Cafe 『La bussola nella vita』旧舘

紅茶、小説、HMKUについて書いてます♪ こちらは旧舘のほうでございます。詳しくはトップの記事を・…

Keep in mind

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Keep in mind(3)

「…………」
「……」
あれ……?
ゆっくりと目を開けてみる。そこは紛れも無い保健室だった。
「どうしてここに……?」
あ、そっか。俺倒れたんだ。
「……気が付いた?」
聴き慣れた声がした。
「ああ……。わりいな、委員長。」
「その呼び方はやめてよ。それより、大丈夫?」
起き上がって姿を確認する。やっぱり岸田恵子が立っていた。
「今日出張で保健の先生いないんだって。」
「ふうん……」
窓の外を見てみる。夏なのにもう日は暮れ始めていた。
「い、今何時?」
「え……?」
彼女も日が落ち始めているのに気付いたらしく、慌てて時計を見る。
「あ、もう6時半だ……」
せっかく今日は剣道部見に行こうと思ってたのにな。
あ、そういえば亮介も一緒に帰ろうって言ってたっけ。
一応こいつも送って行ってやらねえとな。俺が目覚めるまでついててくれたんだし。暗くなって襲われでもしたら嫌だからな。家も近いし。古い付き合いだし。
そう思って健一は幼馴染に声をかけた。
「そっか。じゃあそろそろ帰ろう。暗くなる前に帰らないとな。」
「え、でも今日は亮介君と帰るんでしょ?」
「ん、何で知ってるんだ?」
自然にわいた疑問を口にする。
「だって、亮介君何回も何回も保健室に来て、まだ起きないか〜? って聞いてはあっち行ったりこっち行ったりしてたから。」
成る程な。亮介昔から人は待たせても、自分は絶対待たない人だったからな。きっとさぞかし苦痛だっただろう。
「いいじゃん、たまには3人で帰ろうぜ」
「でも……」
恵子は窓に手を置いて、外を眺めながら、ゆっくり口を開いた。
「あのね……? こんなこと言っても信じてもらえないかもだけど……」
こちらに振り返る。彼女のショートボブがゆれる。
「何でか……、学校にいないといけない気がするの。それに……」
「それに、今日、健一が倒れる前に、地震だっ、て叫んだよね? ……私もその時地震だって思った。視界がゆれてた。」
「えっ?」
あれはやっぱり自分だけじゃなかったんだ。でもほかの人たちは普通だったよな……?
「……どういうことだろう……?」
「解らないよ・・・。」
なんかよく解らないけど、もしかしたら大変なことが起こってるのかもしれないな……。
「なんか嫌な予感がする……。」
「とりあえず、亮介のところに行こう。」
「確か、剣道場の前で待ってるって言ってたよ。」
なんか嫌な予感がする。そう感じた健一はその言葉を聞き切らない内に廊下へ飛び出した。
「なんか変だ! 早く行こう!」
「え? ち、ちょっと待ってよ、健一?!」
廊下から武道場へと向かう。不思議なことに、廊下にも、グラウンドにも人一人いなかった。

「……待ってってば!健一!」
恵子がようやく追いついたのは、すでに剣道上の前まで来た時だった。
息を整えながら、恵子は健一に尋ねた。
「あれ?亮介君は?」
「……わからない。けど」
健一はその続きを眼で語った。
その目線の先には・・・
恵子は思わず口をふさぎ、目を疑った。
「う……そ……」
その目線の先には紅い水溜りがあった。決して夕日の反射でもなければ、
自販機のジュースの水溜りでもない。それは紛れもない血の紅だった。
その水溜りから点々と剣道場の入り口へと血が続いている。
直感的にピンときた。
「亮介が危ない。追ってみよう。」
「うんっ」
恐る恐る剣道場へと近付いていく。
中は電気がまだついていた。しかし剣道部員の気配は全く無い。
そもそも人がいるならあの血を見て今ごろ大騒ぎになっている筈だし。
「……はいるぞ。」
自分に言い聞かせるように言った後、思い切って扉を開けた。
「亮介! いるか?!」
中に入ってすぐに叫んだ。返事は聞こえなかったが、左の壁のほうで物音がした。見ると、亮介が壁にもたれかかっている。ぼろぼろの木刀を握りながら。
「亮介!」
「亮介君!」
慌てて二人は駆け寄る。
「おお……、健一に……久しぶり、恵子ちゃん。」
最初に健一を、次に恵子を見上げ、そのまま視線を木刀に落として、こう付け加えた。
「……すまんな。おまえの自慢の木刀、ぼろぼろにしちまったよ。」
良いんだよ、そんなこと。おまえが無事なら。
「良いんだよ! それより、何があった?!」
「いわねえ〜。」
顔にいつもの亮介の表情が戻る。
「そんだけ冗談言えるなら大丈夫だな。んで、何があった?」
「俺の話、信じるか?」
まじめな顔を、健一に向けた。昔からこの顔は苦手なんだよな。
「ああ、信じないわけ無いだろ?」
「ファイナルアンサー?」
ころっと表情を変えて、いつものやり取りを交わす。
健一は多少じれったく感じながらも、冗談に付き合ってやった。
「……ファイナルアンサー。」
亮介はいつものにんまり笑いを浮かべて話を続けた。
「実はな、ずっとここで健一を待ってたんだが……」
亮介が何かに気付いた。
「……どうやら、説明は省けそうだね〜」
「?」
不思議そうな顔を浮かべる二人に、亮介が二人の後ろを指差した。
慌てて振り返る。そこには見たことも無い生き物がいた。

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