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恵子が不安そうな声を出した。 「そんなはず無いだろ……」
さすがの亮介も、冗談を言える余裕は無いようだ。もちろん、それは健一自身も同じだった。
「どうなってんだ!?」不意に、目の前が暗くなった。いや、床が黒い霧に包まれだしている。 「……勘弁してくれよ」
やがて武道場の壁も、天井も黒い霧に包まれた。もう足元数センチまで霧は迫ってきている。きっと触れて良い事は無いだろう。
「きゃあ!!」3人はじりじりと武道場の真ん中に追いやられた。もう壁も天井も見分けがつかない。回り全てが霧に包まれてまるで闇の中に落っこちたような気分になった。 息苦しい。今すぐここから逃げ出したい。
悲鳴が後ろで聞こえた。見ると、恵子が闇にまとわりつかれている。
「恵子!」
亮介が必死に持っていた木刀で足元を払う。しかし、その払った木刀に闇がまとわりつき、亮介の腕に絡みついた。
「くそ、はなれろ!」
やがて恵子は闇にゆっくりと引きずり込まれていく。続いて亮介も。
「みんな!!」
健一は必死に腕を引っ張るが、二人はどんどん闇に引きずり込まれていった。
「健一!!」そして同時に健一も。
もう殆ど頭しか残っていない亮介が叫んだ。自分も引きずり込まれながらも、健一は必死に振り返る。
「忘れるな!! 俺はいつもお前の……」
そこで言葉は、そして亮介の姿は闇にかき消された。
「やっぱりまだはやかったか」健一も闇に飲まれていく。 もう、何も聞こえない。 もう、何も見えない。 もう、何も感じない。 きおくすら、うすらいでく…… 「もう……時間が……」 「彼らなら……」 「健一、忘れるな!」
その言葉で、俺は飛び起きた。
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