパー出身でサイズもあった、
八百板選手(現鹿島TE)2世としての入部当初からの大矢さんへの期待の表れだった。
ちなみに篠竹監督については、なんだかんだいって選手をよく見てくれる人だったと語ってくれた。
常に主力として活躍し、学生オールJAPANにも選出された大矢さん。
4年時にはTEとOLBを両面でプレーしてXリーグの多数のチームからオファーが来たという。
そんなスター選手となる前に大矢さんは一つの大きな出来事を経験していた。
大矢さんが日大時代最も印象に残っていると語ってくれたのが、フェニックス逃亡事件だ。
入部と同時に合宿所で生活してきた大矢さん。
それは、朝から晩までアメフト漬けの生活が4年間続くことを意味していた。
そんな生活も当たり前になった2年の秋、大矢さんは破傷風にかかってしまう。
感染性があるため、当然合宿所を出て自宅療養をしていた。
しかし、その期間が大矢さんに思わぬ影響をもたらす。
「なんか刑務所からシャバに戻ったって感じですごく楽しく感じた。
なんであんなに苦しいことをしなければならないのだろうと思って、
病気が治ってもっ戻らなかったんだよね。」
当時の日大の練習が過酷なことはあまりにも有名で、逃げ出す選手も少なからずいたそうだ。
大矢さんの場合、病気というアクシデントで突如普通の生活になり、
苦しい練習が待つ環境に戻るのをためらってしまったのは、ある意味自然な行動だったかもしれない。
結局はチームへと戻った大矢さん、主力として上記の活躍を経て、
数多くのオファーの中から最終的に富士通への入社を選択する。
〜タイトエンド〜
現代のフットボールにおいてTEが果たす役割は大きい。
パスキャッチ、パスプロテクション、そしてブロック。
WRのスピードと、OLの力強さを併せ持ち、
さらにそれらをプレーに合わせて使い分ける器用さも必要とされる。
セットについてもラインの一人として手をついたスリーポイントセットする場合、
SBとしてツーポイントセットする場合、WRのようにセットする場合とある。
さらに相手守備を混乱させるためのシフトやモーション、
アンバランス体型のキーマンである場合が多い。
そんなTEというポジションにおいて、大矢さんは完全にレシーバーの要素が強かった。
それは日大がパスチームだったことに大きく起因する。
「ほとんどレシーバと同じ感覚だった。
たまにランのブロックがあっても体を入れるだけで、
ちゃんとしたブロックはやったことがなかったし、教わったこともなかった。」
FRONTIERSに入った大矢さんはスピード派のWR陣を目の当たりにして、
正統派TEとして活路を見出すべくウェイトを増量することにした。
半年で10キロ以上の増量に成功したが、体重が増えただけでブロックが急に出来るわけもなく、
シュアなキャッチとは対照的に、ブロッカーとしては決して一流とは呼べなかった。
そんな状況が変わり始めたのが、昨年の柳、大野コーチの加入だった。
「柳さんに初めて手の使い方などブロックの基本を教えてもらった。
それからブロックが面白いと思えるようになったし、
厳しいユニット練習で自分も含めてみんなレベルアップしていると思う。
まだまだ下手だけどね(笑)。」
今年の夏合宿、2部練習の前後に行っていたTEのハードな練習。
あれが実らないはずはないだろう。
TEユニットのリーダー的存在である大矢さんにユニットについて聞いてみた。
「みんなそれぞれの個性があって、本当に面白い。
このユニットが機能するかどうかがオフェンスにとって重要だと思うので、
みんなを引っ張っていきたい。」
2002年から現在まで少年ジャンプで連載が続いているアメフトを題材にした人気マンガがある。
”アイシールド21”だ。
メインのキャラクターでモン太というレシーバーがいるが、彼は野球出身で、
何より球をキャッチすることに全てをかけている。
大矢さんのキャッチに対するこだわりはおそらくそれ以上で、
フットボールをやる上でのプライドそのものだと言える。
「日大に入った当初からキャッチにはある程度手応えがあった。
だってキーパーの時は自分がいない所めがけてシュートが飛んでくるけど、
アメフトはQBが自分をめがけて投げてくれる。
捕れない方がおかしいと思ったよ(笑)。
今ではキャッチだけは誰にも負けないという気持ちを常に持っているし、
それがなくなったら試合に出られないと思う。」
また、キャッチは捕球の瞬間が注目されるが、その前に幾つもの過程を経ている。
OLがQBをパスプロテクションするのが大前提で、
レシーバーは相手守備との攻防に勝ち、
QBとのコミュニケーション(アイコンタクト)をとってはじめて捕球できる。
「日大時代、ずっと※1フリールートを走ってきたから、
相手守備のパスカバーを読むのは得意な方だと思う。」
と大矢さんが言うように、リリースからキャッチの瞬間まで全ての過程に自信を持っている。
さらに、こんなことを指摘してくれた。
「結局は練習量、ボールを触った回数だと思う。
いず(QB18出原)の威力のある球も、
吉田(QB19)のフォークボールもどんな球でも捕らなければならない。
アフターなどで様々な状況を想定してやるのはとても重要なことだし当たり前だと思う。
そういう意味ではみんな毎日アフターをしている河瀬(WR88)を見習うべきだと思う。」
今シーズンのFRONTIERSオフェンスのパスの比重は高く、
WR、TE陣のパスキャッチにかかる期待は大きい。
最後にチームに対してメッセージをもらった。
「FRONTIERSは日本一を絶対にとれるチームだと思うし、とりたい。
ただ、取り組みでまだ甘いところはあるし、メリハリももっと必要だと思う。
自分が全てをかけているキャッチングについていえば、
WR、TE含めてイージーミスが目立つ時がまだあると思う。
みんな能力高くて、あとはハンズだけだから、自分も含めて来た球を絶対落とさないようにしよう。」
昨年のJAPAN Xボウルでも、
タッチダウンパスをキャッチしてオールXリーグのTEにも選出された大矢さん。
めきめき上達しているブロックと自慢のパスキャッチが必ずFRONTIERSの勝利を手
繰り寄せてくれるだろう。
◆編集後記 TEユニットの後輩からのコメント
#44 前田 明洋より
大矢さんのコース取りとキャッチングは本当にうまく、
コーチからも絶大な信頼をされています。
また、僕自身も大矢さんのコース取りとキャッチには学ぶべき事が多く、とても参考にしてます。
今年こそ最年長大矢さん率いるTE勢でランにパスに引っ張っていき、
必ず、日本一取りましょう!!
そして、朝までバカ騒ぎ!!
また聞きたいな〜氣志團大矢^^
#83 春田 崇博より
TE最年長の大矢さんは、
その素晴らしきハンズと頭脳でTEを引っ張っていってくれてます。
今年TEでオフェンス盛り上げて必ず日本一になりましょ!
そして笑ってシーズン終わったあとにまた大矢ゆうじを囲む会お願いします。
次回!!!
青い眼をもつ帰ってきたコンソメボーイ☆
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