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――彼らが酔いの流れに飲まれているころ。
城とポートヴィルヘルムの間の海に、船が浮かんでいた。
「お、もう町が見えてきた」風が彼の髪を揺らして、過ぎ去っていく。太陽はだいぶ傾き、あたりをオレンジ色に染め上げていた。 彼、ヴァンプ・シードラーは城から脱出し、ポートヴィルヘルムへと向かっていた。 勿論脱出するためだが、もうひとつ、大切な伝言を届けなければならない。本来ならそういうことは(めんどくさいから)しないタチなのだが、大切な友人の遺言だ。ほったらかすわけにはいかない。 ぼんやりと海を眺めながらそう思っていた。
水平線の向こうに、かすんだ町並みが見えてくる。が、港には船は一隻も止まっておらず、煙突からも煙が見当たらない。
「やっぱり魔法がかかってるみたいっすね……」
彼はそう言った後に、フルートを取り出して軽く吹いた。白銀に夕日が煌き、軽やかな音色が流れる。
「フィンド・パーション」
フルートの先から緑色の光があふれ、町のほうへ飛んでいく。その光は町の商店街のあたりでとどまり、4つに分散した。
「お、4人魔法にかかってない人はっけーん」
嬉しそうにそういって、指を鳴らした。
「さ、四人を探しますか」やがて船は港へ入る。不思議なことに、フルートの音色とともに船は止まった。 板をかけ、港に下りる。
彼はそう言った後、空を眺めて緑の光を探した。結構近い位置だ。
「ふう……」軽やかに走り出す。 どうやら飲食店街にいるようだ。ここの店で一番人気のある店といえば、あそこの酒場しかない。方角的にもあってるし、恐らくそこにいるのだろう。 運良く魔法にかからなかった冒険者か、まだ生き残っていたストライダーか。 どちらにしろ、夜になればやつらが襲ってくる。助けに行かなければ。 そんなことを考えながら、彼は狭い道を走った。やがてなみなみと注がれたビールの看板が見えてくる。
中に誰かいる気配が無い。いや、気配は確かにしているし、今までこの魔法は間違ったことが無いのだが、中からは物音一つしない。多少疑問に思いながらも、彼はゆっくりと扉を開けた。
「……お、この子可愛い」中には、やはり4人の冒険者らしい人がいた。まず目に付いたのは、東国の服をまとった大男。右手にジョッキを持ったまま眠っている。 次に、カウンターの奥でやはり眠っている男。うつ伏せているので顔はわからないが、右手は剣の柄においてあった。確かに、ここまで来れた冒険者のことだけはある。 (後は、女の子か。にしても、どれだけ飲んでんだ?) 彼はカウンターに着いている金髪の女性を見た。そばにはワインのビンが5本転がっている。顔は髪に隠れて見えなかった。 最後に、一番近くのテーブルで眠っている女の子に気が付いた。グラスの中にはまだ半分ほどカクテルが残っていた。
眠っている茶髪の女の子に近付き、肩を軽くゆすってみた。
「…………」
反応は無い。
「ははーん、これは王子様の目覚めのキスが必要のようっすね〜」
彼はゆっくりと彼女に顔を近づけた。酒くさくないところからしても、やっぱりこのコは飲めないんだろう。
「……!」その寝顔を少し眺めた後、彼は彼女に唇を重ねた。 彼女の瞳がゆっくり開かれる。
やがてその顔は驚きに変わった。
「あ、やっぱり起きた」
言ったと同時に後ろのほうから殺気がした。とっさにフルートを抜いて防御する。
「……どういうつもりだ?」がしぃ! 間一髪で剣は止まった。が、この剣の型はどこかで見たことがある気が……
剣が振ってきたほうから声がする。
ヴァンプは顔を上げ、その剣の持ち主を見た。 そこには、探していた彼がいた。 |
Breath Dragoon
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