夢亥小説創庫・「芙美湖葬送」「童女トン」「老病死工場の白い雲」他

82歳・置き土産小説・評伝・・・「あいつが死んだ」「銀河を掃いた少年」「ぶーげらと二十紋の足袋」他

小説「太陽も亡べ地も亡べ」

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全5ページ

[1] [2] [3] [4] [5]

[ 次のページ ]

桜島岳が爆発した!

 

桜島で爆発的噴火 噴煙5000mに
8月18日 18時24分

K10038545211_1308181822_1308181830.mp4
活発な活動が続いている鹿児島市の桜島で、18日夕方、爆発的な噴火が起きて、噴煙が高さ5000メートルまで上がり、大量の火山灰が市街地に降りました。
高さ5000メートルの噴煙が確認されたのは、気象台が観測を始めてからは初めてで、気象台は火山灰に注意するよう呼びかけています。
鹿児島地方気象台の観測によりますと、桜島の昭和火口で18日午後4時31分、爆発的な噴火が発生し、大きな噴石が山の3合目まで飛んだほか、噴煙が火口から5000メートルの高さにまで上がりました。
また、噴火に伴って、小規模な火砕流が火口の南東およそ1キロまで流れ下ったのが確認されました。
火山灰は北西の方向に流れて、午後5時前には、鹿児島市の中心部付近で降り始めました。
市内は薄暗くなり、ライトをつけた車が火山灰を巻き上げながら走っていました。
気象台は降灰予報を出して交通機関への影響や農作物の管理などに注意を呼びかけています。
桜島の昭和火口で高さ5000メートルの噴煙が確認されたのは、気象台が噴煙の高さの観測を始めてから初めてだということです。
桜島は、ここ数年、活発な活動が続き、今回の噴火で、ことしの桜島の爆発回数は500回に達しました。
気象台によりますと、これまでのところ、大規模な噴火が起きる兆候は見られないということです。
ただ、地下深くにある「マグマだまり」にはマグマの供給が続いているとみられ、気象台は今後も火山活動に注意するよう呼びかけています。

「今後の活動に注意を」

京都大学防災研究所の井口正人教授は「噴煙の高さだけを見れば火砕流を伴った平成21年4月に起きた爆発的な噴火と同じ規模で、昭和火口の噴火としては最大級となっている。今すぐに大正大噴火のような大規模な噴火をする兆候は見られないものの、桜島の地下ではマグマの供給が続いていて地面の膨張が続いているため、今後の火山活動について注意が必要だ」と話しています。

(21) 「死霊」

 貧乏学生の大倉一馬が、小説家埴谷雄高唯一の長編小説「死霊」について知ったのは昭和32年頃である。
 同じ下宿屋のバッハと神田の古本屋を歩いていて見つけた。
 黒い布表紙の重厚な装幀の本だった。中表紙も黒く塗られ、カメラで撮った水の波紋が、粗い砂目製版で、わずかに波紋と感じられる程度に黒く印刷されている。
 しかも最初の見開き頁には、「悪意と深淵の間に彷徨いつつ 宇宙のごとく 私語する死霊達」と印刷されていた。

 いわば、その献辞ともいうべきワンフレーズで、
 バッハはその本を買うことを決めた。
 いったい誰が誰に対しての献辞なのか。
 埴谷雄高の独白なのか。

 二人とも買うだけの金を持っていなかったから、半分ずつ出し合うことにした。買うことに拘ったのはバッハである。
 下宿に帰るとバッハはすぐ読みはじめた。
 しかしこの観念的で難解な小説には、バッハも悪戦苦闘させられたらしく、結局は、まるまる一ヶ月間、バッハに占領された。
 しびれを切らした富川が、そろそろ読ませろと迫ってやっと部屋に持ってきた。
 バッハは栄養不良気味の、血色の悪い顔で、
「ぷふい。まったく分からん。君が読んだらまた読ませてくれ」
「そんな面白いのか」
「あっは。面白いか面白くないか。それ自体が分からん。まったく変な小説だ」と笑った。
「ぷふい」とか「あっは」という感嘆詞が、もう死霊の妖気に当てられた証拠だ。その後彼は幻想の世界に傾斜してゆくことになる。

                          つづく



 ■引き続き書いております。
 しかし、ブログには載せません。
 縦書きと横書き、ブログ体裁と書籍体裁の書式が違うからです。
 このままでは、中途半端なものになることを案じ、一旦全部書き上げることにしました。
 書き上げてから、改めて掲載を考えます。

 その間暫くお待ち下さい。

 

 まったく突然に、鬼頭からメールが届いた。

「元気にしているか。俺だ。鬼頭だ。老人になったろう。楽な生活をしているか。呆けていないか。呆けるも天の配剤だから、な。無理して明晰になることはない。どうせ短い命だ。今さら明晰なっても、恐怖が襲ってくるだけだ。ならば朦朧と生きた方がいい。間もなくこの地球は滅びる」と書いてあった。

 悪い悪戯だろうと思った。鬼頭とはもう40年以上連絡を取り合ったこともない。何回か帰省したときも彼の家はなかった。あの豪勢な自宅も、何カ所もの駅前の広大な地所の何処にも彼の消息は消えていた。駅前の広大な土地には高層ビルが建っていた。
 行政関係とビジネスホテルとがテナントで入っていた。
 たしか市の土地が掛かっていたはずである。しかしそれでも大半は彼の母親の名義になっていた。母親が死んだらこの土地は鬼頭が相続すると自慢していた。
 
 だいいち彼は死んだはずである。中学時代の同級生からも、彼が通っていた一高夜間部の古い友人からもそう聞いた。投身自殺したらしい、とも泥酔して海に嵌ったらしいとも聞いた。
 遺書もあった。友人の何人かには遺書らしい文面の手紙を送っていた。彼の、一風変わった性格からすれば、その遺書らしい文面で、彼の行動を憶測することはできないにしても、死んだことには間違いなかった。少なくとも私はそう理解していた。
 また、その後まったく彼から連絡を貰ったことがない。

 それがいきなりである。しかもメールである。メールアドレスも大手プロバイダーのアドレスを使っている。もちろん実名を感じさせる語句は一切使っていない。何処にでもある語感の、しかも他人とは混同されない仕組みの、私専用のアドレスである。
 ブログや掲示板に書き込むことともあるから、たまには嫌がらせのメールを貰うこともある。或いはネット通販やオークションで、くだらぬ品物を購入したこともある。
 品物の送り先は実名にしなければならないから、そこから洩れたことも、或いはあるかも知れない。それがどうやって鬼頭の手に渡ったのだろうか。
 死んだはずの鬼頭から、まさかメールを貰おうとは思ってもみなかった。

 その後も、何回かに亘ってメールが届き、彼の指示に従い私からメールを送ったこともある。
 そんなやり取りが続いて、今度は彼から電話があった。
 固定原話へである。その固定電話は、すでに電話帳への掲載も断っているから、普通の方法では探知できないはずだ。
 しかし彼は私の電話すら知っていた。

 それまでの何回ものやり取りで、彼が鬼頭本人であることは、ほぼ間違いないように思われた。しかし、やはり不信はのこる。思い切って彼に写真を送ってくれるようにメールした。
 翌日直接鬼頭から電話がった。
「なんだ。まだ信用していないのか」
「だって。君は死んだはずじゃないか」
「あれか。酔っぱらってな。確かに海に飛び込んだ。たまたま夜釣りしている人に助けられて病院に担ぎ込まれた。半月の入院で無事退院ししたよ。でも狭い鹿児島にはいたくなかったから姿を消した。
 もともと自殺志願者だからね。死ぬことに異存はない。生き残ったことに異存があった。だから潔く自分を捨てたかった。アメリカに渡った。
 もちろん最初は本名のパスポートだったが、ブラジルに渡り、そこでまったく別人のパスポートを取得した。そのパスポートで別人として暮らしている。もう30年近く経っている。誰も疑う人はいない」
「正直言うと、いまだに君が鬼頭とは、とても信じられない」
「写真送ろうか?」
「でも、変わっているだろう」
「昔の面影くらいあるさ」

 暫くして、やはりメール便が届いた。添付書類を開くと何枚かの写真があった。
 若い頃の写真も添えてあった。
 間違いなく鬼頭である。

 今度は携帯電話で連絡があった。
「何で俺のアドレスが分かったの?」
「簡単さ。身元が割れないなんて嘘だよ。割る方法はいくらでもある。
 君は知らないだろうが、例えばCIAはね、注意人物のネット交換記録は殆ど管理している。君はその対象じゃないだろうけど。もう役立たずの後期高齢者だからな」
「・・・」
「そう、怒るな。事実は事実だ」
「で、要するに俺に連絡した目的は?」
「なにもない」
「・・・」
「強いて云えば友情だ。君だけへの。最も親しかった君への友情だ。実は、地球には、これから破滅的な事件が起きる。地球人口の半分以上が死ぬだろう。しかも臨海都市は壊滅する。当然経済も金融も破滅的に損壊する。そのことを一部の政府指導者は知っている。これはね。とんでもない事件なんだよ」
「きみ、頭は大丈夫か」
「もちろんさ」
「おかしいよ。何を根拠に」
「・・・」
「おい、聞こえないのか」

 ジーという雑音が入った。
 同時に鬼頭の、「電波障害がはいった。雑音で聞き取れない。またな」という声で、電話は切れた。


 

 三年くらいして兼高との連絡も途絶え勝ちになった。多忙なんだろうと思った。年賀状だけは律儀に寄越したが、どんな仕事に就いているのか、その後付き合っている東大現役入学の彼女とはどうなったのか、さっぱり分からなかった。
 私は仕事を何カ所も変えた。中途半端な人間をまともに迎える職場はなかった。食いっぱぐれものが屯する神田の喫茶店に行くようにもなった。そこに行けばさまざまな裏情報が入手できるからだ。

 社会も身の回りも大きく変化した。

 鐘柏は消息が分からない。

 鬼頭は大学を中退した筈だ。
 自殺したという話も聞いた。何人かの友人が自殺の経緯を知っていた。

 みなさまざまに変わった。

 そして五十余年が過ぎた。

 

 兼高が復職した年の翌々春に、私は友人の大崎と共に上京した。
 二人とも何処かの大学に、潜り込むつもりだ。大崎は法律を、私は社会学部を選んだ。

 大崎は鬼頭と同じ一高夜間部の同学年である。同じ引揚者で、中学時代から成績は上位だった。
 普通の高校に進学できなかったのは、家が貧しかったからである。それでも一高夜間部では成績のよい勤労学生で、生徒会の委員長までしていた。
 そんな真面目さが買われて、県内の青年団員と一緒に、東京短期留学制度で、二週間の東京体験をした。
 その体験留学から帰って、すっかり人間が変わった。

 もう、学校にも行かなくなった。
 中学生時代の同級生の靴屋で、靴修理見習いをしていたが、それも辞めてしまった。
 たまたま私がやっていたホテルの夜警に空席が出来たので、誘ったら来た。そこで翌々年春上京するまで、一緒に働くことになった。

 彼が学校にも行かなくなった理由について、
「夜間高校なんか出たって、何の役にも立たないよ。県の役人の自己満足だけだ。東京でも夜間部の学生は腐るほどいる。でも、出世なんか先ずできない。無事に卒業できるかどうかすら、分からない。たぶん半分は挫折する。夜間部の中退生なんか、中卒以下だ!
 だれも振り返っては呉れない。工員にすらなれない。せいぜいサンドイッチマンだな。そんな未来しか見えていないのに、真面目に勉強できるか?」

 結局彼はそのまま、自然退学し、大検を受けて、大学進学に備えた。彼に云わせれば、学力的には、早稲田の政経は無理だろう。だから二部の政経でいい。二部の政経では、どうせ一流会社には入れない。
 三流ぐらいかな。でもいい。政経で政治家の道を志したい。

 日本をかえるには政治家になるしかない。官僚への道は閉ざされている。市役所の役人になっても仕方ない。何としても東京で頑張りたい。その為に東京へ行こう、と、云うことだった。

 しかし彼らには、出世の道筋もある程度分かっていた。それは二人とも父親が健在であったことによるだろう。
 大崎の父親は満鉄に務めていた。末端の保線係だった。しかし父親から、当時の満鉄本社には、どんなに優秀な人間がいるかを聞いていた。
 日本の本省役人よりもはるかに意欲的な人間が集まっていた。
 それでも、そこに入り込むには学卒でなければ駄目だ。
 家柄も、一定の条件に合わなければ駄目だと云った。

 つまり日本では、
 われわれに希望はない!

 と、大崎は憤慨した。

 大崎の友人である北川の父親は、台湾で、中学校の校長を務めていた。その父親から、出世するには、やはり東大法学部でなければ駄目だと云われ、出来たばかりのミッション系の進学校に進んだ。
 日本でも有数の進学校である。
 さらに親は、鹿児島で燻っていてもしようがないと、東京の日比谷高校へ転学させた。
 そんな友人を見ながら、私は死んだ親父の、最後の言葉を思い出していた。

 医穿孔から、吐血を繰り返し、戦後の混乱期で治療も出来にまま死んだ親父は、今際の言葉として「乞食でも大将になれ!」といった。 台湾で、末端の警察官として、辛い思いをした親父の最後の言葉だった。
 しかしその意味を、深く考えることはなかった。
 母親は、子供への愛情はたっぷり示してくれたが、この世の中を、どう生きて行けば良いのかについては、何の知識も持っていなかった。母子家庭のハンデイーである。
 その分、他の友人よりは、はるかに遅れていた。

 兼高は、県下随一の工業高校を優秀な成績で卒業できたために、関東の一流企業に勤務できた。
 しかし二年足らずですでに隘路に差し掛かっている。
 同じように優秀な中学生でありながら、夜間高校にしか進学できず、その学校も中退し、大検で辛うじて受験資格は獲得できたものの、ブランクがあるから、新卒としては、もう扱って貰えない。
 政治家にでもなりたい、という思いも、政治家にしかなれない。
 まともな政治家ではなく、政治家の秘書くらいにしかなれない、と彼自身は腹を括っているようだった。

 それでいい。選挙で勝てば、そこからまた道は拓ける。
 実は途方もないことを、彼は私当時に語っていたのだ。

全5ページ

[1] [2] [3] [4] [5]

[ 次のページ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事