Cafe 『La bussola nella vita』旧舘

紅茶、小説、HMKUについて書いてます♪ こちらは旧舘のほうでございます。詳しくはトップの記事を・…

Breath Dragoon

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Breath Dragoon(24)

「・・・金剛、どうだ?」
枯れ井戸の中から声が聞こえた。
ひょっこりと井戸からいかつい顔が出てきた。
「・・・・・・」
あたりを顔が見渡す。そこはその井戸と、朽ちた長ベンチ以外、「何も」無かった。
「おう、出てきても大丈夫じゃ」
言うと金剛はその巨体を井戸の外に出した。
続いてエミリア、ヴェルデ、セフィ。
ヴェルデがセフィの手を引いて井戸から出したのを確認して、金剛はそこに軽食の準備を始めた。
あたりは本当に何も無かった。まるでここだけ何かに地表をはがされたかのようだ。
かろうじて背の低い草は生えているが、それ以外には動物もいなかった。
バルディニ荒野。旅人たちの間では、魔物の巣窟と呼ばれているほどに魔物の生息数が多い。
ヴェルデはあたりを見渡した。何時来ても、ここは変わらない。
海側から来る湿った空気と、砂漠からの熱い風がぶつかり合うので、何時もここは天気が悪い。
そんなことを考えていると、いい匂いがしてきた。
金剛が軽食を作っていた。僅かな枯れ木を集めて、エミリアが火をつけていた。
・・・幸いにして、荷物のほうはほぼ全てそろっている。チュチュが持って来てくれたおかげだ。いくら感謝してもしきれない。
「ヴェルデ、もうできるから皿を出してくれ。」
「ああ。そこの深いやつだな?」
確認を取りながらカバンの中をあさる。
(金剛って、料理案外できるんだよな)
皿を並べながらそう思った。セフィのほうは元々料理が趣味のひとつだったといっていたし、ヴェルデ自身も旅を始めてから作れるようにはなった。
・・・エミリアはどうなんだろう。
エミリアのほうを見ると、金剛のそばにくっついてメモを取っている。
さりげなく回ってみてみると、今回の軽食―ミネストローネー―のレシピがこと細かに整った筆記体で書いてあった。
「・・・エミリア、何でメモなん・・・」
「わぁっ!?」
よほどびっくりしたのだろうか、エミリアは大きな声をあげて驚き、慌ててメモを隠した。
「・・・なんで隠す?」
「い、良いではないか、別に。」
やっぱり、つくれないんだろうな。ヴェルデは思った。
「・・・もしかして、料理、作れない・・・とか?」
「なっ・・・何を言う!私は一応王家の者だぞ!?料理など作れない訳が・・・」
エミリアはそこで口をつぐんだ。
「・・・ないんだ?」
ヴェルデがそう言うと、エミリアは顔を真っ赤にして怒った。
「うるさい!私だって将来を考えて、料理くらいは出来なくてはと思っただけだ!・・・悪いか」
「いや、悪くは無いけど・・・ちょっと以外だなって。」
あんまりエミリアが怒るので、ヴェルデは罪悪感すら覚えてきた。
そこから逃げるように、端っこで一人座ってるセフィのもとへ向かった。
ミネストローネの皿を持って、セフィの隣に座った。
「・・・あんまり気に病むなよ」
「・・・え?」
皿を渡しながら、ヴェルデが静かに言った。
「・・・それに、そんなに無理しなくていい。」
「・・・あたし、そんなに無理してないよ?ほらっ、元気元気」
無理に笑いを作って腕を回す。その行動が、むしろつらく見えた。
セフィもすぐもとの表情に戻る。
「・・・チュチュの・・・」
消え入るような声で、ぽつりとセフィがもらした。
「・・・チュチュ、最後笑ってたよね?」
「・・・ああ」
「その顔が、目をつぶっても浮かんできて・・・はなれないの」
震えた声で、セフィは続きを紡いだ。
「歩いていても、最後に言った、姉ちゃん、って言葉が耳から離れないの・・・」
その蒼い瞳から、雫がこぼれた。
「・・・もう、どうしたらいいかわかんなくなりそうだよ・・・」
「・・・泣けばいいさ。」
「・・・え?」
「辛いときくらい、泣けばいい。それで前に進めるのなら。でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。彼女の意思を。そして皆の意思を実現させるために、今俺たちはここまできた。」
「・・・・・・」
「・・・ここまで来たら、最後までやってやろう?」
(彼女の・・・チュチュの意思を・・・そして何より、あたしたちの意思を・・・)
「・・・えにいくんだよね。」
「あたしたちの意思を。叶えにいくんだよね。」
潤んだ瞳で、セフィがこちらを見た。その顔は、決意に満ちていた。
「ああ。俺達の手で!行こう、セフィ!」
ヴェルデは立ち上がり、セフィに手を差し伸べた。
「うん!」
セフィもその手をつかんで立ち上がる。
「・・・決まったようだな」
離れていた所からエミリアが言った。すぐ隣で金剛がにやついている所からして、恐らく二人で一部始終を覗いていたのだろう。
(全く、すぐ覗く二人だな)
その思いをヴェルデは口には出さず、代わりに皆に号令をかけた。
「さ、さあ、すぐヴァルディニ荒野を抜けて、一気にポートヴィルヘルムまでいくぞ!」
「おう!」
「ああ。」
「うん!」
各々が返事をする。
ヴェルデとセフィは急いで冷めかけたミネストローネを食べて、軽く食器を洗い、もとの場所に戻した。そのころにはもう火は消され、出発の準備が整っていた。
「よし、いくぞ!」
ヴェルデを先頭に、セフィ、エミリア、金剛が続く。
―もう、目的地はすぐ目の前―


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