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いつものように彼はスーツを着て、明日までに仕上げなければいけない書類を抱えて家を出た。
徒歩5分のところにある会社、銀鏡商社は、果敢な戦略と若い経営陣の力で、近年着実に業績を伸ばしている会社だ。彼はそこの広報部課長にあたり、毎日を得意先と自社の往復で過ごしている。そんな感じだった。
「おはようございます、課長。」彼は特に問題もなく目的地に着き、6階建てのビルの入り口をくぐる。 そしていつものように案内に挨拶を交わした。
案内は素晴らしい笑顔を浮かべて挨拶をした。
「はい、おはよう。」
彼も負けじと笑顔を作る。が、疲れた体は満足にこたえてくれなかった。
「おはようございます、課長!」そのまま彼は自分のオフィスに向かうため、エレベーターに乗った。
初々しい笑顔で、エレベーターの中にいた一人のOLが挨拶をした。
「おはよう、真紀。」彼と今回一緒に商品説明会を行う彼女は、彼の恋人でもあった。
彼は持っている書類で二人の顔を隠し、影でこっそりキスをした。
「じゃあ、俺は仕事に入るよ。真紀も頑張って。」いつもの朝の挨拶。彼女はそう呼んでいた。 若さゆえの大胆な行動。 「はい、課長!」
課長のところを強調して、真紀は言った。
「めがね」小さく手を振りながら彼はめがねをかけなおし、その場を後にした。 去り際に、幸せだ。彼はそんなことまで思った。
カタカタカタ、と、薄暗い部屋の中にキーボードを叩く音が延々と鳴っていた。
「……」ディスプレイの光が、前に座っている男の顔を不気味に照らしている。
時計は2と17を指している。昼間はうるさい住宅街も、しんと静まり返っている。ここ紅ハイツ4棟5階503号室の中以外は。
「ふう……今日はこの辺でやめておくか……」彼はいったん手を止め、そばのコーヒーを一口含み、めがねをかけなおして再びディスプレイに目をやった。 結局明日の準備とかもあって、完成しなかった書類。 再びカタカタと音が始まる。 明日までに仕上げねば。もう完成間近だが、ここでミスがあれば取り返しがつかなくなる。 時計が三回鐘を打った。
一応完成した書類に目を通して、上書き保存をしてから書類をとじた。
「……ン?」
デスクトップに、新着メールを知らせるアイコンが2件、でていた。
「おかしいな……こんな夜中に誰だ?」
そう思いながらそのメールを開いてみた。差出人は書いていない。
「……開発部部長、松西聖子……。住所は……!?」 が、好奇心から開いてみる。 ――このたびは、わが社との契約を結んでいただいて、有り難うございます。 明日の商品説明会の前に、どうしてもお礼を申し上げたく、ご迷惑を承知しながらもこの時間にメールを送らせて頂きました。今後とも、よいお付き合いをお願いします―― なんだ、やっぱり会社のメールか。にしても、こんな時間に送って来るなんて。 彼は何かひっかかる気がして、そのメールに最後まで目を通した。 最後に、差出人の名前と、なぜか住所が書いてあった。
住所に目を通したときに、彼は危うく手紙を取り落とすところだった。
「紅ハイツ5階503号室だって!?」
何しろ、そこにはここと同じ住所が書かれていたのだから。
「何だ……。きっと違う棟に住んでるんだろうな。」信じられないと思いながらも、もう一度そこに目をやる。 慎重に読んでいくと、何棟かが書いていなかった。
ほっと一息つく。
「あそこか!?」すると、パソコンからメール通知の効果音が鳴った。 彼はディスプレイに目を落とし、メールを開いた。次も差出人や題名は書いていない。 次は一気に開けてみる。内容はこうだった。 ――驚きましたか?―― 彼は血の気が引くのを感じた。 たちの悪いストーカーかなんかだろうか。 慌ててカーテンからそっと外を見る。隣の棟にひとつだけ部屋の明かりがついている部屋があった。同じ階の、同じ右から3番目の部屋。
よく目を凝らしてみる。が、生まれつきの近眼のためにめがねをかけていてもぼやけてしか見えなかった。
「つ、次は何だ……?」またメール通知音が鳴る。
恐る恐るメールを開けてみた。
「ど、どうなってんだよ!?」
――どこを、見ているんですか――
と書いてあった。その場にへなへなと座り込む。もう怖くて動けない。 座ったときにずれためがねを直す。 また通知音。 心臓がどうにかなりそうだ。とっさに彼はパソコンの電源ボタンを押した。 何度、何秒押しても切れることは無かった。
再びメール通知音。今度は心なしか大きな音の気がした。
「……!!」さらに続けて通知音がなる。今度のは明らかに大きい音だ。 彼はコンセントを引っこ抜いた。流れる通知音が途中で切れる。 何も聞こえなくなった。 同時に暗闇。 やがてコンセントを抜いたはずのディスプレイが再び光りだす。 ――そんなことをしても―― ディスプレイに紅い文字だけが浮かんだ。 ――だって、私はいつもあなたと一緒に あなたと視界を共有しているから――
そこで、彼の記憶は途切れた。
「おはようございます、課長。」その後に、最初に届いた2件のメールのうち、まだ開いていないほうのメールが勝手に開かれた。 2時17分に届いていたメール。内容は、 ――直してくれて、有り難う―― 翌日―― いつものように彼はスーツを着て、昨日仕上げた書類を抱えて家を出た。 徒歩5分の会社に入り、いつものように案内に挨拶を交わす。 「ああ、おはよう。」
そのまま彼のオフィスへ。
「おはようございます、課長!」
彼と今回一緒に商品説明会を行う彼女は、彼の恋人でもあった。
「ん?ああ、おはよう。」
彼女は疑問を顔に浮かべた。
「……え?いつもの朝の挨拶は?」「悪いが、私は忙しいんだ。私用なら後にしていただきたい。」
そのまま彼は彼女の前を後にした。
「……あなた、本当に……啓介さん?」
残された彼女が、ぽつりとつぶやく。
――――――――――――――――――――――――――――彼女の瞳に映った彼の顔に、「めがね」は無かった。 あとがき ホラーってジャンルは初めてで、なんかちぐはぐな感じがします ……もっと腕を磨きます…… 見てくださった方、是非感想を残していってください。 もっと高みを目指すために、辛口な意見も真摯に受け止めます。 よろしくお願いします☆ |
ショートストーリーとか
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参加ありがとうございます。まず、文章作法が気になりますね。(私も最近、指摘されました)それと5階203号室とありますが5階なら503号室のほうがいいですよ。アイディアは、申し分ないです。「わああ!!」は、いらないかなぁ。描写でもう少し怖くなると思います。少し辛口ですみません。こらからも期待してます。
2006/8/21(月) 午前 1:12
ご指摘、有り難うございました。文章作法について一通り目を通してきました。これから全面改修いたします。
2006/8/21(月) 午前 1:45
一応、作法の基本については直しました。 ばっどさん、本当に有り難うございました。
2006/8/21(月) 午前 2:06
・・・は、……で、三点リーダを使い偶数で終わらせるんですよ。私も多く使用していたので、直すのが大変でした。登録ありがとうございます。
2006/8/21(月) 午前 9:21
……やっと直せました。しかし、見直してみるといかに自分が三点リーダに頼っているかがわかりますね……(あ、また使った) ご指摘、有り難うございました。これから長編のほうも手直ししてきます
2006/8/21(月) 午後 10:28
初めまして。ばっどさんのトラックバックから参りました。真夜中のメール。怖いですね。彼は恋人のことを忘れてしまったようですが。彼の身に一体何が?といった感じです。いろいろ想像できますね。
2006/8/30(水) 午後 2:15 [ - ]
はじめまして。最後まで読んで頂いて有り難うございます。いろんなコトを想像できるような、押し付けで無い恐怖を出してみたかったのでこんな形になりました。これからも頑張って精進していきますので、温かく見守ってやってください。有り難うございました。
2006/8/30(水) 午後 6:59