Cafe 『La bussola nella vita』旧舘

紅茶、小説、HMKUについて書いてます♪ こちらは旧舘のほうでございます。詳しくはトップの記事を・…

Breath Dragoon

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Breath Dragoon(29)

何か物音がする。まだ全然目が覚めていなかったが、頭の片隅にそんな言葉が浮かんだ。
ヴェルデはゆっくり目を開けてみる。酒の影響だろうか、まだ視界はぼやけている。
だんだん目が慣れてきて、ヴェルデは目だけであたりを見回した。奥のテーブルのほうで、何かが動いている。
確認しようと体を起こそうとしたとき、ヴェルデは信じられないものを見た。
「……!!」
思わず体が固まる。
セフィが、キスしている。それも見知らぬ誰かと。その顔は暗くてよく見えなかったが。
よくわからない感情が湧きあがってきた。独占欲? 嫉妬? 結論が出る前に彼の体は動き出した。
グラディウスを抜いて、男に切りかかる。が、その男は腰のフルートを抜いてグラディウスを防いだ。
「……どういうつもりだ?」
精一杯怒りを押さえて、ヴェルデはその男に尋ねた。勿論剣にこめる力は抜かない。
男は顔を上げた。こちらと目が合った瞬間、何か驚いたような表情をした。
「いや、目覚めのキスをと……」
男は弱々しくこたえる。
「……何者だ?このあたりの人は全て魔法にかかっているはずだ」
ヴェルデが怒りを乗せて言葉を発した。
「まず、自分から名乗ってくださいよ」
まけじと男も言葉を返した。フルートとグラディウスが擦れ合い、火花が散った。
「もしかして、ブローニングさんっすか?」
「!」
ヴェルデは驚き、剣にかける力が若干弱くなった。男はそれを見て一気に剣を弾き、一歩下がった。
「何故……俺の名を?」
「父上より言付け賜ってきました」
男は軽く頭を下げ、フルートを収めながら言った。
「親父から!? 親父は3年前に死んだ」
「やっぱり、そうでしたか……」
男はそのまま続けた。
「1年前に、彼から手紙がきました。それは3年前に書いたものかもしれないし、2年前かもしれない。そこはまた考えましょう」
「んで、私はその手紙で、ディフィシオーネがこの国を支配しようとしていることを知り、あなたを探しつつ今まで城で情報を集めてたってわけっす」
ヴェルデがいぶかしげな顔をする。
「なら、親父は生きてるかもしれないってことか? 大体、お前は親父とどういう関係なんだ?」
「ジェンダスさんが今生きてるかはわかりません。でも、彼は殺しても死なないタイプっすから。」
「あ、ジェンダスさんと俺の関係は、ただの同僚であり、友であっただけっすよ。」
「……」
ヴェルデは何も言わなかった。彼を信用していいものかを考えているようだった。
「……バルトロマイオスって、ご存知っすか?」
「いや、知らない。」
その言葉を聞いて、男はさらに続けた。
「バルトロマイオスは、国王直属の特殊部隊っす。ちょうど王宮第一舞台と対になるかたちっすね。でも、バルトロマイオスの存在を知る者は少ない。ジェンダス・ブローニングさんは、そこの隊長だったんす。因みに俺は副隊長っす」
「……で、何で俺に?」
ヴェルデも剣を収め、セフィのそばに座った。
「理由はひとつ。さっき話したとおり、言付けを守るため。そしてその言付けの内容は、あなた方がもう既に実行していることっす。」
セフィとヴェルデはよくわからないという顔をした。
「現国王である、ディフィシオーネを倒すこと。それがあなたに伝えることばっす。」
「まあ、これを言わなかったとしてもあなたはそうしていたと思いますが……」
彼はセフィの飲み残したカクテルに口をつけながら言った。
「これは、恐らくあなたにしか出来ないことです。その理由も話せとかいてありました。」
「理由?」
「ええ。先ほど話したとおり、俺もジェンダスさんもバルトロマイオスの一員でありました。」
「んで、本来人のもつ魔法属性って言うのは固有で、ひとつのみなんですが、たまに二つの属性を扱える人がいるんす。そういう人を集めたのが、バルトロマイオス。たとえば,王家の人間は炎と光を扱えますし、ジェンダスさんは光と風を扱えます。因みに俺も炎と光っす」
「まあ、大体は炎と光っすね。光と風はジェンダスさん以外いないでしょうし、光と水は聞いたこともないっす。ま、勿論これは宝石を使っての話ですが」
「こんなもんすかね。で、何で自分にしか出来ないか、わかりました?」
「…………」
なんとなくだが、ヴェルデにはわかった気がした。
「……今この世には、光と風を扱えるやつが俺しかいないからか?」
「ビンゴ!」
彼は嬉しそうに指を鳴らした。カウンターで金剛のいびきが大きくなった。
「そのとおりっす。ディフィシオーネはその二つしか効かないみたいっす。」
「まあ、光と水の複合も効くんですが。扱える人がいない上に、そもそも宝石であるアクエリアスすら扱いが難しいですから。」
あ、とセフィが声を漏らした。
「あたしの指輪……アクエリアスって名前だったよ?」
その言葉を聞いてヴァンプが目を見開いた。
「ま、まじっすか? ちょっと見せてください」
言われるままに、セフィはテーブルに左手を置いた。薬指にはめた指輪が淡い蒼に煌いている。
「これは……紛れもないアクエリアスっす……」
興奮した様子で、ヴァンプは指輪を眺め、それからセフィの顔を見た。

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