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その刹那、聴き慣れた発砲音が耳を突いた。そして目の前の大男がゆらりとよろける。 「な、なにい!?」 「ヴェルデ!」 後ろを振り返る。そこには見慣れた人懐っこいあの蒼い瞳と、くわえ煙草の男が立っていた。 「ヴェルデ、まだ諦めるな! お前の風の力で剣を創れ!」 「ヴァンプ!?」 「くそぉぉぉ!! ゆるさん、ゆるさんぞ!!!」 大男が唸り、そして斧を振り上げた。 彼の声が頭に響く。自分から剣を創り出す……
よく解らないが、何故か今の自分にはそれが出来る気がした。どのみち、もう迷っている時間はない。 手を前にかざして力を込める。手のひらから光があふれ、それはやがて剣の形となった。そのまま光はさらに輝きを増し、細く、長く伸びていく。 「……!」 光が収まり始め、あたりがはっきりと見えるようになった。ヴェルデの手には「光」が握られている。 「…………」 あっけに取られていた大男が口を開く。 「……なんだそれは?」 ヴェルデはその「光」を握りなおした。ほのかな温かみがかえってくる。まるで何かとてつもなく大きなものに抱き込まれているようだ。 「……運命を悔やむのは」 男のほうに向き直り、いつもの構えをとる。 「どうやら俺じゃないようだな」 言葉を聞いた男が、甲冑の外からでもわかるくらいに顔を赤くさせた。 「小賢しいわ!!」 思い切り斧を振り上げて、ヴェルデの頭上に振り下ろす。ヴェルデは先ほどと同じように剣で身を防ぐ。 「キィ……ン」 負けたほうは男の斧のほうだった。ヴェルデの剣を受けたほうの刃がこぼれ、光によって後方へ弾かれる。 「なっ……なにぃ!?」 大きく開いた胴にすかさずヴェルデが斬撃を叩き込む。 白銀の鎧が大きく裂け、血が滴った。 「ぐぅっ……」 まけじと大男は斧をなぎ払う。しかし、遅い。斧はむなしく何も無い場所を通過し、一瞬早く動いたヴェルデが斧の隙に合わせて袈裟斬を放つ。 「つ、強い……」 斬撃の衝撃を受けて吹っ飛びながらそんな言葉が漏れた。男が地面に触れる前にさらに切り上げが入る。 どさっ。 もう、勝負はついていた。 「貴様……」 「…………」 倒れた大男の足元に、ヴェルデが静かに立つ。ヴェルデは無言で、腰にさしてあった回復薬を取り出し、ふたを空けて男の傷口に振りかけた。 「……どういう、つもりだ」 「喋るな。傷に触るぞ」 一本めが空になると、次の一本を。最後に甲冑と鎧をはずしてやる。 「くそっ、敵に情けをかけられるとはな」 そういう男の顔は、涙であふれていた。今までの口調や、体躯からは想像もつかないような、やさしい顔。 「あと一時間もすれば傷は塞がるはずだ。それまで、くれぐれも動くなよ」 「……」 「ヴェルデ!」 後ろから、聞きたかった響きが聞こえた。人懐っこい、明るい笑顔とともに。 |
Breath Dragoon
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